新しい小児外来疾患のみかた、考えかた

  • ページ数 : 168頁
  • 書籍発行日 : 2017年2月
  • 電子版発売日 : 2017年6月9日
3,080
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商品情報

内容

「当たり前の治療」が「過剰治療」になっていませんか?

多数の症例とともにやってはならないことと必要な医療を解説。外来を訪れるすべての子どもと保護者のために、今までの「当たり前の小児診療」に代わる新たな視点の小児外来診療のあり方を示します。

序文

はじめに

プライマリ・ケアの小児医療を担っているのは,主に中小市民病院の小児科や開業医である.毎日多くの小児患者が受診し,さまざまな医療行為を受けている.しかし,それは子ども達の成長・発達を支え,家族の生活の質を向上させることに結びついているのだろうか?

筆者が病院を退職し,現在のクリニックでプライマリ・ケアの診療を始めたのは1998年であるが,当時は発熱の子が来院すれば抗菌薬を処方し,咳には咳止め,鼻が出れば抗ヒスタミン薬,少しでも喘鳴(ぜいぜい)があれば気管支拡張薬を処方するのが当然の治療であった.できるだけ多くの病気を発見すること,軽い風邪でも悪化を防ぐために"治療"してあげることこそ,プライマリ・ケアの小児科医の使命だと考えられていたのである.

その後プライマリ・ケアの医療は劇的に進化することになった.数分で血液データが出せるようになり,各種の迅速検査でウイルスや溶連菌など感染症の原因も分かる.より正確な診断や判断によるリスク管理が可能となっていった.これまで手探りで行っていたさまざまな治療はあまりにも過剰で,メリットがないばかりか,子ども達の成長・発達の妨げになったり,保護者に「治療しなければならない」と思わせることで,家族の負担を増していたのである.さらに,感染症,アレルギーに関するさまざまな新しい知見は従来の診療スタイルに見直しを迫っている.

しかし,医師の裁量権は大きく,プライマリ・ケアの教育システムもきわめて乏しい."従来の医療"を続けていても,保護者にはデメリットはみえにくく,逆に心理的エラーから,治療に依存することになってしまう.不安な保護者はさまざまな薬を求めて,医療機関を繰り返し受診することになり,医師も経済合理性から,どうしても"治療"を優先するスタイルになりがちである.プライマリ・ケアに従事する医師こそ,時代の流れに沿って,診療スタイルを変えて行かなくてはいけないのだ.

小児外来疾患は"風邪を診れば良い"という簡単なものではない.次世代を担う子ども達の成長と発達を支えるという,あまりにも重大な使命を帯びている.従来の治療優先の考えを捨て,新しい視点で診療を始めようではないか.この本がそのきっかけになることを願っている.


2017年2月

にしむら小児科
西村 龍夫

目次

プロローグ

 症例●生後10ヵ月男児主訴:鼻汁と咳嗽

1.子どもと家庭

1 子どもだけをみない

 症例1●生後7ヵ月男児主訴:発熱

 症例2●1歳男児主訴:鼻汁と咳嗽

2 子育て環境の変化

3 余裕のない母親

 症例3●1歳男児主訴:発熱

4 価値観の押し付けはやめよう

 症例4●4歳男児主訴:発熱

 症例5●2歳3ヵ月女児主訴:こだわりの強さ

2.現代の子どもの病気

1 生物進化と子ども

 症例6●2歳男児主訴:発熱

2 ミスマッチ病

 症例7●生後1ヵ月男児主訴:発熱,鼻汁,咳嗽

 Column1 ワクチンは不自然?

3 咳をする子どもたち

A.生物進化と上気道の構造

B.咳反射の起源

C.集団生活が作る咳感染症

D.鼻副鼻腔炎

E.咳の鑑別

F.喘鳴の考え方

 症例8●1歳2ヵ月女児主訴:鼻汁,咳嗽,喘鳴

4 なぜアレルギーが増えた?

A.食物アレルギーと認知エラー

B.RAST検査の功罪

C.IgEの起源

D.皮膚とアレルギー

E.医原病としての食物アレルギー

 Column2 カルト化を防ごう

F.アレルギーを防ぐ

G.食物アレルギーの危険性

H.アレルギーは治療よりも予防

 症例9●生後7ヵ月男児主訴:口周囲の発赤

 症例10●生後9ヵ月女児主訴:全身じんましん

 Column3 ゼロリスクの罠

3.小児科外来に必要な知識と設備

1 専門医から総合医へ

2 小児科医のアイデンティティ

 症例11●生後9ヵ月男児主訴:微熱,鼻汁,咳嗽

 症例12●2歳男児主訴:耳痛

3 全身状態の把握

 症例13●生後7ヵ月男児主訴:発熱

4 診療に必要な設備

5 習得すべきテクニック

A.診察の手順

B.血液検査

C.耳垢の取りかた

4.子どもの病気にどう対処するか

1 まずはワクチンを

2 医療的介入は最小限度に

3 子どもの風邪

A.発熱を主症状とする子ども

 症例14●生後5ヵ月男児基礎疾患なし

B.咳を主症状とする子ども

 症例15●1歳7ヵ月女児基礎疾患なし

 Column4 肺炎じゃないでしょうか?

C.喘鳴を主症状とする子ども

 症例16●1歳3ヵ月男児基礎疾患なし

D.気管支喘息診断の問題点

 Column5 微量採血でアレルギーを調べてみよう

 Column6 開業小児科医の内情公開

4 アレルギーは予防できるか?

A.アトピー性皮膚炎とは何か

 Column7 生物の領域

B.食物アレルギー予防プログラム

 Column8 食物少量投与の効果

 Column9 慎重さが作るアレルギー

 Column10 公衆衛生の発達と細菌



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書籍情報

  • ISBN:9784498145443
  • ページ数:168頁
  • 書籍発行日:2017年2月
  • 電子版発売日:2017年6月9日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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