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- 子どもの診かた、気づきかた~小さな異変もこぼさず拾える!
商品情報
内容
●子どもの症状から診断までのロジック、必要な検査や鑑別疾患などを徹底解説
子どもは自分ではうまく症状を説明できないもの。見落としのない診断はハードルが高いと感じることはありませんか?
好評書『小児科ファーストタッチ』に続く、小児科診療を楽しく学ぶ書籍の第2弾! 症状から診断までのロジックや、見逃したくない疾患に気づくために必要な検査や鑑別疾患などを会話形式で徹底解説しました。「小児科ってこんなにシンプルなのか!」と目から鱗が落ちること間違いなしの1冊です。「実際どうなの?」と普段はなかなか聞けない疑問も丁寧に深掘りし、また、随所にあるクイズを通して理解度を確認できます。最初から読み通すもよし、不正解だったページから読み込むもよし。岡本ワールド全開の本書をぜひお楽しみください。
あわせて読む → 初期研修医・総合診療医のための 小児科ファーストタッチ
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序文
はじめに 小児科診療のハードルを下げたい
子どもを診るのは小児科医の仕事だと思っていた。だが,地方では小児科医不足が進み,小児科医だけで子どもを診ていける時代ではなくなった。これは,2017年に兵庫県丹波市で地域医療をするようになって実感したことだ。私が知らなかっただけで,きっとずいぶん昔からこの問題は存在していたのだろう。これからの子どもを支えていくには,内科や研修医の先生たちの力が必要だ。そう気づいたときから,私はもっと簡単に子どもを診療できないのか,ということばかりを考えるようになった。小児科診療の技術的・心理的なハードルを下げたい。高齢者を診る機会のほうが圧倒的に多く,子どもを診る機会が相対的に少ないプライマリケアの先生や,そもそも子どもを診る経験自体が絶対的に少ない研修医の先生であっても,子どもは難しい・無理だと思うことなく診療できる方法を模索した。
まず私は,自院の研修医に向けて小児のマニュアルを作った。じほう様の協力もあって,2019年には「小児科ファーストタッチ」という書籍となった。私に忖度してかどうかは知らないが,当院の研修医はファーストタッチを片手に子どもの診療を行っている。アナフィラキシーや気管支喘息発作など,病名がついている状況での彼らのファーストタッチは迅速で的確だ。治療計画の説明に関しても,研修医の先生はなかなかスマートで堂々としている。若い先生たちの戦力は正直なところ私の想像以上で,彼らのおかげで私はすでに何度も助けられた。病名がついていると,道がクリアに見えるのだろう。「小児科ファーストタッチ」であれ,UpToDateであれ,病名を検索すれば,必要な知識は瞬時に手に入る。検索のしやすさ,勉強のしやすさ,説明のしやすさが格段に向上する。だから,病名がついてからの研修医は非常に心強い。
病名がつく前に霧が立ち込める
だが,その手前の部分に物足りなさがあった。1つの欲求を満たすと,すぐに新たな欲求が生まれるのが人間である。最初はポテトチップスを1枚ずつパリパリ食べて満足できていても,すぐに2枚3枚重ねてボリボリ食べたくならないだろうか。診断に必要な検査が不足していたり,そのせいか診断に自信がなかったり,逆に根拠が薄い割に妙に自信があったり。まあ,これだけできていれば上出来なのかなと思いつつも,小児科医からすれば「もう一息,いやポテチもう1枚!」と言いたくなる。言いたくなるポイントはやはり検査と診断,すなわち病名がつく前に多い。病名がつく前は道が見えないのだ。霧が立ち込めたかのように,ぼんやりとしてくる。その症状をUpToDateで検索しても,ぼんやりとした知識しか手に入らない。だから,ぼんやりとした医療になる。
病名がつく前に,どのような計画を立てるか。これは「臨床推論」とよばれることもあるし,疾患ごとの各論に対して「総論」とよばれることもある。道が見えない状況でも迷わないために,私は研修医に地図とコンパスを持たせたつもりだった。「小児科ファーストタッチ」では,本文の3割以上を「総論」に充てた。どういうポイントに気を付けて診察し,どういうポイントがあればどの検査をするかをできるだけ詳しく,時にくどく書いた。このファーストタッチが,方向を明確に示すコンパスとなり,または具体的でわかりやすい地図となって,霧が立ち込める道を照らすと思っていた。だが,実際の患児を前にすると,多くの研修医が結局何から始めればいいのかわからなくなっている。発熱,咳嗽の2歳児を診療するとき,気を付けるべきポイントを押さえられていない。内科のトレーニングで鍛え上げられたtop to bottomはもちろん大切だが,そのアプローチは小児の問題点をより複雑にし,カルテをひたすら長くさせ,ただでさえ苦手意識をもっている小児科診療のハードルをさらに上げた。試しに「気を付けるべきポイントは何だろう?」と質問してみると,「ポイント,ですか?」と首を傾げるか,「全部大切だと思います」と息巻くか。そして,結局ポイントを見逃す。
