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- 実験医学別冊 もっとよくわかる!シリーズ もっとよくわかる!腸内細菌叢~“もう1つの臓器”を知り、健康・疾患を制御する!
商品情報
内容
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序文
改訂にあたって
本書の初版を2019 年に発行して以来,3 年が経過した.初版では,腸内細菌叢がさまざまな疾患と関連することを紹介してきたが,実際に腸内細菌叢を疾患の治療に結びつける取り組みについては,多くが展望を紹介するにとどまっていた.ところが本書出版後,いくつかの疾患においては,治療薬の効果にまで腸内細菌叢が影響し,実際に腸内細菌叢の制御が疾患治療に活用できるという報告が相次いだ.いまや腸内細菌叢の研究は,単に疾患と関連する・しないというフェーズから,腸内細菌叢の情報を健康・疾患の制御にいかに活用していくかを考えるフェーズに移行した.
“もう1 つの臓器”としての腸内細菌叢の機能が明らかとなり,その重要性が年々増している.健康・疾患という枠組みに限らず,生命科学のあらゆる分野において,腸内細菌叢がかかわるといっても過言でない時代となった.そのような時代において,研究の「羅針盤」として本書を活用いただくべく,このたびアップデートを行った.
今回の改訂では5 つの話題を新たに加えた(オルガノイド,統計および数理・生態学的アプローチ,ポストバイオティクス,ファージ療法,国内のマイクロバイオーム創薬開発).また改訂にあたり,腸内環境情報をどのように知りどのように社会実装していくか,その方向性を明確にするために,第Ⅲ部を「腸内環境制御(腸内デザイン®)へのアプローチ」として,「見る」「知る」「操る」の3 つの切り口として整理した.残念ながら,初版の発行時に貴重なお話をいただいた光岡知足博士は,2020 年12 月に90 歳で亡くなられた.初版の序文にも記したが,光岡博士との対談のなかで一番印象に残っているのは,難培養性細菌をどのように培養したらよいかを尋ねたとき「そもそも僕らの時代は全部難培養性だったから」というものである.先人の経験や知見の積み重ねの上にいまの私たちが立っていることを忘れがちであるが,今や多くの腸内細菌の培養プロトコールが確立されており,腸内細菌叢研究や臨床研究で日常的に用いられている.私たちが偉大な先人からバトンを受け継いでいるのをあらためて痛感した.それと同時に,この知見を次の世代にバトンとして受け渡すことが,私たちの使命であると再認識した.研究成果の社会実装をめざしたスタートアップ設立や,腸内細菌叢研究にかかわる人口を増やすべく本書出版などの啓蒙活動を行ってきたが,博士の目にはどのように映っているだろうか.
私が腸内細菌叢研究をはじめておよそ四半世紀が経つ.個人的には腸内細菌叢研究は,医学・健康科学・栄養学・生命科学などのさまざまな学問領域の「架け橋」となるような分野と実感している.学問領域どうしが腸内細菌叢という共通言語を介してつながっていく様子は,あたかも人間と腸内細菌という異種生物が代謝物質を介して一体となり「超生命体」を形成しているのを見ているかのようにも感じる.本書を手に取られた方が,1 人でも多くこの分野に興味をもっていただき,ご自身の研究の発展につなげていただくことを願う.
2022年8月
執筆者を代表して
福田真嗣
目次
第Ⅰ部 腸内細菌の基礎知識
1章 腸内細菌研究ことはじめ【福田真嗣】
1 腸内細菌の発見から20世紀前半まで―便の観察からはじまった
2 20世紀後半―腸内細菌の培養・同定・分類法の確立
3 そして腸内マイクロバイオーム研究へ
2章 腸内細菌と健康・疾患
1 腸内細菌の分類・命名【平山和宏】
2 ヒトの健康と腸内細菌叢【福田真嗣】
3 ヒトの疾患と腸内細菌叢【福田真嗣】
3章 生体バリアと腸内細菌叢【後藤義幸】
1 物理的・化学的バリア
2 生物学的バリア(粘膜免疫系)
3 環境因子としてのバリア(常在細菌)
4 免疫系の修飾(TLR・NLRなどを介した作用)
第Ⅱ部 腸内細菌叢とヒトの疾患
4章 腸内細菌のはたらき【福田真嗣】
1 腸内細菌にとっての栄養
2 腸内細菌叢はもう1つの臓器
5章 腸内細菌叢のバランスを変化させる要因【小田巻俊孝】
1 食事
2 生活習慣
3 薬物療法
4 加齢
5 環境
6 出生経路,乳児期の栄養方法の違い
7 宿主遺伝要因
8 おわりに
6章 腸内細菌叢のバランス異常(dysbiosis)と疾患
1 消化器疾患【鎌田信彦】
2 代謝性疾患【木村郁夫】
3 がん【大谷直子】
4 免疫系疾患【後藤義幸】
5 循環器疾患【山下智也】
第Ⅲ部 腸内環境制御(腸内デザイン®)へのアプローチ
7章 腸内環境を “見る” 方法
1 ヒト腸内細菌叢メタゲノム解析手法【中村祐哉,山田拓司】
2 ヒト腸内環境のメタボローム解析手法【福田真嗣】
3 メタボロゲノミクス【福田真嗣】
8章 腸内環境を “知る” 方法
1 細菌の単離・培養・保管【坂本光央】
2 無菌動物とノトバイオート動物【平山和宏】
3 オルガノイドを用いた解析【宣 旭,佐々木伸雄】
4 統計および数理・生態学的アプローチ【鈴木健大】
9章 腸内環境を “操る” 方法
1 プレバイオティクス【境 洋平】
2 プロバイオティクス【小田巻俊孝】
3 ポストバイオティクス【小川 順】
4 ファージ療法【藤本康介,植松 智】
5 便移植療法の現状と展望【石川 大】
第Ⅳ部 腸内細菌叢研究の実用化の試み
10章 腸内細菌叢を標的とした医薬品開発
1 生菌製剤(単菌/カクテル)【金 倫基】
2 腸内細菌に作用する低分子薬【金 倫基】
3 腸内細菌創薬の課題点と今後の展望【金 倫基】
4 マイクロバイオーム創薬の産業化動向【中原 拓】
11章 腸内環境に基づく層別化医療・創薬・ヘルスケア【福田真嗣】
1 腸内環境情報を活用した病気の診断・予測
2 腸内環境情報を活用した近未来の層別化医療・創薬・ヘルスケア
あとがき【福田真嗣】
執筆者一覧
執筆者プロフィール
索引
Column
① ときにまぎらわしい菌の命名【福田真嗣】
② 私と腸内細菌研究との出会い【福田真嗣】
③ サツマイモを食べるとなぜおならが出るか?【福田真嗣】
④ 細菌の “顔” を観察しよう【鎌田信彦】
⑤ 腸内細菌研究との出会い【木村郁夫】
⑥ 共生と排除のしくみ【後藤義幸】
⑦ 微生物の学名【坂本光央】
⑧ 幹細胞学者がなぜ腸内細菌?【佐々木伸雄】
⑨ ハンプティー・ダンプティー群集【鈴木健大】
⑩ 転換期【小川 順】
⑪ 私と腸内細菌研究【金 倫基】
⑫ 利己的な腸内細菌?【福田真嗣】
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書籍情報
- ISBN:9784758122115
- ページ数:195頁
- 書籍発行日:2022年11月
- 電子版発売日:2022年11月11日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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