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- 血液透析処方ロジック
商品情報
内容
患者一人一人に合わせたより良い透析を提供するために, 実際にどんな設定項目があり,どんな意味を持つのか, また,どのように設定をすればよいのかを,透析の原理に立ち返りレクチャーした一冊.
■関連書籍
・ 臨床医のための腎病理読解ロジック
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序文
前書き
筆者が腎臓内科研修医になったばかりの頃に,透析室に初めて入ったとき,それまでローテーションしたどの科よりも(異質とも言ってもいいくらい)特殊な世界に感じました.見たこともない機械や物品,あらゆるものが数値化された透析記録,透析以外では使うことのないであろう特殊な薬剤,そして自分が医者をやっているよりもはるかに長い期間透析を受けている患者さんたち,ただただ圧倒されることばかりでした.とにかくわからないことだらけだったので,指導医に貼り付いて得た耳学問知識を書き込んだマニュアルを見ながら何とかやっていました.ひとりで透析室回診なんて本当に,ヒヤヒヤものでした.
以下は筆者が初めて透析室を回診した際,実際にスタッフからあった相談です.
スタッフ
「○○さん(←患者さん)ですが,今日は増加が多いです.除水量どうしますか?ただ,ここ数回の透析ではシャントの脱血が悪く,あまり引きすぎるとシャントが詰まるかもしれませんのでQB下げますか?それと,この頃食欲が出てきてよく食べるようになったみたいで,後半の血圧が低めなのでドライウェイトの検討お願いします」.
もう,ほとんど外国語.前半くらいで頭の中は「?」で充満し,すぐに思考もフリーズ.すぐさま指導医に電話という情けなさ.......とにもかくにも,この本のタイトルであるロジカルな透析処方や至適透析の考え方などとは程遠い状態です.
ちなみに先ほどの質問の内容を翻訳すると,
「○○さんは本日の透析間体重増加がドライウェイトの5%を上回っていて,15mL/kg/minを超える除水スピードで除水しないとドライウェイトまで到達しませんが,総除水量は何kgに設定しますか?ただ,シャントに狭窄があり,急激な血圧低下があったりするとその狭窄部分が閉塞してしまう可能性がありますので,血液流量(QB)は少し下げて体外循環しますか?数カ月前より食事量がアップしていて,体に筋肉や脂肪がついてきているため,現在のドライウェイトのままだと循環血漿量の割合が少ないと思います.実際に除水をすると血管内脱水傾向になって透析後半に血圧が低下するようなので,ドライウェイトを再評価して必要に応じてアップしてはどうでしょうか?」という意味になります.
患者さんの現状を鑑みて透析条件をどのように調節するのか,というスタッフからのメッセージに対する語彙も知識も絶対的に不足していたのです.
透析条件を設定することは,患者さんの症状に合わせて薬を処方するのと似ています.腎不全の病態に合わせた必要十分で適切な(=適正な)透析を「処方」するには,透析による物質除去のメカニズム,除水に伴う体の変化,透析に使われるデバイスや資材のもつ特性,体外循環に使われる用語等をひとつひとつ習得し,さらにそれらを組み合わせる必要があります.
日本国内の血液透析患者数は30万人を超え,しかも年間粗死亡率は世界でもっとも低いことがさまざまな観察研究において示されています.これらの要因として,日本における透析機器・血液浄化器の開発,水質環境を含めた透析システムの整備,そして公的補助制度による患者負担の軽減などが寄与してきたと考えられます.しかし,どれだけ「日本の透析は質が高い」と言われようが,透析が好きでやりたくてやっている,という患者さんにお会いしたことはこれまで一度もありません.当たり前ですが,これが現実です.慢性腎不全は病気であり,透析は治療なのですから.維持透析では少なくとも週に2〜3回は患者さんと顔を合わせます.すると,仕事や子育て,親の介護などと透析治療との両立に大変な苦労をしながら通院している患者さんも大勢いることがよくわかります.日本の透析の「質」と呼ばれる数値化できる客観的視点と,患者さんが主観的に感じている大変さやつらさとのギャップを肌で感じます.
私達は,単に数値化された透析効率だけを追い求めるのではなく,患者さんにとって時間的・身体的・精神的拘束が伴う透析のストレスを少しでも軽減させる努力をしつつ,かつ,健康で長生きしてもらうために必要な(=至適な)透析を提供できるよう,常に考えていかなくてはいけません.
この本では,透析の「と」の字も知らなかった筆者が現場での体験を通して身につけたことを中心に,日常の外来維持透析に関わることがらを書きました.適正透析や至適透析といった言葉の意味や,それらをきちんと実施していくために必要なアクションも解説しています.
透析を一から学びたいと思っている若手の医師だけでなく,臨床工学技士さん,看護師さんや栄養士さんなど,この本を手にとってくださった皆さまの学びに少しでもお役に立てば幸いです.