「明確で具体的」なポイントをチェック
発熱や咳嗽,腹痛などの症状に対して,気を付けるべきポイントが一挙に,そして並列に記載されると,「明確さ」は失われてしまうようだ。淡々と並んだ情報の羅列は,ピントをぼんやりさせる。「明確なポイント」というのは,「まずは,これに注意!」のような順位づけや,「これだけは注意!」のような重みづけが必要なのだ。
また,「総論」に汎用性をもたせようとした結果,抽象的な表現が多くなってしまい,なかなか具体的なイメージにつながらないことにも気づいた。そもそも,研修医は子どもを診る経験が全体的に少ない。子どもだけを10年以上診療しつづけてきた私と,1カ月しか小児科研修をしない彼らとでは,圧倒的に経験数が違う。子どもの症状に対して,文字情報でポイントを書いても,それは抽象的な概念としか映らず,具体的なイメージが湧かないのだ。彼らの不足した経験を補う,より「具体的なポイント」を示さなければならない。
明確で具体的。これは本書のキーワードである。「 明確で具体的なポイント」を研修医に伝えるには,どうすればいいか。最も簡単なのは,実際に診察している研修医の隣に指導医がついて,気を付けるべきポイントを毎回チェックしていけばいい。だが,私には私の仕事もあるので,当院の研修医であっても,べったりくっついてあげることはできない。私は研修医を戦力として期待しているし,研修医もその期待に対してなんとなく喜んでいるようにみえるので,私にべったりとチェックされるのも彼らの本意ではないだろう。物理的にはそばについているわけではないが,精神的にはポイントをチェックされているような状況になればいいのだが。そこで私は,また書籍の力を借りることにした。対話形式の本を作り,明確なポイントを示していく。具体的な症例をベースとし,研修医に不足している経験を補う。研修医がポイントを導き出し,指導医がチェックする。対話方式は特段珍しい書き方ではないが,「明確で具体的」を実現するには,研修医と指導医の対話のなかで生まれるチェックポイントが大切だと考えた。
病名がついてなくても難しくない
プライマリケア医や研修医の先生たちが普段診ているような患者は,たくさんのプロブレムを同時にもっていることだろう。それに比べて,子どものプロブレムというのは1つか2つだ。既往歴や合併症は少なく,小児科診療は非常にシンプルである。そもそも,私は2つ以上のことを同時に考えるのが苦手だ。𠮷野家の店員さんが注文,配膳,後片付け,会計までを1人でこなす様子を見て,「絶対に私にはできない」とつくづく思う。私が𠮷野家で働くためには,せめてメニューを牛丼並盛だけにしてもらわなければならない。プライマリケア医や研修医の先生たちは,きっとトッピングもセットメニューも何でもありでも対応できるように修練を積んでいるはずだ。先生たちであれば,もっと上手に子どもを診られる。
小児科診療はシンプルである。ハードルは高くない。本書の「明確で具体的」なチェックポイントで,そう実感していただければ本望である。
岡本 光宏
目次
第1章 発熱
Day1 風邪らしくない経過
Day2 重症な発熱
Day3 発熱以外の所見がない
Day4 生後3カ月未満の発熱
Day5 肺炎かもしれない聴診所見
Day6 肺音の聴き分け方
Day7 迅速検査が必要な所見
Day8 咽頭で診るべき場所
Day9 中耳炎が疑われる鼓膜所見
Day10 発熱へのファーストタッチ
BrushUp 発熱の腕試しテスト
第2章 呼吸器
Day11 緊急性の高い咳
Day12 3週未満の咳
Day13 3週以上続く咳
Day14 抗菌薬が必要な咳
Day15 長引く鼻汁
BrushUp 呼吸器の腕試しテスト
第3章 消化器
Day16 腹痛でまずすること
Day17 虫垂炎かもしれない腹痛
Day18 胃腸炎らしくない下痢
Day19 注意すべき嘔吐
Day20 脱水への救急対応
BrushUp 消化器の腕試しテスト
コラム
解熱薬で熱が下がらなかった場合って重症ではないんですか?
生後3カ月未満でも尿路感染であれば髄液検査は省けますか?
泣きやんでくれず,聴診ができないときはどうすればいいですか?
Centor criteria(溶連菌性咽頭炎スコア)は,小児科でも使えますか?
喘息診断の手がかりとなる「アトピー素因」ってなんですか?
なぜ抗ヒスタミン薬による鼻炎の診断的治療って難しいんですか?
小児科研修のアドバイス! 有意義な研修には,準備が必要
そもそも下痢ってどう定義されているんですか?
嘔吐のとき,迅速検査はしたほうがいいですか?
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書籍情報
- ISBN:9784840753906
- ページ数:196頁
- 書籍発行日:2021年11月
- 電子版発売日:2021年12月24日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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