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高齢者漢方医学 健康長寿を目指す漢方医学・中医学・薬膳

  • ページ数 : 172頁
  • 書籍発行日 : 2013年9月
  • 電子版発売日 : 2025年1月29日
¥5,280(税込)
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商品情報

内容

本書では、「すこやかに老いる」ための知恵を漢方医学から学ぶために企画されました。
健康に老いるとはなにか、漢方理論の基礎知識、加齢に伴う症状と漢方治療、
代表的な漢方薬、生薬、食養生に必要な薬膳まで、内容は多岐にわたります。
高齢者の健康寿命を伸ばすための知恵がぎっしり詰まった待望の復刻版。

(本書は2013年、医学と看護社より出版された書籍を電子版として復刻したものです)

序文

はじめに

私は地方の病院で慢性維持透析患者さんを中心に診療を行っている臨床医です。腎臓病、高血圧症、糖尿病を中心とした内科を専門としているので、どうしても高齢者を診療する機会が多くなります。2011年末の日本透析医学会の統計調査委員会報告によると、我が国の維持透析患者数は30万人を超えています。これは医療技術の進歩と人口の高齢化が進んでいることを示唆するものでもあります。腎機能の低下は老化と深く関わりがあるため、高齢者が腎不全になることは避けられません。しかし、現在の日本の医療制度では透析導入年齢の制限がないため、高齢でも末期腎不全の患者さんに対しては維持透析の導入を行っているのが現状です。透析導入となる高齢者に多く接してきて私が感じることは、高齢者というのは年齢が同じであっても非常に個人差が大きいということです。九十代なのにかなり活動的で見た目も若々しい人もいらっしゃれば、六十代なのに既にお爺さん、お婆さん然としている人もいらっしゃいます。この差は何なのか? 長年にわたり疑問に思ってきました。

老化の予防対策の一環として、世間で一時期話題になったメタボ(メタボリックシンドローム)検診、メタボ撲滅運動に関しても、糖尿病・内分泌代謝内科や循環器内科を専門にする医師が主導で進めてきたものですが、後年発表された統計結果などを見ると、やや肥満傾向の人のほうが、痩せ型の人よりも約6 ~ 8年も長寿であることが明らかにされています。これは、やや太目体型の人のほうが鬱病に罹患しにくいことや、免疫機能が高いことも一因とされています。また、検査値などが基準値より高いというだけで「要治療」判定されて、医師による薬物治療を受けている人が多いのが現状です。東洋医学の「未病」という状態、つまり(病気か病気でないかという)グレーゾーンの人を探し出して薬物治療を行っているケースが実際には多いと思われます。このような人は本来、運動や食生活の改善により健康状態が改善可能です。

著者自身、普段の臨床現場では人間ドック・検診の外来なども担当していますし、その効果のすべてを否定するつもりはありません。しかし、現在の多くの医師が推奨している、「過剰なまでの予防医学的で節制的な健康対策指導」は、逆に(老化を)早めてしまう可能性もあるのではないかとさえ考えるようになってきました。既にそれを裏付けるような文献も発表されています。本来、メタボ検診などの健康診断は、検診を受ける人が自分の健康状態を把握することを目的にするべきものでしょう。

なぜこのようなことになったのでしょうか? 日本を始めとする先進国の医療の進歩に伴い、専門細分化が進み、人間全体の健康や老化を考える余裕がなくなったことも一因として挙げられるでしょう。 事実、大学病院のみならず、地方の基幹病院などでは、例えば「内科」という科はなくなり、「循環器内科」、「糖尿病内科」、「腎臓内科」、「膠原病内科」などと細分化され、さらに消化器内科の中でも「大腸肛門外来」、「肝臓外来」などと臓器別に区分されているのが現状です。

人間は科学の力で自然を克服しつつ、自分達が快適に生活できる環境の実現のために努力してきました。科学的に説明できないものは、非科学的なものとして切り捨てられてきました。合理化を求めるあまり、無駄なことや面倒なことは可能な限りカットされてきました。その結果、現代社会は便利で快適な生活を実現しています。西洋医学も科学であり、正確さや普遍性が求められてきました。その対象が病気に罹患した「臓器」でした。人間という個別的な生きものから切り離された、病んだ臓器を治療することに集中してきたのです。臓器一つにしても実際は一人一人異なるのに、その中から共通する部分(普遍的な部分)だけを取り出して扱っています。ところが、実際に普段診察室目の前にいるのは病気やその合併症に悩む一人の人間です。読者のあなたと筆者は別の人間であり、別の人生を歩んでおり、肉体も異なります。本来の医学の目的とは、個人の生命と健康を維持することにありますが、現代の西洋医学的な手段においては(とりあえず)個性を無視し、普遍的な存在として人間を見ているように思われます。

