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- 極論で語る神経内科 第2版
商品情報
内容
神経内科といえば、変性疾患ばかり扱うみたいなイメージがありませんか? ですが本来、神経内科の守備範囲は広く、「認知症」「脳血管障害」「頭痛」「脊髄疾患」「末梢神経障害」などのコモンな疾患の知識も必要とされます。また、古典的な神経内科疾患にも新知見や治療法がどんどん加わています。さらに「めまい」や「睡眠」といったコモンな症候もカバーします。そんな新しい神経内科の軸を踏まえた「極論」らしい大改訂となりました。
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序文
監修者・まえがき
きょく ろん【極論】
(1)極端な議論.また,そのような議論をすること.極言.
(2)つきつめたところまで論ずること.
[大辞林 第四版(三省堂)より]
「極論」神経内科の初版は大変好評をいただきました.河合先生の執筆された内容は,臨床神経内科の「凄み」を十二分に伝えてくれるもので,どのチャプターも一線の現場からの生の声を届けようという意気込みに溢れており,神経内科医が目指すべき高みを示してくれていたように思います.
その第1 版を上梓してから6 年が経ちました.今回の改訂では新たに「頭痛」(2 章)「末梢神経障害」(6 章)「めまい」(12 章)のチャプターが執筆され,さらに各章に必要な内容を加筆いただいています.その内容がまた俊逸であったため,内容の全面的な再構成をさせていただきました.具体的には,以下の三部構成となっています:
新しい時代の神経内科疾患(主に脳血管障害に近い部分)を河合先生が語る
このセクションの6 つの章は脳から末梢神経まで順番にみていくようになっており,特に最初の3 章は,脳血管障害を軸として新たな時代のスピーディな神経内科を扱うこととしました.
古典的神経内科の疾患を河合先生が斬る
このセクションは最初のセクションと打って変わって「古典的神経内科疾患」が中心となっています.ただ,「古典的」とはいえ,そこに河合先生流の現代的な考え方が取り込まれており,多くの読者にとって新しい内容となるのではないでしょうか.個人的には8 章のALS や9 章 ギラン・バレー症候群がハイライトとなるのではないかと思います.
症候別に神経内科全体を俯瞰する
最後のセクションにくるのは「疾患論」の内容です.この項では疾患ではなく患者さんの訴えという視点から神経内科を俯瞰的に捉えているチャプターを集めました.第1 版でも大変評判がよかった「器質的疾患でない神経疾患」を最後に配置させていただきました.
本書の対象は,神経内科をローテートする研修医(初期・後期)はもちろん,ひと通りの神経内科の勉強を終え,臨床の現場に出たが今ひとつ教科書的な知識やガイドラインの素読では物足りないといった方も対象になるかと思われます.あるいは,神経内科の業務に携わり,その裾野を広げたいという方にも【極論】という形式でのエッセンスの共有は役に立つのではないかと考えています.
最後にややプライベートな内容になりますが,本書の著者である河合先生と自分は,ちょうど同じ時期に同じ都市(ニューヨーク・ヒューストン)で研修した間柄です.その後 15 年を経て,一緒に医学系の書籍を上梓する機会に恵まれたわけですが,河合先生が日米で経験してきた臨床のコアの部分を多くの方に共有してもらえたことを非常に嬉しく思います.
その「心意気」が1 人でも多くの読者に届くことを願っております.
2020年12月吉日
監修者 香坂 俊
著者・まえがき
「神経内科の面白さとは,何だろうか?」
数ある医学分野の中で「なぜ,その進路を選んだのか?」を言語化することは道を迷わないために大切な作業です.よく進路を決めるときに「いい指導医に感化されて…」「いい先輩に憧れて…」という決め方をする人を見かけます.別に入口はどんな入り方をしてもいいと思いますし,選んだ先で真の面白さに目覚めて,そのままその分野に突き進むこともあるでしょう.
ですが,そういう進路の決め方は結構危ういと思っています.「じゃあ,その指導医が転勤になったら?」「その先輩がどこか別の科に転向したらどうしますか?」と問いたいのです.大前提として,病める患者に寄り添っていかねばならないのは,どの分野に進んだとしても変わるものではありませんし,その作業は喜びもありますがときに辛く厳しいものです.だからこそ,医療従事者が専門分野を選ぶときには,
自分がいかに前向きにその分野を興味深いと思えるか
が重要になってきます.医学の一分野を一生の仕事にするには,ここのモチベーションがはっきりしていないと「もたない」のです.極論で語れば「その分野を面白い」と思えるかどうかです.
