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- 腎臓病診療Q&A AKI~CKD~腎難病まで
商品情報
内容
序文
序文
2020年初頭から新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい,私たちの生活,環境が大きく変貌を遂げました。日常診療の場でも,マスク越し,距離を置いての診療や,電話だけの診療が多くなり,多様な患者の診断,治療方針の決定に困難がつきまとう状況かと思います。この対応が一過性のものなのか,この先もある程度の期間,継続を余儀なくされるのか,現時点では不明です。
このような状況のなかで,私たちの診療に関わる情報収集の方法も大きく変わってきました。これまでもインターネットでの文献検索と雑誌記事の閲覧,ネット上の教科書の閲覧は行われていましたが,学会,研究会などの集合形式での集まりは激減し,耳学問という受け身の勉強機会が減ってきています。本書は,そのような情報入手手段の減少した時期に,もっとも効率よく日常診療に直結する情報収集が可能な書籍としても活用されることを願い,発刊いたしました。
そもそも慢性疾患に限らず,すべての疾患の予後改善には,発症リスク要因を明確にして発症を未然に防ぐこと,ハイリスク症例を管理すること,そして早期発見と早期治療開始が必須です。
診療にあたる臨床医としては,正確に診断し早期に治療開始を行うことで重症化を防ぐのと同時に,患者に対しては病気の原因や成り立ち,最良の治療法と選択すべき治療法や疾患の予後についてのわかりやすい説明が求められます。
近年,急性腎不全は急性腎障害(acute kidney injury:AKI)に,無症候性血蛋白尿やさまざまな要因による慢性腎疾患は慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)に,慢性腎不全はCKDステージG4またはG5に変更され,また糖尿病性腎症に対しては糖尿病性腎臓病(diabetic kidneydisease:DKD)という呼称が提唱され,疾患分類が新たになりました。また,ガイドラインの策定により,医療従事者でなくとも診断と重症度分類が容易に理解可能となりました。これらの疾患分類・重症度分類の整理・変更は,疫学研究,臨床研究の成果をもとに早期発見,予防医学的見地を重視して行われたものです。しかしながら,われわれ医療者の立場からは,これらの疾患群の診断では根本的な治療に直結しない場合も多く,問題もあります。少なくとも診療にあたる主治医は,AKIやCKDステージG3と一般の方でも理解が可能な診断名だけで治療などを行うことはできず,病歴や臨床経過,過去の検尿異常歴などから病態や原因を考察し,疾患によっては腎生検などによる組織診断を踏まえて診断し,的確に治療していくことが求められます。
腎疾患に関わる難病については,平成26年5月に「難病の患者に対する医療等に関する法律」が制定され,難病の治療研究の活性化と同時に,難病患者の医療費助成の充実が図られることとなりました。その後,IgA腎症,多発性囊胞腎を含む110疾病に対象が拡がり,さらに平成27年7月1日からは,急速進行性糸球体腎炎,一次性ネフローゼ症候群および,抗糸球体基底膜腎炎,一次性膜性増殖性糸球体腎炎,紫斑病性腎炎,Alport症候群が加わりました。これらの難病はおおむねCKDの範疇に入るもので,医療費助成の対象になるのと同時に,診断・診療法確立のために公的研究も実施されています。こういった,現在進められている状況を理解することも腎臓専門医として必須の知識です。
以上のように,客観的な基準に基づく疾患分類・重症度分類に続き,原因疾患の診断基準についても検討が進むことで,新しい治療薬や治療法の開発が行われるようになりました。そして,腎臓疾患に限らず,さまざまな疾患で標準的な治療を示す要望が強くなり,ガイドラインが発行されています。これに臨床研究に基づくエビデンスが次から次へと加わることで,ガイドラインは数年ごとに更新され,われわれ医療者はこの内容の追加,変化に追いつくことが求められます。