このように臓器別診療の現場では、「木を見て、森を見ず」と表現されるように、人間全体を診療する余裕がなくなっており(=全人的ではない)、とても人間全体の「老化予防」や「健康法」がどのようなものか分からなくなっているのではないでしょうか? 自然界には科学的論理で説明できないことがたくさんあります。科学的に正しいとされていることだけを信じていたのでは、重要なことを見失ってしまったり、大きな落とし穴に陥る危険性があるかもしれません。論理武装するだけで実は自己正当化を繰り返しているだけかもしれません。折角のチャンスを逃している可能性だってあります。論理・分析的なモノの見方も大事ですが、全体のバランスを重視するモノの見方も必要だと思います。筆者はこれからの医療には、人体を有機的(全体的に)に考えることや、精神と肉体の関連を重視する(漢方医学的には心身一如という)考え方が求められてくるのではないかと予測しています。

中医学・漢方医学の考えとは「全人的」医療で自己治癒力を高めること

例えば、悪性腫瘍などでは、一度発症してしまうと、治療に大きなエネルギーを必要とするようになります。したがって、西洋医学のように「発病するまで待って、発病したら対処する」というような考えはあまり得策ではありません。これに対し、中医学・漢方医学では「未病」の段階で「微細な異常を的確にキャッチし、生体の自己治癒力・免疫力を高めて早期に対処する」ことが大切だと考えます。このように病気がくるのを「待っている」西洋医学では、重篤な疾患への対策としては悠長だといわざるを得ません。一方、「事前」に対処する中医学・漢方の考えは「攻め」の医療ということもできるのではないでしょうか?中医学・漢方医学の考えでは自己治癒力を高めることで、「病気」やその一歩手前の「未病」を治そうというもので、非常に理にかなった考えだと思われます。生物にとって「加齢」は避けられないものです。しかし、生きている限り、健康で(特に女性であれば美しく)、最期まで人様に迷惑をかけずに老いる方法を探していきたいものです。これが「ヘルシーエイジング(健康に老いる)」の思想です。

似たような表現として、巷でもよく知られている「アンチエイジング」があります。アンチエイジングは西洋の思想に基づくもので、歳をとることや、死ぬことに対してアンチ「抗」であり、「自然や宇宙と戦い征服する」といったことにも繋がる思想といえるでしょう。それに対し、ヘルシーエイジングの思想では、歳をとることもあれば、死ぬこともあり、あるがままを受け容れる、自然と共存・共生する安らかな世界観を理想としています。その他、最近では「ワンダフル・エイジング」、「サクセスフル・エイジング」、「ウェルエイジング」等という言葉も使われているようですが、その意味するところは、元気で健康に老年期を過ごそうということです。

歳をとるまで「待つ」のではなく、できるだけ早い時期(未病の段階)から「事前」に対策を打ち、疾病化するのを防ぎ、常に「中庸」の状態を維持していくという健康管理・養生が中医・漢方的な「老化」に対する治療です。漢方的な考え方に則ると、「ヘルシーエイジング」とは「健康に老いること」つまり病気ではありません。近年、我が国だけでなく世界の多くの国で漢方薬の新たな効果・適応疾患が注目されるようになっています。例えば、癌治療における抗癌剤・放射線治療の副作用軽減、癌の転移抑制、高齢者のQuality of life(QOL)の改善、免疫機能改善など枚挙に暇がありません。しかし本来、漢方など東洋医学の目指すところは不老不死や若返りを目指す医学ではありません。むしろ、「中庸」を維持しつつ、健やかに自然に老いて良い死を迎えることなのです。中医学・漢方医学では、「健全な老化は病気ではない」と考えています。超高齢化社会を迎えた現在、ただ長生きをするだけでなく、このように「ヘルシーエイジング」を目指した生活習慣・医療の実践のニーズが、今後ますます高まっていくものと思われます。それではヘルシーエイジングに役立つ中医学・漢方治療として、実際にどのようなものがあるのか、本書で紹介していきましょう。


平成25年初夏夕暮れの瀬戸内海を眼下に眺めつつ

和田 健太朗

目次

1章  現代の老化・加齢を取り巻く環境~東洋医学的観点から最先端の加齢医学研究までを含めて

1. 健康的に老いるためには? 

