分子栄養学 改訂第2版

  • ページ数 : 232頁
  • 書籍発行日 : 2024年11月
  • 電子版発売日 : 2024年10月31日
3,520
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商品情報

内容

栄養・食品の体へのかかわりを遺伝子レベルで理解する!
これからの栄養学に分子生物学の知識は必須!各栄養素の細胞・遺伝子レベルでのはたらきや,疾患との関連についてわかりやすく解説.次世代のプレシジョン栄養学に向けて栄養指導に役立つ内容も必読!

序文

改訂第2版の序


『分子栄養学』の初版が発刊されて10年が経過した.その間にも,分子生物学分野の研究進歩は目覚ましく,初版の内容ではカバーしきれない部分が増えてきたことから,このたび第2版の改訂を行う運びとなった.本書がこれまで栄養化学,農芸化学,生命科学系の学生たちに広く活用され,改訂に至ったことにまず感謝申し上げたい.

今回の改訂では全体的な内容の見直しを行った.初学者から理解できるようにという初版のコンセプトを踏襲し,前半の基礎の部分は残しつつも,他の科目と重複する部分は整理した.次世代シークエンサーによって飛躍的に進んだヒトゲノムやエピジェネティクスについての章を加えた他,時間栄養学についても新たに章立てし,疾患と遺伝子についても内容をアップデートした.分子栄養学の基礎技術については新たな内容に書き換えてまとめたので,初学者が論文を読んだり,研究をはじめたりする際にも役立つことと思う.これからの栄養学については,遺伝子や腸内細菌叢が影響する個人差への対応や,今後求められる栄養の姿,プレシジョン栄養学(精密栄養)についても概説した.

また今回の改訂版では,新たに「臨床のトピック」を章ごとに設け,臨床との関連についてまとめた.学んだ内容が臨床現場でどのように役立つのかイメージいただけるかと思う.そしてレイアウトも大きく変わり,何よりオールカラー版となったことは嬉しい限りである.

本書『分子栄養学』は,生命科学,分子生物学を基盤とし,ヒトが摂取する食因子がヒトの生命現象にどのような影響を与えるのかを,分子レベルで学ぶものとして執筆編集を行ってきた.しかし,オミクスバイオロジーといわれる網羅的解析やそれら情報を処理することが可能となった現在,栄養学も今後,これらのビッグデータを用いてAIで予測するデータサイエンスの要素が必要になってくるかもしれない.本書が,現代そしてこれからの栄養学を広く理解するための一助となれば幸いである.

最後に,ご多忙のなか本改訂版にご執筆をいただいた先生方,発行に際しご尽力いただいた羊土社編集部の田頭みなみさん,杉田真以子さんに深く感謝申し上げる.


2024年10月

編者を代表して
お茶の水女子大学名誉教授
藤原葉子

目次

・改訂第2版の序【藤原葉子】

・初版の序【藤原葉子】

第1章 遺伝と分子生物学・分子栄養学の基礎【加藤久典】

1 遺伝と遺伝子の基礎

2 分子生物学とその歴史

A DNAの増幅

B 核酸の検出・定量

C 塩基配列の解析

D 近年・これからの技術の進歩

3 栄養学の変遷と分子栄養学

第2章 細胞と生体分子【大石祐一】

1 細胞の構造と機能

A 細胞膜

B 小胞体

C ゴルジ体

D エンドソーム

E リソソーム

F ペルオキシソーム

G ミトコンドリア

H 核

2 細胞と体

A 表皮角化細胞と皮膚線維芽細胞

B 筋細胞

C 骨細胞

D 脂肪細胞

E 小腸の細胞

F 血液細胞

G 細胞の分化と脱分化

3 細胞を構成する生体成分

A タンパク質

B 核酸

C 脂質

4 代謝と酵素

A 酵素とATPの役割

B 糖代謝

C 脂質代謝

D アミノ酸代謝

〈臨床のトピック〉味細胞と腸管細胞は同じ?

