日本語要訳版・下巻 発刊にあたって

Textbook of Hemophilia 3rd edition の後半の部分，すなわちPART XI からPART XIX までを，日本語要訳版・下巻としてお届け致します。本書籍は，血友病や血友病関連疾患の基礎，臨床のみならず，診療体制，医療経済などが包括的に網羅されている『教科書』です。1st editionは2005年に発刊されましたが，早くも今回は3rd editionとして発刊されました。このように版を重ねるスピードが速い理由は，近年の本領域に関する進歩の速さを反映したものと考えられます。

日本語要訳版・上巻が血友病の基礎と臨床，整形外科領域に関する記載が中心であったのに対して，この下巻では，輸血感染症，遺伝子治療，検査，女性と出血性疾患，vonWillebrand病，希少出血性疾患，救急医療，血友病の評価，包括的ケアおよびケアの提供，と幅広く9つのパートから構成されています。各パートは，我が国の血友病のエキスパートの先生方にご協力を得て完成することができました。内容的には，我が国ではあまり取り上げられることの少ない項目も含まれております。これらは，今後，我が国において克服すべき課題と捉えることもできる項目です。我が国の実情とは異なることも多く，その点については担当する先生方に適切なコメントを加えていただきました。我が国は，最新の凝固因子製剤が使用可能な先進国の1つですが，まだ世界のトップレベルの血友病医療には届いていない箇所があることを認識させられる下巻の内容です。

利便性の高い新薬の登場，全く新しい治療法の開発，遺伝子治療などの先端医療などにより，血友病治療は今，大きなターニング・ポイントを迎えようとしています。このような状況下において，本書が皆さまの日常診療の座右の書としてお役に立てることを心から願っております。

聖マリアンナ医科大学
小児科 特任教授
瀧　正志

37 ウイルス性肝炎と血友病

38 輸血感染症：新興感染症

39 vCJD と血友病

40 血友病の遺伝子治療：概要

41 血友病遺伝子治療（血友病A およびB）の臨床試験

42 遺伝子治療：第VIII 因子および第IX 因子の分子工学

43 凝固検査の検査管理と精度管理

44 血友病における測定法の標準化

45 血友病の総合的止血機能検査

46 産婦人科：血友病

47 女性とvon Willebrand 病

48 von Willebrand 病：分子的側面

49 von Willebrand 病：疫学

50 von Willebrand 病：生物学的診断

51 von Willebrand 病の分類と臨床像

52 von Willebrand 病の治療：デスモプレシン

53 von Willebrand 病の治療：濃縮製剤

54 第II 因子

55 第V 因子欠乏症と第V 因子および第VIII 因子の複合欠乏症

56 先天性第VII 因子欠乏症

57 第X 因子と第X 因子欠乏症

58 第XI 因子欠乏症

59 第XIII 因子欠乏症

60 フィブリノゲン欠乏症

61 その他の希少出血性疾患

62 血友病の救急管理

63 臨床試験およびその他の手法

64 血友病患者の生活の質

65 血友病治療の経済学

66 血友病データベース

67 包括的医療と医療の提供：先進国

68 包括的医療と医療の提供：発展途上国

69 包括的医療と医療の提供：世界的な視点