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- ここが知りたい 利尿薬の選び方、使い方
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内容
生理学などについても触れ,初学者にもわかりやすいよう実際の症例も交えて実践的に解説しています。
人間は,水分をたくさん取るべきというエビデンスのない通説に惑わされず,ぜひ,利尿薬の達人をめざしてください。
電子版なら文中の文献からPubmedへのリンクも貼られているので調べる手間も省けます。
序文
序
皆さんは,今この本を手にされているということですから,循環器病学に少なからず興味を持っている方だと思います.皆さん方のなかで「なぜ心不全の患者さんに利尿薬を投与しなくてはいけないのか」という問いに正確に答えられる方は,実は本書を読む必要がありません.勿論,心不全から腎前性もしくは腎うっ血性腎不全が生じれば乏尿・無尿になり,体液貯留が生じますが,通常の心不全では,明らかな乏尿になっているという認識は,循環器病にたずさわる臨床家は持っていません.「尿は普通に出るのになぜ利尿薬が心不全治療薬になり得るのか」という心不全治療の根源的な問いに対して答えるのが本書なのです.
心不全は歴史をさかのぼれば古代エジプト,ギリシャ時代にすでにその記述を見ることができます.しかしながら「心不全治療の近代化」は,20世紀に入り利尿薬の開発が始まってからであると考えられています.1933年にはThomas Lewisが"心不全とは心臓がその内容物を十分に拍出できない状態"と述べ,1950年にはPaul Woodが"心臓が十分な充満圧を有しながら身体の要求に足るだけの循環状態を維持することができない状態"と記載しています.つまり,心不全症状の本質は水分貯留とそれに伴う心過負荷と浮腫であるとされ,利尿薬による循環血漿量および間質浮腫の軽減を目的とした治療が心不全治療の第一選択となっていたのです.その後,心不全の治療は,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系と交感神経系抑制による心筋保護に向かい,最近はサイトカイン系阻害,再生医療とその舵を大きく切りつつあります.でも,その成果は実は十分ではなく,すべての患者さんに十分効果があるといえないのです.
心不全の治療戦略には,大きく分けて症状の改善と予後の改善の2つの軸があります.前者は利尿薬や血管拡張薬が,後者はRAA系・交感神経系抑制薬がよく知られています.ACE阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬,β遮断薬の使い方については多くの成書があり人口に膾炙しているのに,利尿薬の功罪については,当たり前すぎると思われているためでしょうか,だれもきっちり教えてくれません.その問いに答えるのが本書です.心不全でどのように利尿薬を使えばいいのか,腎機能との兼ね合いはどうすればいいのか,私を含めて循環器医師が知らなければいけない知識が本書には必要十分に詰まっています.人間は,水分をたくさん取るべきというエビデンスのない通説に惑わされず,ぜひ,利尿薬の達人をめざしてください.
2014年8月
北風 政史
目次
第1章 浮腫ってなに?
A.浮腫のメカニズム
1.浮腫の病態生理
2.血管内と間質の体液移動
3.浮腫の形成
4.毛細血管内静水圧
5.低アルブミン血症
6.毛細血管壁の透過性亢進
7.リンパ管閉塞
8.粘液水腫
9.浮腫抑制機序
10.Na貯留
B.なぜ浮腫がいけないのか?
