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- ねころんで読める歩行障害
商品情報
内容
序文
推薦のことば
「朝は4本足、昼は2本足、夕は3本足。この生き物は何か」。これは古代エジプト、スフィンクスの謎かけとして有名です。それくらい古代から歩行の問題は人間にとって避けることのできない宿命でもありました。近代医学はこの歩行障害に挑戦し、様々な状態、病態を観察・記載してきました。このような歩行にまつわる現象を直視する中で、その退行はスフィンクスの謎かけに見られるようなヒトの一生の姿でもあると同時に、やがて病的な歩行障害も含めた歩行の問題は学問体系の中に取り込まれ、19世紀に源を発する神経学(neurology)の中で論ぜられるに至りました。
今回上梓された伊藤規絵先生の著作は、臨床神経学を超えて医療に携わる医師にとって基本的な症候学の一つである歩行障害を丁寧に解説したものとなっています。
「推薦のことば」を仰せつかり、そのゲラ刷りを読ませていただきました。内容は極めて詳細ですが「わかりやすく」、そして診療科を超えて、日常診療の中で「見逃してはならない徴候」が網羅されています。これは伊藤規絵先生の長い神経内科を超えた臨床経験から生まれたものということが、本文の端端からうかがえます。ですから解説はいっそう伝わりやすく、しかも要点をとらえたものとなっています。
この本は必ずしも通読する必要はないように思います。どこのページからでも読めておもしろく、自然に知識となります。またそのように構成されてもいます。この点がまさに本シリーズが「ねころんで読める」と銘打った所以であるかもしれません。
「朝4本、昼2本、夕3本足」の人の生活の中で、夜はスフィンクスの謎かけにも出てきません。起立、歩行から離れた夜の生活こそ、脳は運動から解放されています。ねころんで読めば、一見難しそうな神経学の醍醐味を味わうことができることでしょう。
この本は勉強机の上ではなく枕元に置いておくことをお勧めします。歩いたり、立ったりすることから解放された皆さんの脳に、伊藤規絵先生からのメッセージが次々と入ってくること間違いありません。
元 東京慈恵会医科大学神経内科教授
井上 聖啓
推薦のことば
臨床神経学の要諦は神経診察、症候学です。
神経内科医は診察室に患者さんが入室したその時から診察を開始します。患者さんの顔貌、姿勢、歩行状態、話し方等々、観察すべきポイントはたくさんありますが、その際、日頃、正常人では目にしない、患者さん本人ですら気にかけない些細な異常を見出すことが大事です。些細な異常が何に起因するかを整理し、症候学の知識を動員して責任病巣を推測し、画像、神経生理所見などの裏付けにより確診し、リハビリテーションも含む治療計画の作成に至る、これが臨床神経学の醍醐味です。
また、「患者が転倒して受傷した際は外科医の出番であるが、なぜ転倒したかを考えるのが神経内科医の役割である」とよく言われますが、これも神経内科医の役割を示す好個の例と思われます。
この度、私どもの神経内科総合医療センターの仲間である伊藤規絵先生が、非常に興味深く有意義と思われるテキストを上梓しました。伊藤先生は医学部卒業後、神経内科に入局し、神経学の修練に加え、地域の総合病院において内科学一般の研修も積まれました。専門医試験合格ののちは病理学教室にて基礎研究を行い、学位を取得した素晴らしいキャリアをお持ちです。
この間の研鑽を通じ、患者さんの異常を見逃さない研ぎ澄まされた感覚を養われたものと思います。その先生が長年蓄積された知識、経験をもとに神経症候学の入門書ともいうべき本書を執筆されました。
ともすれば見逃しがちな、しかし神経内科医にとっては非常に意味のある細かな症候学的異常をわかりやすい言葉で説明しており、初期臨床研修医ばかりでなく、看護師さんやリハスタッフ、さらには神経内科専門医を目指す先生方の入門書として活用していただけるものと考えます。また昨今、在宅医療の重要性が強調され、在宅診療に従事される医師も増えてきておりますが、神経診察は場所を選びません。打腱器、音叉などの必要最小限の医療機器と患者さんの異常を検出する眼と基本的な神経症候学の知識があれば、おおむね臨床診断は可能です。その際のテキストとしても本書は活用できるものと思います。
神経徴候はいわば無限大に存在しますので、続編が上梓されることを期待して本書の推薦のことばといたします。
医療法人渓仁会 札幌西円山病院
副院長/神経内科総合医療センター センター長
千葉 進
推薦のことば
「歩行がおかしい」と訴えのある患者さんをどう診察したらよいのか? どの科の医師でもコメディカルの皆さんでも、一度は経験したことがある問題ではないでしょうか?