 1)老化を自然なものとして受け容れること 

 2)生体の持つ自然回復力に期待すること 

 3)「自分の体の声」をよく聞くこと 

 4)規則正しい生活を心がけること 

 5)食生活を大切にすること 

 6)よく働きご機嫌でいること 

2. 中医学と漢方医学 

3. アンドルー・ワイル博士の「ヘルシーエイジング」に対するメッセージ 

4. カロリー制限はなぜ加齢対策に重要なのか? 

5. サーチュイン遺伝子を活性化させるレスベラトロール(Resveratrol) 

 1)レスベラトロールが注目される理由 

  (1) サーチュイン遺伝子のもつその他のユニークなはたらき 

  (2) カロリー制限が長寿に繋がる(サーチュイン遺伝子以外の)メカニズムは存在するのか? 

 2)寿命を延ばす漢方薬はあるのか? 

  (1) なぜ肉食動物はおなかいっぱいになるまで食べないのか? 

  (2) 老化(エイジング)とは何か? 

  (3) 老化と腎臓 

  (4) ヘルシーエイジングは何歳から始めるのがいいのか? 

  (5) 未病と健康観 

  (6) 人間の体は使わないと衰える 

  (7) スポーツをすれば健康になれるとは「限らない」。日常生活の中でこまめに体を動かしているだけでも十分である 

  (8) ロコモティブ・シンドローム(Locomotive Syndrome)予防のために無理のない範囲の運動をしよう 

  (9) 多病息災でもあきらめない 

  (10) 心の老化・感情の老化に気をつけよう─精神の充実は平静な心から 

  (11) ヘルシーエイジングとは「普通」の状態でいつづけること 

  (12) 東日本大震災からヘルシーエイジングを考える 

2章 ヘルシーエイジングと中医学・漢方治療(総論)

1. 長寿科学が期待する東洋医学の未来予測とは? 

2. 東洋医学におけるヘルシーエイジングの思想とその歴史的背景とは? 

3. 漢方薬・生薬による「補腎」作用とヘルシーエイジング 

3章 漢方医学の理論の基礎知識

1. 漢方医学の理論について 

 1)証 

 2)陰陽 

 3)六病位(太陽病、少陽病、陽明病、太陰病、少陰病、厥陰病) 

 4)虚実 

 5)表裏 

 6)寒熱 

 7)気血水 

  (1) 気の異常 

  (2) 血の異常 

  (3) 水(津液)の異常 

 8)四診 

  (1) 望診 

  (2) 聞診 

  (3) 問診 

  (4) 切診 

 9)五行・五臓 

 10)五味・五季・五色 

4章 漢方治療で必要な注意事項

1. 漢方とエビデンス(EBM:Evidence-based Medicine)~漢方は西洋的なエビデンスに馴染まない?・漢方は本当に効くの? 

 1)漢方になじまない西洋的エビデンス 

 2)漢方の副作用を知る 

  (1) 西洋薬と漢方薬の相互作用 

  (2) 一般的な漢方薬内服方法の注意 

  (3) 漢方薬内服時の補助ツールについて 

  (4) 妊婦に対する漢方療法 

5章 ヘルシーエイジングと中医学・漢方治療(各論)

1. 加齢に伴う疾患(老年期症候群)と漢方治療 

 1)「先天の気の減少を抑える」処方(腎の強化を目的に) 

 2)「後天の気の回復」を目的とした処方 

 3)血液循環を改善させる処方(駆瘀血剤) 

 4)嚥下障害を改善させる処方 

 5)更年期障害に伴う症状を改善させる処方 

  (1) 男性更年期から老年期の場合:腎・脾を補う 

  (2) 女性更年期から老年期の場合:腎・肝を補う 

 6)高齢者の全身症状に対する漢方処方 

 7)認知症とその周辺症状に対する処方 

 8)動脈硬化・脂質異常症・高血圧症に対する処方 

 9)「未病」に対する処方 

 10)「最期」まで自分らしく、元気でいるための処方 

 11)白髪・抜け毛の改善のための処方 

 12)肥満改善のための処方 

2. 高齢化社会において漢方治療は医療経済的にも期待されている 

6章 代表的な漢方薬(保険診療で使用可能なもの)とその構成成分

8章 漢方独自の用語解説

9章 薬膳について

1. 季節にあった食養生 

 1)春の養生とは? 

 2)夏の養生とは? 

 3)秋の養生とは? 

 4)冬の養生とは? 

2. 薬膳に用いられる主な食材とその解説(五十音別列記) 

10章 中医学・漢方医学・薬膳によるヘルシーエイジングの目的(総括)

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書籍情報

  • ISBN:9784880021362
  • ページ数:172頁
  • 書籍発行日:2013年9月
  • 電子版発売日:2025年1月29日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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