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- EBM循環器疾患の治療2012-2013
商品情報
内容
循環器疾患のグローバルスタンダードを、各種メガトライアル、代表的な重要文献に基づいて解説する。今日の日常診療で問題となるテーマ、判断に迷うようなテーマについて、常に流動しているエビデンスのなかから真に有用なものをピックアップし、問題点と限界、本邦の患者に適用する際の注意点などから治療の指針を示す。
電子書籍版では全文検索、収録内容から南山堂医学大辞典へのリンク参照、文献もPubMedへのワンタッチリンクなど電子ならではの機能を搭載し、立体的な参照を実現いたしました。
> EBMシリーズ
序文
臨床医は常に患者に対してその時代の最適な医療を提供する責務がある.最適な医療とは根拠(Evidence)に基づく医療なのか,経験(Experience)に基づく医療なのか,それを後ろ支えする技術,知識は何なのか,永遠の課題である.
無作為比較試験(RCT)によって科学的に有効と実証された治療法を実践することを勧めるEvidence Based Medicineの概念は臨床現場に広く浸透してきたが,無作為割り付けに該当する患者は実臨床とは異なる点や,現場の実体験とは異なっていても統計学的に有意差があれば有効または無効と判定される点が問題として指摘されてきた.RCTをもとに作成されるガイドラインは治療法を論じる際に参考になるが,実際の診療を行なう上では,患者背景,病変背景,施設の医療技術レベル,患者家族の要望,医療保険の制約などにより適応できないことは少なくない.また,ガイドラインは数年前のEvidenceをもとに作られており,日進月歩の激しいこの領域においては,その時代の最良の治療法に追いつけないこともある.さらに,多くのガイドラインは欧米のEvidenceに基づいており,メディカルプラクティスの異なる我が国の診療現場にそぐわない.
一方,Experience Based Medicineは医師が各自の体験と直感に基づいて行う医療である.科学的ではないが,臨床現場ではExperienceによって得られた知識も極めて重要である.単施設でも,蓄積されたExperienceに基づく経験的改善はEvidenceよりも臨床的意義があることも少なくない.ただ,治療法がめまぐるしく進化するため,その有効性,安全性を十分に検証することなく進んで行くことは危険な側面もはらんでいる.
以上の観点から,その時代の最適な治療法は,RCTの結果に基づくEvidenceを参考にしながら,治療目標を達成するために,患者の病像に見合った最適な(有効かつ安全な)治療法をExperienceや施設の技量に応じて選択し,患者に十分に説明を行い,全力をあげて治療にあたることである.すなわちEvidence Based MedicineとExperience Based Medicineの2つのEBMの融合こそが最適な治療法に近づくことになり,これを実行するためには,臨床医は知識と技術を常に磨いておかねばならない.
しかし,忙しい臨床現場の中でこれを達成する事は困難で,それを補うために本書が企画された.日常診療上,多くの医師が疑問に思うことでありながら,ガイドラインには記載されていないことや,ガイドラインからはすぐには読みとれないことが具体的に書いてある.記載法もガイドラインが「心筋梗塞治療としては,A,B,C,,,」と記載するのに対し,本書では,「Aは本当に心筋梗塞に有用か?」という記載になっている.従って本書は,実地臨床により役立つと考えられ,また読み物としても楽しいものとなっている.もう一つ,ガイドラインと比較して本書の優れる点は,新鮮であるということである.ガイドラインも数年に1回改訂されているものもあるが,本書の項目の多くは,この1,2年に報告されたエビデンスに基づいて記載されている.むろん一つの臨床試験の結果から結論するのではなく,それ以前の臨床試験の結果も考慮に入れ,現時点での,最も新しいエビデンスをあげている.また,執筆をお願いした先生も,各専門領域の,最も旬な,新鮮な方を選出した.
本書のタイトルであるEBM循環器疾患の治療のEBMはEvidenceとExperienceの2つのEBMを融合したものである事を感じていただき,最適な医療の一助として,本書を役立てていただければ,編者として幸甚である.
2012年2月
小倉記念病院循環器内科
横井宏佳
目次
Ⅰ.虚血性心疾患
A.急性冠症候群
1.日本人のACSは増えているのか? 欧米に比べて少ないのか?
