臨牀消化器内科 2022 Vol.37 No.3 非B非C型肝癌を繙く

  • ページ数 : 114頁
  • 書籍発行日 : 2022年2月
  • 電子版発売日 : 2022年3月4日
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内容

特集「非B非C型肝癌を繙く」

過去20年あまりの間にC 型肝炎関連肝癌の減少に伴って,いわゆる非B 非C型肝癌が増加していることは,肝癌診療を生業とする医師の間では周知の事実であり,また日々実感するところである.

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序文

巻頭言


過去20年あまりの間にC型肝炎関連肝癌の減少に伴って,いわゆる非B非C型肝癌が増加していることは,肝癌診療を生業とする医師の間では周知の事実であり,また日々実感するところである.非B非C型というのは,定義からしてその名のとおりB型肝炎,C型肝炎という肝癌の主要な病因を否定するもの,いわばゴミ箱的分類であり,カテゴリーたりえない.

カテゴリーというものは,その内部にあるもの相互の類似とその外部との相違を必要とするが,疾患カテゴリーにおいては,その内部で病因から病態・自然史までを共有することが望ましい.非B非C型肝癌の背景を分析するとアルコール,肥満,脂肪肝などのさまざまなリスク因子を種々の程度に併せもつ集団であることがわかる.問題は,リスク因子の存在のみでは分類を行うのには不十分であるという点にある.たとえば,男性であることはウイルス性,非ウイルス性を問わず肝癌のリスク因子であるが,「男性肝癌」というカテゴリーは存在しない.また,肥満・アルコール多飲は,ウイルス肝炎においても発癌リスク因子であることが多くのコホート研究で示されており,非B非C型の専売特許ではない.一般にリスク因子は,相加的に発癌を増加させるが,その効果が相乗的であったり,また相互排他的であったりする場合にカテゴリーを形成しやすくなる.たとえば,非B非C型肝癌の女性の飲酒者は例外的で,平均BMIは非B非C型肝癌の男性よりも高値である.大量飲酒者は,非飲酒者と比較して低BMIであり,肝硬変の割合が有意に高い.

肥満人口の増加が近年の非B非C型肝癌の増加に寄与していることは衆目の一致するところではあるが,内臓肥満に起因する脂肪細胞からのアディポカインの分泌異常,脂肪組織マクロファージからの炎症性サイトカイン分泌の亢進,インスリン抵抗性と高インスリン血症といった一連の発癌促進機構の存在は,病因・病態論の観点からは一つのカテゴリーを形成しうる可能性を感じさせる.このことは,非アルコール性の肝癌において肝実質の炎症,肝細胞の壊死・再生の結果としての肝硬変を合併していない症例を多く認めるという事実からも支持される.また,真偽のほどはまだ明らかではないが,このような肝癌においては,発癌過程の微小環境がウイルス肝炎などとは異なり,近年登場した免疫チェックポイント阻害薬への反応性が異なるという報告もあり,興味深い.非B非C型肝癌は,いずれいくつかのサブカテゴリーに分類されることが予想されるが,そのためには病因・病態についての研究がさらに進むことが必要である.

ウイルス肝炎患者と比較して,非B非C型肝癌患者の母集団ははるかに大きく,未だ効率的なサーベイランス法は確立されていない.糖尿病・脂肪肝といったくくりでは不十分で,現時点ではウイルス肝炎同様,線維化進展例を同定することがリスク集団の絞り込みにもっとも有効な手段である.一方で高度肥満例に対しては,腹部超音波は十分な性能を発揮できず,MRI等は高コストであり,またこれらの患者では心筋梗塞等が死因になることも多くなるため,肝癌サーベイランスの意義が相対的に低下するなど,費用対効果の観点からその適用を十分に吟味する必要がある.

実臨床の側面からは,非B非C型肝癌患者は,ウイルス肝炎患者と比較して肥満,糖尿病,虚血性心疾患,腎不全など合併症の頻度が高く,切除をはじめとした治療において周術期のリスクが高い集団である.また高度肥満者では,あらゆる治療法の技術的難易度が高くなる.先述のように薬物療法の選択も異なってくる可能性もあり,非B非C型全盛時代に向けて,肝癌診療の再構築が求められている.

本特集では,非B非C型肝癌に対して,上述のような全方位的観点から,第一線の先生方に解説をいただいた.今後も永く続く非B非C型肝癌との闘いにおいて,最前線の臨床家,研究者の皆様の一助となれば幸いである.


東京大学医学部附属病院消化器内科
建石 良介

目次

【特集目次】「非B非C型肝癌を繙く」

巻頭言/建石 良介

1.非B非C型肝癌の特徴-胆石症の診療方針-B型C型肝癌との比較/長沖 祐子 他

2.非B非C型肝癌の発癌メカニズム/藤原 直人 他

3.脂肪肝からの肝発癌/川村 祐介

4.糖尿病からの肝発癌/内野 康志

5.非B非C型肝癌のサーベイランス

(1)FIB-4 index/腫瘍マーカーの有用性/熊田 卓 他

(2)Transient elastography/Shear wave elastography を用いた囲い込み/西村 貴士 他

(3)MRエラストグラフィを用いた肝癌高リスク群の囲い込み/樋口 麻友,黒崎 雅之 他

6.非B非C型肝癌の治療

(1)非B非C型肝細胞癌症例の切除成績と近年の傾向/真島 宏聡 他

(2)穿刺局所療法/南 康範 他

(3)肝動脈化学塞栓術./佐々木康二,村上 卓道 他

(4)進行肝細胞癌に対する薬物治療-非B非C型肝癌に対する考え方/小笠原定久 他

(5)肝移植/西尾太宏 他

7.非B非C型肝癌における抗腫瘍免疫応答と免疫細胞プロファイルの特徴/清家 拓哉,水腰英四郎 他

8.ウイルス制御後発癌リスク因子としての生活習慣/南 達也 他

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書籍情報

  • ISBN:9784004003703
  • ページ数:114頁
  • 書籍発行日:2022年2月
  • 電子版発売日:2022年3月4日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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