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救急・ERノート3 ERの輸液 ―まず何を選び、どう変更するか

  • ページ数 : 261頁
  • 書籍発行日 : 2011年11月
  • 電子版発売日 : 2014年12月12日
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商品情報

内容

エビデンスと経験に裏打ちされた一歩進んだ輸液療法が実践できる!

ERやICUにおける、輸液療法からみた重症患者マネジメントのポイントを、臨場感溢れるケーススタディを交え解説。いつ、何を、どのくらいの速度で行うべきかがわかります。
救急診療に携わる全ての医師に役立つ一冊です。

序文

羊土社が懲りずにまた輸液の本を出版しました.買うべきか,買わざるべきか.ため息をつく前に,ここで少し時間をかけて考えてみましょう.輸液の専門科とはどの科を指すのでしょうか.やはり水と電解質,そしてアシドーシスの補正に長けた腎臓内科でしょうか.それともいろんな重症患者の初療にかかわることでは経験数が豊富な救急科でしょうか.でも,どの科の先輩先生方も,しっかり輸液の指示を出し,患者さんはそれによって回復していきます(実は適当に輸液を選んでそれなりの速度で点滴すれば,患者さんが自分の力で治っているのではないか,と思われる節もありますが...).ということは,輸液について,医者たるもの"大抵のこと" はわかっているのが"常識" のようです.

この本の総論の1 ~3には『今さら聞けない輸液のキホン』として,その"大抵のこと" と"常識" が記載されています.そこを読んでだいたい理解できる想定内であれば,まず輸液の臨床能力は順調に進化していると考えてよいと思います.それ以上に輸液療法について興味がなければ,この本を買う必要はないでしょう.

もし,若い研修医への輸液教育に携わる可能性のある方,自分で出している輸液についてもう少し自信をもって指示出ししたい方には,総論の4がお勧めです.初期研修を終え,自分で診断し,自分で治療できる立場になった後期研修医向けのTips が詰め込まれています.ここもだいたい頭に入っているという方も,この本を買う必要はありません.

総論を読んで,なるほど!! と相槌を打った部分のある人は,第1章以降もきっと役に立ちます.それぞれの科の専門の先生方に,今後頻繁に出合うことになる重要疾患の初療とその後の管理に際して,輸液の視点から記述してもらっています.この章まで店頭で読むのは時間がかかりますし,書店の店員にもきっと嫌がられますので,その場合には購入をお勧めします.

主要な症候に対する初期輸液(第1章),診断確定後に変更する輸液の内容とタイミングについて(第2章),"大抵のこと" と"常識" を超えた一段上の輸液のコツを学べます.

さらに,輸液を極めたい方向けには,第3章【Advanced】と第4章【Expertise】が準備されています.ここには最新のエビデンスもお墨付きのガイドラインもない,ただのカンのみが存在している内容もあるかもしれません.しかし,そこは私が伏して執筆をお願いした臨床経験豊富な臨床医ばかりです.ここでしか聞けない,長い臨床現場の経験から身につけた役立つ輸液療法のpearls がたくさん隠されているはずです.読者のみなさんにとっては会ったこともない先輩達ですが,この本でネーベンとなって輸液療法の真髄を疑似体験して,明日からはあなたが自分の受け持ち患者から手に入れる輸液の成功体験を増やしていってください.

読み終わった後には,新しくやってきた後輩医師たちを前にして,経験とエビデンスに裏打ちされた輸液療法を誇らしげに伝授している自分の姿が瞼に浮かんでくるはずです.


2011年10月

昭和大学医学部救急医学 准教授
昭和大学病院救命救急センター センター長
三宅 康史

目次

総論 いまさら聞けない輸液のキホン

1 いまさら聞けない輸液療法の基礎知識

晶質液と膠質液:膠質浸透圧の働き

等張液と低張液:晶質浸透圧による輸液の使い分け

投与された輸液の行先

輸液療法の適応

施行後の評価

Basic Experience〔熱中症,感染症+脱水・低栄養+熱中症(?)〕

Pros & Cons

細胞外液補充液として使うならどちらが有利か.生理食塩水vs乳酸リンゲル液

乳酸リンゲル液vs酢酸リンゲル液

2 初期研修医のための基礎知識(1)~水バランス・Na・Kの調節

水と電解質の基礎

水バランスの調整

Naの調整

低ナトリウム血症

高ナトリウム血症

Kの調節

3 初期研修医のための基礎知識(2)~酸塩基平衡と血液ガスの解釈

酸・塩基とは?

