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商品情報
内容
母児に合併する疾患・病態はどのように見えるのか。超音波をはじめ、MRI、X線、CTなど、300点を超す画像所見を鮮やかなカラー画像で豊富に掲載。よく出会うものから、たとえ頻度は少なくとも決して見逃してはならないものまで、産婦人科診療に携わる医療者が必ず押さえておきたい所見を網羅した一冊。
序文
序文
「ペリネイタルケア」誌上において,2007年6月号から始まった「画像でみる産科学」の連載が,2012年5月号で5年間60回を迎えました.この連載は,さまざまな産科領域の病態や疾患について画像を介して紹介し,議論し理解し記録し敷衍する,というコンセプトで企画したものです.「百聞は一見にしかず」というのは私個人の画像診断へのこだわりを表現した文言でもあるのですが,母親や胎児の置かれた状況を目に見えるものとすることは,患者側に立った「カウンセリング」や「インフォームドコンセント」に益することであると思います.かつて胎児は生まれて姿を見るまでは手の届かない,ある種の不安や神秘を抱えた存在だったわけですが,超音波で見えるようになったことにより「診断」され「治療」されるまでの存在になったともいえます.胎児画像診断の実質的な始まりが1980年頃であったと考えれば,胎児を見るという医学・医療はやっと30年という若い学問なのです.そう考えると不思議な気さえします.
超音波診断の黎明期に産婦人科の門を叩いた私が,当時考えたことを少し話したいと思います.それは今思えば無謀なことのようでもあり,若かったからこその夢かも知れませんが,まず私自身について語りましょう.私は超音波診断がなかった時代から広く普及する境目の時代を知っている幸運な産科医です.初めて超音波検査に接したとき,私には超音波で得られる視界は産科医に開かれた新しい世界であり,そこからは尽きせぬ泉のように新しい知見が湧いてくるように思われました.産科医として経験も浅く未熟でもあった私がその時に密かに望んだことは,教科書にあるような病態や疾患をすべて超音波を通して見てみたいということでした.目に見えないものを目に見えるようにする,ということを自分の仕事として励んでみよう,教科書でいかに理論的に病気の成り立ちを説明してあっても,「見る」ことにはかなわないはずだ,そう思ったのです.それが「百聞は一見にしかず」を産科超音波診断で実践してみたいという私の夢でした.私はこのような夢を後輩たちと熱心に語り合い,画像診断で産科医療・医学を問い直す,という目標に向かって共に歩んだのでした.
夢を語るのは面はゆいものですが,実験を終えて酌み交わす酒の席や,他郷での学会へくり出し時を忘れた夜などは,夢がたとえ一時的でも現実にそこにあるかのように語ることができました.現在まで夢を忘れずに続けてこられたのは,一緒に歩んでくれる仲間がいてくれたからだと思います.今回の連載を始めるにあたって思ったことは,これらの仲間たちに声をかけることでした.すでに開業している仲間,勤務医として働く仲間,大学で研究・教育を続けている仲間,年齢も立場も境遇もさまざまですが,もう一度集まってひとつの仕事をやり遂げたいと思ったのです.そうして60回までの連載に45名の仲間が参加してくれました.
もうひとつ,連載に際して思ったことがあります.それは大学病院という学府に集積するおびただしい数の症例は大学だけのものではなく広く共有すべきものであるということでした.大学以上に症例のある施設,医師の数が大学より多い施設はいくらでもあるでしょう.しかし症例を医療としてのみならず,医学として再構成し続く世代へ残す作業は医育機関でもある大学のなすべき仕事である.これだけの貴重な症例が記録されることなく,少数の医師だけの経験として消えていくのは余りにもったいないことであり,大学という立場にあっては許されぬことではないかと考えたのです.これは2006 年に長崎大学産婦人科教授に就任して以来の私の思いでもありました.この本は,産婦人科という職業にかかわるものであれば,いつかは必ず出会うような母児の疾患について画像を中心に記載し,後の人たちのための記録を残すものになったと自負しています.見ることは,すなわち学びです.老者には豊富な見聞があり,若者はそれらを本から学ぶことができます.百聞は一見にしかず.この本が若い医師・助産師・看護師にとって未然の経験となることを願っています.
