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商品情報
内容
看護の業務拡大の一環として,在宅・施設などにおける看取りにおいて看護師が死亡診断業務の一端を担うことになり,その他,救急医療の現場などでは被虐待児・高齢者,性犯罪被害者への対応など看護師が必要とされる場面が多い.実際,このような社会的事案に対して看護師が活躍する場が増えており,被害者に対する心のケアや家族を亡くした人に対するグリーフケアをシームレスに行うことが求められる.本書はそれらの社会的事案に遭遇した際に看護師がどのように対応すべきかを概説した一冊.
序文
序
わが国では高齢多死社会を迎え,在宅看取りなどへの対応が求められている.また,連日,多くの児童や高齢者が虐待され,性暴力やドメスティックバイオレンスの被害にあっている人も多い.公的データでこれらの被害者数が公表されているが,その数は氷山の一角に過ぎない.さらに,事故,犯罪,突然死などで家族を失い,悲嘆に暮れている人も多い.このような人々へ救いや支援の手を届けることは,わが国における喫緊の課題である.2017 年に厚生労働省は,「法医学に関する教育を受けた看護師が死亡時に全身を観察し,ICT 機器を用いて医師に報告する手法が可能」との見解を示し,看護師の業務拡大を認めた.したがって,わが国では看護職が社会のなかでさらに活躍する機会が増えている.
看護職には診察室だけでなく,さまざまな現場において診察の補助,専門的検査の介助及び心のケアの実践が求められている.看護学教育モデル・コア・カリキュラムにおいても,看護系人材として求められる基本的な資質・能力のなかに,「社会から求められる看護の役割の拡大」が明記されている.さらに,望ましい助産師教育におけるコア・カリキュラムにも,地域とつながる助産師活動が推奨されている.したがって,社会で救いや支援を求める人々に対して,看護職として適切な対応が行えるべく教育が必要である.
本書の著者らは,地域において被虐待者,性暴力被害者,家族を亡くした遺族と接し,さらに死因究明,矯正医療,在宅看取り,災害医療などに従事している.これらの分野には看護職の参加が欠かせない.そこで,人材育成を目的として,滋賀医科大学では看護学の卒前教育において法医看護学を導入した.諸外国でForensic nursing とよばれる分野に相当するが,臨床に密接に関係する法医学の一部分を扱う.そして,① わが国の死因究明制度,② 死の判定と在宅看取り,③ 救急医療と看護学,④ 外因死の現状と予防対策,⑤ 性暴力と看護診断,⑥ 被虐待者へのアプローチ,⑦ 突然死とグリーフケア,⑧ 犯罪被害者支援センターにおけるケア・予防対策,のテーマで講義を行っている.教員はすべて,実際の現場で活動している医師,看護職であり,現場経験をもとに基礎知識から実務的な内容まで扱っている.本書は,このような教育の背景にあるエッセンスをまとめた.わが国では,法医看護学が発展途上であり,実務に従事する看護職は少なく,また,関連する成書もほとんどない.本書は,著者らの現場経験をもとに,実地看護職が社会的事案に遭遇した際に,どのように対応すべきかなどが概説されている.
本書を通して現場の緊張感を感じ取って頂き,多くの看護職が社会のなかで幅広く活躍して頂きたい.そして,読者が救いの手を差し伸べることで,多くの命が救われ,さらに,心身の傷害を負っている人が癒されることを願っている.
編者を代表して 一杉正仁
(東海大学医学部専門診療学系産婦人科 石本人士)
目次
第1章 法医看護学が目指すもの
1.法医看護学とは
2.わが国における法医看護学のありかた
3.死の医学と看護学
4.被虐待児,被虐待高齢者への対応
5.性暴力・性犯罪への対応
6.矯正医療について
7.大規模災害における看護師の役割
8.関連団体における支援
第2章 法医看護学に必要な解剖学
1. 損傷表現に必要な解剖学
2. 性暴力に関する男性・女性の解剖学
3. 口腔解剖学
第3章 法医看護学に必要な生理学
1. 子どもの生理学
2. 女性の生理学(月経・妊娠・流産)
3. 高齢者の生理学
第4章 死の判定と死因究明制度
1.死の判定
2.死因究明制度について
第5章 損傷のみかたと診断
1.損傷とは
2.損傷の観察と記録
3.損傷の種類と特徴
第6章 薬物中毒の実態
1. 薬物乱用と犯罪
2. 薬物中毒と症状
第7章 IPV・性暴力と看護
1.親密な関係のパートナーからの暴力
2.性暴力
第8章 児童・高齢者虐待における対応
1. 被虐待児への対応
2. 被虐待高齢者への対応
第9章 救急医療現場で求められること
1.異状死と救急医療
2.知っておくべき用語の解説
3. 救急要請における諸問題と集中治療における延命治療
4. 救急医療現場における看護師の役割
第10章 在宅看取りとターミナルケア
1. 訪問看護ステーションと看護師の役割
2. 在宅看取りをめぐる社会的問題の解決
第11章 グリーフケアと看護の役割
1. 避けられない死へのグリーフケア
2. 子どもを亡くした家族へのグリーフケア
3.救急外来における子どもの突然死に対するグリーフケア
4.フォロー外来と自助グループの紹介
5.医療者自身のケア
第12章 地域における予防・支援活動
1. 性犯罪・性暴力の予防教育
2. 犯罪被害者支援センターの活動
3. 女性刑事施設における看護職の活動
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書籍情報
- ISBN:9784525505516
- ページ数:193頁
- 書籍発行日:2023年9月
- 電子版発売日:2023年9月22日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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