2019年 春
上野 智敏
目次
I 透析処方編
CHAPTER 1
透析処方という概念
CHAPTER 2
尿毒素物質の基礎知識
患者の臨床的予後に与える影響
小分子尿毒素物質
蛋白結合型尿毒素物質
中分子尿毒素物質
CHAPTER 3
透析の原理
拡散
透析液とは何か
透析液の組成
限外濾過
CHAPTER 4
透析のモード
血液透析 Hemodialysis:HD
Extracorporeal ultrafiltration method:ECUM
血液濾過 Hemofiltration:HF
基本的なしくみ
HDとHFの違いは?
前希釈法と後希釈法
血液濾過透析 Hemodiafiltration:HDF
私の透析研修 1 シャント穿刺
CHAPTER 5
QBとQD
血液流量 Quantity of blood:QB
透析液流量 Quantity of dialysis fluid:QD
CHAPTER 6
ダイアライザの基礎知識
ダイアライザの基本構造
ダイアライザの選択に必要な知識
クリアランスと限外濾過率とは?
ハイパフォーマンス膜とは?
ダイアライザに対する生体の反応
生体適合性の良い透析膜とは?
ダイアライザの選択
はじめに
膜の材質について
膜面積
CHAPTER 7
透析時間・透析回数
私の透析研修 2 透析導入期間近の保存期外来
CHAPTER 8
ドライウェイトの考え方
透析による除水と血圧 ―プラズマリフィリングの観点から―
プラズマリフィリングとは
多様な血圧維持システム
ドライウェイトの定義
除水速度
透析間の体重増加
ドライウェイト設定のための指標
心胸郭比
下大静脈径
ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド:hANP
Plasma body weight index:PWI
生体インピーダンス法
血液濃縮率モニタリング
ドライウェイトの評価は多面的に
ドライウェイトは変動する
ドライウェイト変更時の患者への説明
ドライウェイトを下げるとき(痩せたとき)の説明
ドライウェイトを上げるとき(太ったとき)の説明
ドライウェイトの考え方:まとめ
CHAPTER 9
抗凝固薬
抗凝固薬の使い分け
未分画ヘパリン
低分子ヘパリン
メシル酸塩ナファモスタット
アルガトロバン
II 至適透析編
CHAPTER 1
至適透析とは何か
医学的視点(客観的視点)での至適透析の考え方
短期的指標による評価
中長期的指標による評価
患者視点(主観的視点)での至適透析
CHAPTER 2
透析効率を上げるには? ~単位時間透析効率編~
小分子量物質の透析効率を上げるには?
処方Kt/V
実測Kt/V
小・中分子量等の透析効率アップの項目・留意点
血液流量(quantity of blood:QB)を上げる
透析液流量(quantity of dialysis fluid:QD)透析液量を上げる
ダイアライザの膜面積を上げる
透析時間を伸ばす
透析のモードを変える(≒血液濾過の要素をプラスする)
まとめ
CHAPTER 3
透析効率を上げるには?~透析モード編~
オンラインHDFとは
オンラインHDFによるのメリット・効果
HDFのメリットその1 中分子量以上の溶質除去効果
HDFのメリットその2 大量補液による効果(≒透析困難症の改善)
オンラインHDFにおける透析効率をさらに上げるには?
中分子量(β2ミクログロブリン)以上の物質除去効率をさらに上げるには?
前希釈が良いのか?後希釈が良いのか?
私の透析研修 3 「優しい」のと「甘い」のは違う
CHAPTER 4
至適透析における血圧管理
透析中の血圧低下を防ぐには
透析間体重増加量の管理
基本的な考え方
まずは塩分制限
次に水分制限
透析中の血圧低下を少しでも防ぐためにできること
プラズマリフィリングの低下への対策
透析液温度の調節
昇圧剤の併用
昇圧剤を用いる以外の血圧維持の方法
CHAPTER 5
病態に応じたダイアライザの選択
特殊な膜素材のダイアライザ
エチレンビニルアルコール共重合体(ethylene-vinylalchol copolymer:EVAL)膜
EVAL膜の生体適合性
EVAL膜の物質除去能と微小循環への影響
EVAL膜の栄養状態への影響
ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate:PMMA)膜
PMMA膜の生体適合性と物質除去能
PMMA膜の吸着性能
PMMA膜の栄養状態への影響
AN69膜
まとめ
私の透析研修 4 所変われば品変わる
CHAPTER 6
透析患者の栄養障害
栄養障害と基本的な考え方
制限するばかりが能じゃない
まとめ
あとがき
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書籍情報
- ISBN:9784498224506
- ページ数:140頁
- 書籍発行日:2019年6月
- 電子版発売日:2019年7月3日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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