臨牀消化器内科 2020 Vol.35 No.7 薬剤性消化器疾患の診療

  • ページ数 : 112頁
  • 書籍発行日 : 2020年6月
  • 電子版発売日 : 2021年2月24日
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商品情報

内容

特集「薬剤性消化器疾患の診療」

本特集を通じて,臨床に携わる先生方には,今一度,薬剤における陰の部分を再認識し,薬剤性消化器疾患が疑われる際の対処法を整理する機会としていただければ幸いである.(編集後記より抜粋)

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序文

巻頭言

薬物による有害事象(adverse drug reaction;ADR)は,臓器によって「薬剤性」と「薬物性」という二つの接頭語が用いられている.本来「drug」の日本語は「薬物」と思われるが,わが国では「薬剤性」と呼ばれる臓器障害が多い.また「injury」の日本語も本来は「傷害」とすべきと思うが,多くの臓器で「障害」が用いられている.薬物性肝障害(drug‒induced liver injury;DILI)についても,私が医師になりたての頃は薬剤性肝障害と呼ばれていたが,現在では厚生労働省で使用する用語も含めて薬物性肝障害となっている.以前,ジクロロメタンによる肝障害症例を経験したことがある.2012 年以降に印刷業で多発した1,2‒ジクロロプロパンやジクロロメタンによる胆管癌も,広い意味では薬物による消化管疾患に含まれると考えられるが,近年,海外でも問題視されている健康食品によるDILI も含め,「薬物性」の接頭語のほうが適切な気がする.

薬剤性消化器疾患としては,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による上部消化管や小腸の粘膜傷害と肝障害の頻度が高い.

食道粘膜傷害はビスホスホネートによるものが知られており,十分量の水で服用し,30 分は臥位にならないことの遵守が重要である.

NSAIDs による胃・十二指腸粘膜傷害は,胃潰瘍のほうが十二指腸潰瘍より頻度が高く,投薬中止と抗潰瘍薬の投与が必要である.投薬が中止できない場合は,プロトンポンプ阻害薬(PPI)もしくはプロスタグランジン(PG)製剤を投与する.NSAIDs 潰瘍の予防には,高用量の投与を避け,PG 製剤,PPI,H2受容体拮抗薬の追加が有用である.カプセル内視鏡とバルーン内視鏡の普及により,NSAIDsによる小腸粘膜傷害が高頻度に起こることが知られるようになった.NSAIDs による大腸粘膜傷害も頻度は少ないが知られている.低用量アスピリンによっても,通常のNSAIDs と同様に消化管粘膜傷害が生じることに留意する必要がある.さらに高齢者では,Helicobacter pylori 感染を伴い,NSAIDs と抗血栓薬を併用することもあり,消化管粘膜傷害のリスクが高まることに注意が必要である.

その他,薬物による大腸疾患として,PPI によるcollagenous colitis,抗菌薬による偽膜性腸炎や急性出血性大腸炎,麻薬性鎮痛薬などによる便秘や麻痺性イレウスなどが知られている.また,重度の下痢を生じる薬物として,抗菌薬,抗癌薬,NSAIDs,消化器科用薬(PPI,H2受容体拮抗薬,ミソプロストール)などが知られている.

DILI の多くは特異体質によるもので,予測可能のことがほとんどである.現在,わが国ではDDW‒Japan 2004 ワークショップの診断基準が広く用いられているが,専門医の判断がこれに勝ることに留意いただきたい.2010~2018 年の全国27 施設からの307 症例の検討では,男性が41%,年齢の中央値が61 歳,肝障害のタイプ別では肝細胞障害型が64%,混合型が20%,胆汁うっ滞型が16%で,以前より肝細胞障害型の割合が増加していた.服薬から肝障害発現までの期間は1 週以内が19%,2 週以内が29%,1 カ月以内が53%,3 カ月以内が79%で,3カ月を超える症例も21%も存在していた.起因薬の薬効別分類としては,NSAIDs と抗菌薬・抗真菌薬が各々11%,悪性腫瘍治療薬が10%,健康食品と消化器科用薬が各々9%,精神・神経科用薬が8%,漢方薬と循環器科用薬が各々6%,抗アレルギー薬が5%,造血と血液凝固関係薬と脂質異常症治療薬が各々4%であった.このなかでも,悪性腫瘍治療薬の割合が年々増加しており,今後の注意が必要である.

薬剤性膵炎は種々の薬物により生じ,投与後30 日以内の発症が多い.再投与では投与後1~3 日と短期間で発症することが多いとされている.1998~2007 年に報告された原因薬としては,L‒アスパラギナーゼ,メサラジン,タクロリムス水和物,サニルブジン,シクロスポリンがベスト5 であった.