第3章 DNAの複製と細胞分裂【三浦 豊】

1 染色体の構造

A 染色体の構成要素

B ヒトの染色体

C 染色体の基本構造

2 DNA複製のしくみ

A DNA 二本鎖をほどく

B ヌクレオチドの付加

C DNAポリメラーゼの校正機能

D プライマーの合成と除去

3 細胞分裂

A 細胞周期

B 体細胞分裂と染色体

C 減数分裂と遺伝のしくみ

〈臨床のトピック〉核酸を食べる?

第4章 遺伝子の発現(タンパク質合成)【井上 順】

1 遺伝子発現

2 RNAの構造

3 RNAの種類

4 RNAの合成(転写)

A RNAポリメラーゼによるRNAの合成

B 転写の開始と終結(RNAポリメラーゼⅡの場合)

5 RNAプロセシング

A 5′キャップ付加

B ポリアデニル化

C スプライシング

6 タンパク質の合成(翻訳)

A 遺伝暗号(コドン)

B tRNA

C リボソーム

D 翻訳の開始と終結

7 翻訳後(折りたたみ)

8 真核生物と原核生物の遺伝子発現の違い

〈臨床のトピック〉mRNAスプライシングとヒトの疾患

第5章 遺伝子発現制御と細胞機能【井上 順】

1 同じ遺伝子情報から異なった細胞がつくられるしくみ

2 転写調節と転写因子

3 アクチベーターの構造

A DNA結合ドメイン

B 転写活性化ドメイン

4 コアクチベーターとコリプレッサー

5 栄養状態に応じた遺伝子発現制御

A 空腹時に働く転写因子

B 摂食時に働く転写因子

6 クロマチンの構造と遺伝子発現制御

A エピジェネティック修飾

7 翻訳調節

8 タンパク質の翻訳後修飾

A プロテアーゼによる切断

B S-S結合

C リン酸化

D 糖鎖付加

E その他の修飾

9 タンパク質分解

A タンパク質の半減期

B タンパク質分解酵素

〈臨床のトピック〉医薬品と転写制御

第6章 内分泌因子と栄養素による情報伝達【加藤久典】

1 細胞間および細胞内の情報伝達

2 細胞間情報伝達分子と受容体

A イオンチャネル型受容体

B 核内受容体

C Gタンパク質共役型受容体(GPCR)

D チロシンキナーゼ型受容体

E サイトカイン受容体

〈臨床のトピック〉2型糖尿病解明への道

第7章 さまざまな生命現象と遺伝子【花井美保】

1 分化・発達

A 遺伝子のオン・オフ

B 栄養素による調節

2 老化

A エラー蓄積説

B プログラム説

3 アポトーシス

A アポトーシスとネクローシス

B アポトーシスの分子機構

C アポトーシスの意義

4 免疫系

A 生体防御の種類

B 抗体と遺伝子再編成

〈臨床のトピック〉超高齢社会における老化予防と寿命遺伝子

第8章 ヒトの遺伝子【福島亜紀子】

1 ヒトゲノム

A ヒトゲノムの構成

B タンパク質をコードする遺伝子

C 偽遺伝子

D 遺伝子ファミリー

E 遺伝子同士の重複

F トランスポゾン

2 遺伝子バリアント

A 一塩基バリアント

B 欠失・挿入

C コピー数バリアント

D 染色体構造バリアント

3 非コードRNA

A 短鎖非コードRNA(short ncRNA)

B 長鎖非コードRNA(lncRNA)

