リンパ系腫瘍診療ハンドブック

  • ページ数 : 352頁
  • 書籍発行日 : 2014年10月
  • 電子版発売日 : 2015年2月27日
8,800
(税込)
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商品情報

内容

化学療法で、もう悩まない。

リンパ性白血病・リンパ腫・骨髄腫各疾患の分類、診断、治療の実際といった各論、抗癌剤投与開始時の注意点、特殊な薬剤の使用法、抗癌剤の毒性とその対策などについて最新の知見・膨大なエビデンスを基に解説された一冊。
臨床現場での悩みが一挙に解決され、一度使ったら、もう手放せません。

序文

Evidenced-based medicine(EBM)という言葉が日本でも騒がれるようになって,もう20年が経過しようとしている.しかし現在の医療現場では,McMasterで生まれたこのEBMという手法の本来持つ意味から,かなり逸脱した姿になってしまったのではないだろうか? よく目にする「EBMによる~」という枕詞は,エビデンスレベルの高さ,その検索をもってあたかもEBMだと示しているかのようである.治療介入研究において,高いエビデンスレベルが得られる研究とは,頻度の高い画一的な疾患に対して,比較的画一的な治療が適応できる場合に限られる.EBMの意義は,"あやふやな"経験や直感に頼らず,科学的な根拠を基に,目の前の患者さんに最適の医療を提供することである.そこで最も重要なEBM実践段階は,吟味されたエビデンスを目の前の患者さんに,実際どのように適応するのか,その際主治医に求められる様々なdecision makingの能力が試される機会といえるのではないだろうか.そこに関わる因子の重要性を,種々のガイドラインは残念ながら何も教えてくれていない.Clinical state & circumstances,patient preferences & actionsそしてresearch evidenceの3要素を考慮して最終的に治療を決定する.その要素の中には当然clinical expertiseが含まれるはずである.

現在の医療のガイドライン偏重主義は,井の中の蛙医師を排除し,治療の画一化,平均化を促すという点に貢献していると思われるが,逆に怪しいEBM宗教家を増殖させ,主治医が考え苦悩する努力を削ぎ,最終的に医師のdecision makingの能力レベルを下げてしまっているのではないかと危惧している.本書は,その悩める諸氏に,限られた時間の中で,先人たちの苦労した経験を紹介することを目的とする.リンパ系腫瘍の正確で適切な診断,各病型に関わる数々のエビデンス(レベルを問わず),目の前の患者さんを総合的に理解する能力をもって,最適な医療を提供したい.「私であればリンパ系腫瘍の診療でこのようなdecision makingをしていく!!」の一助になれば本望である.本書をみていただいた諸氏からの大いなるご批判を頂きたい.


2014年9月

磯部 泰司
佐々木 純
塚田 信弘

目次

●化学療法剤一覧表

●研究グループ・学会・施設名略称表

●生存期間に関する略称表

【1】 抗癌剤を用いる化学療法を施行するにあたって

I.一般的な注意点 

1.患者情報の確認

2.インフォームドコンセント(informed consent:IC)

3.姙孕性の維持について

4.セカンドオピニオン

II.造血器腫瘍におけるがん救急

1.Oncologic emergencyとは?

2.播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC)

3.上大静脈症候群(superior vena cava syndrome:SVC syndrome)

4.脊髄硬膜外圧迫(epidural spinal cord compression:ESCC)

5.高カルシウム血症

III.特殊な状態の患者への抗癌剤投与について 

1.併存疾患の評価

2.肝機能障害を持つ患者への抗癌剤投与

3.腎機能障害を持つ患者への抗癌剤投与

4.妊娠可能な女性患者およびそのパートナーへの抗癌剤投与について

5.妊娠中の女性患者への抗癌剤投与

【2】 抗癌剤投与開始時の注意点

I.抗癌剤の投与を開始するにあたって 

1.一般的注意事項

2.中心静脈の確保

II.アナフィラキシー,アナフィラキシー様症状への対策 

1.アレルギー反応,infusion reactionを起こしやすい薬剤とその特徴

2.アレルギー反応に対する対応

3.アレルギー反応予防策

III.Extravasation対策 

1.Extravasationの現状

2.抗癌剤漏出による皮膚・組織障害

3.抗癌剤の漏出予防

4.抗癌剤漏出時に用いる薬剤について

5.局所冷却と保温について

6.外科的処置について

7.抗癌剤漏出時の対応 2

IV.腫瘍崩壊症候群に対する対策

1.TLSとは?