近年,免疫チェックポイント阻害薬の登場により,これまでと異なる免疫学的機序による有害事象がみられ,immune‒related adverse events(irAEs)と呼ばれる.消化器障害としてはDILI,胆管障害や下痢,大腸炎などの下部消化管障害がみられ,症例の集積とともに,実態がわかってくると思われる.また,今後,分子標的治療薬との併用療法により,さらにDILI が増加する可能性もあり,注意が必要と考える.


滝川  一

目次

特集一覧

0 巻頭言

Editorial

滝川 一

Hajime Takikawa

1-1 薬剤性消化器疾患のメカニズム (1) 上部消化管(食道・胃・十二指腸)

Mechanism of Drug—induced Gastrointestinal Disease: Upper Gastrointestinal Tract

加藤 元嗣

Mototsugu Kato

1-2 薬剤性消化器疾患のメカニズム (2) 下部消化管(小腸・大腸)

Mechanisms of Drug—induced Gastrointestinal Damage -- Lower Gastrointestinal Tract (Small and Large Intestine)

渡邉 俊雄

Toshio Watanabe

1-3 薬剤性消化器疾患のメカニズム (3) 肝臓

Mechanisms of Drug Induced Liver Injury

淺岡 良成

Yoshinari Asaoka

2-1 薬剤性消化器疾患の診断 (1) 胃,十二指腸

The Clinical Manifestations of Drug—induced upper Gastrointestinal Disorders

坂田 資尚

Yasuhisa Sakata

2-2 薬剤性消化器疾患の診断 (2) 下部消化管(小腸・大腸)

Diagnosis of Drug—related Gastrointestinal Lesions -- Lower Gastrointestinal Tract (Small Intestine/Colon)

藤田 朋紀

Tomoki Fujita

2-3 薬剤性消化器疾患の診断 (3) 肝臓―薬物性肝障害の診断:DDW‒J 2004ワークショップ薬物性肝障害診断基準のこれまでとこれから

Diagnosis of Drug—induced Liver Injury; History and Future of the Diagnostic Scale of the Digestive Disease Week (DDW)-Japan 2004

渡邊 真彰

Masaaki Watanabe

3-1 薬剤性消化器疾患の治療 (1) 胃,十二指腸

Treatments for Upper Gastrointestinal Disorders Induced by Non—steroidal Anti—inflammatory Drugs

千葉 俊美

Toshimi Chiba

3-2 薬剤性消化器疾患の治療 (2) 下部消化管(小腸・大腸)

Treatment of Drug—induced Digestive Disorders -- Lower Digestive Tract (Small Intestine, Large Intestine)

黒河 聖

Sei Kurokawa

3-3 薬剤性消化器疾患の治療 (3) 肝臓

Diagnosis and Management of Liver Injury Induced by Drugs

長岡 克弥

Katsuya Nagaoka

4-1 その他の薬剤性消化器疾患 (1) 薬剤性(摂食)嚥下障害

Drug Induced Dysphagia

野﨑 園子

Sonoko Nozaki

4-2 その他の薬剤性消化器疾患 (2) 薬剤性食道粘膜傷害

Drug—induced Esophageal Injury

藤田 孝義

Takayoshi Fujita

4-3 その他の薬剤性消化器疾患 (3) 薬剤性膵炎

Drug—induced Pancreatitis

神澤 輝実

Terumi Kamisawa

4-4 その他の薬剤性消化器疾患 (4) 免疫チェックポイント阻害薬による消化器障害

Liver Injury and Colitis Induced by Immune—checkpoint Inhibitors

伊藤 隆徳

Takanori Ito

連載一覧

5-1 その5.実験論文と臨床論文との違いは? …①

加藤 順

英語で論文を書くことの効能・・・学会発表だけじゃダメなんですか?

5-2 その5.実験論文と臨床論文との違いは? …②

加藤 順

英語で論文を書くことの効能・・・学会発表だけじゃダメなんですか?

6 不整な微小血管構築像が範囲診断に有用であった除菌後胃癌の1例

A Case of Early Gastric Cancer after Helicobacter pylori Eradication Diagnosed by Magnifyng Endoscopy with Narrow Band Imaging

福本 康史

Yasushi Fukumoto

内視鏡の読み方

Endoscopy

7 初期対応の重要性が示唆されたE型急性肝炎症例

Case of Acute Hepatitis E, Suggesting the Importance of the Primary Medical Care

正木 尚彦

Naohiko Masaki

検査値の読み方

Laboratory Data

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書籍情報

  • ISBN:9784004003507
  • ページ数:112頁
  • 書籍発行日:2020年6月
  • 電子版発売日:2021年2月24日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:2

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