INTESTINE 2021 Vol.25 No.4 大腸Ⅱc-革命のその後

  • ページ数 : 132頁
  • 書籍発行日 : 2021年12月
  • 電子版発売日 : 2021年12月15日
¥3,520(税込)
ポイント : 64 pt (2%)
今すぐ立ち読み
今すぐ立ち読み

商品情報

内容

特集「大腸Ⅱc-革命のその後」

本特集を通していえることは,Ⅱc は粘膜に留まる段階では陥凹型腺腫としか診断できない異型度があるにもかかわらず,5~10 mm の小さな段階で粘膜下層に浸潤する,そのギャップを分子生物学的に解明していくことや,AI や画像強調などからⅡc の発見率向上を目指すことなど,さまざまなアプローチからⅡc の病態を究明していくことが求められる.(編集後記から抜粋)

≫ 「INTESTINE」最新号・バックナンバーはこちら

※本製品はPCでの閲覧も可能です。
製品のご購入後、「購入済ライセンス一覧」より、オンライン環境で閲覧可能なPDF版をご覧いただけます。詳細はこちらでご確認ください。
推奨ブラウザ: Firefox 最新版 / Google Chrome 最新版 / Safari 最新版

序文

序説


“幻の癌”─ 大腸Ⅱcがそう揶揄されていた時代はすでに終わり,今新しい時代を迎えようとしている.

私が1985年に初めて内視鏡で大腸Ⅱcを発見したとき,大腸Ⅱcは“幻の癌”や“秋田の風土病”といわれていた.というのも,その当時はごくわずかな粘膜不整や発赤を手掛かりにして病変を発見せねばならず,高い技量と集中力がなければ大腸Ⅱcを発見できなかった.この“幻の癌”を現実のものにするべく,情熱をもった多くの若き同僚達と一緒になってわれわれは今まで多くの大腸Ⅱcを発見してきた.本誌の前身である『早期大腸癌』が1997年に創刊されてから本年で25年目になる.本誌は『INTESTINE』と名を変えはしたが,全国の先駆者の先生方のさまざまな知見を交えながら,大腸Ⅱcをはじめとした大腸癌の診断・治療を進歩させてきた.今や大腸Ⅱcは世界的に周知されるようになり,大腸癌の病態解明も進んできた.

大腸癌の発生ルートとして,腺腫から癌化する“adenoma-carcinoma sequence”1)と正常粘膜から腺腫を介さず直接癌化する“de novo pathway”2)がいわれている.大腸Ⅱcをはじめとした陥凹型腫瘍は“de novo pathway”からの癌化と考えられており,癌化した後に垂直に深部浸潤していく.その発育進展から,たとえ腫瘍径が小さくとも粘膜下層浸潤してしまうため悪性度は高い.大腸Ⅱcが発見された当時は,大腸癌発生のメインルートは“adenoma-carcinoma sequence”だと考えられていた.しかしわれわれはこの概念に対して問題提起し,悪性度の高い大腸Ⅱcを由来とした“de novo pathway”が大腸癌発生のメインルートだと主張してきた.

近年の内視鏡の発展はめざましく,色素拡大観察,Narrow Band Imaging(NBI),Endocytoなどの多数のイメージモダリティが産み出され,大腸腫瘍診断学が確立されていった.代表的なものにpit pattern分類があり,約100倍で色素拡大を行い病変の微細表面構造を観察することで,非腫瘍・腫瘍の鑑別のみならず,腫瘍の良悪性の質的診断や深達度診断までも可能としている.Pitpattern分類により大腸腫瘍診断学は飛躍的に向上し,明確で客観的な病理診断予測ができるようになった.そこからさらにpit pattern分類を進化させた次世代の診断学として,520倍まで拡大可能な超拡大内視鏡を用いたEC分類をわれわれは提唱した3).超拡大内視鏡によって,今までは顕微鏡を用いて診断していた腫瘍の細胞や核が生体内で直接内視鏡を用いて観察できるようになり,病変の構造異形だけでなく細胞異型もinvivoでリアルタイムに評価できるようになった.この分類は世界的に評価され,2018年2月に超拡大内視鏡が発売されるに至ったわけである.

これらの大腸診断学の確立により,大腸Ⅱcの特徴の一つである腫瘍径が小さくとも粘膜下層浸潤することがより明瞭化され,大腸Ⅱcの悪性度の高さを裏付ける結果となった.本邦の大腸癌死亡率が男性3位,女性1位に位置している現状を加味しても,大腸Ⅱcの発見と治療率の上昇は癌死抑制の観点から重要である.

そして現在人工知能(AI)の時代に入り,既存の診断体系とAIをコラボレーションさせることにより,病変検出率の上昇と診断予測精査の向上がなされる時代になった.AIはすでに自動車の自動運転や将棋・囲碁などのボードゲームなどにも幅広く活用されているが,医療用AIの出現は臨床にブレイクスルーを与えた.われわれが開発を進めてきた医療用AIであるEndoBRAIN4)は深層学習(=deep learning)を基に病変の検出,腫瘍/非腫瘍の鑑別,癌と非癌の鑑別を可能とした内視鏡画像診断支援ソフトウエアであり,内視鏡分野において国内初の薬事承認を習得した医療用AIとして2019年3月に発売された.AIの補助により,熟練医でも発見が難しい大腸Ⅱcをはじめとする表面型病変が認識可能となっており,今後全国的により多くの大腸Ⅱcが発見されることが期待される.

