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- 消化器疾患のゲシュタルト
商品情報
内容
今や巷には診断・治療に関するマニュアル本が溢れています。マニュアル本は、臨床経験の浅い研修医にとっては有益な内容かもしれませんが、一定の臨床経験を経た医師にとっては(一般的に)“つまらなく、味気ない”ものです。
消化器領域においても例外なく、マニュアル本はあまたありますが、消化器疾患の本質をズバッと言い当ててくれるような本はこれまで皆無でした。
この本の面白いところは、マニュアル本でみられる言葉の羅列ではなく、その病気の全体像を知る医師が、エビデンスにとどまらず、自身の経験も交えながら自由気ままに書いている点です。
執筆は、筆者が信頼を置く総合内科医・救急医・消化器内科医の皆さんにお願いしました。個々の内容はかなり自由度が高く、執筆者の個性が文体ににじみ出ています。とても楽しい本になりました。
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序文
序文
食わず嫌いという言葉があるが、一度食べたら大好物になる珍味というものも、この世には存在する。医者にとって漢方とは、そのようなものだ
ゲシュタルトとは“知覚現象や認識活動を説明する概念で、部分の総和としてとらえられない合体構造に備わっている、特有の全体的構造”と定義されています。私が“ゲシュタルト”という言葉に出会ったのは、岩田健太郎先生の『構造と診断 ゼロからの診断学』(医学書院刊)を読んだ時です。なんとなく“ゲシュタルト”の意味が分かりかけた頃、金芳堂さんから『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』が出版されました。この本は、臨床経験豊富な先生方が、“いろんな病気の全体像”をいまだかつてその病気を診たことのない医師にもわかるように分かり易く解説する内容で、面白過ぎてむさぼり読んだ記憶があります(あまりに夢中になって風呂場まで持って読んでいたので表紙も中身もボロボロになってしまいました)。
“全身が痛いと訴える高齢者を診たらリウマチ性多発筋痛症(PMR)を考える”……当時、これほど端的にズバッと病気の全体像を表現する大胆さに魅了されました。“カンピロバクターの初期症状はむしろ腸管外症状であり、初発症状は頭痛、筋痛、倦怠感でインフルエンザと見紛う(成田先生)”、“ビュンビュンとせわしない熱を出す比較的若めの女性、熱が高いわりにしんどそうではなく、有熱時に皮疹をみたら成人発症スチル病を考える(岩田先生)”等、いずれも病気の全体像が染み出るパールに溢れていました。この本では、病気そのものの本質を見抜くための視点が述べられた後、病気の細部にわたる描写がなされており、病気の本質を理解するための思考過程を重視していた点に好印象を持ちました。
今や巷には診断・治療に関するマニュアル本が溢れています。マニュアル本は、臨床経験の浅い研修医にとっては有益な内容かもしれませんが、一定の臨床経験を経た医師にとっては(一般的に)“つまらなく、味気ない”ものです。その理由の一つに、熟練した臨床医の思考過程が論じられることなく、エビデンスやtipsだけがさらっと書かれている点に物足りなさを感じてしまうからではないでしょうか。消化器領域においても例外なく、マニュアル本はあまたありますが、消化器疾患の本質をズバッと言い当ててくれるような本はこれまで皆無でした。そんな折、たまたま、金芳堂さんから、消化器病の分野で何か本を出しませんか? とお話を頂いたとき、真っ先に消化器分野での“ゲシュタルト本”が頭に思い浮かびました。
この本の面白いところは、マニュアル本でみられる言葉の羅列ではなく、その病気の全体像を知る医師が、エビデンスにとどまらず、自身の経験も交えながら自由気ままに書いている点です。いまだその病気を経験したことのない臨床医が、病気の全体像をみずみずしくイメージでき、日々の臨床が楽しくなる一助となればと願って企画しました。執筆は、筆者が信頼を置く総合内科医・救急医・消化器内科医の皆さんにお願いしました。個々の内容はかなり自由度が高く、執筆者の個性が文体ににじみ出ています。とても楽しい本になりました。
最後に、消化器領域でのゲシュタルト本を発刊させていただくにあたり、金芳堂編集部の浅井健一郎さん、河原生典さんには大変お世話になりました。ここに厚く御礼を申し上げます。
2022年2月吉日
大船中央病院 中野弘康
目次
執筆者一覧
口絵
略語一覧
【消化管 消化器疾患を疑われる全身疾患、漿膜疾患を含む】
FILE01 慢性下痢症 (家研也)
はじめに
症例提示
慢性下痢のメカニズムをイメージする
慢性下痢へのアプローチ
おわりに
FILE02 慢性便秘、IBS(D、M、C) (田中由佳里)
機能性消化管疾患を疑う場面
症例提示
機能性消化管疾患診断時は二次的要因の検索を
