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実験医学増刊 Vol.41 No.12 いま新薬で加速する神経変性疾患研究 〜異常タンパク質の構造、凝集のしくみから根本治療の真の標的に迫る

  • ページ数 : 226頁
  • 書籍発行日 : 2023年7月
  • 電子版発売日 : 2023年7月12日
6,160
(税込)
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商品情報

内容

凝集体の形成・伝播・クリアランス機構から新薬・診断法開発まで

新薬登場を契機に「misfolding病」に注目が集まっています.本書は,根本治療法のカギを握る,異常タンパク質の凝集の過程,伝播・クリアランスのメカニズムから新薬・早期診断法開発のいまを1冊に網羅!

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序文

2021年6月,アメリカ食品医薬品局は世界初のアルツハイマー病(Alzheimer’s disease,AD)の根本治療薬として抗アミロイド抗体であるアデュカヌマブを条件付きで承認した.

同年末に本邦での承認は見送られたが,2022 年12 月にレカネマブの第3 相臨床試験で主要評価項目の達成が報告されるなど認知症,特に最も多い認知症疾患であるAD の疾患修飾療法(disease-modifying therapy,DMT)登場という,神経変性疾患領域で最も大きなブレークスルーが起こる予感が高まっている.

タウオパチー,パーキンソン病やレビー小体型認知症などのレビー小体病(Lewy bodydiseases,LBD),筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis,ALS)といったAD以外の“misfolding 病”においてもタウ,αシヌクレインやTDP-43 といった病態タンパク質の凝集機序,細胞内局在や液- 液相分離,構造と毒性・伝播相関,さらにはタンパク質排泄システムの一端が明らかになり病因解明やDMT 開発の糸口が少しずつ見えだしている.それぞれの疾患は,特定の特徴的なタンパク質の凝集体の蓄積を示すが,複数の病的タンパク質凝集体の混在を示す場合も多く,神経変性に関与するさまざまな病理学的タンパク質間の相互作用が明らかになっており,2023 年度より村上,中山,小野ら(いずれも本増刊号執筆者)が中心となり,日本学術振興会の学術変革領域研究(B)「メタアグリゲートの超分子挙動と動的キャプチャー(略称:メタアグリゲート)」もスタートした.さらには炎症性グリア細胞の活性化などが生じて病態の進行速度や臨床表現型に影響をおよぼしうることも示されている.それらの成果をもとに,抗体医薬や核酸医薬を中心にDMT の臨床試験が行われているだけでなく,将来のDMT 登場に備えた生体試料マーカーや画像診断の開発も進んできている.

しかしながら,現在も,AD やLBD などの抗体を用いた臨床試験での失敗のニュースが相次いでいるのも現実であり,まだまだドミノ倒しのようにはいかない.また抗体投与に伴うアミロイド関連画像異常(amyloid-related imaging abnormalities,ARIA)は看過できない所見で,ARIA を中心とした血管病態の解明も必須の研究と思われる.また,DMT はすべての病期の患者の症状を十分改善させる効果は見込まれず,より有効な予防・治療法の開発が求められている.認知症などの神経変性疾患は多因子疾患であり,欧州では多因子複合介入による予防法が開発されており,わが国のコホート研究でも,生活習慣および生活習慣病と認知症発症リスクとの関連が明らかとなっている.

このたび,「いま新薬で加速する神経変性疾患研究」と題した実験医学増刊号を企画し,タンパク質構造と疾患のトピックに関して包括的に理解を深めていくために全国的に第一線で活動されている先生に執筆をお願いさせていただくことにした.

本増刊号が,生命科学・医学の基礎研究者のみならず,製薬企業研究者,脳神経内科医や精神科医をはじめとする医療従事者など広い読者層にお届けできて,皆様の知的好奇心が大いにくすぐられ,それが明日からの研究や診療に少しでも繋がれば,編者としてはこのうえない喜びである.


2023年6月

小野賢二郎

目次

概論 タンパク質構造と凝集にもとづく神経変性疾患の新たな理解

第1章 タンパク質構造と病態

1.タンパク質構造異常の伝播【野中 隆】

2.アミロイドの核形成過程の制御分子群【村上一馬】

3.異常タンパク質伝播を司るメンブレントラフィック機構【長谷川隆文】

4.ALS病態のカギを握る液-液相分離【小出眞悟,須貝章弘,小野寺 理】

5.神経変性疾患における異常蓄積タンパク質のクライオ電子顕微鏡による解析【亀谷富由樹,長谷川成人】

6.高速原子間力顕微鏡によるアミロイド凝集の構造動態解析【中山隆宏】

第2章 凝集体を形成するタンパク質の最新トピック

1.バイオマーカーや疾患修飾療法の標的としてのAβ【小野賢二郎】

2.タウタンパク質に関する新知見がもたらす新たな治療戦略【武田朱公】

3.αシヌクレインの伝播経路 ―パーキンソン病を全身病ととらえる【奥住文美,服部信孝】

4.TDP-43の凝集体形成機序と治療戦略【引網亮太,漆谷 真】

5.ポリグルタミンタンパク質の構造転移・凝集機序と毒性【小澤大作,永井義隆】

第3章 凝集体の蓄積・クリアランスに関わる話題

1.アルツハイマー病におけるミクログリアの活性化とアミロイドβクリアランス【祖父江 顕,山中宏二】

2.選択的オートファジーによるオルガネラ分解【山野晃史】

3.脳の老廃物の処理機構:glymphatic systemとIPAD【齊藤 聡,猪原匡史】

4.神経変性疾患変異による線維凝集体形成の構造学的機構 ―low-complexityドメインの機能に与える影響【加藤昌人】

5.疾患修飾機構としてのタンパク質凝集に対する炎症応答【富田泰輔】

6.神経系エクソソームとグリア細胞制御 ―神経疾患との関連【河原裕憲,宿谷直輝,華山力成】

7.アルツハイマー病の動物モデルの現状と今後の展望【眞鍋達也,齊藤貴志】

8.iPS細胞技術を用いた神経変性疾患研究【鈴木英文,今村恵子,井上治久】

第4章 治療法の現状と展望

1.ミスフォールディング病に対する抗体医薬の現状 ―Alzheimer病・Parkinson病を中心に【稗田宗太郎,小野賢二郎】

2.神経変性疾患を適応とする低分子化合物【富山貴美】

3.神経変性疾患に対する核酸医薬【坂上史佳,横田隆徳】

4.神経変性疾患に対する遺伝子治療の展望【長野清一,望月秀樹】

5.アルツハイマー病に対する低出力パルス波超音波(LIPUS)治療の開発【進藤智彦】

第5章 コホート研究・先制医療

1.発症前段階を対象としたトライアルレディコホート研究【佐藤謙一郎,新美芳樹,岩坪 威】

2.石川県における認知症疫学研究 ―石川健康長寿プロジェクトから見えた課題【篠原もえ子,小野賢二郎】

3.ブレインバンク【髙尾昌樹】

4.血液バイオマーカーによる早期診断 ―アルツハイマー病を中心に【徳田隆彦】

5.PETを用いた神経変性疾患の早期診断【片岡優子,遠藤浩信,樋口真人】


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書籍情報

  • ISBN:9784758104128
  • ページ数:226頁
  • 書籍発行日:2023年7月
  • 電子版発売日:2023年7月12日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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