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- ERの創傷 エビデンスと経験に基づくプラクティス
商品情報
内容
洗浄、止血、麻酔、縫合、被覆材、治癒、処置後トラブルなど、これ1冊で丸わかり!
ERで最もありふれた手技が創処置である。にもかかわらずこれまでは各施設でそれぞれの流儀で行われてきているのが現状である。しかし、今日の医療技術の進歩と疾病構造の変化は従来の感染症への対策だけでなく、高齢ハイリスク患者への対応、除痛、回復時間、整容、機能、コスト面への配慮などより高度なものが求められてきている。本書はこれらの進歩・変化に遅れない、最新の手技と方法を自在に駆使できるようイラストを中心に解説している。
関連書
ERの裏技 極上救急のレシピ集
ERの骨折 まちがいのない軽症外傷の評価と処置
ERの小児 時間外の小児救急どう乗り切りますか?
序文
20年以上前,横須賀海軍基地の米軍病院でインターンをしていたある日,5日前に額の創を縫合された白人の男の子が傷口をむき出しにしたままニッコリしてお母さんとERに再診に来たことがありました.当時の本邦では消毒のうえ,創をガーゼで被覆するのが普通だったため,たくましさとともに違和感を感じたのをよく覚えています.
同じく研修医時代,自分が救急外来で前腕の創の縫合処置を行った患者さんの件で後日外科外来から電話で呼び出しを受けました.急いで駆けつけたところ,創から取り出した10cm×5mm位のガラス片を持ちながら私を睨みつける外科スタッフの視線に体が凍りついた経験は忘れられません.
創の処置に関しては皆さんもさまざまな思い出があるかと思います.不思議なことに,うまく治癒したケースは忘れても,トラブルに至ったケースは何年経っても記憶から消えないものです.
創処置はERで最もありふれた手技である一方,これほどさまざまな流儀・習慣がまかり通っている医療行為はないと思います.多くの医師は,研修施設での経験や慣習に基づいて最も一般的だと「信ずる方法」を実践しているというのが事実のようです.創処置は古くから存在する技術にもかかわらず,近年では特別な場合を除き,生命予後に関わることが少ないためか,大規模な臨床研究も少なく,エビデンスの蓄積もそれほど多くないという事実とも関係があるのかもしれません.
歴史的にみると創処置は感染との闘いだったと言えます.19世紀半ばまでは,小さな創がもとで重大な感染症を併発したり,破傷風で亡くなる人々も少なくなく,開放骨折などはまさに命とりで,機能的・整容的問題よりいかに命を救うかという点が医師の最大の関心事でした.西洋では銃火器が出現した16世紀以降は戦争のたびに複雑外傷を取り扱う必要性が増し,それを担う医師(床屋外科医)たちの経験が豊富に蓄積されました.しかし,創処置が科学的理論のもとに進展したのは19世紀後半のパスツールおよびコッホの研究,およびその臨床応用ともいえるリスターの防腐法に始まる無菌法が考案された以降のことです.それまで経験的に行われてきた創処置に対して学問的立場から見直しが行われ,さらに抗生物質の発見,さらに戦場での実践経験を通じて創処置は近代医療の技術として確立してきました.
現在,通常の創が生命予後に影響することは少なくなりましたが,動脈硬化,糖尿病や慢性疾患を有するハイリスク高齢者は増え,昔とは違った視点が必要となりました.例えば,創はただ治ればよいというだけでなく,整容面・機能面への配慮,医療コスト,あるいは職場復帰に関わる治療期間などの時間的・経済的コストも重視されるようになっています.昔ならば創の治療は痛いのが当たり前,「赤チン」「ヨーチン」を塗られて痛い思いをしながら怪我の怖さを学べと教えられたものですが,今では小児だけではなく,年長者においても除痛は当然の医学的要求とされます.また,異物の残存や腱断裂の見逃しなど機能予後に影響を及ぼす事態にでもなれば病院―患者間トラブルや医療訴訟の対象になることもあり,初療医であるER医師の責任は相変わらず重大です.
「私は処置し,神が治癒し給うた」.16世紀のフランスで一介の床屋外科医から最後に宮廷外科医となって近代外科の父とまで称されたアンブロワーズ・パレの有名な言葉ですが,創傷治癒の理論が確立している現代においても名言です.現在ではさまざまな被覆材や縫合糸などが出回っているため,若い先生方の中には創傷処置は複雑に感じる人がいるかもしれません.しかし創の取扱いは文化や習慣によるところが今でも強く,新しい技術や資材が導入されても,医学の長い歴史の中で蓄積された原理・原則を参考にして,いかに創治癒の仕組みを理解してそれを妨げることなく治癒を促すか,という視点が重要であることを理解していただきたいと思います.
今回,シービーアールの三輪社長より『ERマガジン』の特集記事が,多くの先生方から好評を得ているとのうれしい連絡とともに保存版出版のお話をいただきました.これを機会に内容を加筆・追加し,よりわかりやすい形で再出版させていただくことになりました.
この本はすべての創処置を網羅するものではありませんが,創処置を行う機会が多い若いドクターはもちろんのこと,指導的な立場にある方にとっても有用であると思われますので幅広くご活用いただければと存じます.
本書の企画に際しては『ERマガジン』特集作成の段階より三輪敏社長,保存版出版にあたっては編集部長沢慎吾様から適切なアドバイスをいただきました.皆様に心より御礼申し上げます.
2012年 8月吉日
茅ヶ崎徳洲会総合病院 救急総合診療部
北原 浩
目次
序文
執筆者一覧
1.創処置を始める前に
全身から局所へ・創傷処置総論
2.局所麻酔と鎮静処置
3.創の評価と記録
重要組織損傷の評価と記録の重要性
4.縫合前処置
正しい洗浄法と術野確保など
5.デブリードマンの適応と方法
6.縫合法その1:使用機材について
角針と丸針、縫合糸、持針器、鑷子、二双鉤
7.縫合法その2
単結節、垂直・水平マットレス、二層縫合など各種縫合法の解説と使い分け
8.縫合法その3:複雑な創の縫合
弁状創、挫滅創、表皮剝離
9.特殊な創閉鎖法
傷は針糸だけで閉じるもの?
10.汚染創への対応
Delayedprimaryclosureは本当に必要か
11.特別な部位の縫合
専門医への依頼をする前に
12.特殊な創と専門医への紹介
13.ドレーン留置
軟部組織損傷・病変に対するドレナージについて
14.縫合後の処置とさまざまな被覆材の使用法
いろいろあるけれど、どれを使ったらいいんでしょう?
15.処置後の薬物投与
16.処置後の指導と合併症
きれいな創痕にするためのフォローも重要
17.熱傷の局所処置
ER診療での対応ポイントは単純化と創意工夫
18.創傷処置にまつわるERでのトラブル
人の振り見て我が振り直せ!トラブル症例集
19.創傷治癒のメカニズム
古くて新しい基本理論を理解する
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書籍情報
- ISBN:9784902470864
- ページ数:160頁
- 書籍発行日:2012年8月
- 電子版発売日:2012年10月27日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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