一方,本来の専門医の役務は,診療ガイドラインの内容を熟知したうえで,個々の患者に対し最良の診療を施すことにあるはずです。多くの診療ガイドラインは,ガイドラインとしての制約上,標準化した診療行為を示すものに過ぎません。また診療ガイドラインでは,具体的な薬剤の投与量まで踏み込んだ解説はないため,目の前にいる患者に対する実際の投与量などは専門家であっても判断に迷うことがしばしばあります。実際の診療においては,最新の研究論文を根拠に治療法を決定することもあれば,論文などの客観的記述はなくても個々の医療者の経験に根ざした判断で治療方針を決定することも多くあります。診療ガイドラインどおりの診療よりも経験に根ざした診療のほうが良好な結果を得ることもあり,その背景には個々の患者に合わせた治療法の選択がより重要であることを示しています。多様な患者への対応を確実に実施可能とするため,質の高い臨床研究を実施し,そこで得られたエビデンスを論文化する努力を継続することと合わせて,実臨床の経験に根ざした診療方法の伝達も重要であり,これにエビデンスを付与するための臨床研究を積極的に実施し,その成果を論文化することも必要です。
本書では,日常診療で患者を診療する際,判断に迷うシーンを想定して疑問点を抽出し,各疾患のガイドラインを執筆あるいは,その疾患に対して臨床経験豊富な先生方に,疑問点に対する的確かつ明瞭な解説をお願いしました。実際の診療場面で疑問点を解決する際にご覧いただくだけでなく,興味のある項目,参考になる項目などを拾い読みしていただくことも十分意義があると思っています。
本書が,多くの一般臨床医,研修医,腎臓専門医にとっての実用書として役立ってくれることを強く望んでおります。
令和3年5月吉日
山縣邦弘
目次
口絵
初診時フローチャート
AKI診断フローチャート
CKD診断,原因検索,治療フローチャート
腎臓病チェック表
CKD治療目標
指定難病の重症度分類
序文
監修・編集・執筆者一覧
本書で使用される略語一覧
Chapter1 急性腎障害(AKI)
1)概念
▪AKIの概念,急性腎不全との違いを教えてください。
2)発症リスク,初診時の対応
▪尿量の減少を訴える患者が来ました。対処法を教えてください。
▪横になると息苦しいと訴える患者が来ました。対処法を教えてください。
▪CKDの経過中に発症するAKIの特徴を教えてください。
▪手術後のAKIの発症リスクには何がありますか?
▪心疾患のある患者がAKIを発症するのはどういう場合ですか?
▪感染症罹患中に発症するAKIの特徴を教えてください。
3)診断
▪AKIの診断基準を教えてください。
▪AKI患者の未知のベースライン腎機能を推定する方法を教えてください。
▪AKIを疑ったときに検査は何をすればよいですか?
▪AKIの生命予後と関連する因子は何がありますか?
▪AKIを疑ったときの腎臓超音波検査の所見の見方を教えてください。
▪AKIで実施すべき画像検査,優先すべき画像検査を教えてください。
▪AKIの早期発見,予後予測に有用な尿中バイオマーカーには何がありますか?
4)治療
▪AKIの発症予防ならびに治療に有効な薬剤はありますか?
▪AKI患者の栄養管理について教えてください。
▪AKI患者の腎代替療法開始のタイミングと適切な腎代替療法の選択方法を教えてください。
①腎前性AKIへの対応
▪腎前性AKIの臨床徴候の特徴を教えてください。
▪脱水時の輸液の方法を教えてください。
▪心原性ショックでの腎保護を目的とした治療法の具体的方法・ 注意点について教えてください。
▪敗血症性ショックでの腎保護を目的とした治療上の注意点を教えてください。
②腎性AKIへの対応
▪腎性AKIの臨床徴候の特徴を教えてください。
▪腎性AKIの原因は何が多いのですか?
