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- レジデントノート増刊 Vol.20 No.5 循環器診療のギモン、百戦錬磨のエキスパートが答えます!
商品情報
内容
現場でよく出合う疑問を厳選し,救急や病棟での急性期の初期診断・治療から慢性期の管理まで最新のエビデンスに基づいた循環器診療の重要ポイントを解説!「疑問」をアンカーに効率よく多くのことが学べる!
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序文
医師になって今年でちょうど15年が経過した.本増刊号は雑誌のタイトル通り,レジデント向けで,卒後おおむね5年目くらいまでの医師を対象としているが,企画にあたって自身の医学部卒後当初5年間をもう一度振り返ってみたいと思う.
少しマニアックな話かもしれないが,私自身医師国家試験受験,医学部卒業後すぐに海上自衛隊幹部候補生学校(広島県江田島市にある旧海軍兵学校:戦前は世界3大兵学校として名を馳せた)に送られ,泣く子も黙る厳しい初期士官教育でシーマンシップを徹底的に叩き込まれた後に,通常よりも2カ月ほど遅れて初期臨床研修がスタートした.初期レジデントとしての研修は大学病院などで2年間行ったが,日々多くの患者を診療し,とにかくたくさん働いて,たくさん学んだ.ときには,症例提示も満足にできず「この数カ月間お前は何をやってたんだ」と厳しいお言葉を先輩方からいただいたこともあった.自衛隊医官という制約上,この濃厚な初期研修医期間が終了すると原則自衛隊部隊の医療部門へ出向が命ぜられる.私は海上自衛隊医官であったことから,神奈川県にある潜水医学(潜水に伴って発生する減圧症などを治療する医学)を研究する部署に配属され,比較的特殊な医療分野および潜水員の健康管理などに携わりながら,臨床研修を受け入れてくれた市中病院に平日2日と週末を利用して足しげく通い,内科や将来専門にしようと思っていた循環器科を学ぶべく研鑽を積んだ.さらにその期間,10カ月ほど米国3州において米海軍潜水軍医課程に入り,現在JAXAの宇宙飛行士であり国際宇宙ステーション(ISS)第54次/55次長期滞在クルーとして2017年12月よりご活躍中の金井宣茂先生とともに本場米国海軍で潜水医学の研鑽を積んだ.帰国後は自衛隊医官,市中病院で専門研修...といったのが私の卒後初期5年間であった.その後は優れた上司に恵まれたということもあり,慶應義塾大学,国立循環器病研究センター,英国Imperial CollegeLondonへの留学を経て,現在北海道大学で,主に臨床心不全を専門として診療・教育・研究に邁進している毎日である.
この経歴から,「お前は満足なレジデント生活を送ったのか?」と思われるかもしれないが,この環境をむしろ逆手にとり,患者1例1例,1論文,1論文,1エビデンス,1エビデンスを大事に初期5年間を過ごすことができたと,今ではこの一見臨床研修において不遇にみえる環境に感謝しかない.一番の財産は患者診療にあたって,特に患者の人生にダイレクトに影響を与えかねない,診断・予後にかかわる事項に関しては,
ひとつひとつのことを適当に考えない(流さない)「癖」
が自然と身についたことだと思っている.これは臨床医にとってはとても重要なことであり,どの世代の医師にとっても,患者が常に真の答えをもっている「最良の教科書」ということには変わりなく,特に初期レジデントの段階からそれが真に自覚できていると,非常に強い.つまり,「最後にしか答えを教えてくれない最良の教科書」である患者を目の前にしたときに,その患者を中心におき,自身のもっているリソース(「自身の今までの経験」,「指導医の経験」,「メディカルスタッフの経験」,「ハリソン,ブラウンワルドなど有名な教科書に書かれた原則」,「診療ガイドライン」,「論文から得られた"今日最新"のエビデンス」,などなど...)を余すところなく駆使し,最良の診療,ときにはトラブルシューティングを選択,そしてそれらが本当に正しかったか検証する努力を何回反復できるのかが,「良い臨床研修」であると私自身は信じている.
経験則以外の患者診療リソースのなかでも,近年IT技術革新による情報爆発と医療テクノロジー ,診断・治療技術の劇的な進歩から,多くの診療エビデンスが蓄積されるようになった.特に循環器疾患領域ではその傾向が顕著で,診療ガイドラインも複雑化し,新規デバイスなども続々と登場するなか,定期的に情報を整理しないと最新情報についていくことが非常に困難な世の中になってしまっており,日々レジデントたちの頭を悩ませていると思う.その結果,一番重要な「臨床現場」に「情報還元不足」が発生しているのもまた事実で,日々現場で患者を前に奮戦している初期研修医や若手医師 ,ひいてはベテラン指導医でも「え?そうなの?知らなかった.だって,○○研究会で有名な○○先生がこう言ってたし,ほんとのトコどうなの?」という純粋な疑問が絶えない状態になっているのではなかろうか.
