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- 知っておきたい!予後まで考える!!周術期輸液・輸血療法KEYNOTE
商品情報
内容
本書は,これまでの慣行的な輸液・輸血療法をエビデンスに基づいて見直し,患者さんの予後を見すえた輸液・輸血の投与量・方法を詳解する。麻酔科医の必読本となる一冊。
序文
わたしたちは毎日2l近くの水の出入りがあるにもかかわらず、体重はそれほど変わりません。それを考えると、体液量はおそらく、きわめて正確にコントロールされているのだと分かります。レニン・アンジオテンシン、バソプレシンといった内分泌が、これらの体液量のコントロールを担っています。手術に際しても、この制御機構は正確に働いていますが、わたしたちは体液量をコントロールしようとしています。容量(血管内? 体液?)が足りないことを"ハイポ"と呼び、輸液量で是正しようとします。しかし、その是正が正しい目標値に近づいているかは分かりません。ここに、手術中の体液管理をしようとする麻酔科医のフラストレーションが生まれるのです。本来は、生体が正確にコントロールしている体液量、電解質濃度を麻酔科医のあまり根拠のない考えに基づいた介入で、かえって乱しているのかもしれません。疑問符のある中で、日常の診療が繰り返されています。
かつては、尿量を保つために十分な輸液を投与することが腎臓を保護すると考えられてきました。イメージとしては、水が流れているホースは常に流しつづけていれば詰まらないという程度のものでした。しかし、腎臓は単純なものではなく、かえって過剰な輸液による障害が起こることも認識されるようになってきています。ますます、体液管理はその方向を変えています。以前は、肺を護るためには輸液を控えるといわれてきましたが、その反対に位置していた腎臓にとっても過剰輸液を行わないようにといわれるようになりました。
本書では、これまで習慣的に行われてきた輸液に対する見直し、過剰輸液をなぜ避けなければならないかを中心に、患者にとって不利益にならない輸液を考えていきたいと思います。輸液と同時に考えていきたいのは輸血です。輸血はかつてと比較すると、その安全性は格段に向上しています。そのため、輸血による副作用は製剤自身によるものから、投与の適・不適に起因するものが問題視されるようになってきています。具体的にはTACO(transfusion-associated circulatory overload)です。過剰輸血による循環過負荷により、肺水腫を起こすと想定される副作用です。TACOの実態は明らかではなく、これまであまり報告されてきませんでしたが、近年、報告が増えつつあります。これも術中の輸血量の判断が、その予後に影響することを示しています。
このように輸液、輸血ともに、その投与量・方法はそれぞれの麻酔科医の判断に任されてきました。しかし、現在では、輸液も輸血も不適切な投与による予後への影響が問題となっています。漫然とした投与が合併症の原因となれば、それを判断した医師の責任を問われかねないことになります。
本書では、麻酔科医であれば知っておきたい、現在分かっている輸液や輸血の知識をまとめました。具体的に何を何ml投与しましょうということは書いてありません。輸液・輸血療法に対する基本的な考え方をまとめたものですが、きっと、さまざまな場面での判断材料になると考えています。
2017年10月3日
飯島 毅彦
昭和大学歯学部全身管理歯科学講座歯科麻酔科学部門
目次
Part I 輸液 基本編
Chapter 1 輸液と予後
1.1 あなたの輸液は予後を変えるか?
1.2 なぜ、過剰輸液をしてしまうのか?
1.3 投与された輸液はどこへ?
1.4 術後の体重増加と合併症
Chapter 2 輸液の考え方の勘違い
2.1 禁水分と不感蒸泄による水分不足
2.2 ナトリウム分布の誤解
2.3 輸液は血液の代わりになるか?
2.4 急速輸液の効果
2.5 尿が出ないのはハイポである
2.6 輸液は腎を保護するか?
2.7 追っかけ輸液
Chapter 3 Zero-fluid balance
Chapter 4 各種病態と輸液
4.1 敗血症の病態と輸液の行方
1 敗血症の病態
2 敗血症における血管反応性と容量管理
3 敗血症におけるfluid responsiveness
4.2 褐色細胞腫摘出術の管理
4.3 腎障害に伴う内分泌異常と体液管理
4.4 水電解質バランスと薬理学的介入
4.5 血液透析患者の循環血液量
Part I 輸液 理論編
Chapter 1 サードスペースとは何か?
Chapter 2 Starlingの法則の改訂
Chapter 3 循環血液量とは何か?
3.1 循環血液量は推定値で計算してもよいものか?
3.2 適正な血液量はあるのか?
3.3 unstressed volumeとstressed volume
3.4 動脈圧波形の変動と循環血液量
3.5 goal-directed intraoperative fluid therapy(GDT)による循環管理
Chapter 4 グリコカリックス
4.1 グリコカリックスの性質
4.2 グリコカリックスの血管透過性に対する効果
Chapter 5 水の漏出と血管内への回帰
Part II 輸血
Chapter 1 あなたの輸血で予後は変わるか?
Chapter 2 血液製剤で知っておかなければならないこと
2.1 使用指針の考え方
1 赤血球液
2 新鮮凍結血漿
3 血小板濃厚液
4 アルブミン
2.2 輸血前検査
1 Type & Screening(T&S)
2 交差適合試験
Chapter 3 輸血を必要とする病態とその対応
3.1 希釈性凝固障害
3.2 急速大量出血と緊急O型輸血
3.3 多発外傷
3.4 新生児の輸血:保存血と血清カリウム値
Chapter 4 輸血に伴う合併症
4.1 不適合輸血
4.2 輸血関連急性肺障害(TRALI)
4.3 輸血関連循環過負荷(TACO)
4.4 輸血によるウイルス肝炎感染の危険性
4.5 鉄過剰症
Chapter 5 輸血と周術期アウトカム
5.1 大量出血に伴う輸血と予後
5.2 輸血とがんの進展
5.3 赤血球の保存期間と予後に対する影響
Chapter 6 遡及調査と被害者救済制度
Chapter 7 自己血輸血
Chapter 8 宗教上の理由による輸血拒否患者への対応
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書籍情報
- ISBN:9784771904903
- ページ数:136頁
- 書籍発行日:2017年11月
- 電子版発売日:2019年2月22日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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