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- 眼科検査のグノーティ・セアウトン この検査では,ここが見えない
商品情報
内容
教科書には載っていない検査の落とし穴をエキスパートが徹底解説。
本書は、まず眼科診療のうち診断能力の向上を目指すために読む本として企画されました。なかでも、日常診療で行われる臨床検査の重要性に着目し、その適切な選択、効果的な用い方と情報の見方について記述することを目的としています。
序文
名医とは,鑑別診断がきちんとできる医師,いろいろな状況の裏にある問題点を正確に把握して的確な治療の方向性を提示することのできる医師のことをさすのではないでしょうか.現代医学は,ライフサイエンス,テクノロジーの発展によって極めて大きな進歩をみせ,多くの知見が蓄積されています.それが近年のIT(情報技術)の進展でデータベース化され,いつでも,ほぼ制限なく使える状態になりました.しかし,これらの情報からは,それぞれに異なる個々の患者さんの診断に至るための具体的な必要性,重要性は見えにくいものです.同じ情報でも,場合により臨床的な意味,意義が変化しうるからです.このため,目の前の患者さんにとっての最善の治療を求めて多くの情報を取捨選択し,インテグレートして的確な検査・診断と治療方針を決定する必要がありますが,これは機械には困難なことです.やはり人がその能力を磨いて当たらなければなりません.イメージとして,囲碁や将棋のプロ棋士にコンピュータが到底かなわないのと似ています.われわれ臨床医は,このようにコンピュータにはできない高度な判断を日々患者さんのために行っていますが,それを正しく行うためには,やはり不断の研鑽が必要です.
本書はこのような理由から,まず眼科診療のうち診断能力の向上を目指すために読む本として企画されました.なかでも,日常診療で行われる臨床検査の重要性に着目し,その適切な選択,効果的な用い方と情報の見方について記述することを目的としています.
本書の表題にある「グノーティ・セアウトン(gnothi seauton)」とは,古代ギリシャの格言で"汝自身を知れ"という意味をもつ言葉です.デルフォイのアポロン神殿に刻まれた銘としても知られ,ソクラテスがモットーとしたとも伝えられています.自分がこれまでに獲得した技量や能力を過信することなく,常に新たな知に対して謙虚であれ,という自戒のこめられた言葉といえるでしょう.そして,"この検査では,ここが見えない"という副題が示すように,本書では,日常検査での過信や惰性を戒めつつ,いつもとは少し違った視点から眼科検査を見つめ直して,検査の思わぬ落とし穴や見逃しがちなポイントを考えてみよう,という主旨で項目が集められています.これらの項目は,百科辞書的に網羅的に提示されているものではなく,それぞれの分野のエキスパートの先生方が,想定される日常診療におけるプライオリティに基づいて選抜したものとなっています.眼科分野での広範な検査,診断の中から,その本質につながる問題を提起し,基礎から学びつつコンセプトを理解できるようなテーマ設定と記述内容を心がけました.
本書が診断上の疑問を明らかにしたり,これまで気づかなかった視点を提供するなど,読者の日常診療に資するものとなれば幸いです.