初版を執筆したときのことを思い返せば,「なぜ,神経内科の面白さが伝わらないのだ!」という怒りにも似たエネルギーをぶつけて執筆したことを思い出します.6 年の歳月が経ち,神経内科を取り巻く環境もかなり変わってきました.名前が脳神経内科に変わろうとしていたり,初期研修制度やマッチングなども普通になり,新薬が次々と発売され,専門医制度も変わったり,画像技術はさらに精度が上がり身近になってきました.それでも,これらの要素は神経内科を進路に決める状況において一番の優先順位を与えられるものではありません.だからこそ,冒頭の「神経内科の面白さとは何だろうか?」に戻りたいのです.
それは,今も昔も(きっと未来も)「局在診断」です.
(皆さんがお読みの本は【極論で語る】シリーズです).
本書の中でも「これでもか!」というほど強調していることなのですが,じつはこれはかなり複雑なコンセプトです.まず,大脳から始まって脳幹,脊髄,末梢神経,筋に至る空間的な局在診断をつける作業があります.すなわち3 次元に人間の身体をとらえる必要があります.さらに,病変によっては,あるときは異常を呈するが,時間が経つと消えてなくなるような病変もあります(多発性硬化症,てんかん発作,睡眠関連疾患などがそれにあたります).時間的な局在診断4をつける作業が求められるのです.すなわち,4 次元に人間の身体をとらえる必要も出てきます.
この作業を「面白いなあ」と思えれば,神経内科へようこそ.この分野はあなたの知的な好奇心を満たしてあまりある複雑性で迎えてくれることでしょう.そして私は,そんなあなたに何回もくり返して言いたいのです.神経内科は絶対に面白い.
■謝 辞
香坂俊先生にはいつもながら鋭い視点から監修していただき感謝します.章立ての変更など,彼に監修してもらったことで第2 版は格段に読み進めやすくなったと思います.ニューヨークとヒューストンで同じ時期に同じ場所にいたことは,私にとって空間的・時間的な奇跡以外の何ものでもありません.
龍華朱音先生には今回も的確かつ親しみやすいイラストで【極論で語る】シリーズのテイストを支えていただき感謝します.私がコンセプトを伝えて,彼女に医師の視点から関心をもっていただき,それをイラストにしてもらえるこの作業がいつも非常に楽しいです.
今回第2 版を出版できるようになったことを丸善出版企画編集部の程田靖弘氏に感謝します.初版からの付き合いになりますが,その間に睡眠医学編の執筆もあり,それ以外にも連絡をもらい,執筆のヒントをいただいているせいか,彼とは常に一緒に働いているような気がしています.今回も粘り強く編集作業をしていただきました.
さらに,改訂版では編集部総出で校閲作業をしていただいたと聞きます.ここで感謝の意を表します.
そして,最後になりましたが,この第2 版が出版できることになったのは,今読んでいただいている読者の皆さんのおかげです.ぜひ忌憚のない意見,感想をSNS などで聞かせていただければ幸いです.
2020年12月吉日
著者 河合 真
目次
第1部 領域が広がったコモンな神経内科疾患をどう考えるのか?
1章 脳血管障害[CVD]
極論1 脳血管障害は血管の病気だと重々承知すべし
極論2 「脳卒中」は便利な言葉だが,使うのは画像検査まで
極論3 「(意識)レベル低下です」は,まず信じない
極論4 初発の頭痛でCT が正常なら,ごちゃごちゃ考えないで○○をやる!
コラム1 頭部単純CT をスキップしない / コラム2 噂をパラメーターとして使う
2章 頭 痛[headache]
極論1 第一ステップは「やばい」か「やばくない」か
極論2 頭の何が痛いのかを考えろ!
極論3 片頭痛か? それ以外か?
極論4 「コモン」の本当の意味を理解しないとハマる
コラム1 頭痛が起きる工場
3章 認 知 症[dementia]
極論1 「認知症」は病名ではない!
極論2 救急外来や入院中に認知症の診断をつけるな!
極論3 病歴聴取で見当がつかないときは,診断にはたどりつかない!
極論4 認知症=ドネペジル処方すればいい!と思うな
コラム1 高齢者に礼を失するな! / コラム2 老年医学の難しさ
4章 てんかん[seizure/epilepsy]
極論 1 「 てんかん」を「てんかん」と呼ぶな ! [seizure]と[epilepsy]を区別する
極論2 「抗てんかん薬」は「抗てんかん発作薬」ではない
極論3 てんかん発作を見ないで,正しい治療ができていると思うなかれ
極論4 脳波と薬物濃度を治療するな
極論5 新規抗てんかん薬を使わない理由を探せ!
