• ページ数 : 272頁
  • 電子版発売日 : 2024年11月20日
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商品情報

内容

【確かなエビデンスが最善の治療選択を支える】 18トリソミー症候群をめぐる医療は大きな変化を遂げている。新生児期の集中治療、先天性心疾患や食道閉鎖に対する手術を乗り越え、家族のもとで豊かに成長する多くの子どもたちの姿が、それを証明している。医療情報のアップデートとともに、妊娠中、NICU、退院後の暮らし、療育と幅広い情報を盛り込んだ待望の第2版。

序文

はじめに

本書の第1 版第1 刷が発行されたのは2014年12月1日、それから10年が経とうとしています。この間、18 トリソミーをめぐる医療は大きな変化を遂げたと感じます。標準的新生児集中治療の有効性に関して、2006年、長野県立こども病院が世界に先駆けてAmerican Journal of Medical Genetics(AJMG)誌に示したデータでは1 年生存率は25% でしたが、2022年に同誌に示された兵庫県立こども病院の最新データでは1 年生存率は59.3% になりました。2024 年、米国胸部外科学会が主催した専門家会議でまとめられた「2023 年版エキスパートコンセンサス文書:先天性心疾患のある13 トリソミーおよび18 トリソミー児の治療に関する推奨」が同学会誌に掲載されました。「軽度から中等度の複雑さを伴う先天性心疾患のために病棟または新生児集中治療室から退院できない18 トリソミーのある子どもにおいて、心臓手術は妥当な選択肢である」とする画期的なものです。そして、たとえば難聴の特徴と補聴器の効果に関する報告(長野県立こども病院、兵庫県立こども病院、東京大学医学部附属病院)が相次いでAJMG 誌に掲載されるなど、生存だけでなく生活の質の向上を目指す方向性が発信されています。外科的手術を含めた標準的新生児集中治療および小児医療を受けながら、「普通の」日常を長期間送っている18 トリソミーのある子どもたちは皆様の身近にもおられるのではないでしょうか。

他方、施設による考え方の違いは今もあり、生まれた施設や地域によって、受けるべき医療を受けられていない現状もあります。「通常の重症児のように」、深刻な予後(生命、神経学的)を医療スタッフと家族が共有し、信頼関係に基づき対等な姿勢で向き合うこと、子どもにとっての最善の利益をめざして話し合いを重ね、刻々と変化する病状に合わせたきめ細やかな医療的ケア、療育的支援、家族への心理社会的支援を重ねていくことが、現在のエビデンスに基づく18 トリソミーのある子どもへの最適な診療のあり方と認識されています。しかし、制限的治療が主であった歴史的背景に関連し、18 トリソミーのある子どもへの診療が新生児・小児緩和ケアやアドバンス・ケア・プランニングの対象疾患との文脈で語られることが散見されます。

インターネットやSNS で人と人がつながる時代に、こうした施設や地域差が残っていることは、エビデンスに基づく医療を求める家族にとって、何より1 日でも長く、かつ質の高い生活をする権利をもつ子どもたちにとって悲しいことです。10 年の歳月を経て、おどろくほど豊かになった18 トリソミーのある子どもたちと家族を支えるための情報をあらためて発信しようとの18 トリソミーの会・櫻井浩子代表の提案に、初版で共同編著者を務めた臨床心理士の橋本洋子さんと私とが協力し、第2版の企画をいたしました。そして、第2版の歴史的・社会的必要性を理解してくださったメディカ出版の全面的支援を得て進めてまいりました。前回執筆していただいた方々、新たに執筆陣に加わっていただいた方々、いずれも18 トリソミーのある子どもへの愛情とプロフェッショナリズムにあふれたメッセージを記してくださいました。また多くの家族が、18 トリソミーのある子どもとのかけがえのない暮らしについて、心あたたまるメッセージを寄せてくださいました。