1.腹腔内循環
2.腹腔内リンパ流
3.腹腔内圧と心腎連関
4.心肝連関と肝腎連関
5.心不全患者の脾臓
6.腸管腎関連
7.腹腔内圧を標的とした心不全治療
C.なぜ浮腫が起こるか―腎臓の関与
1.神経体液性因子の変化
2.Na+/K+ATPaseと上皮型Naチャネル
D.なぜ浮腫が起こるか―心臓の関与
1.浮腫が発生するメカニズム
2.心不全で浮腫が発生するメカニズム
3.心不全における体液貯留
4.心不全で浮腫軽減に作用するメカニズム
E.なぜ浮腫が起こるか―肝臓の関与
1.肝硬変における浮腫の発現機序
2.肝硬変の腹水発現に関する仮説
3.主なNa貯留因子と水貯留因子の動態
F.なぜ浮腫が起こるか―末梢血管・リンパ管の関与
1.浮腫の病態生理
2.浮腫をきたす疾患と病態
3.浮腫と末梢循環系
4.静脈循環:静脈弁と筋ポンプ
5.深部静脈血栓症による浮腫
6.リンパ系由来の浮腫
第2章 浮腫をとる利尿薬を知る
A.フロセミド
持続投与vsボーラス投与,高用量投与vs低用量投与
B.トラセミド
Oral bioavailabilityからみたループ利尿薬の選択
抗アルドステロン作用からみたトラセミドの可能性
C.アゾセミド
長時間作用型ループ利尿薬vs短時間作用型ループ利尿薬
RAS抑制薬,β遮断薬非投与例では長時間作用型ループ利尿薬を考慮
付)利尿薬抵抗性とその対処方法
D.トリクロルメチアジド
サイアザイド系利尿薬vs Ca拮抗薬
付)サイアザイド系類似利尿薬
E.ヒドロクロロチアジド
配合剤(ARB/利尿薬)の付加価値―LIFEを通じて
F.アルドステロン拮抗薬
1.スピロノラクトン
2.エプレレノン
3.代表的臨床試験からのエビデンス
G.hANP
1.カルペリチド
2.ハンプの市販後調査結果
3.急性心不全治療におけるハンプの位置づけ
4.急性心不全に対するハンプ治療のエビデンス
H.トルバプタン
1.トルバプタン
2.トルバプタンの作用機序
3.代表的臨床試験からのエビデンス
第3章 腎臓の生理学を知る
A.腎臓の生理学
1.Na摂取と排泄
2.Na摂取と血圧
3.水摂取と水利尿
B.糸球体の生理学
1.GFRの決定因子
2.GFRの自動調節機構
3.尿細管糸球体フィードバック機構
4.GFRに対する糸球体細動脈の影響
C.尿細管の生理学
1.尿細管における利尿薬の作用
2.ループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬
3.K保持性利尿薬
4.代償性抗利尿効果
D.水再吸収の生理学
1.濃縮尿の排泄と抗利尿ホルモン
2.希釈尿の排泄
3.心不全とADH
4.利尿薬とADH
E.全身の中で腎臓の役割をどう考えるか?
1.利尿薬の用量反応曲線
2.腎臓におけるCaの調整
3.正常血圧虚血性急性腎障害
第4章 腎不全を知る
A.腎不全の病理学
1.原因
2.病態生理
3.病理像
B.CKDの病態生理学,診断,治療
1.慢性腎臓病の概念
2.CKD患者の生活習慣の適正化目標
C.腎不全の病態生理学,診断,治療
1.急性腎不全の病態生理
2.急性腎不全の症状・診断
3.急性腎不全の治療
4.慢性腎不全の病態生理
5.慢性腎不全の症状・診断
6.慢性腎不全の治療
D.腎不全と浮腫
1.はじめに:浮腫のメカニズム
2.腎疾患における浮腫
3.慢性腎不全
4.急性腎不全
E.腎不全でどのような利尿薬を使うべきか?
1.利尿薬の種類と作用機序
2.個々の利尿薬の使用法と使用上の注意点
第5章 急性心不全における利尿薬の使い方
A.急性心不全における利尿薬の使い方の原則
1.1st lineの初期治療薬としてのループ利尿薬の静脈内投与
2.ループ利尿薬の投与方法
3.うっ血の改善薬としてのループ利尿薬の有用性と限界性
4.利尿薬抵抗性の予測
5.ループ利尿薬抵抗性の対応
B.HFrEFによる急性心不全と利尿薬
C.HFpEFによる急性心不全と利尿薬
D.電撃性心不全と利尿薬
E.急性心筋梗塞における利尿薬の使い方
1.急性心筋梗塞に伴う肺うっ血の重症度評価
2.急性心筋梗塞に伴う肺うっ血の対応
3.急性心筋梗塞におけるカルペリチドの有用性
4.急性心筋梗塞におけるアルドステロンブロッカーの有用性
5.急性心筋梗塞におけるトルバプタンの有用性
F.Nohria―Stevensonの分類と利尿薬の使い方
1.心不全の臨床病型分類
2.Wet症例における利尿薬の使い方
3.Lukewarm症例での利尿薬の使い方
4.Cold症例での利尿薬の使い方
5.Nohria―Stevenson分類と腎うっ血の関係
6.トルバプタン(サムスカ®)登場後の利尿薬治療の変化
G.利尿薬により利尿が得られないときどうするか?
1.利尿薬抵抗性とは?
