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- PT・OT 臨床につながる物理学
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序文
はじめに
物理学は,自然界で起こるさまざまな現象の背後にある法則性を探求する,自然科学の根幹をなす学問です.その対象は,原子より小さい素粒子から宇宙全体に広がるとともに,化学物理学,生物物理学,医学物理学,社会物理学など,自然科学だけでなく社会科学にも広がっています.そして,物理学は理学療法・作業療法にも深くかかわっています.理学療法・作業療法の基礎となる運動学では,身体の構造と筋によって生み出される力の関係からヒトの運動を理解していきます.物理療法では牽引力,電磁気,超音波,光線,温熱などのさまざまな刺激を生体に与えて,症状や障害の改善を図ります.また,物理学で培われてきた,理論と実験によって法則を実証する科学的方法論は,理学療法・作業療法における評価に基づいて介入を行い,その結果を再評価して介入方法を検討していく臨床過程や新たな技術を開発する方法にも通じます.
物理学を学ぶことは,理学療法・作業療法に必要な物理学の知識を得ることと,科学的方法論に基づく理学療法・作業療法を実践するための思考方法を身につけるという,2つの意味で重要です.本書は,各章の前半を「基礎編」,後半を「臨床編」として,「基礎編」では理学療法・作業療法に必要な基礎的な物理学について,「臨床編」では理学療法・作業療法のなかでの物理学の応用について解説しています.
まず各章の「基礎編」を学んだうえで,より深い物理学と理学療法・作業療法に関連する内容を解説した「臨床編」に読み進むとよいでしょう.本書が理学療法士・作業療法士養成課程の学生の方々の物理学の理解,臨床の理学療法士・作業療法士の方々のよりよい理学療法・作業療法の実践につながることを願っています.
2022年6月
著者を代表して
望月 久
目次
はじめに
第1章 運動の表し方 運動とは何か?
基礎編
1 物理量とその表し方
2 スカラー量とベクトル量
3 運動とは?
物体の位置と座標
変位と速度
加速度
4 さまざまな運動
等速直線運動
等加速度直線運動
重力の下での物体の運動
5 微分・積分と運動
微分の考え方と計算
積分の考え方と計算
column
ベクトルの表し方と合成の計算
微分の表し方
微分と積分の関係
臨床編
1 身体運動における位置・変位・速度・加速度の測定
臨床における身体の位置や運動の表し方
臨床における変位の測定
臨床における速度・加速度の測定
2 関節の運動と極座標による位置の表し方
関節運動の表し方
極座標による運動の表し方
column
躍度
第2章 身体運動と力 力によって運動はどのように変化するか?
基礎編
1 力とは
力の定義
力の3要素
力の合成
2 運動の3法則
慣性の法則(ニュートンの■第1法則)
運動方程式(ニュートンの■第2法則)
作用反作用の法則(ニュートンの■第3法則)
3 さまざまな力
重力
垂直抗力
張力
摩擦力
弾性力
圧力
慣性力
column
近接作用と遠隔作用
粘性
医療現場で用いられる圧力の単位
臨床編
1 身体運動にはたらく種々の力
垂直跳び時にはたらく力
歩行時にはたらく力
2 骨格筋の筋張力特性
骨格筋の構造
骨格筋の筋線維の配列と筋張力の関係
3 腱や骨の力学的特性
4 筋腱複合体の収縮特性
骨格筋の長さ-張力関係
筋腱複合体の張力特性
第3章 力のつりあいと回転運動 並進運動と回転運動の静止と運動を決めるものは?
基礎編
1 並進運動と回転運動
前提条件:物体=剛体
並進運動と回転運動
2 力のモーメントとは
3 力のモーメントのつりあいと回転運動
4 物体の重心と重心の求め方
重心とは
重心の求め方
5 3つのてこ
・第1のてこ
・第2のてこ
・第3のてこ
column
並進運動と回転運動の対応関係
臨床編
1 関節運動のコントロールと力のモーメントのつりあい
関節運動のコントロール
関節間力と力のモーメントのつりあい
2 姿勢と筋活動
3 身体重心の求め方
力のモーメントのつりあいから重心を求める方法
身体部位ごとの重心から推定する方法
column
重心動揺計による足圧中心の計測
第4章 物体の安定性と不安定性 安定性は何によって決まるか?
基礎編
1 物体の安定性
2 支持基底面の大きさと物体の安定性
3 重心の高さと物体の安定性
4 支持基底面の大きさと重心の高さが変化するときの物体の安定性
5 物体の重量と安定性
6 倒れるとは?
column
物体が傾き始める条件
姿勢と安定性
臨床編
1 ヒトの姿勢の安定性
2 ヒトの姿勢の安定性を決める要因
3 姿勢の安定性の調節――身体重心制御と足圧中心制御
身体重心制御
足圧中心制御
4 動作における安定性
慣性力と見かけの重力作用
起き上がり動作の安定性
椅子からの立ち上がり動作の安定性
静的バランスと動的バランス
column
疾患によるバランス低下の特徴
歩行中の床反力の変化
第5章 エネルギーと運動 運動量・仕事・エネルギーとは何か?