さて超音波診断ということでは,1992年から「ペリネイタルケア」誌上に「超音波診断基礎講座」と題して4年間にわたって連載し,1998年にはそれらを『臨床産科超音波診断:画像でみる産科学』としてまとめました.この本は幸い好評で,2009年には改訂2版を出すことができました.共に日常診療に役立てていただければ幸いです.本書では超音波診断に止まらず,CTやMRI,さらには細胞診や体外受精など写真で残せる内容はすべて画像診断と解釈して含めています.「ペリネイタルケア」誌上での連載はまだまだ続く予定です.5年後に120回分をまとめて書籍化したいというのが私の次の夢でもあります.
今年の9月5日でちょうど60歳になることもあり,みんなにも薦められてその日を発刊日といたしました.私にはたいへん名誉な贈りものであると思っています.連載から書籍化までたどり着けたのは,つねに励まし尻を叩いてくれたメディカ出版のみなさんのお蔭です.とくに木村有希子さんとは『臨床産科超音波診断:画像でみる産科学」の書籍化以来の長いお付き合いです.篤く感謝申し上げます.最後に,筆を執ってくれた仲間,病気を抱えている母親と胎児,それからこの本を読んでくださったすべて方々に暑い夏の句を贈ります.
ときを得てここぞとばかり蝉しぐれ
平成24年8月5日
増崎 英明
目次
・序文
■第1章 総論
●1 総論1:妊婦健診と画像診断
●2 総論2:見逃せない疾患
●3 総論3:出生前診断の諸問題
●4 体外受精・胚移植
●5 妊婦における子宮頸部細胞診
●6 母体血中胎児DNAと出生前遺伝子診断
●7 羊水検査とカウンセリング
●8 臍帯動脈血流速度波形における逆流所見
●9 児頭骨盤不均衡とMRI
●10 胎児脳障害のCTG所見
■第2章 妊娠初期の異常
●1 妊娠悪阻
●2 流産
●3 絨毛性疾患
●4 異所性妊娠
●5 妊娠初期の急性腹症
●6 帝王切開創部妊娠
●7 妊娠初期に見つかる胎児異常
●8 多胎妊娠における膜性診断
●9 多胎妊娠における卵性診断
●10 TRAP(twin reversed arterial perfusion)
●11 Nuchal translucencyとヒグローマ
■第3章 妊娠中期・後期の異常
●1 子宮頸管無力症
●2 細菌性腟症
●3 前期破水・早産・絨毛膜羊膜炎
●4 Breus' mole
●5 前置胎盤
●6 常位胎盤早期剥離・DIC
●7 子癇
●8 羊水過多・過少
●9 胎位異常(骨盤位)
●10 胎児発育不全(FGR)
●11 巨大児
■第4章 分娩・産褥の異常
●1 子宮筋腫による分娩停止
●2 EXIT(ex-utero intrapartum treatment)
●3 幸帽児分娩
●4 分娩時出血とSheehan症候群
●5 胎盤残留
●6 胎盤ポリープ
●7 帝王切開創の癒合不全
●8 帝王切開既往例における子宮壁の菲薄化
■第5章 母体合併症
●1 子宮奇形合併妊娠
●2 子宮筋腫合併妊娠
●3 子宮頸癌合併妊娠
●4 卵巣腫瘍合併妊娠
●5 妊娠中の乳癌
●6 子宮動脈血流速度波形を用いた妊娠高血圧症候群の発症・重症化予測
●7 糖尿病合併妊娠
●8 尿路結石合併妊娠
●9 胆石合併妊娠
●10 拘束性呼吸障害合併妊娠
●11 妊娠中の大腿骨頸部骨折
●12 妊娠中の深部静脈血栓症:総論
●13 妊娠中の深部静脈血栓症:各論
■第6章 胎児異常
●1 胎児頭蓋内出血
●2 胎児脳梁欠損症
●3 先天性サイトメガロウイルス感染症
●4 ダンディー・ウォーカー症候群
●5 18トリソミー
●6 Hirschsprung病とその類縁疾患
●7 胎児貧血と臍帯潰瘍
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書籍情報
- ISBN:9784840440998
- ページ数:224頁
- 書籍発行日:2012年9月
- 電子版発売日:2014年10月24日
- 判:A4変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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