▪AKIでの腎生検の適応を教えてください。
▪急性尿細管壊死の最適な治療法・管理法を教えてください。
▪急性間質性腎炎の最適な治療法を教えてください。
▪薬剤性腎障害の原因と診断法を教えてください。
▪悪性腫瘍治療中のAKIの特徴を教えてください。
③閉塞性AKIへの対応
▪腎後性AKIの臨床徴候の特徴を教えてください。
▪腎後性AKIの原因は何が多いのですか?
▪尿閉時の対処法を教えてください。
▪腎後性AKIでの輸液管理の注意点はありますか?
▪水腎症の治療法を教えてください。
Chapter2 慢性腎臓病(CKD)
1)概念
▪CKDの概念と意義を教えてください。
▪3カ月以内に治癒してしまう急性腎臓病にはどのような疾患がありますか?
2)発症リスク,発見と対処
▪CKDになりやすい人とはどういう人ですか?
▪CKDを発症させないための予防法はありますか?
3)診断
▪健診で蛋白尿を指摘された患者が来ました。対処法を教えてください。
▪健診でeGFR低下を指摘された患者が来ました。対処法を教えてください。
▪健診で血尿を指摘された患者が来ました。対処法を教えてください。
▪健診で腎囊胞を指摘された患者が来ました。対処法を教えてください。
4)原因の診断
▪家族歴に腎疾患がある場合,疑うべき疾患を教えてください。
▪浮腫を訴える患者が来ました。対処法を教えてください。
▪成人・高齢者のCKDの原疾患はどのようなものがありますか?
▪小児でみられるCKDの原疾患はどのようなものがありますか?
▪膠原病に伴う腎疾患にはどのようなものがありますか?
▪感染症に伴う腎疾患にはどのようなものがありますか?
▪糖尿病性腎症はどのように診断されますか?
▪腎生検の適応を教えてください。
▪ハイリスク病態への腎生検はどのように行うのですか?
5)治療
▪小児CKD患者に安静や運動制限は必要ですか?
▪飲酒や喫煙は腎機能悪化要因ですか?
▪CKD患者の予防接種の注意点を教えてください。
▪CKD患者の妊娠・出産の注意点を教えてください。
▪CKD患者への運動療法は腎予後,生命予後の点で有用ですか?
▪CKD患者のサルコペニア・フレイルの診断と予防方法を教えてください。
▪CKD患者の予後改善のための行動変容を起こす方法を教えてください。
▪保存期CKD患者の食事療法基準を教えてください。
▪小児CKD患者の食事療法を教えてください。
▪CKD患者へのサプリメント・健康食品は安全ですか?
▪高齢CKD患者のポリファーマシーの問題点と対策を教えてください。
▪高血圧を合併したCKD患者の降圧目標と降圧薬の第一選択はどのように選びますか?
▪CKD患者でRAS阻害薬,カルシウム拮抗薬,利尿薬併用でも血圧が目標に達成しない場合の治療方法を教えてください。
▪CKD合併糖尿病患者の血糖管理目標と経口血糖降下薬の使用法を教えてください。
▪糖尿病合併CKD患者に対するSGLT2阻害薬の使用法を教えてください。
▪糖尿病合併CKD患者へのインスリン製剤,GLP-1受容体作動薬の使用法を教えてください。
▪CKD患者の脂質異常症の治療目標と治療方法を教えてください。
▪保存期CKD患者の高尿酸血症の治療目標と治療方法を教えてください。
▪保存期CKD患者の血清カリウム値の管理目標と治療方法を教えてください。
▪CKD患者の腎機能を考慮した利尿薬の使用法を教えてください。
▪CKD患者の代謝性アシドーシスの管理目標と治療方法を教えてください。
▪CKD患者の腎性貧血の管理目標と治療方法を教えてください。
▪CKD患者の腎性貧血管理におけるHIF-PH阻害薬の利点と欠点を教えてください。
▪CKD患者の骨粗鬆症の治療方法を教えてください。
▪CKD患者の高リン血症の管理目標と治療方法を教えてください。
▪CKD患者への腎機能保護を目的とした薬物療法について教えてください。
▪CKD患者の心血管疾患発症予防のための薬物療法について教えてください。
▪CKD患者への鎮痛薬の選択と使用法を教えてください。
▪CKD患者への造影剤検査施行時の注意点を教えてください。
▪CKD患者へのC型ウイルス性肝炎治療の適応と投与法を教えてください。
▪腎機能障害時の投与量調節が必要な薬剤の調節方法を教えてください。
▪CKD患者が全身麻酔の手術を受けます。注意点を教えてください。
▪かかりつけ医への逆紹介,併診のタイミングと要点を教えてください。
▪CKD診療で必要な医療助成を教えてください。
▪腎臓病療養指導士とは何ですか?