検査と治療、病態背景
IBS、機能性便秘の薬剤選択
FILE03 IgA血管炎 (岡村幸重)
IgA血管炎とは
消化器内科医がIgA血管炎を診断する際に必要なキーポイント
IgA血管炎の歴史と疾患概念
IgA血管炎の症状の特徴
症例提示
IgA血管炎の治療
IgA血管炎の予後
おわりに
FILE04 逆流性食道炎(胸やけ) (松本健史)
はじめに
病態とメカニズム
REとNERD
治療
GERDを誘発する可能性のある疾患
症例提示
薬剤によるもの
おわりに
FILE05 好酸球性食道炎/好酸球性胃腸炎 (松本健史)
好酸球性消化管疾患
好酸球性食道炎
症例提示
好酸球性胃腸炎
FILE06 アニサキス症 (後藤田卓志)
はじめに
症例提示
アニサキス症の診断
アニサキス症とは
ゲシュタルト
FILE07 原因不明の消化管出血OGIB(Obscure gastrointestinal bleeding) (細江直樹)
Obscure gastrointestinal bleeding(OGIB)の定義
OGIBに対するマネジメント
症例提示
おわりに
FILE08 消化性潰瘍 (今枝博之)
症例提示
上腹部痛の鑑別
背部痛
腹痛のない消化性潰瘍
NSAIDs起因性消化性潰瘍
特発性潰瘍
FILE09 家族性地中海熱 (國松淳和)
忙しい消化器医の皆さんへ
FMFとは
FMFの診断基準について
FMFのゲシュタルト
コルヒチン
FMFと消化器医
消化器医が気に留めるべき「触れ込み」
FILE10 急性虫垂炎 (須藤博)
症例提示
解説
病歴から考えること
身体所見
まとめ
FILE11 前皮神経絞扼症候群(ACNES) (土田知也)
症例提示
考察
ゲシュタルト
FILE12 癌性腹膜炎 (勝俣範之)
症例提示
診断は「原発性腹膜がん」
「原発不明がん」という疾患を理解する
治癒可能な「がん性腹膜炎」を見逃すな! 腹膜播種があっても、StageIVではないがんが存在する
がんの診断に、病理診断は必須であることを忘れるな!
FILE13 大腸がん/大腸ポリープ (小澤俊一郎)
大腸がん
大腸ポリープ
まとめ
FILE14 腸管虚血(急性腸間膜動脈血栓症/NOMI/腸間膜静脈血栓症) (大木初里、松本純一、北野夕佳)
解剖
総論
症状
検査
治療
症例提示
FILE15 憩室炎 (山中克郎)
病態生理
症状と身体所見
診断
分類
治療
FILE16 Fitz-Hugh-Curtis症候群 (山中克郎)
病態生理
症状と身体所見
診断
治療
症例提示
ゲシュタルト
症例の後日談
FILE17 糖尿病性ケトアシドーシス (山中克郎)
誘引
腹部臓器以外の原因で起こる腹痛
糖尿病性ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群
治療
FILE18 腹腔動脈起始部圧迫症候群 (中野弘康)
鑑別
腹腔動脈起始部圧迫症候群とは
診断基準
経過
【肝臓】
FILE01 肝障害(健診で指摘された時どう対応したらよいか) (奥瀬千晃)
「沈黙の臓器」
症例提示
健診と肝障害
肝酵素の正常値
おわりに
FILE02 急性肝炎 (松本伸行)
急性肝炎の各論
急性肝炎のゲシュタルトについて
症例提示
FILE03 肝硬変 (中野弘康)
症例提示
肝硬変の病態・疫学
肝硬変の病態
問診と身体所見
検査
治療
おわりに
FILE04 アルコール性肝疾患 (重福隆太)
はじめに
ALDの血液・生化学検査所見
診断ゲシュタルト
症例提示
おわりに
FILE05 非アルコール性脂肪性肝疾患 (重福隆太)
はじめに
脂肪性肝疾患の分類とNAFLD/NASHの疾患概念
診断ゲシュタルト
症例提示
高度の線維化症例の拾い上げ
おわりに
FILE06 B型肝炎 (渡邊綱正)
はじめに
B型急性感染
B型慢性感染
おわりに
FILE07 C型慢性肝炎 (高橋秀明)
はじめに~今昔物語~
C型肝炎の自然経過
C型肝炎の検査や診断
C型慢性肝炎に対する治療
インターフェロンベース治療例とインターフェロンフリー
おわりに
【胆膵】
FILE01 急性膵炎 (新後閑弘章)
はじめに
症例提示
診断と治療
膵周囲貯留
おわりに
FILE02 急性胆嚢炎/急性胆管炎 (土岐真朗、久松理一)
はじめに
急性胆嚢炎
急性胆管炎
おわりに
索引
編著者プロフィール
COLUMN/腹膜垂炎
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書籍情報
- ISBN:9784765319058
- ページ数:288頁
- 書籍発行日:2022年4月
- 電子版発売日:2022年3月28日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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