コラム1 米国の状況
5章 脊髄疾患[spinal cord disease]
極論1 MRI のために戦え!
極論2 撮影部位でよい格好をしない
極論3 足底をこすらないなんて…,やり直し
極論4 肛門括約筋反射を診ないなんて…,やり直し
コラム1 「戦い方」伝授します.Fighting Styleは地方によって違いあり
6章 末梢神経障害[peripheral neuropathy]
極論1 length dependent neuropathyという言葉をもっと使うべし
極論2 どこまでが末梢神経で中枢神経か?
極論3 脱髄ではない,脱髄鞘だ!
極論4 感覚神経の評価が「触覚」だけ=道具を用意していません
コラム1 高齢者の振動覚低下とアキレス腱反射低下で興奮しない
第2部 新しい知見が満載の古典的神経内科疾患をどう考えるのか?
7章 パーキンソン病[PD]
極論1 原料がないわけではない.下請け工場がつぶれた状態
極論2 なぜ下請け工場がつぶれるのか? 原因なのか,結果なのか.それが問題だ!
極論3 「社会歴をとる?」,とらないと治療できない
極論4 覚悟を決めてドパミンをいじる
極論5 国全体で治療を考える.外科的治療を忘れない
コラム1 映画『Awakenings(邦題:レナードの朝)』について
8章 筋萎縮性側索硬化症[ALS]
極論1 「難病=できることがない」ということは絶対にない
極論2 NIV とPEG の適応は慎重に? 冗談じゃない
極論3 運動以外の症状を評価をせずに治療はできない.対症療法の何がいけない?
極論4 終末期の議論を避けない.事実を告げることは希望を奪うことではない
コラム1 人工呼吸器と離脱
9章 ギラン・バレー症候群[GBS]
極論1 治療する? するに決まっている.だって治療法があるのだから
極論2 病初期の診断は進行速度が決め手となるが,よい打腱器も必要
極論3 果たしてGBS は難病なのか? その見極めが難しい
極論4 自分の病院の限界を知っておく
コラム1 仲良くしておくべき科とは? 就職時の心得を伝授! / コラム2 打腱器もしくはハンマーへのこだわり
10章 重症筋無力症[MG]
極論1 重症筋無力症? さあ緊張しろ!
極論2 歩いて覚醒している患者さんでも,クリーゼの気管内挿管はエースに頼め!
極論3 すべての薬剤が,MG を増悪させる可能性がある
極論4 コリンをいじるということを理解する
極論5 治療しながら増悪に備える.経験者のアドバイスに耳を傾ける
コラム1 神経内科の診断速度 / コラム2 あなたよりMG のことを知っている医師が必ずいる
11章 多発性硬化症[MS]
極論1 診察道具を活用し時間と空間の多発性を証明すべし
極論2 MRI より自分の診察を信じられるか?
極論3 フォローすれば名医となれる疾患
極論4 自己免疫かつ中枢神経疾患であることが治療を難しくする
コラム1 神経内科のレジデントとしての資質とは?
第3部 コモンな症候を神経内科的にどう考えるのか?
12章 めまい[vertigo/dizziness]
極論1 まずは「めまい」の言葉を料理する
極論2 センサーか? センターか? 「めまい」なんて錯覚さ!
極論3 めまいの王様を理解するべし
極論4 末梢性か? 中枢性か? 何を信じる?
コラム1 MRIオーダーの今と昔
13章 睡 眠[sleep]
極論1 睡眠を評価しないのは,脳の3 分の1 を評価していないことである
極論2 すべての症状はOSAS に通ず
極論3 終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)でしか「脳と睡眠」は語れない
極論4 「不眠の治療=睡眠薬」ではない
コラム1 どうやって睡眠医学を教えるか? / コラム2 睡眠検査= AHIを出すものという誤解(睡眠検査レポートはなぜ長い?)
14章 「器質的疾患でない」疾患について[non-organic disease]
極論1 「心因性」疾患を知らずして,「器質的でない」というなかれ
極論2 「器質的疾患でない」というならば,ほかの医師に理路整然と説明できるか?
極論3 「器質的疾患でない」患者さんの説明には,むしろ時間をとる!
極論4 身体表現性障害の正しい対処を知らずに,一人前などと片腹痛い
コラム1 精神科医が「器質的疾患が疑われる」といってきたときは襟をただせ
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書籍情報
- ISBN:9784621305775
- ページ数:208頁
- 書籍発行日:2021年1月
- 電子版発売日:2021年12月20日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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