2.TLSの予防

3.CTLSの治療

【3】 急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫 

I.急性リンパ性白血病の分類と診断

1.WHO分類

2.診断時検査と評価項目

3.チェックリスト

4.予後因子

II.治療のすすめ方

1.各国の臨床研究グループの動向

2.Precursor B-ALL/LBLに対する治療

3.Immature(naïve)/mature B-ALLに対する治療

4-1.Ph陽性症例

4-2.TKIについて

5.T-ALL/LBLに対する治療

6.若年のALLに対する治療

7.CNS病変

8.高齢者

9.再発例

10.治療効果判定基準

III.治療レジメンと施行上の注意点

1.MRC UKALL XII/ECOG E2993

2.JALSG ALL202-U

3.JALSG Ph+ALL202

4.Hyper-CVAD/MA

【4】 慢性リンパ性白血病とindolent B-cell leukemia 

I.慢性リンパ性白血病とindolent B-cell leukemiaの診断

1.CLLの診断

2.ヘアリー細胞白血病とそのバリアント型の診断

3.脾臓辺縁帯リンパ腫とその他の脾臓リンパ腫の診断

4.リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)

II.CLLの評価・治療

1.臨床病期分類

2.予後因子

3.治療指針

4.効果判定

III.SMZL,HCLv,SDRLの評価・治療

1.治療開始までに明らかにしておくべき項目

2.予後因子

3.治療指針

4.治療効果判定

IV.HCLの評価・治療

1.HCLの治療開始基準

2.治療開始までに明らかにしておくべき項目

3.治療指針

V.WM・LPLの評価・治療

1.WMと関連疾患の分類

2.WMにおける症候と特殊な病態

3.WMの予後因子

4.WMの治療指針

5.治療効果判定

VI.治療レジメンと施行上の注意点

1.Flu単独,FR療法

2.2-CdA単独療法-1

3.2-CdA単独療法-2

4.Pentostain単独療法

5.IFN-α療法

6.Rituximab単独療法

7.Ofatumumab単独療法

8.FC,FCR療法

9.DRC療法

【5】 成人T細胞白血病とその他のT/NKリンパ増殖性疾患 

I.成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)

1.ATLLの診断

2.ATLLの予後因子

3.ATLLの治療

4.ATLLの治療効果判定

II.T細胞性前リンパ球性白血病(T-PLL)

1.T-PLLの診断

2.T-PLLの治療

III.顆粒リンパ球増多症(GLPD)

1.GLPDの診断

2.GLPDの病態と治療

IV.Chronic active EBV diseaseとEBV-associated hemophagocytic syndrome(EBVAHS)

1.CAEBV

2.EBVAHS

V.治療レジメンと施行上の注意点

1.VCAP-AMP-VECP療法

2.Mogamulizumab療法

3.FMC療法

4.Pentostatin(2'-deoxycoformycin:DCF)+alemtuzumab療法(本邦未承認)

5.MILD療法

6.HLH 2004プロトコール

【6】 Hodgkinリンパ腫 

I.Hodgkinリンパ腫の分類と診断

1.Classical Hodgkin lymphoma(CHL)

2.Nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphoma(NLPHL)

II.HLの臨床病期分類

1.リンパ節領域とリンパ外病変(E病変)

2.Ann Arbor Cotswolds分類

III.予後因子

1.早期(early stage)

2.進行期(advanced stage)

3.治療開始までに評価しておくべき項目(チェックリスト)

