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実験医学増刊 Vol.34 No.5 ビッグデータ 変革する生命科学・医療

  • ページ数 : 223頁
  • 書籍発行日 : 2016年3月
  • 電子版発売日 : 2018年12月19日
5,940
(税込)
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商品情報

内容

生命科学・医学の分野におけるビッグデータ利用の動向を解説した初めての書籍.増え続けるデータの中から有用な情報を取り出して活用するための,アカデミア・医療現場・産業界の取り組みをご紹介します.

実験医学 最新号・バックナンバー・増刊号

序文

〜ビッグデータと 「システム医学」 〜

生命はネットワークである.全体は部分に,部分は全体に依存する.生体を構成する要素は液性因子や自律神経系で結ばれ,複雑なフィードバック機構が存在する.しかし近年,各要素の動態を解析することにより,相互に影響を与えるネットワーク構造のモデル化が可能となった.こうしたシステム生物学は,すでに周期的な遺伝子発現や状態遷移に関する研究を大きく進歩させた.

コンピューターの発達や次世代シークエンサーをはじめとする測定機器の進歩はめざましい.これらの生み出すデータの量は膨大であり,ゲノム科学や脳科学ではインフラの整備とインフォマティシャン育成の必要性が強く叫ばれている.しかしながら分子や細胞レベルの情報は,生理学データや臨床データと統合しなければ,臨床的な意味はわからない.

臨床医学や医療も社会システムの一部であり,多くの要因に影響される.これは生命体と同じである.特に高齢者に多い生活習慣病は多因子性疾患であり,臨床経過は山渓を旅するが如しである.こうした疾患に対する治療は確定的ではなく確率的である.そこで疫学研究に基づくEvidence Based Medicine(EBM)の重要性が1990年代から強調されるようになった.しかし疫学研究により集団に関する知見は得られても,目前の患者に対する効果まではわからない.さらに低い確率で生ずる重大な事象を予防しようとすると,1人が恩恵を受けるためには数百人を治療しなければならない.この場合,副作用や医療費が問題となる.こうした医療の有効性や意義を明らかにするには,臨床疫学や医療経済のデータが必要である.

現在の不確実な医学に対して,2015年2月に米国のオバマ大統領がPrecision Medicine Initiative を発動した.これは,ゲノム,バイオマーカー,病歴,生理検査,日常活動などを統合して,個別化もしくはサブグループ化した医療の実現をめざすもので,240億円の研究費を充てるという.すでにイギリスは2012年からゲノム10万人計画をはじめ,Precision Medicineに乗り出そうとしている.

Precision Medicineにおける個々の課題はとりわけ目新しいものではない.しかし医療・医学の多様なデータの統合に向けて国をあげて取り組む決意を表明した点で,国際的に大きなインパクトを与えている.わが国も医療と医学を推進しようとすれば,データ統合を進めなければならない.「システム医学」や「超スマートヘルスケア」などのビジョンのもとに,各研究者が独自の世界で努力することが重要である.ビジョンのないままに突き進むと,研究の成果を統合できずに終わることが多い.これは日本の科学や医学の歴史において,何度もくり返されてきた.

情報社会の到来により,研究者にはビッグデータや数理科学を踏まえた研究が必須となった.社会との連携や共創も注目されている.しかしビッグデータには多くの落とし穴があり,注意してデータを扱う必要がある.本特集はこうした時代の変化を現時点で俯瞰するために企画された.情報爆発時代の生命科学と医学・医療研究のためのプラットフォームとなれば幸いである.

終わりにご多忙のなか,ご執筆いただいた先生方に心より感謝申し上げます.


2016年2月

永井 良三,宮野 悟,大江 和彦

目次

統計思想の歴史

第1章 ビッグデータと生命科学

概論.ビッグデータ駆動型のサイエンスのインパクト

1.人体内の微生物ビッグデータ

2.がんゲノム解析とビッグデータ

3.国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC)におけるビッグデータ―PanCancer解析

4.エピゲノムのビッグデータ解析

5.網羅的分子情報のビッグデータと医学・創薬へのインパクト

6.ビッグデータと生体力学シミュレーション

7.研究リソースとしてのバイオデータとその活用

8.複雑生命系とビッグデータ解析

9.「京」を使った大規模データ解析によるがんのシステム異常の網羅的解析

10.心臓シミュレータとビッグデータの融合による新しい医療

11.ビッグデータ時代の統計解析技術

12.コグニティブ・コンピューティングと医療の世界―IBMワトソンを支える機械学習と自然言語処理

13.ビッグデータのライフサイエンスにおける活用

14.ビッグデータ

15.ビッグデータとライフサイエンス―行政の視点から

16.仮想空間と実証フィールドのキャッチボールによる課題解決は可能か?―代謝システム生物学を例として

第2章 ビッグデータと医療

概論.医療医学研究におけるビッグデータの現状と課題

1.ゲノムコホートとビッグデータ―東北メディカル・メガバンク計画

2.電子カルテからの医療ビッグデータベース構築

3.レセプトビッグデータ解析の現状と将来

4.DPCデータを用いた臨床研究とヘルスサービスリサーチ

5.地域医療情報を集約した次世代型地域医療データバンクの構築とビッグデータの活用

6.臨床疫学へのインパクト

7.クライオ電子顕微鏡法のもたらしたIT創薬革命

8.ゲノミックプライバシー

9.医療政策決定へのビッグデータ活用の可能性

第3章 ビッグデータへのリテラシー向上,解析のための知識とスキル,産業

1.ビッグデータことはじめ―ビッグデータ解析に必要な基礎スキル

2.医療情報としてのパーソナルゲノムデータ処理と課題

3.パーソナルゲノムサービスGenequestから見る生命科学のビッグデータ時代

4.ヘルスケア分野におけるDeNAの取り組みについて―遺伝子検査サービス「MYCODE」を中心に


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書籍情報

  • ISBN:9784758103534
  • ページ数:223頁
  • 書籍発行日:2016年3月
  • 電子版発売日:2018年12月19日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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