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- よくわかる高齢者術後回復支援ガイド~術後回復を支援するベストプラクティス
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序文
序文
筆者が,ERAS(イーラス,enhanced recovery after surgery)プロトコルと出会ったのは,2009年にウイーンで開催された欧州臨床栄養・代謝学会(ESPEN)総会でのことであった.2001年にERASSocietyを立ち上げたDr . FearonおよびDr . Ljungqvistによる講演を拝聴し,こんなにも周術期管理によって術後回復の質が影響を受けることに感銘を受けた.当時より,欧米の学会では,会場や懇親会において参加者の交流が盛んであったため,筆者は一大決心をしてDr . FearonおよびDr . LjungqvistにERASについて質問を試みた.思いのほか,フレンドリーに対応してくれて,Dr . Fearonに筆者が日本の麻酔科医であることを告げたら,背中(今で思うと上部胸椎)をポンポンと叩かれた.スキンシップかなと思いきや,よく話を伺うと結腸の手術でも硬膜外カテーテルは腰部ではなく上部胸椎に留置するんだというメッセージであった.麻酔科医以外には理解しがたい話であるが,結腸手術の鎮痛目的であれば通常は腰部から下部胸椎にカテーテルを留置する.しかし,ERASプロトコルでは鎮痛目的だけにとどまらず,手術侵襲に伴う有害反射を遮断することでタンパク異化を抑制し術後の栄養状態を維持するという教えであった.また,術前炭水化物負荷の大家であるDr . Ljungqvistは,筆者に日本でも術前絶飲食ガイドラインを作成すべきだという指示をいただいた.筆者は,日本でも来たる高齢化社会に向けてERASの導入は必要と考え,日本での普及を決意した瞬間であった.
帰国し,麻酔科学会にガイドラインの作成を嘆願した.市中病院の一麻酔科医による働きかけが,巨大な麻酔科学会をどれほど動かせるか不安であった.しかし,2つの大学病院麻酔科教授が筆者を後押ししてくれてガイドラインの作成が開始された.夢のような瞬間はつかの間で,その後すぐに単施設・多施設共同の臨床研究を開始し,論文をまとめ,と慌ただしい日々が流れた.そして,ついに2012年7月に,念願の「術前絶飲食ガイドライン」が日本麻酔科学会から公表されるに至った.これを契機に外科領域でもERASプロトコルが急速に普及し,多くの学会でERASプロトコルが取り上げられるようになった.多くの外科医の同調も心強かった.
超高齢化社会を迎えたわが国において,医療界においても様々な弊害が危惧されている.そのようななかで,すでに多くの施設でERASプロトコルが導入されていた事実はまぎれもなく吉報ではないであろうか.そして,このスキルをより多くの施設に普及させることで,日本中の周術期管理の質がさらに向上するものと確信している.本書は,わが国においてERASプロトコルを先導してきた医師,看護師,薬剤師,管理栄養士,理学療法士,社会福祉士達のスキルが結集されている.筆者は本書の編集を担当し,完成品を熟読した.読者の皆様も筆者と同じ感想をもつと予想する.これぞ,高齢者の術後回復を支援するベストプラクティスだ,と.多くの医療従事者に,本書を読んで術後早期のDREAMを達成するベストプラクティスを味わっていただきたい.
2022年9月
谷口英喜
目次
序文
執筆者一覧
第1章 高齢者の術後回復促進のために
A 高齢者における手術・周術期管理の現状と課題
B 高齢者に対する術後回復促進策の考え方
C 高齢者の術前評価指標
第2章 高齢者の周術期管理に必要な基礎知識
第3章 高齢者手術における術後を考えた留意点と実践
A 高齢消化器外科手術(消化管)
B 高齢消化器外科手術(消化管以外)
C 高齢呼吸器外科手術
D 高齢泌尿器科外科手術
E 高齢整形外科手術
F 高齢心臓血管内手術
第4章 並存疾患や問題を抱える高齢患者の手術へ向けた準備
A ADL低下,運動機能低下,聴力低下
B 認知機能障害・精神疾患
C サルコペニア・フレイル
D 肥満がある高齢の手術患者
E 抗凝固薬,抗血小板薬服用中(休薬,継続など)
第5章 各領域・職種における周術期の管理と支援
A 看護師
①術前の身体および社会背景に対する管理
②術中の身体管理
③術後の身体管理
B 薬剤師 高齢者の薬理
C 管理栄養士 周術期の栄養管理
D 歯科医師 周術期の口腔ケア
E 理学療法士 リハビリテーション
F 麻酔科医 術中麻酔管理
G ソーシャルワーカー 周術期患者への支援
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書籍情報
- ISBN:9784787880338
- ページ数:252頁
- 書籍発行日:2022年9月
- 電子版発売日:2022年9月30日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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