実験医学増刊 Vol.37 No.5 心不全のサイエンス

  • ページ数 : 221頁
  • 書籍発行日 : 2019年3月
  • 電子版発売日 : 2019年5月17日
5,940
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商品情報

内容

心不全のサイエンス
治療法開発をめざして心臓の謎を解く

超高齢社会の到来により,心臓のポンプ機能が低下する“心不全”の患者さんが急増し,対策が急務となっています.本書では,心不全の病態解明と新たな治療法の開発に向けた研究の最前線を特集します.

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序文

心不全による死亡は,心疾患の内訳のなかで最も死亡数が多い心疾患である.日本全体における心不全患者の総数は2020年にはおおよそ120万人に達するとされる.大きな理由の1つは,社会の高齢化であることは間違いない.心不全は年齢に応じて発症頻度は増加する.これらの心不全患者に対する医療は国家財政に影響する社会的課題である.

心臓機能障害をきたす因子は,臨床的には冠動脈,刺激伝導系,構造系,そして心筋(心膜)に分けられる.1929年ヴェルナー・フォルスマンは尿管カテーテルを左肘静脈より挿入し,心臓まで届くことを確認し胸部レントゲン写真を撮った.1953年ジョン・ヘイシャム・ギボンは,自分でつくった人工心肺装置にて26分の心停止を行い18歳の大学生の心房中隔欠損手術を成功させた.1960年ウィルソン・グレートバッチが開発したペースメーカーは,植え込まれた10人の患者ですべて機能した.これらの偉業は冠動脈形成術,植込型除細動器,両室ペーシング,経カテーテル的・外科的弁置換術,そしてノーマン・シャムウェイらにより確立された心臓移植など,すべてのカテーテル・デバイス治療,心臓外科手術につながっている.このように,心臓の治療の多くは,冠動脈,刺激伝導系,構造の「修理」が担っている.では,最も重要なパーツである心筋に対する治療はどうだろうか.これからの医療で最も必要とされる,one-size-fits-allではないテーラーメード医療のために,もう一度心筋に対する治療法を考える時間があってもよいのではないか.そんな思いでこの本を企画した.各項は,第一線で活躍されている研究者の方々に執筆をいただいた.心臓治療に携わるすべての臨床医,基礎研究者,疫学者が自分の持ち場のなかで何ができるか考えるきっかけとなれば,編者の望外の喜びである.

最後に,お忙しいなかご執筆いただいた執筆者の皆様と,この企画に対し重要な助言をくれた大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学のスタッフに深く感謝したい.


2019年1月

坂田泰史

目次

概論

心不全パンデミック時代に向けた心筋への治療アプローチとは

第1章 心疾患・心不全を診る最新技術

1.ヒト肺動脈性肺高血圧症に類似した血行動態と病理組織像を示す動物モデル

2.心不全における単一心筋細胞プロファイル

3.最新の心臓PET画像診断

4.オミックス情報解析技術をどう使うか

5.循環器領域におけるデータベース研究の現状と可能性

6.実用段階に入った心臓シミュレーション

第2章 心疾患・心不全の分子病態の最先端

1.興奮収縮連関―不全心筋ではどこが問題なのか

2.心筋細胞肥大の細胞内シグナル

3.発生および分化における代謝シフトと可塑性

4.心臓リモデリングにおけるオートファジーの役割

5.心不全と炎症

6.心筋炎と免疫の関与

7.microRNAの病態・診断・治療における意義

8.心臓線維化と心臓線維芽細胞

9.心筋-内皮細胞間クロストークによる心臓の発生・恒常性維持の制御機構―Neuregulin-1/ErbBシグナルを中心に

10.心腎連関のメカニズム

11.心脳連関のメカニズム

第3章 心疾患・心不全の治療法開発の最前線

1.創薬標的としての心臓のエネルギー代謝

2.直接的サルコメア制御剤による新しい心不全治療薬の開発

3.循環器疾患に対するドラッグデリバリーシステムの可能性

4.膜分子のメカノセンシングを標的とした治療戦略

5.疾患iPS細胞を心疾患の創薬に結びつける

6.心不全に対する新しい治療―細胞シート工学を応用した再生治療法の開発

7.ダイレクトリプログラミング(心筋直接誘導)

8.ゲノム編集の難治性心筋症医療応用

第4章 心疾患・心不全治療法開発への未解決問題

1.心筋細胞由来の悪性腫瘍はなぜ少ないか

2.心筋はなぜ動き続けられるのか―虚血に対する適応の観点から

3.左室心筋と右室心筋は何が違うのか

4.完全人工心臓はなぜ難しいのか?

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書籍情報

  • ISBN:9784758103770
  • ページ数:221頁
  • 書籍発行日:2019年3月
  • 電子版発売日:2019年5月17日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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