基礎編
1 運動量と力積
2 仕事と仕事率
3 運動エネルギー
4 位置エネルギー
5 力学的エネルギー保存の法則
6 力学的エネルギーからみた物体の安定性
7 エネルギー保存の法則
column
仕事の原理
身体運動とパワー
臨床編
1 運動量と動作
2 運動量と角運動量
3 角運動量と動作
4 力学的エネルギーと動作
5 回転運動の仕事および仕事率
第6章 熱の性質と利用 熱とは何か?
基礎編
1 熱と温度
2 セルシウス温度と絶対温度
3 熱量,比熱と熱容量
4 熱の伝わり方
伝導
対流
放射
5 気体の体積,圧力,温度の関係
6 粒子の運動と温度の関係
7 熱力学第一法則
8 熱平衡と熱力学第二法則
column
水分子の形と大きさ
魔法瓶による保温
気体定数Rの単位
不可逆現象と確率
臨床編
1 熱が生体に及ぼす影響
2 温熱療法と寒冷療法の種類と熱伝導
3 生体のエネルギー代謝
4 酸素摂取量とエネルギー代謝
第7章 波の性質と利用 波の性質は何で決まるのか?
基礎編
1 波とは
2 波の性質を決める物理量
3 横波と縦波
4 波の性質
重ね合わせの原理
波の干渉
ホイヘンスの原理
波の反射と屈折
波の回折
5 音の性質
音とは
音の3要素
音のドップラー効果
6 光の性質
光とは
物体の色
光の直進性,反射,屈折
column
音圧レベル
光の偏光
臨床編
1 超音波療法の基礎
超音波の作用
超音波の発生
超音波の振動数
超音波の吸収,反射,屈折,干渉
2 光線療法の基礎
光の強さの光源からの距離による変化――逆2乗の法則
光の強さの光線の角度による変化――ランバートの余弦の法則
第8章 電気の性質と利用 電子,イオンの動きと電気
基礎編
1 原子の構造と電気
2 電荷の間にはたらく力 ――クーロンの法則
3 電場
4 点電荷によって生じる電場
5 帯電した1組の金属板の間に生じる電場
6 電位
重力による位置エネルギーと電位
7 電流
8 導体と不導体の性質
導体と不導体
静電誘導と誘電分極
導体内の電場と電圧
誘電体内の電場と電圧
9 オームの法則
10 電力と電気量
ジュール熱
電力量と電力
column
静電遮蔽
臨床編
1 電気機器の取り扱い
漏電と感電
アース
2 抵抗のはたらきと接続
抵抗のはたらき
抵抗の直列接続
抵抗の並列接続
3 コンデンサーのはたらき
コンデンサーに蓄えられる電気量
コンデンサーの充電と放電
4 半導体のはたらき
P型半導体とN型半導体
半導体ダイオードのはたらき
交流を直流に変換する回路
5 細胞膜の電気的活動
膜電位
6 筋の電気的活動と筋電図
column
可変抵抗器による電流調整
筋電図電極の貼付位置
第9章 磁気の性質と利用 電気と磁気の密接な関係
基礎編
1 磁気とは
2 磁気と電気との相違
3 磁場
4 磁場と磁束密度
5 磁気誘導
6 電流と磁場
直流電流
円形電流
ソレノイドを流れる電流
7 運動している電荷が磁場から受ける力
8 電磁誘導と電磁波
column
磁気の正体
右ねじの法則とベクトルの外積
マクスウェル(Maxwell)の方程式
臨床編
1 コイルに生じる電磁誘導
自己誘導
相互誘導
2 コンデンサーとコイルの関係
3 コンデンサーとコイルのフィルター作用
4 物理療法で用いられる電磁波
極超短波による温熱作用
経頭蓋磁気刺激の神経作用
column
変圧器
容量リアクタンス,誘電リアクタンス,インピーダンス
第10章 原子の世界 物理学が描く世界とは?
基礎編
1 物質を構成する微粒子
2 原子の構造
3 原子核の分裂と融合
4 半減期
5 質量がもつエネルギー
6 素粒子の世界
クォーク
レプトン
反粒子と対消滅・対生成
7 自然界を支配する4つの力
8 宇宙の歴史と生命
9 現代の物理学
column
炭素を用いた年代測定
相対性理論
量子論
臨床編
1 放射線と放射能
2 放射線の単位と人体への影響
3 放射線の医療への応用
付録
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書籍情報
- ISBN:9784758102605
- ページ数:264頁
- 書籍発行日:2022年7月
- 電子版発売日:2022年7月22日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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