改訂2版 はじめに
本書は学生が薬理学を学習/復習し, 大学カリキュラムでの定期試験と共用試験や国家試験boardexaminationsを準備するために著された.このような目的をできるだけ効率よくかつ能動的に達成するためにこの第12版は改訂されている.これまでと同様に,『カッツング薬理学Basic & Clinical Pharmacology(現行14版,McGraw-Hill,2018;10版翻訳,丸善出版,2009)』の教科書ガイドという性質を保ちながら,正確でかつ最新の内容を盛り込んで薬理学で最高とされるレベルも保っている.
本書の構成は多くの薬理学授業コースや他の教科書と同様である.おもな導入章(例,自律神経薬理学や中枢神経薬理学の章)では関連する生理学や生化学の内容との統合を行っている.また,章ごとにまとまっていて独立して学習できるので,授業のノートあるいはさらに詳しい教科書や専門書との併読にも有用であろう.
以下に本書の活用法についてのポイントを説明しておく(付録Iに,ほとんどの学生に役立つと考えられる学習および試験の戦略の概要をまとめてある).
1. 各章の冒頭で基本概念や基本薬について要約している.その後,図表を駆使して詳説が始まる.ほとんどの図はフルカラー化され,新しい図も数多く掲載した.章末問題に取りかかる前に説明を十分に理解しよう.わからないことや疑問が生じた場合には,本書の親本であるBasic & Clinical Pharmacologyなどさらに詳細な参考書を参照してほしい.
2. 各章の冒頭には,その章の薬物を系統的に示した「概要」が記されている.この要約リストをそのまま記憶することを勧める.
3. 各章の「必修項目」は完全に理解する必要がある.
4. 基本原理と以前に学んだキー情報を継続して復習するために,ほとんどの章に「実力者問題」がある.この問題の解答も章末にあるが,それを見る前に独力で解答してもらいたい.
5. 各章の後半には10問程度の演習問題とその詳細な解説と正解がある.効率的な学習のために,本試験と同じような態度でこれらの問題に臨み,すべての問題に解答した後で正解と照らしてほしい.各問題の選択肢が正しいのか誤っているのかを正確に理解しているかを確認してほしい.
6. 各章の最後にある「到達目標」のチェックリストに答えられるようになっていなければならない.
7. ほとんどの章の最後にはその章で説明した薬物の包括表がある.この表では,重要な薬物名と,その作用機序,薬物動態,薬物相互作用,臨床適応,副作用が要約されている.
8. 本試験の準備では,付録Ⅰの学習戦略を読んでおこう.その後,付録Ⅱの「主要薬物のキーワード」が有用であろう.章ごとの説明では,ある特定の分野に偏りがちである.したがって,各章を終えるごとに本付録を見ることは統合的な理解にも有用である.
9. 各章を読破し,基本薬について十分に理解できたと思ったら,付録ⅢとⅣの総合試験100問に臨んでほしい.正解肢と簡単な解説,関連項目が説明されている章が記載されている.必要な場合は該当章を読み直そう.すべての問題あるいは相当数の問題を本試験と同じような態度で解答していくことを勧める.当てずっぽうで解答することは避けよう.単に正解肢を選択するだけではなく,各選択肢の真偽を説明できなければならない.必要に応じて関連章を読み直し,設問に関連した項目を復習してほしい.
この教科書ガイドは通常の教科書とともに使用することを勧める.『Basic & Clinical Pharmacology 14th edition(2018,未翻訳)』は本書と同じ章立てとなっている.しかしながら,他の標準的な医歯薬学系の薬理学教科書の補助教材としても使えるようになっている.本書を読破し理解した学生は試験においてよい成績を収め,薬理学の専門知識を十分に身につけることができると確信する.
『Basic & Clinical Pharmacology』と並行して発展してきたので,本書はこの教科書の各章の分担執筆をお願いした各分野のエキスパートの見解に対する,われわれ3名自身の解釈の表明という側面もある.『Basic &Clinical Pharmacology』の各章を執筆していただいた方々に感謝の意を改めてここで表したい.そして,教えるとはいったいどういうことなのかを日々われわれに教えてくれている各教員の方々と学生諸君にも感謝する.
本書ができ上がるまでの計り知れないほどの有用な編集作業に従事していただいたPeter Boyleと MichaelWeitzに心から感謝したい.Katharine Katzungの校正にも深く感謝する.
2021年6月
柳澤 輝行
丸山 敬
櫻井 隆