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- 医学のあゆみ282巻13号 痒みはどこまでわかったか―痒み研究の最前線
商品情報
内容
・“痒み”は皮膚だけに生じる,独特の感覚である.そして痒みは,皮膚疾患患者にとって最もQOLに影響を与える症状のひとつである.
・近年,痒み研究は著しい進歩をみせている.痒み伝達の神経生理学的メカニズム,新規の痒み伝達物質など,毎年のように新知見が報告されている.
・新規痒み伝達物質をターゲットとした薬剤も続々と開発され,一部は臨床応用されている.その効果を評価することで,さらに痒みのメカニズムが明らかとなっている.
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序文
はじめに
“痒み”は皮膚だけに生じる,独特の感覚である.頭痛,腹痛,胸痛など,“痛み”の感覚は諸臓器に存在するが,脳が痒い,腸が痒い,心臓が痒い,とは言わない.そして痒みは,皮膚疾患患者にとって最もQOL に影響を与える症状のひとつである.痒みのためイライラして物事に集中できない,あるいは痒みのため睡眠が障害され寝不足となり,学業や仕事に支障のでる場合も多い.先日受診されたある患者の話であるが,痒みで寝られない日々が続いていたが忙しくて病院に行くことができず,ついに仕事中に居眠り運転をしてしまい,交通事故を起こしてしまったそうである.ちなみにこの患者の職業はトラック運転手とのことであり,幸い大事には至らなかったそうだが,いろいろな意味できわめて危険な話であった.
このように,皮膚疾患患者にとって痒みのコントロールは死活問題であるが,皮膚科医にとって長年それは最も難しいことであった.なぜならば,痒みを誘導する物質や痒みを伝える神経生理的メカニズムがほとんど不明であり,痒みをターゲットとした薬剤がなかったからである.痒み伝達物質として認識され,そのコントロールが臨床的にも応用されているものはヒスタミン以外,ほぼ存在しない状態であった.したがって実臨床の現場では,すこし大げさにいうと,抗ヒスタミン薬が効かない痒みのコントロールはほとんどお手上げ,という状態であった.
しかし近年,痒み研究は著しい進歩をみせている.痒み伝達の神経生理学的メカニズム,新規の痒み伝達物質など,毎年のように新知見が報告されている.さらに新規痒み伝達物質をターゲットとした薬剤も続々と開発され,一部は臨床応用されている.そして,その新規薬剤の効果を評価することで,さらに痒みのメカニズムが明らかとなる好循環が生まれている.
本特集では,痒み研究の国内トップランナーの先生方に,それぞれのご専門の観点から,最新の痒み研究の現状を紹介いただいた.ご多忙のなか,執筆を快諾いただいた先生方への御礼を述べるとともに,本特集が痒みに携わる医師・研究者の先生にとって,痒み理解の一助となれば幸いである.
本田哲也
浜松医科大学皮膚科学講座
目次
特集:痒みはどこまでわかったか─痒み研究の最前線
はじめに
本 田哲也
痒みを伝える一次感覚神経の理解の現状
岡田峰陽
痒みとTRPチャネル
富永真琴
痒みメディエーター
髙森建二・他
脊髄における痒み伝達機構
歌 大介
痒み対策と治療法 ─ アトピー性皮膚炎を中心に
室田浩之
連載
人工臓器の最前線❽
人工聴覚器の現状 岩崎 聡
医療AI技術の現在と未来 ─ できること・できそうなこと・できないこと❸
医療AI・機械学習技術の病理画像への応用 越智三枝子・河村大輔
TOPICS
腎臓内科学
慢性腎臓病患者のナトリウム・カリウム排泄量と腎機能予後 尾形宗士郎・他
循環器内科学
アクチン重合促進因子mDia1は圧負荷心肥大応答を制御し心機能維持に寄与する 安部一太郎・他
FORUM
グローバルヘルスの現場力❺
自分のいる場とグローバルの場の重なり 後藤あや
病院建築への誘い ─ 医療者と病院建築のかかわりを考える
特別編 ─ 個室病棟について考える 亀谷佳保里
書評
『免疫学者のパリ心景 新しい「知のエティック」を求めて』(矢倉英隆 著)武田 昭
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書籍情報
- ISBN:9784006028213
- ページ数:70頁
- 書籍発行日:2022年9月
- 電子版発売日:2022年9月21日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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