予防に導くスポーツ整形外科

  • ページ数 : 560頁
  • 書籍発行日 : 2019年11月
  • 電子版発売日 : 2020年1月8日
7,920
(税込)
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商品情報

内容

スポーツ外傷・障害予防分野では,ここ数年でそれらのエビデンスが蓄積されつつあり,幅広い競技レベルにおいて実践が行われるようになった.本書はスポーツ外傷と障害の予防・再発予防を目的としたアプローチについて,最新のエビデンスに基づき,スポーツ整形外科の最前線で活躍する整形外科医,理学療法士,トレーナーが解りやすく解説した一冊.アスリートに発生する主要な整形外科疾患に絞り,疫学や発症メカニズム・動作分析などの基礎的知識から予防のためのトレーニング,再発予防のためのリハビリテーション・外科的治療までを具体的に解説.

序文

近年,世界的なスポーツ医学の進歩に伴い,スポーツ外傷・障害に対するアプローチは従来の治療に特化した医療から,その予防に焦点が当てられるようになってきている.その発想は北欧を中心にいち早く2000年代から取り入れられ,2005年に世界で初めてスポーツ外傷予防医学の学会がNorwayのOslo Sports Trauma Research Center主催のもと開催されて以来,徐々に広まりをみせるようになった.私は2008年にOslo Sports Trauma Research Centerに留学し,スポーツ傷害に対する予防医学の研究に携わらせていただくなかでその考え方を勉強するようになった.また同学会にも第2回から参加するようになり,スポーツ外傷・障害に対する予防医学の世界的な発展を間近に見てきた.本学会に最初に参加した当時は日本からの参加者も少なく,この分野において日本はまだまだ発展途上であった.特にstudy designにおいては欧米と比較しかなりの差があったことを鮮明に記憶している.しかし同学会が第3回よりIOCの主催となり,2020年には第6回IOC World Conference on Prevention of Injury & Illness in Sportがモナコで開催されるなか,国内においても近年ようやくその注目度が高まり,質の高い研究が発信されるようになってきた.

一方で2020年に東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたり,国内におけるスポーツ医学に対する一般の関心,理解も一層深まってきている.スポーツ医学は単にスポーツ選手の競技力向上をサポートするだけでなく,一般のスポーツ愛好家に対するスポーツ外傷・障害の予防と治療を通して健康増進を促し,ひいては健康寿命の延伸に重要な役割を果たすようになった.

このようななかでタイミングよく文光堂からスポーツ外傷・障害予防についての本書の企画をいただき,私なりに新たな視点から本邦における最新のスポーツ外傷・障害予防について編集をさせていただいた.その要点は以下のとおりである.

1)タイトルをあえて予防に導くスポーツ整形外科とさせていただき,さらに対象となる部位・疾患を代表的なものに限定した.その分,疾患ごとに深く掘り下げ,予防医学の基本から最新のトピックスまでを取り上げた.

2)前十字靱帯損傷やハムストリング損傷に代表されるように,多くのスポーツ整形外科疾患において最も高い危険因子はその疾患の既往である.そのことから,本書では再発予防(手術加療やリハビリテーションも含め)にも重点を置いた.

3)本書の編集にはあえて現時点で最も油の乗っている若手の先生を指名させていただいた.それに伴い執筆者についても若手の先生を積極的に採用させていただき,よりアクティブな書を目指した.

最後に本書の企画から編集まで若輩者の私を助けていただいた文光堂の方々に深謝するとともに,この企画に賛同し各分野において編集を担当していただいた編集の先生方,ならびに快く執筆をお引き受けいただいた先生方に御礼申し上げたい.本書がスポーツ外傷・障害の予防医学の新たな羅針盤として,多くの先生方の座右の書になれば幸いである.


2019年10月

古賀 英之

目次

総説

スポーツ外傷・障害の予防

Ⅰ ACL・半月板損傷

1 ACL損傷

[疫学]

ACL損傷の疫学

[危険因子・スクリーニング]

ACL損傷の危険因子

ACL損傷に対するスクリーニングテストの意義

[受傷メカニズム]

ACL損傷の受傷メカニズム

ACL損傷の危険場面と肢位,非受傷時のキネマティクス

[予防トレーニング]

パフォーマンス向上を両立させた予防トレーニング・

股関節に着目した予防トレーニング

リアルタイムフィードバックによるACL損傷予防

[ACL再損傷の予防]

再損傷を減らすためのACL再建術の工夫

ACL再建術後の再損傷予防のためのリハビリテーション

2 半月板損傷

[解剖とバイオメカニクス]

半月板の解剖と機能・

[疫学]

半月板損傷の受傷機転,頻度および損傷形態

[半月板損傷と選手寿命]

