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- 新・脳血管内治療兵法書~宮地流 心・技・体 六十八手
商品情報
内容
7年分の知見の蓄積を踏まえ、前版より大幅アップデート。血管内専門医、指導医を目指す方に最適の1冊。動脈瘤、AVM、DAVF、血栓回収療法まで、分野のトップリーダーが、臨床医が知っておくべき戦略・ポイント・ノウハウを開陳! 症例画像を排し、どのような臨床場面でも普遍的に活用できるよう、カラーイラストや写真を用いて、tipsやpitfallを細部まで掘り下げ詳述。
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序文
巻頭言(第二版序文)
脳血管内治療医は脳血管疾患治療における需要が増え,特に血栓回収療法が積極的に行われるようになってからは,多忙をきわめるようになっている.技術,知識はアップデートする必要があるが,野戦病院のような環境で日常を送っていると,それを行う暇もないしmotivation も失われる.新しい発想や展開はそのようなときは生まれにくく,レスキュー処置にしても経験のある方法の範囲内で収めようとする.また逆に見たことも聞いたこともない思いつきの手段や対応を実行すれば,ほとんどの場合,失敗することになる.それでは先人がたどった同じ歴史の繰り返しになってしまう.
この本には私自身の手前味噌や勝手な考え方も入っているが,学会や論文などで発表されているさまざまな良い部分や役立つ情報を引用している.また,初版刊行から7 年の歳月が過ぎて,その間にたくさんの新しいデバイスや技術が生まれた.脳動脈瘤や血栓回収療法のように大きく様変わりしたパートもある.
本書では初版のときにはなかった記述をたくさん盛り込んだが,逆に削除した項目もある.さらに,初版とは考え方が変わって異なる内容に書き換えた部分もある.これは7 年間の経験により,思い至らなかったり,自身の考えの間違いを自覚したりしたところを改め,他家より吸収したより良いやり方を取り入れているからである.「前と違うじゃないか」と思われる部分はそのようにご理解願いたい.
お気づきのように,本書の副題は初版の「四十八手」ではなく「六十八手」となっている.「四十八手」は相撲の決まり手として使われるが,剣術においては,幕末の北辰一刀流における指南法として六十八手が確立されたようである.その極意は「心気力一致」という,まさに「心技体」と同様の心得を重んじた.カテーテルを竿のごとく突き出して行う我々の治療法は,こちらのほうがフィットするのではないか,また手数も初版時より大幅に増えたことより,「六十八手」とすることとした.
また初版の表紙は夕焼けをバックに修練する剣士の絵と思っていらっしゃる読者が多いようであるが,これは実は朝焼けのつもりである.これから陽が昇って脳血管内治療がさらに発展していく様子を表した.今回は,まさに太陽が大地を明るく照らし,この治療が円熟期を迎えたことを示す真昼の世界をイメージしてある.
我々の世界は文字通り日進月歩で,とどまるところを知らない.編集者よりこの本を「完全版」として出してはどうかというオファーをいただいたが,私は「新」という頭にしてほしいと申し出た.その場で「完全だ」と思っていても,明日には否定されたり,もっと新しいアイデアが出てきたりするかもしれない.この第二版は,現在の時点での私が知る範囲の知識をアップデートしたにすぎない.初版にも書いたが,押しつけではなく,批判的な目で読んでいただき,合意,納得できるところを取り込んでいただき,困ったときに多少でもお役立ていただければ幸いである.
追記
この『新・脳血管内治療兵法書』を執筆しているときに大変悲しい知らせが入った.私のmentor であり敬愛するLuc Picard 先生がご逝去された.私がNancy に留学していたときに本当に可愛がっていただき,その後も公私ともに心の支えとなっていただいた先生であり,脳血管内治療の世界学会であるWFITN の前身であるVal d'Isèremeeting(心之章 F チャレンジ参照)を立ち上げられた,まさに脳血管内治療の「父」である.気さくで寛大なお人柄で,世界中のneurointerventionist から尊敬された先生が亡くなられたのは残念でならない.個人的にも深い悲しみと喪失感に襲われたが,師の教えを自分なりにまとめた拙著を,せめてもの供養としてPicard 先生に捧げたい.同時に,わが国の知識と技術の集大成である『完全版 脳血管内治療学』(メディカ出版,2018)に寄稿していただいた,Neurointervention の真髄が語られた名巻頭言を,編集部のご好意により,本書に再度掲載させていただく.