そこで,本増刊号は,救急・病棟での急性期の初期診断・治療から病棟での慢性期の管理 ,そして最新のトピックスまで,最新のエビデンスに基づいた循環器診療の重要なポイントを実際の臨床現場で日々奮闘中のレジデント諸君からのアンケートで質問が多かったトピックに絞ってタイムライン別に整理した.エビデンスでカバーしきれないエキスパートの裏技も含めて効率的に学ぶことにより,循環器診療に自信がもてる内容となっていると信じている.そのために,企画においては執筆者の選定には大変こだわらせていただいた.そのキャリアの大半を実際の厳しい臨床現場で過ごされながらもエビデンスの創生そして現場での正しい適用を得意とされ,さらには後進の教育にアツい!と確信できる,若手指導医の先生方を中心に執筆をお願いした次第である.
最後に,私自身が初期レジデントのころから慣れ親しんだ伝統ある雑誌の増刊号企画という大役をくださった羊土社の方々と素晴らしい原稿をご執筆いただいた筆者の先生方に心より感謝申し上げるとともに,本増刊号を循環器診療にあたるレジデントのバイブルとして役立てていただければ幸いである.
追記: 2018年3月に循環器病のガイドラインが複数改訂されたが,本増刊では執筆期間の都合,前版の内容が含まれている.ガイドラインに関しては必ずホームページなどで最新情報をご確認いただきたい.
2018年5月
北海道大学大学院 医学研究院 循環病態内科学
永井 利幸
目次
序
第1章 ER・急性期病棟におけるギモン:診断編
1.絶対帰してはいけない胸痛,帰しても安心な胸痛を教えてください
2.ショック症例から心原性ショックを短時間で鑑別するコツを教えてください
3.「失神」診断の極意を教えてください!
4.ERにおける心電図判読のコツ,絶対見逃してはいけない波形を教えてください
5.ERにおける心エコーのminimum essentialを教えてください
6.2018年現在,心不全の診断は実際どれがスタンダードなのか?
7.心不全,循環器疾患治療における呼吸器疾患/呼吸器感染症の考えかたとピットフォール
8.心不全の原因特定にはどのタイミングでどのようなアプローチが理想的ですか?
9.急性大動脈症候群の最新Evidence Based Diagnosisを教えてください
10.急性肺血栓塞栓症の最新Evidence Based Diagnosisを教えてください
第2章 ER・急性期病棟におけるギモン:治療編
1.急性冠症候群に対する再灌流療法の適応と適切なタイミングを教えてください
2.心房細動の上手な救急対応を教えてください
3.急性心不全に対する血管拡張薬・強心薬の使い方・考え方を教えてください
4.急性心不全に対する利尿薬および輸液管理について教えてください
5.急性心不全の呼吸管理のコツを教えてください
6.急性肺血栓塞栓症に対する最新の薬物療法,その選択についていけません
第3章 慢性期病棟におけるギモン:ウマい慢性期管理とは?
1.安定冠動脈疾患に対する血行再建の真の適応はどこにあるのでしょうか?
2.左主幹部,多枝病変に対してPCIとCABGはどのように選択すればよいのでしょうか?
3.PCI後の抗血小板薬はどのようなレジメンで結局いつまで続ければいいのでしょうか?
4.観血的処置時の抗血栓療法マネージメントのコツを教えてください
5.心房細動に対するカテーテルアブレーションは本当に効果があるのでしょうか?
6.心不全で利尿薬が思うように効かない場合はどのようにすればよいのでしょうか?
7.心不全の退院までに導入すべき至適薬物療法の適応,目標用量,そして注意点を教えてください
8.降圧薬の上手な選択のしかたが知りたいです
9.高齢者心不全の多剤処方の整理のコツを教えてください
10.末期心不全患者に対する緩和ケア導入のタイミングを教えてください
第4章 新しい治療薬・デバイスのギモン:実際のトコどうなの?
1.エビデンスに基づいた抗凝固療法の適応と使い分けを教えてください
2.PCSK9阻害薬は実際どのような症例に使用するのでしょうか?スタチンとの違いも含めて教えてください
3.TAVI,MitraClipの適応について非専門医が知っておくべきことを教えてください
4.最近,不整脈関係の新規デバイスが多すぎて混乱します.それぞれの利点と適応について教えてください
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書籍情報
- ISBN:9784758116091
- ページ数:245頁
- 書籍発行日:2018年5月
- 電子版発売日:2018年8月31日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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