2.対処1.投与方法の変更
3.対処2.ループ利尿薬の種類を変更
4.対処3.サイアザイド系利尿薬の併用
5.対処4.抗アルドステロン薬の追加
6.対処5.カルペリチドの使用
7.対処6.強心薬の使用
8.対処7.バソプレシンV2受容体拮抗薬の使用
9.対処8.高張食塩水
10.対処9.CHDF/ECUM
H.腎保護を考えた急性心不全治療
1.心腎症候群
2.長期予後に対する効果が確立している心不全治療薬
3.WRF出現の予測因子
4.急性期に使用される薬剤と腎機能
第6章 慢性心不全における利尿薬の使い方
A.心筋梗塞後の心不全と利尿薬
1.心不全治療
2.左室リモデリングの抑止
3.心筋梗塞の二次予防
B.高血圧性心不全における利尿薬の使い方
1.収縮不全
2.拡張不全
3.高血圧性心不全における利尿薬処方の実際
C.肥大型心筋症(拡張相を含む)における利尿薬の使い方
1.心筋症の概念の変遷
2.肥大型心筋症(HCM)の特徴
3.HCMにおける心不全
4.HCMにおける心不全治療
D.拡張型心筋症による心不全と利尿薬
1.拡張型心筋症の病態および利尿薬の適応
2.実際の使用方法
E.大動脈弁疾患による心不全と利尿薬
1.大動脈弁狭窄症の病態および利尿薬の適応
2.大動脈弁閉鎖不全症の病態および利尿薬の適応
3.実際の使用方法
F.僧帽弁疾患による心不全と利尿薬
1.僧帽弁狭窄症の病態および利尿薬の適応
2.僧帽弁閉鎖不全症の病態および利尿薬の適応
3.実際の使用方法
G.三尖弁疾患による心不全と利尿薬
1.三尖弁狭窄症の病態および利尿薬の適応
2.三尖弁閉鎖不全症の病態および利尿薬の適応
3.実際の使用方法
H.頻脈性および徐脈性心不全における利尿薬の使い方
1.頻脈性心不全の病態および利尿薬の適応
2.徐脈性心不全の病態および利尿薬の適応
3.実際の使用方法
I.心臓が悪いとなぜ腎臓が悪くなるのか?
1.心腎症候群
2.心不全に伴う腎機能障害の頻度
3.心不全に伴う腎機能障害
4.心不全治療に伴う腎機能障害
J.利尿薬により十分な利尿が得られない場合はどうするか?
1.心腎連関(cardiorenal syndrome:CRS)
2.心腎連関をきたす臨床病態とその治療のポイント
3.利尿薬抵抗性(loop diuretic resistance:LDR)とは?
4.利尿薬抵抗性の病態と利尿薬の選択
5.Braking phenomenon
6.利尿薬抵抗性の治療
K.腎保護を考えた慢性心不全治療はどうすればよいのか?
1.腎機能障害は慢性心不全の予後規定因子である
2.長期間のループ利尿薬の使用による予後への影響
3.慢性心不全における利尿薬の意義
第7章 高血圧における利尿薬の使い方
A.降圧利尿薬の効果
1.利尿薬の降圧効果のエビデンス
2.利尿薬のデメリット
3.利尿薬の選択
B.降圧利尿薬はNa排泄効果が大事?
利尿薬の種類
C.脳血管障害における降圧利尿薬の意味
1.脳血流自動調節能について
2.脳血管障害と降圧利尿薬の表的な大規模研究の概要
3.脳血管障害の病型と降圧目標値
4.各病型の降圧目標値
D.食塩感受性高血圧と利尿薬
1.食塩感受性高血圧の発症機序
2.食塩感受性が高い病態
3.食塩感受性高血圧の特徴
4.食塩摂取量の評価
5.治療の実際
6.利尿薬の特徴,副作用
E.Non―dipper,早朝高血圧と降圧利尿薬
1.血圧日内変動異常と心血管リスク
2.血圧モーニングサージ
3.Non―dipper型高血圧と利尿薬
4.RAA系抑制薬との併用
第8章 肝性浮腫における利尿薬の使い方
A.利尿薬の意義
1.抗アルドステロン薬とル−プ利尿薬
2.新しい利尿薬V2受容体拮抗薬
3.利尿薬の限界とアルブミン静注<
B.肝性浮腫はどうすればいいのか?
1.診断
2.治療
第9章 利尿薬の将来像
利尿薬の将来像
1.慢性心不全に対するループ利尿薬
2.急性心不全に対するループ利尿薬
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書籍情報
- ISBN:9784498117020
- ページ数:328頁
- 書籍発行日:2014年9月
- 電子版発売日:2015年4月24日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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