2022 年3 月
愛知医科大学脳神経外科・脳血管内治療センター宮地 茂
目次
【体之章】
A 装置と環境
Ⅰ 血管撮影装置
Ⅱ 操作台
Ⅲ 器材の管理
ⅰ ガイドワイヤーの血栓付着予防
ⅱ 器材の収納
ⅲ シリンジ,ヘパリン生食,造影剤の管理
B セットアップと基本手技1(血管造影法)
Ⅰ 脳血管撮影法
Ⅱ 血管内治療器材のセットアップ
ⅰ シリンジ
ⅱ 加圧バッグと灌流ライン
ⅲ アクセスルートの確認
Ⅲカテーテリゼーション(catheterization)
ⅰ 経大腿セルジンガー法
ⅱ 経腕セルジンガー法
ⅲ 経橈骨動脈アプローチ
ⅳ 頚動脈直接穿刺法
Ⅳ 撮影
ⅰ 撮影のポリシー
ⅱ 撮影の準備
ⅲ 撮影の方法
ⅳ 造影剤の量
ⅴ 造影する順序
ⅵ catheterizationに伴うトラブル
Ⅴ 止血
Ⅵ 脊髄血管撮影
ⅰ セットアップ
ⅱ catheterizationと撮影法
Ⅶ 小児脳血管撮影
C 基本手技2(アプローチ)と基本姿勢
はじめに
Ⅰ 術者と助手の役割分担
Ⅱ catheterizationとワイヤリング
Ⅲ 治療姿勢
D インフォームドコンセント
E 合併症発生時の対応
【技之章】
A 動脈瘤
はじめに
Ⅰ セットアップ
ⅰ 前処置
ⅱ ガイディング
ⅲ ワーキングアングル
ⅳ マイクロカテーテルとマイクロガイドワイヤーの選択
ⅴ ガイドワイヤーのshaping
ⅵ カテーテル先端のshaping
ⅶ セットアップ:各論
Ⅱ 誘導
ⅰ ワイヤー先行(リード)による誘導
Ⅲ strategy
ⅰ framing
ⅱ filling
ⅲ finishing
ⅳ flow-disruptor
Ⅳ 各論
ⅰ 瘤形別
ⅱ 大きさ別
ⅲ 部位別
ⅳ 再発瘤
ⅴ 破裂か未破裂か
Ⅴ アシストテクニック
ⅰ バルーンアシスト
ⅱ ステントアシスト
ⅲ ダブルカテーテル法
Ⅵ flow diverter(FD)
ⅰ 総論
ⅱ 各論
ⅲ FRED
ⅳ SURPASS
Ⅶ トラッピング
ⅰ 総論
ⅱ 各論
Ⅷ トラブルシューティング
ⅰ 瘤の穿孔
ⅱ 術中破裂への対処法
ⅲ 虚血性合併症
ⅳ コイルのstretching
ⅴ コイルのmigration
ⅵ コイルの離脱不能
ⅶ 遅発性合併症
Ⅸ 抗血小板療法,抗凝固療法
ⅰ 抗血小板療法
ⅱ 抗凝固療法
B 動静脈奇形
はじめに
Ⅰ 脳動静脈奇形
ⅰ 総論
ⅱ 各論
Ⅱ 脊髄動静脈奇形
Ⅲ 乳児の動静脈奇形
Ⅳ 顔面静脈奇形の硬化療法
Ⅴ トラブルシューティング
C 硬膜動静脈瘻
Ⅰ 病態
Ⅱ 総論
ⅰ 経静脈的塞栓術
ⅱ 経動脈的塞栓術
Ⅲ 各論
ⅰ 海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻(CS-DAVF)
ⅱ 横静脈洞,S状静脈洞部硬膜動静脈瘻(TS-SS DAVF)
ⅲ anterior condylar confluence 部硬膜動静脈瘻(ACC-DAVF)
ⅳ 上矢状静脈洞部硬膜動静脈瘻(SSS-DAVF)
ⅴ テント部硬膜動静脈瘻(tentorial DAVF)
ⅵ 前頭蓋底部硬膜動静脈瘻(ethmoidal DAVF)
ⅶ 頭蓋頚椎移行部硬膜動静脈瘻〔cranio-cervical junction(CCJ)DAVF〕
ⅷ 穹隆部のDAVF
ⅸ 脊髄硬膜動静脈瘻(spinal DAVF)
ⅹ 脊髄硬膜外動静脈瘻(spinal epidural AVF:SEDAVF)
Ⅳ 合併症とトラブルシューティング
ⅰ TVEに関するもの
ⅱ TAEに関するもの
ⅲ その他
ⅳ 遺残したDAVFの後治療
D 外傷性血管障害
はじめに
Ⅰ 動静脈瘻
ⅰ 外傷性頚動脈海綿静脈洞瘻