私は神経内科・老年科専門医としての26年間に多くの神経疾患の診断と治療にあたってきました。その中で、特に訴えの多かった症状は、「歩行がおかしい・転ぶ」(他2つは「手や足がしびれる」「手や足に力が入らない」)でした。
実際、厚生労働省「国民生活基礎調査(2019年)」のデータでは、65歳以上で要介護になった原因は、男性の5.8%、女性の16.5%が骨折・転倒でした。私の師匠である前・東京慈恵会医科大学神経内科教授 井上聖啓先生からは「主訴を科学すること」、札幌西円山病院副院長/神経内科総合医療センターセンター長 千葉進先生には、「転んだ結果もそうであるが、〈なぜ転ぶのか?〉を突き詰めていくことが大切である」と指導していただきました。
主訴「歩行がおかしい」患者さんを脳神経内科医に紹介する時(またはご自身で診断・治療しなければならない時)に、神経内科専門医が考える歩行障害をきたす疾患やその症候学・治療について少しでも知識があれば、皆さんの日常診療の幅が広がるのではないでしょうか。
しかし「神経学は覚える神経所見が多すぎて、何から勉強したらよいかわからない」「脳神経疾患の患者さんの診察は苦手だ」など、巷の声が聞こえてきます。これらをまとめると、脳神経内科診療で困る3つの課題
1)脳神経内科は解剖所見など覚えることが多い
2)脳神経内科は神経所見の解釈が難しい
3)聞いたことのない疾患(希少疾患)が多い
が浮かび上がります。
つまり、「脳神経内科は難しいから食わず嫌いになる」という結果でしょう。しかしここで、
1)脳神経内科は解剖所見など覚えることが多い
⇒重要な解剖所見を理解する
2)脳神経内科は神経所見の解釈が難しい
⇒重要な神経所見を理解する
3)聞いたことのない疾患(希少疾患)が多い
⇒覚えておきたい大切な疾患を知る
ことができればいかがでしょうか?
これらの課題を解決するために、本書では脳神経内科領域で歩行障害をきたす代表的な8つの疾患+筆者の実体験を症例として、病歴や解剖所見・神経所見の取り方・解釈の仕方を分かりやすく記載いたしました。日常診療の合間に、ちょっとゴロンとねころんで楽しく読んでいただき、「脳神経内科はおもしろいから齧ってみたい」となれば、執筆者冥利に尽きます。また皆様の明日からの実臨床に役立ち、一人でも多くの患者さんの救いになることを心から願っております。
最後に、この企画・出版に興味を持ち、支えていただいたDr.’s PrimeAcademiaの大貫康平様、嶋田達明様、他スタッフの方々、編集担当をしていただいたメディカ出版の岡哲也様に深く感謝を申し上げます。
2023年9月
神経内科専門医・医学博士
伊藤規絵
目次
・推薦のことば
・はじめに
・本企画について/Dr.'s Prime Academiaとは?/ご購入いただいた方へ
【0章】
はじめに:まず患者さんを観察しましょう 代表的な歩行障害の診どころ・観察どころ:3つの秘訣
【1章】
「よく転ぶ」訴えがある人を診たら〇〇〇を疑ってください!
【2章】
「すくみ足」「手が震えている」人を診たら〇〇を疑ってください!
【3章】
「足がむずむずする」訴えがある人を診たら〇〇〇を疑ってください!
【4章】
「ふらつく」「呂律が回らない」人を診たら〇〇〇を疑ってください!
【5章】
「起立性低血圧」を診たら〇〇〇を疑ってください!
【6章】
「足が垂れる」人を診たら〇〇の有無を確認してください!
【7章】
〇が欠乏すると歩けなくなります!栄養障害と歩行障害の関係
【8章】
「打腱器と音叉」を使えたら、あなたも即〇〇〇性多発神経障害を診察できます!
【9章】
自分が歩けなくなったらどうなる?
【10章】
「躓きポイント」をクリアして進もう!神経疾患の日常診療が楽しくなる9つのステップ
・おわりに:脳神経内科医がどうしても伝えたい3つの思い
・索引
・著者紹介
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書籍情報
- ISBN:9784840482189
- ページ数:210頁
- 書籍発行日:2023年10月
- 電子版発売日:2023年10月6日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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