2013年に臨床研究として導入された非侵襲性出生前遺伝学的検査(noninvasiveprenatal genetic testing:NIPT)は、2016 年頃から明らかになってきた無認定施設の増加を背景に、2022 年に発足した新たな認定制度の枠組みの中で次なるステップに入った感があります。制限が緩和され、対象疾患が増える流れの中、本書から発信される18 トリソミーのある子どもへの手厚い支援とあたたかい視点は、「どんなに深刻な合併症や重度の障がいがあっても、授かった子どもを大切に育てていく」という社会の究極の姿を示しているといえるでしょう。これまで18 トリソミーのある子どもやその家族の支援に関わってきた、また、これから支援をしようとする医療・療育・教育関係の方々、18 トリソミーのある子どもをもち育児や介護に取り組んでおられるご家族、おなかの赤ちゃんに18 トリソミーがある(かもしれない)と言われ不安のなかにいる妊婦さんとそのご家族、周産期・遺伝・障がい児医療を学ぶ様々な職種の卵の方々など、多くの方々に届けられたらと思います。

最後に、本書を、現在多くの施設で行われるようになった「通常の重症児のよう」な医療・療育・支援を期待しながら旅立っていかれた18 トリソミーのある先輩たちやそのご家族に捧げます。また、第1 版で「狭いのぞき穴から18 トリソミーの子どもとその家族の豊かな世界の、ほんの一部しか見ていなかったことへの深い反省と、あの子どもたちの笑顔に感動した体験を思い起こ」したことを記され、その後無制限なNIPT の広まりに対して警鐘を鳴らし続けられ、2022 年11 月29 日に逝去された仁志田博司先生にも、感謝の気持ちとともに、18 トリソミーのある子どもたちへの医療・療育・支援が新たな時代を迎えたこと、それには日本の周産期医療・小児医療現場の後輩たち、そして18 トリソミーの会を中心とした家族の長年にわたる献身的な貢献があったことをお伝えしたいと思います。


2024年10月

古庄知己

目次

【第1章 18トリソミーの理解のために】

・1 18トリソミー症候群に関する自然歴のエビデンスおよび包括的健康管理と支援の指針

・2 18トリソミーのある子どもの家族の思いに関するエビデンス

・3 「こころのケア」という視点から

・4 18トリソミーをめぐる医療の歴史

・5 「18トリソミーの会」のこれまでとこれから

・6 新生児・小児医療と「話し合いのガイドライン」

【第2章 周産期・小児期の診療の実際】

・1 産科管理

・2 新生児集中治療

・3-a 心疾患への対応(内科)

・3-b 心疾患への対応(外科)~普通の何気ない家族の生活のために~

・4 外科疾患への対応

・5 悪性腫瘍への対応

・6 てんかん発作・痙攣への対応

・7 骨格異常への対応

・8 聴覚への対応

・9 視覚への対応

・10 一般小児科外来での対応

・11 リハビリテーション~PTの立場から~

・12 リハビリテーション~OTの立場から~

・13 リハビリテーション~STの立場から~

・14 摂食指導

・15-a 医療的ケア児と「食べること」

・15-b 在宅での栄養の実際

・16 新生児期の看護

・17 心理的ケア

【第3章 子どもたちの暮らしとそのサポート】

・1 NICUから在宅への退院・地域への移行支援

・2 在宅医療

・3 成長に寄り添った訪問看護

・4 公的支援

・5 子どもの成長に合わせた在宅生活の実際

・6 きょうだいを支える

・7 通園・通学

【第4章 出生前診断をめぐって】

・1 18トリソミー症候群をめぐる出生前検査

・2 18トリソミー症候群のある子どもと家族のための遺伝カウンセリング

  ~認定遺伝カウンセラーの視点から~

・3 ピアカウンセリング

・4 出生前診断をめぐるこころのケア

〈Column〉わが子への思い18トリソミーの会メンバーから

・さくいん

・あとがき

・編著者略歴

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書籍情報

  • ISBN:9784840487566
  • ページ数:272頁
  • 電子版発売日:2024年11月20日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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