半月板損傷後の選手寿命,引退に追い込む損傷形態

[半月板温存のための手術療法]

半月板温存手術の試み

半月板手術後の再損傷予防のためのリハビリテーション

Ⅱ 上肢の外傷・障害

1 肩関節脱臼

[疫学]

ラグビーでの疫学調査と動作解析

[予防トレーニングと再発予防]

ラグビーのコンディショニング,傷害予防

ラグビー選手の外傷性肩関節脱臼予防プログラム

[外科的治療]

肩関節脱臼の外科的治療

2 投球障害

[疫学]

投球障害肩の疫学・病態

投球障害肘の疫学・病態

[解剖とバイオメカニクス]

肘関節内側部の解剖と機能

[危険因子・スクリーニング]

投球障害─予測システム

[予防トレーニングと再発予防]

コーチングから考える投球障害の予防

投球障害肩・肘の予防のためのリハビリテーション

[外科的治療]

投球障害肩に対する外科的治療

投球障害肘に対する外科的治療

3 その他のオーバーヘッドスポーツによる障害

[種目特性に応じた予防]

テニスによる上肢障害の病態とその予防

バレーボールによる上肢障害の病態とその予防

水泳による上肢障害の病態とその予防

ハンドボールによる上肢障害の病態とその予防

4 手関節の外傷・障害

[予防トレーニングと再発予防]

スポーツ手関節障害に対する予防・リハビリテーション

Ⅲ 下肢の外傷・障害

1 肉ばなれ

[疫学]

肉ばなれの疫学

[危険因子・スクリーニング]

肉ばなれの受傷メカニズム・危険因子およびそのモニタリング

[予防トレーニングと再発予防]

肉ばなれの予防トレーニング

肉ばなれの再発予防を目指したリハビリテーション

2 疲労骨折

[疫学]

疲労骨折(Jones骨折)の疫学・

[危険因子・スクリーニング]

発生メカニズム:有限要素法・床反力計・モーションキャプチャー

Jones骨折の危険因子

Jones骨折検診

[発生予防と再発予防]

Jones骨折の発生予防

Jones骨折再発予防のためのリハビリテーション

Jones骨折再発予防のための手術加療

3 腱症・腱付着部症

[疫学]

腱症・腱付着部症の疫学

[危険因子・スクリーニング]

腱症・腱付着部症の発生メカニズムと危険因子

オスグット・シュラッター病のスクリーニング・検診とその意義

[予防トレーニングとリハビリテーション]

腱症・腱付着部症の予防エクササイズ

[MRI・エコー所見に基づいた低侵襲治療]

ヒアルロン酸ナトリウム

体外衝撃波

多血小板血漿療法

Ⅳ 股関節痛

1 アスリートの鼡径部痛

[疫学と分類]

アスリートの鼡径部痛における診断と分類

[危険因子・スクリーニング]

メディカルチェックと股関節周囲機能評価

MRIによる鼡径部痛・股関節痛のスクリーニング

[予防のための治療とトレーニング]

鼡径部痛発生予防のためのトレーニング

股関節周囲の機能改善を目指した治療とトレーニング

2 大腿骨寛骨臼インピンジメント

[疫学]

日本人におけるFAI

解剖とバイオメカニクスからみた股関節の受傷メカニズムとリハビリテーション

FAIの診断とスクリーニング

[予防のための治療とトレーニング]

インピンジメント回避のためのリハビリテーション

アスリートにおけるOA発症予防のためのFAI股関節鏡視下手術

Ⅴ 腰部障害

1 腰椎分離症

[疫学]

腰椎分離症を偽関節予防に導くための疫学知識

[受傷メカニズム]

腰椎運動のバイオメカニクスと分離症の受傷メカニズム

腰椎すべり症への進展メカニズム

[早期診断と治療方針の立案]

腰椎分離症/すべり症の早期診断

[発症予防のためのコンディショニング]

Joint by Joint Theoryに基づくコンディショニング

パフォーマンス向上を両立させた予防トレーニング─野球

パフォーマンス向上を両立させた予防トレーニング─サッカー

パフォーマンス向上を両立させた予防トレーニング─ランニング

[再受傷予防]

スポーツ復帰後の再受傷予防のためのリハビリテーション

2 腰椎椎間板ヘルニア

[疫学とバイオメカニクス]

腰椎椎間板ヘルニアの発症メカニズムと関連因子

[保存療法]

保存療法による復帰の注意点

保存療法におけるヘルニア再発予防のためのリハビリテーション

[外科的治療]

腰椎椎間板ヘルニアに対する低侵襲手術

術後のヘルニア再発予防のためのリハビリテーション・

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書籍情報

  • ISBN:9784830651892
  • ページ数:560頁
  • 書籍発行日:2019年11月
  • 電子版発売日:2020年1月8日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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