IV.HLの治療

1.CHLの治療

2.NLPHLの治療

3.再発・難治性HL疾患の治療

V.治療レジメンと施行上の注意点

1.ABVD療法

2.EBVD療法

3.Dose-escalated BEACOPP療法

4.C-MOPP療法

5.救援療法

VI.治療効果判定

【7】 非Hodgkinリンパ腫 

I.非Hodgkinリンパ腫の分類

II.NHLの診断

1.病型診断

2.臨床病期診断

III.NHLの臨床病期分類

1.Ann Arbor Cotswolds分類

2.消化管リンパ腫の病期分類(Lugano分類)

3.St. Jude分類

4.原発性皮膚リンパ腫のTNMB分類

IV.International Prognostic Index(IPI)

V.治療の総合効果判定

1.治療の総合効果判定に必要な情報

2.総合効果判定の実際

3.FDG-PETの判定について

4.治療開始までにしておくべき項目(チェックリスト)

VI.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)

1.DLBCLとは

2.DLBCLの予後因子

3.DLBCL-NOSの治療

4.原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMLBCL)

5.中枢神経原発DLBCL(primary DLBCL of the CNS)

6.精巣・乳腺原発のDLBCL

7.血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL)

8.消化管のDLBCL

9.免疫不全に伴うDLBCL

VII.濾胞性リンパ腫(FL)

1.FLとは

2.FLの予後因子

3.FLの治療

VIII.マントル細胞リンパ腫(MCL)

1.MCLの診断

2.MCLの予後因子

3.MCLの治療

IX.粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫と節性辺縁帯リンパ腫(nodal marginal zone lymphoma)

1.辺縁帯リンパ腫とは

2.MALTリンパ腫の診断

3.胃MALTリンパ腫に対するHP除菌療法と組織学的治療評価判定基準

4.胃以外のMALTリンパ腫の治療

5.NMZLの治療

X.Burkittリンパ腫(BL)

1.BLの診断

2.BLの治療

XI.末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)

1.PTCLの問題点

2.血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)

3.未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)

4.腸管関連T細胞リンパ腫(EATL)

5.肝脾T細胞リンパ腫(HSTCL)

6.菌状息肉症とSézary症候群(SS)

7.稀な皮膚T細胞性リンパ腫

8.末梢性T細胞リンパ腫・非特定型(PTCL-NOS)

XII.NK細胞リンパ腫・白血病

1.NK細胞リンパ腫・白血病の問題点

2.節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型(ENKL)

3.Aggressive NK-cell leukemia(ANKL)

XIII.治療レジメンと施行上の注意点

1.CHOP21/CHOP14

2.DXRを代替したCHOP-likeレジメン

3.CVP療法

4.MACOP-B療法

5.Dose-adjusted EPOCH療法

6.大量MTX療法(HD-MTX)

7.Hyper-CVAD/MTX+Ara-C療法

8.Modified CODOX-M/IVAC療法

9.FM療法

10.FCM療法

11.R-Benda療法

12.R-BAC療法

13.DHAP療法

14.GDP療法

15.ICE療法

16.ESHAP療法

17.PEGS療法

18.IVE療法

19.RT-DeVIC療法

20.SMILE療法

21.Rituximab療法

22.Ibritumomab tiuxetan療法

23.Mogamulizumab療法

24.Brentuximab vedotin療法

【8】 多発性骨髄腫 

I.形質細胞腫瘍の分類と診断

1.検査法の理解

2.診断基準と各病型

3.病期診断

4.予後因子

5.治療効果判定

6.治療開始までに評価しておくべき項目(チェックリスト)

