周産期・新生児 ステロイドを使いこなそう!

  • ページ数 : 183頁
  • 書籍発行日 : 2018年3月
  • 電子版発売日 : 2018年11月2日
4,180
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商品情報

内容

新生児内分泌に取り組んできた著者が,「ステロイドをうまく使いこなしてほしい」との願いを込めて執筆した専門書。

ステロイドをうまく使いこなすことが,児の救命・予後に直結するといっても過言ではない。周産期領域においていかに正しい知識・理解を持って,使用をためらいがちなステロイドと関わっていくのか。その手助けとなる1冊。

序文

改訂第6版刊行にあたって

内分泌機能は周産期医療において極めて重要な役割を担っている.内分泌機能,すなわちホルモンの中で最も重要なものは何かと問われれば,やはり,副腎皮質ホルモンであろう.

私は新生児科医として日々診療に当たっているが,最も重要視している事の一つが,副腎皮質ホルモン薬(=ステロイド薬)の使い方である.

ステロイド薬をうまく使いこなすことが,児の救命・予後に直結する.一方,ステロイド薬の使用は短期的な合併症のみならず,長期にわたる発達障害の原因となるかもしれない.ステロイドの事をもっと深く理解したい...

私は,そんな思いで,新生児内分泌に取り組んできた.本書は,これまでに私が得た情報を整理した集大成である.

新生児の副腎機能を理解するには,出生後のみならず,胎児期の副腎機能の理解が欠かせない.このため,本書のカバーする領域は出生後のみならず,胎児期にもさかのぼる.すなわち,新生児科医のみならず,産科医をはじめ,周産期に関わる全ての方々に役立つ情報を書き込んだつもりである.

ご一読いただき,ご意見を賜れれば幸いです.


平成30年3月

京都大学医学部附属病院小児科(NICU)
河井 昌彦

目次

序章 副腎皮質ホルモン

1.副腎皮質ホルモンとは?

2.副腎皮質ホルモン産生の調節機構

1章 ストレスホルモンとしてのコルチゾール

1.ストレス時になぜコルチゾールが必要なのか?

2.MR:GR バランス仮説

2章 胎児~早産児のステロイド産生

1.胎児期の副腎皮質ホルモン産生の発達過程

2.先天性副腎過形成症(21 ヒドロキシラーゼ欠損症)

3.胎児期のHPA axis の発達過程

4.早産児のコルチゾール産生能

5.早産児の生後早期の血中コルチゾール濃度が高いことの意義は?

6.早産児の発達障害とニューロステロイド(neurosteroid)の関わり

3章 胎児副腎の発達

1.胎児副腎の解剖学的発達

2.副腎皮質発生の遺伝子制御

3.胎児副腎の発達におけるACTH の働き

4.生殖内分泌系の胎児期の発達

5.副腎と性腺の発生の関わり

4章 出生前ステロイド

1.出生前後のステロイドの役割

2.出生前ステロイドと児のHPA axis

3.出生前ステロイドがストレス応答に及ぼす影響

5章 ステロイド療法~その功罪~

1.コルチゾールの働きとステロイド療法の功罪

2.早産児に対するステロイド投与は脳性麻痺のリスクを高める

3.本当にステロイド療法は発達予後を悪化させるのか?

6章 ステロイド療法におけるピットホール

1.ステロイド薬の種類と特徴

2.ハイドロコーチゾンかデキサメタゾンか?その選択の決め手は?

3.HDC生理的補充量とは?

4.HDC投与後の血中濃度

5.疾患別ステロイド投与量の比較

6.ショックに対するステロイド療法

7.ハイドロコーチゾン(HDC)静脈内投与を経口投与に切り替える際の注意

8.ステロイドの代謝における他剤との相互作用

9.コルチゾールの代謝に及ぼすホルモンの影響

10.コルチゾールの代謝に影響を与える因子

11.ステロイド療法によるHPA axis の抑制

12.ステロイドの昇圧作用・カテコラミン増強作用

13.吸入ステロイド

14.HPA axisの評価方法とその解釈

7章 コルチゾールの日内変動

1.コルチゾールの日内リズム

8章 妊娠中の母体ストレス

1.母体のストレスが児に及ぼす影響

2.ワーズワースとステロイド・プライミング仮説

9章 相対的副腎不全

1.副腎不全の臨床症状・検査所見

2.成人における相対的副腎不全

3.相対的副腎不全による病態(晩期循環不全)