2010年 10月
山形大学医学部眼科学教室教授
山下 英俊
熊本大学大学院生命科学研究部視機能病態学分野教授
谷原 秀信
目次
序
1.視機能・斜視弱視
正面視だけの検査では,交代性上斜位,下斜筋過動症,その合併を見逃すことがある
Goldmann視野検査では半側空間無視を見落とすことがある
交代遮蔽検査では微小斜視角を見落とすことがある
眼球運動検査だけでは正確な麻痺筋の同定ができないことがある
同名性孤立暗点は,静的視野検査スクリーニングでは見落とすことがある
自動視野計で標準的に用いられているプログラム30-2のみでは,すべての視野障害を評価できない
輻湊後退眼振は,普通の眼球運動検査では見落とすことがある
通常の視診では見落としてしまう中枢眼球運動異常のサイン―眼のゆれ―
眼位検査だけで判断すると斜偏位(skew deviation)を滑車神経麻痺と間違うことがある
眼球を牽引するだけでは,斜筋のForced duction testの正確な評価ができない
コカイン点眼試験以外に,Horner症候群の診断ができるものがある
レチノスコープでは,検眼レンズを使えない状況でも屈折を推定することができる
抗体検査やテンシロンテストだけでは,眼筋無力症の同定ができないことがある
2.角膜・結膜
眼表面の上皮系腫瘍病変を把握するためには,スリットランプによる直接観察法よりもフルオレセイン染色が有用である
角膜上皮の細胞膜障害は,フルオレセイン染色直後にはわからない(透過性亢進によるdelayed staining)
Fleischer輪を細隙灯顕微鏡で観察するとき,ディフューザーでは見えないがコバルトフィルターなら見える
アルカリ外傷の受傷直後のフルオレセイン染色では,重症度を正確に判定できないことがある
円錐角膜疑いの診断にはビデオケラトスコープが適しているが,高度円錐角膜の診断には不適である
結膜の障害は,フルオレセイン染色とコバルトブルーフィルターによる観察では見落とすことがある
点眼麻酔を行ったSchirmer試験(SchirmerⅠ法変法)では,反射性涙液分泌機能は評価できない
角膜上皮浮腫や細胞浸潤は,スリットランプ(細隙灯)の直接観察法では見逃すことがある
通常のスリットランプ(細隙灯)による診察では,眼瞼内反や結膜弛緩症を見落とすことがある
角膜浸潤と瘢痕の鑑別には虹彩反帰光法を活用する
アレルギー検査の弱点:各種検査の長所と短所
角膜上皮にびらんを認めない再発性角膜上皮びらんがある
アカントアメーバ角膜炎の初期では角膜生検検体を検鏡しても病原体が見つかりにくい
過去の屈折矯正手術の種類(LASIKまたはPRK)を判別するには,スリットランプによる直接観察法よりも,フルオレセイン染色を用いた角膜モザイクのパターンが有用である
スリットランプ(細隙灯)ではわからない角膜内皮異常,滴状角膜と見分けのつかない角膜内皮異常がある
起床時に症状があっても診察時には所見がない角膜疾患がある
ノンコンタクトマイボグラフィーでここが見える!:スリットランプ(細隙灯)に付属させたノンコンタクトマイボグラフィーはMeibom腺の形態を非侵襲的に簡単に観察できる検査法である
3.水晶体
知っているつもりで知らないことが多い調節検査
あなたは収差をどこまで理解していますか?:収差の検査方法と,収差を考慮した検査結果の読み方
翼状片-白内障同時手術の功罪:いくら綿密に術前検査をしても,同時手術だとIOL度数はずれる.そのときの計算方法は?
眼軸長測定:AモードとIOLマスターTMの使い分け
測定検者によるA定数の違い:鵜呑みにはできない検査結果
眼軸長が測定しにくい患者の検査方法:片眼手術患者や強度近視患者の術後度数を検査で決めるには
オートケラトメータの盲点:LASIK術後,角膜手術後の角膜には補正が必要である
多焦点眼内レンズ挿入時の瞳孔径検査の意義と注意点
多焦点眼内レンズ挿入眼の視機能検査
4.緑内障
眼底検査:緑内障に特徴的な視神経乳頭と網膜神経線維層の変化について
眼圧検査:眼圧測定に影響する因子と眼圧の自然変動
閉塞隅角眼の隅角検査:何が見えて何が見えないのか?そして何を"みる"べきか
視野検査:早期緑内障診断に有用な視野検査の使い分け
緑内障診断における画像解析装置による視神経乳頭・網膜神経線維層の解析:HRT,GDx(VCC ECC),OCT(タイムドメイン,スペクトラムドメイン)の欠点,利点
Humphrey視野計による緑内障の視野進行評価の注意点と限界
前眼部OCTはUBMの代わりになるか?前眼部OCTでわかること,UBMでわかることの違い
隅角鏡検査,隅角画像検査,隅角機能的検査:それぞれの利点と欠点
耳側視野欠損:緑内障か?非緑内障か?
同一の検査プログラム(検査配置点)だけでは早期緑内障の視野障害を検出できないことがある
眼圧測定の使い捨てプリズムは,何を用いても構わないのか?
視野のスコア分類は,日常診療に適用すべきなのか?