II.化学療法

1.骨髄腫の化学療法総論

2.個々の薬剤の注意点

3.初発時の治療法

4.治療レジメンの実際

5.Frail patients

6.造血幹細胞移植

7.地固め療法・維持療法

8.再発時の化学療法

III.補助療法

1.高Ca血症および骨病変への対応

2.腎障害への対応

3.放射線療法

4.感染症予防

5.腫瘍崩壊症候群への対応

6.骨痛コントロールへの対応

7.脊髄圧迫症状への対応

8.過粘稠度症候群への対応

IV.原発性ALアミロイドーシス

1.概要

2.症状

3.診断

4.治療・予後

V.POEMS症候群

1.概要

2.症状

3.診断

4.予後・治療

【9】 リンパ系腫瘍に対する造血幹細胞移植 

I.急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫に対するHSCT

1.思春期および若年成人ALLに対するallo-SCT

2.AYA以外のALLに対するallo-SCT

3.Ph陽性ALLに対するallo-SCT

II.Burkittリンパ腫/白血病に対するHSCT

III.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するHSCT

1.初発進行期高リスク群DLBCLに対するup-frontのauto-SCT併用大量化学療法

2.再発DLBCLに対するauto-SCT

3.再発・難治DLBCLに対するallo-SCT

IV.マントル細胞リンパ腫に対するHSCT

V.濾胞性リンパ腫に対するHSCT

1.初発・進行期FLに対するauto-SCT

2.再発・難治FLに対するauto-SCT

3.再発・難治FLに対するallo-SCT

4.形質転換したFLに対するHSCT

VI.末梢性T細胞リンパ腫に対するHSCT

1.PTCLに対するauto-SCT

2.PTCLに対するallo-SCT

VII.成人T細胞白血病/リンパ腫に対するHSCT

1.ATLLに対するallo-SCT

2.ATLLに対するallo-SCTにおける新規治療薬の役割

VIII.Hodgkinリンパ腫に対するHSCT

1.HLに対するauto-SCT

2.HLに対するallo-SCT

3.新規薬剤の登場によるHSCTの位置づけ

IX.多発性骨髄腫に対するHSCT

1.MMに対するauto-SCT

2.MMに対するallo-SCT

X.自家末梢血幹細胞採取および移植前処置

1.自家末梢血幹細胞採取

2.Auto-SCTで行われる移植前処置

3.リンパ系腫瘍に対するallo-SCTで行われる前処置

【10】 特殊な薬剤の使用法

I.High-dose methotrexate療法 

1.MTXの薬理学

2.HD-MTX療法の問題点

3.HD-MTX療法の実際

4.FAR療法の実際

II.High dose cytarabine療法 

1.Cytarabineの薬理作用および代謝

2.リンパ系腫瘍におけるHDAC療法

3.HDAC療法の実際

III.生物学的製剤としての抗体薬を用いた治療 

1.生物学的製剤である抗体薬について

2.抗体薬を用いる際に注意すべき有害事象

3.代表的な抗CD20抗体

4.抗CC chemokine receptor 4抗体

5.抗CD30抗体

6.その他の抗体薬

【11】 抗癌剤による臓器毒性とその副作用対策

I.消化器毒性 

1.悪心・嘔吐

2.口内炎

3.消化管粘膜傷害,下痢

4.便秘

II.皮膚毒性 

1.脱毛

2.抗癌剤による特異的皮膚障害

III.神経・筋毒性 

1.神経・筋毒性を有する薬剤

2.化学療法による末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy:CIPN)

3.中枢神経障害

4.薬剤性筋障害

IV.心毒性 

1.心筋毒性のある抗癌剤

2.Anthracyclineの投与の実際

3.抗癌剤による心毒性対策

V.肺毒性 

1.肺毒性のある抗癌剤

2.薬剤性肺障害の診断と治療

VI.肝・膵毒性 

1.肝毒性のある抗癌剤

2.主な抗癌剤による肝障害の特徴

3.DILIの評価とその対応

4.薬剤性膵障害とその対応

VII.腎・尿路毒性 

1.化学療法に伴う腎機能障害

2.尿路・膀胱毒性

VIII.性腺毒性 

1.抗癌剤による性腺毒性とIC

2.性腺障害を起こしやすい薬剤とその特徴

3.性腺機能障害への対策

4.GnRH analogと経口避妊薬の投与の実際

IX.化学療法による高次脳機能障害 

1.用語について

2.認知障害の評価法

3.化学療法後の精神障害,認知障害

X.二次性がん発症について 

1.がん治療に伴う二次性がん

2.Hodgkinリンパ腫における治療選択と二次性がん

3.抗癌剤投与による二次性がん

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書籍情報

  • ISBN:9784498125841
  • ページ数:352頁
  • 書籍発行日:2014年10月
  • 電子版発売日:2015年2月27日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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