(traumatic carotid-cavernous fistula:TCCF)ⅱ 外傷性椎骨動静脈瘻
(traumatic vertebral arteriovenous fistula:TVAVF)ⅲ 浅側頭動静脈シャント(STA-STV shunt)
ⅳ 中硬膜動静脈シャント(MMA-MMV shunt)
ⅴ 鎖骨下動静脈瘻
Ⅱ 外傷性解離
ⅰ 解離瘤
ⅱ 解離性閉塞(狭窄)
ⅲ 頚椎損傷に伴う椎骨動脈閉塞
Ⅲ 外傷性出血
Ⅳ 慢性硬膜下血腫
E 脳腫瘍
はじめに
Ⅰ 脳腫瘍塞栓術
ⅰ アプローチとstrategy
ⅱ 各論
Ⅱ 悪性脳腫瘍に対する抗がん剤動注療法
F 頚動脈狭窄
Ⅰ 頚部内頚動脈狭窄
ⅰ 適応
ⅱ アプローチ
ⅲ strategy
ⅳ 周術期管理
ⅴ トラブルシューティング
ⅵ 術後管理
Ⅱ 左総頚動脈狭窄
ⅰ アプローチ
ⅱ strategy
Ⅲ 左鎖骨下動脈狭窄(閉塞)
ⅰ アプローチとstrategy
Ⅳ 右鎖骨下動脈狭窄(閉塞)
Ⅴ 椎骨動脈起始部狭窄
ⅰ アプローチ
ⅱ strategy
Ⅵ 静脈洞狭窄
G 頭蓋内動脈狭窄
はじめに
Ⅰ 動脈硬化性狭窄
ⅰ 適応
ⅱ アプローチ
ⅲ strategy
ⅳ 術後管理
ⅴ トラブルシューティング
Ⅱ 解離
Ⅲ 血管攣縮(vasospasm)
H 脳塞栓症
はじめに
Ⅰ 治療法の変遷
Ⅱ 治療の実際
ⅰ 治療前の対応
ⅱ 適応
ⅲ アプローチ
ⅳ 基本
ⅴ 部位別の治療戦略
ⅵ 手技
ⅶ トラブルシューティング
ⅷ 術後管理
Ⅲ 静脈洞血栓症の治療
I tandem lesionの考え方
Ⅰ 総論
Ⅱ 各論
ⅰ 頚部頚動脈狭窄+脳動脈瘤
ⅱ 頚部頚動脈狭窄+頭蓋内狭窄
ⅲ 頚部頚動脈狭窄(閉塞)+遠位塞栓
ⅳ 動脈瘤+動脈瘤
ⅴ 動脈瘤+AVM
ⅵ 動脈瘤(破裂)+血管攣縮
ⅶ 頚動脈部のtandem lesion
J function test
Ⅰ BOT
Ⅱ Wada test
ⅰ strategy
Ⅲ 誘発試験(provocation test)
Ⅳ venous sampling
【心之章】
A デリカシーとセンス
Ⅰ デリカシー
Ⅱ センス
ⅰ センスとは
ⅱ 困難への対処における姿勢
B バランス
C トレーニング
Ⅰ 技術の習得について
Ⅱ 戦略法の習得について
Ⅲ チームとしてのトレーニングシステム
D プロフェッショナル
Ⅰ プロフェッショナルとは何か?
Ⅱ プロとしての専門医
ⅰ 専門医の質について
ⅱ 脳血管内治療専門医は単なる職人
ⅲ 脳血管内治療学のすすめ
E アカデミズム
Ⅰ 論文や発表について
Ⅱ 主著と共著について
Ⅲ 脳血管内治療領域での臨床論文のネタ
Ⅳ データの捉え方
F チャレンジ
Ⅰ 日本の脳血管内治療の歴史
ⅰ societyとして
ⅱ 専門医制度
ⅲ 機関誌とテキスト
ⅳ 脳血管造影
ⅴ 治療法の変遷
ⅵ デバイス認可
ⅶ 需要の拡大
Ⅱ わが国からの発信
巻末資料:デバイスと取り扱い企業一覧
巻末資料:診療行為に関する説明書
①未破裂脳動脈瘤
②血栓回収療法
③CAS
④AVM
⑤DAVF
本書における略語一覧
巻末言
side memo(SM)一覧
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書籍情報
- ISBN:9784840478625
- ページ数:576頁
- 書籍発行日:2022年5月
- 電子版発売日:2022年6月22日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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