4.相対的副腎不全による病態(慢性肺疾患)

5.相対的副腎不全の診断

6.早産児の相対的副腎不全の診断基準

10章 痛みの評価

1.唾液コルチゾールの意義

2.痛みの評価

3.NICU における処置のストレス

11章 出生後のHPA axis

1.出生後の血中コルチゾール濃度の変遷(正期産児の場合)

2.出生後の血中コルチゾール濃度の変遷(早産児の場合)

3.HPA axis とメタボリックシンドローム

12章 FGR(胎児発育遅延)児の副腎機能

1.子宮内発育遅延と副腎皮質機能の関わり

13章 新生児期に副腎不全を呈する疾患

1.新生児期の下垂体機能低下症の診断

2.Sept-Optic Dysplasia(中隔視神経形成異常症)

3.先天性副腎過形成症(CAH)

4.先天性副腎低形成症

5.MIRAGE 症候群

14章 アルドステロン

1.新生児におけるアルドステロン抵抗性について

2.胎児期のレニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAA)系の意義

3.進化の過程におけるアルドステロンの重要性

15章 グルココルチコイド受容体

1.グルココルチコイド受容体の遺伝子多型

2.グルココルチコイド受容体α・β

16章 副腎髄質

17章 早産児に対するステロイド療法(実践編)


索引


コラム

1.ステロイドとは?

2.胎盤

3.PTSDと副腎不全

4.デキサメタゾン使用中のMR:GRバランス

5.DHEAとは何か?

6.DHEASとDHEA

7.CAHに対する胎児治療

8.胎児副腎のコルチゾール・DHEA産生の切り替え

9.早産児でマス・スクリーニングの副腎過形成偽陽性が多い理由

10.高コルチゾール血症がもたらす胎児の成長障害・臓器障害について

11.脳がステロイドを作る!

12.GABA受容体を介する作用について

13.胎児期に十分量の性ホルモンを産生できたにも関わらず,乳児期以降,思春期まで性ホルモンの産生が抑制されるのはなぜ?

14.動脈管の再開通と副腎不全の関わり

15.Antenatal steroid反復の功罪

16.ストレス下における好酸球増多は副腎不全を疑う重要なサインの1つである!

17.ステロイドによる免疫抑制

18.低血糖に対するステロイド投与

19.晩期循環不全におけるステロイドの作用点

20.ステロイド薬による尿中Ca排泄促進について

21.ステロイドによる副甲状腺ホルモン分泌促進の機序

22.ステロイドの構造と活性の関係

23.CLD児の予後とデキサメタゾン投与

24.重症慢性肺疾患のリスクの高い児に対する鎮静・抗痙攣薬

25.CYP(チトクローム酵素P450:Cytochrome P450)

26.薬物代謝酵素活性による個別化医療

27.新生児の薬物動態の特徴

28.吸入ステロイドの効果について

29.コルチゾール値の単位

30.動物におけるストレス実験とNICU

31.DNAのメチル化

32.副腎不全(グルココルチコイド不足)に対するハイドロコーチゾンの補充量(維持量)

33.HDCによるCLD予防

34.クッシング症候群の診断と唾液コルチゾール

35.唾液で測定できるコルチゾール以外のストレスマーカー

36.早産児の脳は痛みを感知しているのか?

37.胎児期の高コルチゾール血症が2型糖尿病のリスクを高める機序

38.先天性副腎過形成症(CAH)の治療のガイドライン(2014年度版)に記載されているハイドロコーチゾン投与量

39.副腎過形成で皮膚が黒い(=色素沈着を受ける)機序

40.先天性副腎過形成症(CAH)のマス・スクリーニング偽陽性

41.RAA系の活性化と心血管系疾患

42.アドレナリンか?エピネフリンか?

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書籍情報

  • ISBN:9784765317504
  • ページ数:183頁
  • 書籍発行日:2018年3月
  • 電子版発売日:2018年11月2日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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