酸の産生

酸の処理

血液ガスの解釈

4 後期研修医のための"Tips"水と電解質

水とNaに関するTips

Kに関するTips

酸塩基平衡に関するTips

One More Experience

脱水症とRAA系 とSick Day Rule

なぜ,サイアザイドがループ利尿薬より低ナトリウム血症を起こしやすいのか?

心不全における適切な輸液製剤とは? 5%ブドウ糖液は"Na負荷"にはならない?

高ナトリウム血症の治療

refeeding syndrome

代謝性アルカローシスに対する輸液治療

第1章 ケースから学ぶ主要症候への輸液と治療

1 ショック

[問題解決型ケーススタディ]

症例1:外傷による徐脈性ショック,症例2:肝機能障害のある頻脈性ショック

[解説:ショックの基礎知識と輸液療法]

ショック時の循環動態

ショックの分類

ショック時の輸液療法

Pros & Cons

ショックの定義に低血圧は必要ない?

2 意識障害

[問題解決型ケーススタディ]

[解説:意識障害患者への初期診療と輸液療法]

意識障害患者および脳卒中患者の初期診療

意識障害患者への輸液のポイント

One More Experience

全身痙攣+低血糖

意識障害の原因はアルコール? それとも...?

Pros & Cons

一過性脳虚血発作(TIA)

抗てんかん薬

3 呼吸不全

[問題解決型ケーススタディ]

[解説:呼吸不全患者への輸液療法]

呼吸不全における輸液の考え方

本症例から学べること

One More Experience

肺水腫では臥位は厳禁!

Pros & Cons

ALI/ARDSの輸液管理

ALI/ARDSへのアルブミン投与の効果

4 高体温 真夏に来院した,寒さを訴える高体温の高齢者

[問題解決型ケーススタディ]

[解説:高体温患者への輸液療法]

水分の出納バランス

高体温の原因と脱水

体温・気温上昇による不感蒸泄の増加

病態による不感蒸泄の変化

発汗によるNaの喪失量

脱水の診断指標

加齢と脱水

加齢と低ナトリウム血症

初期輸液のポイント

One More Experience

初期輸液のポイント

Pros & Cons

鉱質コルチコイド反応性高齢者低ナトリウム血症について

5 致死的胸痛疾患 特に急性冠症候群と急性大動脈解離について

[問題解決型ケーススタディ]

症例1:急性冠症候群

[解説:急性冠症候群での輸液療法]

心臓カテーテル検査後,急性冠症候群に対する輸液療法

造影剤使用に対する輸液療法

急性冠症候群の合併症に対する輸液療法

[問題解決型ケーススタディ]

症例2:急性大動脈解離

[解説:急性大動脈解離での輸液療法]

6 腹痛・下痢・嘔吐

[問題解決型ケーススタディ]

[解説:嘔吐・下痢患者への輸液療法]

脱水の程度と輸液

嘔吐下痢に伴う脱水の治療

One More Experience

皮下輸液

7 外 傷

[問題解決型ケーススタディ]

[解説:外傷患者の初期診療と輸血]

重症外傷患者の初期診療

外傷性ショックの診断

外傷患者への輸血療法

One More Experience

レベル1システム1000による急速・加温輸液

初期輸液療法による循環動態評価法

輸血必要症例の重症度

出血性ショックの重症度と血中乳酸値

Pros & Cons

骨髄路確保の有用性

大量輸血療法では新鮮凍結血漿の準備を!

アシドーシス改善に有効な輸液とは?

8 アナフィラキシー

[問題解決型ケーススタディ]

[解説:アナフィラキシー患者に対する輸液療法]

アナフィラキシーとは

アナフィラキシーの症状

アナフィラキシーの原因物質

アナフィラキシーの治療

エピネフリンの自己注射薬「エピペン®」について

One More Experience

アナフィラキシーの原因は?

Pros & Cons

エピネフリン投与の適応とは?

9 めまい

[問題解決型ケーススタディ]

[解説:めまい時の輸液・抗めまい薬の選択]

輸液の適応

使用する輸液,抗めまい薬

抗めまい薬の選択

めまい時の身体診察のポイント

Pros & Cons

中枢性めまいを否定できない場合,MRIを行うべきか?

第2章 主要疾患の輸液管理の実際

1 脱水症,低栄養状態に対する輸液

脱水症について

低栄養について

One More Experience

神経性食思不振症の具体例

Pros & Cons

脱水,低栄養,低アルブミン血症の患者にアルブミン製剤を投与すべきか?