2.ACSは遺伝するのか?
3.どのような患者がACSを発症しているか? 高リスク患者を同定できるか?
4.ACSの早期診断と重症度評価に有効なバイオマーカーは何か?
5.不安定プラーク破綻は画像診断で予測できるか?―PROSPECT―
6.不安定プラーク破裂に関与する因子は何か?
7.ACS急性期/発症予防に最適な抗血小板薬は何か?
8.ACS急性期/発症予防に抗凝固薬は有効か?
9.ACSにDESは有効かつ安全か? すべてBMSから置き換わるか?―ST上昇型心筋梗塞に対する治療戦略に関する最近の動向について―
10.ACSにスタチン大量投与は有効か? 臨床現場ではどのように使用すればよいか?
11.ACS発症に睡眠障害が関与しているか?
12.プラーク安定化に包括的心臓リハビリテーションは有効か?
B.慢性冠動脈疾患
13.胸痛患者に最初に行う検査は何か?(冠動脈CT,心筋シンチ,冠動脈造影)
14.冠スパスム誘発試験はどのような患者に施行するべきか?
15.血行再建が有効な患者をどのように同定するか?
16.低リスク患者に最適なOMT(Optimal Medical Therapy)とは何か?
17.高リスク患者の最適な血行再建にSYNTAX scoreは有効か?
18.血小板剤凝集検査,CYP2C19遺伝子検査はPCIの臨床現場に必要か?
19.すべての患者に生体吸収型DESは必要か?従来のDESとの使い分けは?
20.遅発性ステント血栓症,遅発性ステント再狭窄は予防できるか?
21.Physiological PCIは患者の予後を改善するか?
22.PCIに必要な画像診断(IVUS, OCT, 血管内視鏡)は何か?
23.左主幹部病変の最適な治療は何か? 本当にハートチームは作れるか?
24.糖尿病を有する患者の最適な治療戦略(血行再建,薬物療法)は何か?―BARI 2D trial
25.薬物治療無効,血行再建不適当患者に残された治療は何か?
26.LDL-C低下療法でプラークの退縮は可能か?
27.心血管イベント抑制のための血糖降下療法はどうあるべきか?
28.DES植込み後のDAPTはいつまで続けるべきか? DAPTが必要な患者は?
29.DEBはどのような患者,病変に有効か?
C.弁膜症/ASD/EVT
30.僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療は日本人にも有効か?
31.心房中隔欠損症に対するカテーテル治療は日本人にも有効か?
32.CREST試験後頸動脈狭窄症に対する治療方針は変わったか?
33.ASTRAL試験後腎動脈狭窄症に対する治療方針は変わったか?
34.DES/DEBの登場によりPADに対するカテーテル治療は変わるか?
Ⅱ.心不全
A.診断・予後予測
1.急性心不全の予測因子としてのMR-proADMの有用性は?―BACH trial
2.NT-proBNPガイド下の集中的な臨床管理は有用か?
3.NT-proBNP / BNP値に基づく個別化した臨床管理は有用か?
4.高齢の収縮機能不全患者において,NT-proBNPガイド下の治療法が症状に基づく標準治療より優れているか?
B.急性心不全の治療
5.急性心不全患者における利尿薬の至適な投与戦略は?
6.急性心不全患者におけるアデノシンA1受容体拮抗薬rolofyllineの効果は?......
C.慢性心不全の治療
7.心房細動を伴う心不全ではリズムコントロールか? レートコントロールか?
8.左室収縮障害を有する安定冠動脈疾患患者において,If電流阻害薬ivabradineの標準治療への追加は有用か?
9.左室収縮不全を伴う中等度~重度の慢性心不全患者において,ivabradineの標準治療への追加投与は有用か?
10.軽症の慢性収縮不全の患者における,選択的アルドステロン拮抗薬エプレレノンの追加投与について
11.鉄欠乏状態の慢性心不全患者において,鉄欠乏性貧血治療薬ferric carboxymaltoseの静注は症状を改善するか?
12.軽症~中等症の心不全患者において,患者教育に1年間の自己管理カウンセリングの追加は有用か?
13.高齢の慢性心不全でも,β遮断薬はリスクを軽減するか?
