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- 精神科リハビリテーションの流儀~援助者必携 デイリーケアのエッセンス
商品情報
内容
多職種協働現場で働く精神保健医療福祉分野の医療者を対象に,現場で起こる様々なエピソードから紡ぎ出された医療現場のエッセンスを平易な文章で分かりやすく解説する.施設のマニュアルやガイドラインからはこぼれ落ちるが,どこの現場でも起こり得る,精神科デイリーケアの大事なエッセンス”が満載された本当に役に立つ一冊.
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序文
はじめに
副題となっている「デイリーケア」は,いわゆる精神科デイケアのことではありません.
「精神科デイリーケア」とは,
* * * * *
精神疾患によってさまざまな生きづらさを抱えた人たちが,比較的長い時間を共にするような場での,継続的かつ日常的なケアやサポート
* * * * *
を意味しています.
どうして,このような方々を対象に本を書こうと思ったのか.また,何を書かんとしているのかについて,かいつまんでお話したいと思います.
一般的に仕事というと,より大変な仕事に従事している人がエライということになっているみたいです.例えば,書類をコピーしてホチキスで留める仕事よりも企画を立案する仕事,自転車で書類を近所に配達する仕事よりも,大型トラックで遠方に重い建築材を運搬する仕事,などというように,大変な仕事のほうがエライ,またはスゴイってことになっている気がします.
他の基準として,より専門的な仕事に従事しているというのもあります.例えば,何でもそこそこおいしく作れる町の大衆食堂の料理人よりも,イタリア料理,それもイタリア南部の料理を専門としているようなイタリア料理店でコックをしているほうがエライ,みたいな感じです.
もちろん,中には「なんでもそこそこおいしく(しかも安く!)料理を作る町の大衆食堂の料理人のほうがエライんだぞ」と言ってくれる人もいるかもしれません.まあ,ここではあくまでも一般論として書いています.
これらを精神科領域に置き換えてみるとどうでしょうか? より大変で,より専門的な仕事に従事している専門家のほうがエライ,もしくはスゴイっていうことになるのでしょうか?
地域に暮らす方々のデイリーケアやサポートをする多職種協働現場にも,それ特有の大変さがあり,専門性があります.その分,やりがいや面白みもあります.それは皆さんが感じていらっしゃる通りだと思います.ですが,その手のことを語る書物は圧倒的に少ないのが現状です.運営マニュアル的なものはあっても,そこでの専門性や面白みについて書かれたものは(狭義の治療や援助に比べて)少ないといえます.
それはもしかすると,より大変で,より専門的な仕事に比べて,私たちの仕事が軽んじられているからというのではなく,「私たちの仕事はこうである」と文章化するのがむずかしいからではないかと思うのです.より包括的で,複雑にいろいろなことが絡みあった“できごと”を日常的に扱っているために,その量や質を表現したり,因果関係を説明したりするのがとてもむずかしいのだと思います.
この本では日々現場で起こるエピソードを取り上げて,私たちが日々何をやっているのか,何を大事にしようとしているのか,そして,“私たちの現場だからこそできること”について書いてみたいと思います.
この本を書いているのは精神科デイケアのスタッフなので,本書に出てくるエピソードは精神科デイケアでのことが中心になっています.けれど,内容としては精神科デイケアだけでなく,「デイケアのように,日々いろいろな人が集う場」というふうに読みかえていただくことで,他のさまざまな現場であっても共通したエッセンスを感じ取っていただけるかと思います.ときに「私たちの現場」,あるいは「現場」という表現が出てきますが,これはそのような意味合いで使っています.
精神科デイケアに限らず,地域活動支援センター,就労支援関係の諸機関,作業所や入所施設など,地域で暮らす精神障害をもつ人たちが集まる場でこそ強みが発揮できる-そのような手合いのものをざっくりまとめた表現として,「デイリーケア」とタイトルにつけてみました.
そして,そのような場所では,ことが起こった際の瞬間的,即効的ケアというよりは,まさに日常の,デイリーケアが力の見せどころなのです.
運営マニュアルやガイドラインからはこぼれ落ちるような,しかしどこの現場でも起こり得る“ささやかだけれども,大事なエッセンス”を感じ取っていただければ,と考えています.
目次
はじめに
プロローグ なぜかしっくりいかない
1 仕事をクビになる本当の理由
2 ソフトボールというスポーツ
3 焼肉屋とソフトボール
4 デイケアのような場の強み
I こころの病について
1 私たちが取り扱うべき障害
2 脈絡にまつわる障害
3 優先順位の障害
4 エネルギー配分のまずさ
5 まとめ
II 問題を軸としない関わり
1 いくつかのエピソード
2 問題を軸としない関わりとは
[コラム1]受け流す日常
III リフレームの作用
1 デイケアの女性グループでの出来事
2 呼応するリフレーム
3 まとめ
[コラム2]サヨナラは言えなかったけれど
IV 本当のニーズって?
1 本当のニーズを立ち現わせしめるために
2 ノリ・ツッコミ!?
3 対象者のニーズを大切にするということとは?
4 自己決定について
5 まとめ
Ⅴ ペンディングの効用
1 ペンディングのもつ意味
2 メンバーからの誘惑
3 まとめ
[コラム3]雨宿り
VI サブケアの役割
1 個別担当制の多様性と限界
2 サブケアとは
3 サブケアにまつわるエピソード
4 個別担当制があるからこそのサブケア
5 サブケアを輝かせるために
[コラム4]依存
VII 失敗する権利は誰にでもある!?
1 失敗する権利ってアリ?
2 失敗にだって権利はある!?
3 そんなこと言ったって…
4 映画館と臨床場面
5 勇み足もほどほどに
6 「失敗する権利」について考えるようになったワケ
7 失敗は誰のせい?
8 「失敗する権利」を保障するということ
9 失敗から学ぶ権利
10 失敗を活かす
11 まとめ
[コラム5]治療拒否
エピローグ 落ち着くべきところへ
おわりにーあとがきにかえてー
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書籍情報
- ISBN:9784830643798
- ページ数:160頁
- 書籍発行日:2012年5月
- 電子版発売日:2022年11月16日
- 判:A5変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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