また,当センターでは病理組織学的診断にAIを組み込んで大腸癌のリンパ節転移予測の精度を上昇させる試みも行っている5).大腸癌診療に携わるものなら周知のことだが,内視鏡治療が進歩した昨今,大腸T1癌におけるover surgeryが問題となっている.リンパ節転移の有無の精度が上昇すればover surgeryを減らし,より多くの患者が低侵襲な内視鏡治療を受けることが可能になる.

AIに加えて,近年のバイオテクノロジー技術の進歩に伴い,遺伝子解析による大腸Ⅱcの分子生物学的解析も進んできている.臨床病理学的側面のみならず,分子生物学的アプローチから大腸癌を解析することによって,大腸Ⅱcの悪性度の高さの原因や未だ解明されていない大腸癌発生のメインルートが究明される日もそう遠くないかもしれない.

本号では,大腸Ⅱcの変遷とこれからの展望に関して,臨床,病理,AIの各側面からの各先駆者達の知見を交え展開する.大腸Ⅱcの原因究明に携わる医療者達の糧になり,医療の発展につながれば何よりである.


工藤 進英
(昭和大学横浜市北部病院消化器センター)


[文献]

1) Hill MJ, Morson BC, Bussey HJ:Aetiology of adenoma-carcinoma sequence in large bowel. Lancet 1978;1:245-247

2) Kudo S:Endoscopic mucosal resection of flat and depressed types of early colorectal cancer. Endoscopy 1993;25:455-461

3) Kudo SE, Wakamura K, Ikehara N, et al:Diagnosis of colorectal lesions with a novel endocytoscopic classifi cation ─a pilot study. Endoscopy 2011;43:869-875

4) Kudo SE, Misawa M, Mori Y, et al:Artificial intelligence-assisted system improves endoscopic identification of colorectal neoplasms. Clin Gastroenterol Hepatol 2020;18:1874-1881

5) Kudo SE, Ichimasa K, Villard B, et al:Artifi cial intelligence system to determine risk of T1 colorectal cancer metastasis to lymph node. Gastroenterology 2021;160:1075-1084 e2.

目次

【特集目次】「大腸Ⅱc-革命のその後」

序説:/工藤 進英

Ⅰ.大腸Ⅱcの臨床のあゆみと現状/工藤 進英他

Ⅱ.大腸Ⅱcの病理のあゆみと現状/河内 洋

Ⅲ.各分野における大腸Ⅱcの現状,存在意義と課題

(1)基幹病院の立場から

a.“De novo癌”の病態解明に向けて/田中 秀典 他

b.残された,解決すべき課題/鶴田 修 他

(2)開業医の立場から

a.Ⅱcに時代的変遷が起きているのか/田村 智 他

b.クリニックの大腸腫瘍の解析からみた大腸Ⅱcの存在意義/寺井 毅 他

(3)病理医の立場から

a.発育・進展におけるpericryptal fibroblastと形質発現の意義/八尾 隆史

b.pT1癌の由来粘膜内癌からみて/味岡 洋一

Ⅳ.拡大内視鏡診断が大腸Ⅱc,陥凹型病変にもたらしたもの

(1)Pit patternの立場から/藤井 隆広

(2)NBIの立場から/佐野 亙 他

(3)AI,超拡大の立場から/三澤 将史 他

Ⅴ.大腸Ⅱc由来の大腸癌の頻度と特徴-大腸癌研究会アンケート調査の結果より/石田 文生 他

Ⅵ.大腸陥凹型病変に対する認識の世代間・施行医間格差/山野 泰穂

TOPICS

─文献紹介〈炎症関連*〉

寛解期潰瘍性大腸炎患者におけるインフリキシマブの休薬についての多施設共同非盲検ランダム化比較試験(HAYABUSA)

〔Review from ─ Lancet Gastroenterol Hepatol 2021;6:429-437〕/小林 拓他

臨床的寛解期潰瘍性大腸炎における全大腸の内視鏡的・組織学的評価

〔Review from ─ Aliment Pharmacol Ther 2021;53:900-907〕/金城 美幸 他

第28回大腸Ⅱc研究会 優秀演題

開大の目立たないⅡ型様pit patternを基盤とする鋸歯状病変癌化の1症例/原田 英嗣他

便利機能

  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応
便利機能アイコン説明
  • 全文・
    串刺検索
  • 目次・
    索引リンク
  • PCブラウザ閲覧
  • メモ・付箋
  • PubMed
    リンク
  • 動画再生
  • 音声再生
  • 今日の治療薬リンク
  • イヤーノートリンク
  • 南山堂医学
    大辞典
    リンク
  • 対応
  • 一部対応
  • 未対応

対応機種

  • ios icon

    iOS 10.0 以降

    外部メモリ:15.1MB以上(インストール時:33.2MB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:60.3MB以上

  • android icon

    AndroidOS 5.0 以降

    外部メモリ:15.1MB以上(インストール時:33.2MB以上)

    ダウンロード時に必要なメモリ:60.3MB以上

  • コンテンツのインストールにあたり、無線LANへの接続環境が必要です(3G回線によるインストールも可能ですが、データ量の多い通信のため、通信料が高額となりますので、無線LANを推奨しております)。
  • コンテンツの使用にあたり、M2Plus Launcherが必要です。 導入方法の詳細はこちら
  • Appleロゴは、Apple Inc.の商標です。
  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

  • ISBN:9784004202504
  • ページ数:132頁
  • 書籍発行日:2021年12月
  • 電子版発売日:2021年12月15日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:2

まだ投稿されていません

特記事項

※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。

※コンテンツの使用にあたり、M2Plus Launcherが必要です。

※eBook版は、書籍の体裁そのままで表示しますので、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。