14.ACE阻害薬不忍容の心不全患者においてARBロサルタンの高用量と低用量の有効性を比較
15.重症心不全患者において,定常流式左室補助デバイスと拍動流式デバイスはどちらが有用か?
16.QRS幅が延長した軽症心不全患者では,予防的CRT-除細動器(ICD)はICD単独治療よりも有用か?
17.QRS幅が延長した軽症~中等症心不全患者において,ICDに心臓再同期療法(CRT)を追加した方が有用か?
18.心不全患者においてカンデサルタン,ロサルタンの全死亡に対する影響を比較検討したスウェーデンの登録研究
19.心臓再同期療法(CRT)において,房室遅延の最適化は有効か?
20.慢性心不全患者における至適な抗血栓療法は?
Ⅲ.不整脈
1.原因不明の失神診断にループレコーダーはどの程度有効か?
2.正常心機能における徐脈性不整脈のペーシング治療は,右室心尖部,右室中隔,両室ペーシングのいずれかが望ましいか?
3.心房細動患者におけるRAS抑制の意義はどこにあるのか?
4.心房細動患者の脳梗塞リスク,大出血リスクをどのように評価すべきか?
5.自宅PT-INRモニタリングにはどのような意味があるのか?
6.ワルファリンとダビガトラン:選択の決め手は?
7.発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションClassⅠの適応とは?
8.発作性心房細動アブレーションにCFAEアブレーションを追加すべきか?持続性心房細動ではどうか?
9.永続性心房細動における心拍数調節の目標心拍数は?
10.Omega-3脂肪酸は心房細動の初発・再発に有効か?
11.心房細動カテーテルアブレーション術中にワルファリン・ダビガトランは継続すべきか?
12.心房粗動カテーテルアブレーション患者において将来的に心房細動発症を念頭におくべきか?...
13.新規抗血栓薬におけるClinical Trial評価の上で,ITTとon-treatment解析はどのように異なるか?臨床医としてどのように把握しておくべきか?
14.心不全を伴う心房細動をどのように薬物・非薬物的に治療するか?
15.早期再分極症候群(J波症候群)とは何か?どのように対処すべきか?
16.心室頻拍・心室細動に対するICD植込みにカテーテルアブレーションをルーチンで加えるべきか?
17.右脚ブロックやnarrow QRS症例の心不全に対するCRTは有効か?
18.ICD適切作動・誤作動はどのような患者アウトカムと関連しているか?また誤作動にはどのように対処すべきか?
19.心不全軽症例に対してCRTを積極的に植込むべきか?
20.睡眠時無呼吸症候群患者の不整脈はCPAP治療で改善するか?
Ⅳ.高血圧・脂質異常症
1.高血圧関連遺伝子の解明はどこまで進みどこへ向かうのか?
2.減塩は国民の心血管イベント・高血圧患者の心血管イベントを減少させるのか?
3.血圧変動性は治療指標となりえるか?
4.baPWVの診療におけるカットオフ値は設定可能か?
5.糖尿病合併高血圧患者の降圧目標は,すべて130/80mmHg未満か?
6.糖尿病合併高血圧患者の降圧薬の第一選択薬にCa拮抗薬が含まれてもよいか?―Nagoya-Heart Study
7.慢性腎臓病合併高血圧患者の降圧目標は,すべて130/80mmHg未満か?
8.高齢者高血圧の降圧目標は,すべて140/90mmHg未満か?(HYVET, JATOS, VALISHなど)
9.Ca拮抗薬を基礎薬とした降圧薬の併用療法の組み合わせを選ぶべきか?(COPE Trial)
10.ARB増量とARB+Ca拮抗薬併用の使い分けは何を基準とすべきか?―OSCAR
11.利尿薬はヒドロクロロチアヂドで十分か?
12.レニン阻害薬は第一選択か併用薬か?
13.アルドステロンブロッカーで降圧が達成された原発性アルドステロン症も手術対象とすべきか?
14.腎交感神経アブレーションによる降圧療法の有用性はどこまで証明されたか?
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書籍情報
- ISBN:9784498134164
- ページ数:424頁
- 書籍発行日:2012年3月
- 電子版発売日:2012年8月11日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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