▪腎代替療法の説明を行う時期と方法を教えてください。
▪腎代替療法を開始する基準について教えてください。
▪血液透析のバスキュラーアクセス作製時期と選択について教えてください。
▪腹膜透析導入に必要な準備について教えてください。
▪腎移植に必要な準備について教えてください。
▪腎代替療法導入の見合わせについて教えてください。
Chapter3 腎難病
1)IgA腎症
▪IgA腎症の診断や活動性評価はどのように行いますか?
▪IgA腎症患者の標準的治療法を教えてください。
▪IgA腎症患者の蛋白尿が再度増加してきました。対処法を教えてください。
▪IgA腎症患者の予後を教えてください。
2)急速進行性糸球体腎炎
▪急速進行性糸球体腎炎の診断はどのように行いますか?
▪急速進行性糸球体腎炎の鑑別にはどのような腎疾患がありますか?
▪急速進行性糸球体腎炎の予後を教えてください。
▪ANCA関連腎炎患者の治療効果判定や再燃の際に血清ANCA値は参考になりますか?
▪ANCA関連腎炎患者の寛解導入療法はどのように行いますか?
▪ANCA関連腎炎患者に対する血漿交換療法の適応と処置内容を教えてください。
▪ANCA関連腎炎患者の維持療法はどのように行いますか?
3)抗糸球体基底膜腎炎
▪抗糸球体基底膜腎炎患者の初期治療はどのように行いますか?抗糸球体基底膜腎炎患者が発見時点で末期腎不全に至っている場合の対処方法を教えてください。
4)一次性ネフローゼ症候群
▪ネフローゼ症候群の診断はどのように行いますか?
▪一次性・二次性ネフローゼ症候群の鑑別診断はどのように進めればよいですか?
▪微小変化型ネフローゼ症候群成人患者の標準的治療法を教えてください。
▪巣状糸球体硬化症成人患者の標準的治療法を教えてください。
▪膜性腎症患者の診断に血清抗PLA2R抗体測定は有用ですか?
▪膜性腎症成人患者の標準的治療法を教えてください。
▪ネフローゼ症候群小児患者の診断・治療はどのように進めればよいですか?
▪ネフローゼ症候群患者へのリツキシマブの適応と投与法を教えてください。
▪ネフローゼ症候群患者の治療効果の判定はどのように行いますか?
▪ネフローゼ症候群患者の予後を教えてください。
5)一次性膜性増殖性糸球体腎炎
▪膜性増殖性糸球体腎炎患者の治療はどのように行いますか?
6)Alport症候群
▪Alport症候群の診断方法を教えてください。
▪Alport症候群患者の腎不全進行抑止に有効な治療法はありますか?
▪Alport症候群の予後を教えてください。
7)多発性囊胞腎
▪多発性囊胞腎の診断方法を教えてください。
▪多発性囊胞腎患者の腎不全進行抑止に有効な治療法はありますか?
▪多発性囊胞腎患者の脳動脈瘤スクリーニングはどのように行いますか?
▪多発性囊胞腎患者の囊胞感染症の診断と治療はどのように行いますか?
▪多発性囊胞腎患者の予後を教えてください。
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書籍情報
- ISBN:9784885637322
- ページ数:275頁
- 書籍発行日:2021年6月
- 電子版発売日:2024年11月22日
- 判:A4変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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