4 性と遺伝子,インプリンティング

A X染色体とその不活性化

B 偽常染色体領域

C Y染色体

D ゲノムインプリンティング

〈臨床のトピック〉民族による遺伝子バリアント

第9章 疾患と遺伝子【岸本良美】

1 疾患と発症要因

2 単一遺伝子疾患

A 常染色体顕性遺伝病

B 常染色体潜性遺伝病

C X連鎖(伴性)遺伝病

D 先天性代謝異常症

3 多因子疾患

A がん

B 肥満

C 糖尿病

D 脂質異常症

E 高血圧

4 疾患遺伝子および疾患感受性遺伝子の探索方法

A 単一遺伝子疾患の解析

B 多因子疾患の解析法

5 エピジェネティクスと疾患

A がんとエピジェネティクス

B DOHaDドーハッド説

〈臨床のトピック〉ゲノム編集技術を用いた次世代遺伝子治療

第10章 食品成分と遺伝子【竹中麻子】

1 絶食/摂食に応答した遺伝子発現の変化

A 摂食に応答した遺伝子発現

B 絶食に応答した遺伝子発現

2 食品成分による遺伝子発現の制御

A エネルギー産生栄養素(三大栄養素)による遺伝子発現制御

B ビタミン,ミネラルによる遺伝子発現制御

C 非栄養素による遺伝子発現制御

〈臨床のトピック〉大豆イソフラボンのエストロゲン様作用

第11章 時間栄養学【田原 優】

1 食事と体内時計

A 時計遺伝子が刻む体内時計のしくみ

B 体内時計の時刻を調節するしくみ

C 朝食と体内時計の関係

D 朝型・夜型クロノタイプと食習慣

2 時間栄養学の応用

A 摂食のタイミングと体重調節

B 摂食のタイミングと血糖調節

C タンパク質摂取タイミングと筋合成

〈臨床のトピック〉AI食事管理アプリによる時間栄養学研究

第12章 分子栄養学研究の基礎技術

1 遺伝子を分離する【福島亜紀子】

A DNAの抽出

B RNAの抽出

C 電気泳動法

2 目的の遺伝子を手に入れる【福島亜紀子】

A 遺伝子組換えに用いる酵素

B 宿主とベクター

C クローニングの実際

3 PCR法で遺伝子を増やす【福島亜紀子】

A PCR法

B 定量PCR法

C RT-PCR法

4 遺伝子を検出する【福島亜紀子】

A ハイブリダイゼーション

B ハイブリダイゼーションに用いる標識

5 遺伝子配列を決定する【福島亜紀子】

A 従来の塩基配列決定法

B 次世代シークエンサーによる塩基配列決定法

6 遺伝子導入

A 動物細胞における遺伝子導入技術【澤田留美】

B トランスジェニック(遺伝子導入)動物【澤田留美】

C レポーターアッセイ【福島亜紀子】

D 植物への遺伝子導入技術【豊島由香】

7 遺伝子ノックアウト【豊島由香】

A ノックアウトマウスの作製

B コンディショナル(条件付き)ノックアウトマウス

C RNAによる遺伝子ノックダウン

8 遺伝子治療【澤田留美】

A 遺伝子治療用ベクター

B 遺伝子治療の対象疾患

9 ゲノム編集【豊島由香】

A ゲノム編集の原理

B CRISPR/Cas9によるゲノム編集

10 細胞工学的技術【清水 誠】

A iPS細胞

B オルガノイド

〈臨床のトピック〉がん治療の救世主となるか~CAR-T細胞療法~【澤田留美】

第13章 分子栄養学の今後の展望

1 ヒトゲノム計画と栄養学【藤原葉子】

A ヒトゲノム計画

B ヒトの多様性を生み出すもの

2 ニュートリゲノミクス【清水 誠】

A 栄養素や食品成分の作用メカニズムの解明

B バイオマーカーの同定

C オミクス解析技術の進展

3 腸内細菌叢と生体への影響【清水 誠】

A 腸内細菌叢と代謝産物

B 腸内細菌叢と健康

C 腸内細菌叢の解析手法

4 個人の体質にあわせた栄養指導【平岡真実】

A 遺伝子バリアントとは

B 遺伝子検査

C 集団と個人

D 遺伝子バリアントに対応した栄養指導:日本での活用例

5 プレシジョン栄養学(今後の展望)【藤原葉子】

A 栄養学の課題

B プレシジョン栄養学

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・略語一覧

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書籍情報

  • ISBN:9784758113755
  • ページ数:232頁
  • 書籍発行日:2024年11月
  • 電子版発売日:2024年10月31日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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