5.網膜・硝子体
硝子体の見方:後部硝子体剥離とラクナの見分け方
黄斑部の網膜剥離と網膜色素上皮剥離:加齢黄斑変性・中心性漿液性網脈絡膜症・急性期のVogt-小柳-原田病の鑑別
周辺部の網膜裂孔はどうやってさがすか?
未熟児網膜症の眼底検査で見逃してはいけないポイントは?
黄斑円孔と黄斑前膜の見分け方:OCTがなくても推察するポイント
サイトメガロウイルス網膜炎と急性網膜壊死関連網膜疾患をPCRなしで推察するポイント
糖尿病網膜症でフルオレセイン蛍光眼底検査なしで新生血管を推察するポイント
糖尿病黄斑浮腫をOCTなしで推察するコツ
網膜中心静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫:検査と視機能評価のポイント
加齢黄斑変性とその類縁疾患を見分ける
正常眼底に見えても視力が低下する網膜疾患がある
網膜色素変性関連疾患をどう見分けるか?
網膜の機能を検査すると,網膜の診断がとてもやさしくなる:網膜電図の効力
後極部の漿液性網膜剥離:中心性漿液性脈絡網膜症と早合点しないで
OCTなしで強度近視の黄斑分離をいかにして疑うか
網膜が薄くてわかりにくい強度近視の黄斑部出血の見分け方
フルオレセイン蛍光造影に見られる旺盛な色素の漏れは,加齢黄斑変性の脈絡膜新生血管の可能性がある
6.ぶどう膜
眼外結核病巣が証明されない場合,結核性ぶどう膜炎と診断するために必要な補助検査は?
初診でぶどう膜炎を診たときに必要なことは?
慢性・再発性ぶどう膜炎のマネジメント
HLA検査の適正な使用方法
Vogt-小柳-原田病と多発性後極部網膜色素上皮症の蛍光眼底造影における鑑別ポイント
サルコイドーシスの診断基準が変わった:診断には検査を反復施行することが重要である
ぶどう膜炎における血液検査オーダー(ぶどう膜炎セット)のポイント
PCR法の利点・欠点(定性PCR,RT-PCR,multiplex PCR,real-time PCR,broad-range PCR)
水痘・帯状疱疹ウイルス感染による内眼炎の重要度を調べるには,VZV皮内反応が有用である
急性網膜壊死に硝子体手術を行うタイミングと方法
眼内液(前房水,硝子体液)検査の実際と限界
隅角結節と周辺虹彩前癒着の密接な関係:細隙灯顕微鏡検査から
7.視神経
真のうっ血乳頭と,偽性うっ血乳頭やその他の乳頭腫脹の鑑別は,MRIでは困難である
相対的入力瞳孔反射異常(RAPD)だけで判断すると球後視神経症と間違いやすい疾患がある
視神経乳頭陥凹だけで判断すると緑内障と間違う視神経疾患がある
MRIでは原因がわからないうっ血乳頭がある
外傷性散瞳が合併していても相対的入力瞳孔反射異常(RAPD)は判断できる
危険な複視
上方視神経低形成の診断ポイント
8.外眼部(涙囊・涙道・眼窩など)
眼窩悪性リンパ腫はCT,MRIなどの画像上は浸潤性の増殖を示すとされているが,境界鮮明で孤立性のものもある
涙囊部悪性腫瘍の初期は涙囊炎との鑑別が困難である.臨床経過や涙洗の所見で腫瘍を疑う
上方視,下方視時の眼瞼の動きのみでは,眼瞼挙筋機能を正しく評価できない症例がある.正確な眼瞼挙筋機能はMRIで評価できる
眼内悪性リンパ腫の臨床診断と切除硝子体による確定診断の方法
松尾による代償期の腱膜性眼瞼下垂症(腱膜すべり症)の診断に睫毛クリップ負荷テストも有用である
涙液分泌テストとしては5分測定のSchirmer濾紙法よりも5~10秒測定の濾紙法,綿糸法,チューブ加綿糸法が有用である
涙道通過障害の諸検査と治療選択
インドシアニングリーン蛍光造影の血管拡張や蛍光漏出などの異常所見は,見間違えやすい
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書籍情報
- ISBN:9784916166371
- ページ数:380頁
- 書籍発行日:2010年10月
- 電子版発売日:2014年7月11日
- 判:B5変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:2
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