2 急性心不全・心原性ショック

初期の病態把握

まず十分な酸素投与を

急性心不全の病態把握

血圧が保たれた急性心不全の輸液と治療

血圧が低めの急性心不全に対する輸液と治療

One More Experience

急性心不全の具体例

Pros & Cons

フロセミドはボーラス投与か持続投与か?

3 高血糖と低血糖

測定した血糖値に応じた初期方針

高血糖症へのアプローチ

DKA・HHSの治療方針

DKA・HHSの実際の治療戦略

低血糖症へのアプローチ

One More Experience

ケトン体が減らない...?

帰宅? それとも入院?

Pros & Cons

開始輸液変更のタイミング

4 脳血管障害

脳血管障害における輸液管理の目的

循環管理の重要性

血圧のコントロール 4電解質のコントロール 5脳血管障害における特殊病態の治療

One More Experience

電解質異常の原因は?

Pros & Cons

急性期脳梗塞において膠質液を血漿増量薬として用いた血液希釈療法は有効か?

5 腎不全(急性&慢性)

初療時にどの輸液を選択するか?

乏尿を認めた場合,腎前性,腎性,腎後性を鑑別する

高カリウム血症の治療

初期対応後の維持輸液量の考え方

急性腎不全? or 慢性腎不全?

慢性腎不全患者への維持輸液をどうするか

One More Experience

腎機能障害のある敗血症症例

Pros & Cons

低容量ドーパミンは役に立たない!?

6 重症感染症(→重症敗血症→敗血症性ショック)の輸液療法

SSCGの基本的な流れ

敗血症の血行動態

敗血症性ショックに対する初期輸液

重症感染症,敗血症性ショック時の初期輸液

カテコラミンの投与...タイミングと開始量

抗菌薬の投与...タイミングと薬剤の選択

抗菌薬のde-escalation

抗菌薬の中止タイミング

SSCGに記載されているその他の支持療法(直接,輸液に関わるもの)

One More Experience

抗菌薬の溶解時に注意すべきこと

G群溶連菌による敗血症

7 熱傷の輸液療法

重症度評価

熱傷患者への輸液療法

One More Experience

熱傷の輸液療法の実際例

Pros & Cons

膠質液投与のタイミング

ビタミンC大量療法

熱傷診療のgold standardとは?

ガイドラインとの"つきあい方"

8 心肺停止蘇生後脳症(脳低温療法)

心肺停止蘇生後のPCAS

心停止後脳障害

心停止後心筋機能不全

全身虚血再灌流障害

心停止を発症した病態の継続

2010年心肺蘇生国際コンセンサスにおける脳低温療法と冷却輸液の急速投与

脳低温療法の適応-冷却輸液の急速投与を行うべき症例

脳低温療法維持期の輸液

One More Experience

どこまで治療を行うべきか?

敗血症との類似点

Pros & Cons

冷却輸液療法は安全か?

脳低温療法はどの科が行うべきか?

第3章 小児・高齢者への輸液

1 小児の輸液の実際と注意点

まず何をつなぐか

どう変更するか

維持輸液

One More Experience

アセトン血性嘔吐症

Pros & Cons

維持輸液は3号液か? それ以外か?

2 高齢者の輸液の実際と注意点

輸液を行ううえで踏まえておくと有用と思われる知見

一般論は成り立つか?

高齢者の輸液を行うにあたって何が本当に重要か?

救急の場面での初期輸液の注意点

One More Experience

エコーによる循環動態評価を行いながら蘇生を行った例

Pros & Cons

多めに行うか? 控えめとすべきか?

第4章 周術期の栄養・輸液管理

1 重症疾患の栄養療法

栄養管理の目標

栄養管理が必要な患者とは

必要エネルギー量

経腸栄養と静脈栄養

血糖管理

One More Experience

経腸栄養施行中に嘔吐が出現した1例

Pros & Cons

静脈栄養の開始時期

2 周術期(外科)

術前栄養は必要か?

術後の栄養・電解質管理

代謝バランスからみた術後の回復過程

手術別の輸液療法について

One More Experience

吻合部への負荷と経腸栄養

3 術中輸液

麻酔,手術に伴う生体の変化

一般的な術中輸液管理

術中輸液に関する最近の考え方

One More Experience

60歳男性の肝内胆管癌の1例

Pros & Cons

晶質液 vs. コロイド液

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書籍情報

  • ISBN:9784758113434
  • ページ数:261頁
  • 書籍発行日:2011年11月
  • 電子版発売日:2014年12月12日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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特記事項

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