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- てんかん 睡眠・覚醒障害<講座 精神疾患の臨床6>
商品情報
内容
「てんかん」「睡眠・覚醒障害」はICD-11 第6章(精神疾患の章)外に分類されているものの精神疾患との関連が深く,診療にあたる精神科医には診療科横断的な幅広い知識とともに高い専門性が求められる.また近年,病態理解や創薬において著しい進歩がみられる領域でもある.そこで,本巻では精神科医にとって重要なポイントをまとめ,ICD-11を含む新規知見を概観できるよう解説している.
あわせて読む → 「講座 精神疾患の臨床」シリーズ
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序文
序
本シリーズ[講座 精神疾患の臨床]は,シリーズを通じて,世界保健機関(WorldHealth Organization: WHO)の国際疾病分類表第11版(International Classificationof Diseases, 11th revision: ICD‒11)に基づいた構成となっている.本シリーズの第6巻「てんかん 睡眠・覚醒障害」も,原則としてその方針を踏襲しているが,この点と関連して重要な付記事項を述べておきたい.
ICD‒11は,疾患領域ごとに章立てが行われており,精神疾患は第6章が「精神,行動又は神経発達の疾患」に分類される構成となっている.しかしながら,本巻(第6巻)で扱う「てんかん」,「睡眠・覚醒障害」の2つの疾患群は,いずれも第6章「精神,行動又は神経発達の疾患」とは別の章に分類されている.まず,てんかんについては,精神医学と神経学の境界領域に位置する疾患群として古くから認識されてきた.そのような歴史的背景の下で,てんかんはICD分類では,精神疾患ではなく神経疾患の章に分類されてきており,ICD‒11でもその方針が踏襲されている.次に,睡眠・覚醒障害については,ICD‒10までは精神疾患の章に含まれていたが,ICD‒11に至って,独立した章として扱われることになった.睡眠・覚醒障害が,多診療領域にまたがる病態であることが,その大きな理由である.
しかしながらこのことは,てんかん,睡眠・覚醒障害のそれぞれについては別の診療科が担当するので精神科医の役割がない,ということを意味するわけではない.てんかん,睡眠・覚醒障害のいずれも,複数の診療科がそれぞれの専門性を持ち寄ることによって診療すべき疾患群であり,その中で精神科医は必須の役割を担っている.てんかん,あるいは,睡眠・覚醒障害を自らのサブスペシャルティとして重点的に学んでいく精神科医だけでなく,すべての精神科医にとって,これらの疾患群についての幅広い知識の習得は欠かせない.
加えて,てんかん,睡眠・覚醒障害の多診療科横断的な診療においては,精神医学の専門性が特に求められる場面がある.てんかん診療で精神科医の専門性が要請される代表例としては,発作時,発作後,発作間欠期の精神症状の診断と治療がまずあげられるだろう.精神科救急あるいは一般救急の現場など,精神症状の急性増悪で受診する診断未確定の患者を診療する場面では,てんかん性の病態は,代表的な鑑別診断として必ず意識しておかねばならない.一方で,睡眠・覚醒障害の診療で精神科医の専門性が求められる場面としては,併存する精神疾患の見立てをあげることができる.睡眠・覚醒障害の代表である不眠障害では,その背後にさまざまな精神疾患が併存していることは非常に多い.患者から主訴としてまず述べられることの多い不眠を正確に評価したうえで,合併する精神疾患の評価し,患者の病態の全体像を総合的に評価することが,精神科医には求められている.
以上のように,てんかんと睡眠・覚醒障害はICD‒11における精神疾患の章の外にありながら,精神医学との関連が非常に深いという共通点を持つ.加えて,てんかん,睡眠・覚醒障害の共通点としていえることは,両者ともに,病態理解や創薬において,精神医学のさまざまな領域の中で,最近,特に進歩の著しい疾患群であるという点である.そのため,この領域の学習者には,新しい知識を更新していく姿勢が求められている.
上記のことを鑑み,本巻は以下のようなコンセプトのもとに構成した.①それぞれの疾患群を十分に解説するが,精神科医にとって重要なポイントには特に力点を置くこと,②ICD‒11の疾病分類を参照するが,精神科臨床における実用性を鑑みたうえで,柔軟な章立てとすること,③重要な新規の知見を概観できるようにすること,である.特に,てんかんについてはICD‒11の疾病分類とは章立てが大きく異なっているが,その理由は「てんかん学と精神医学の歴史」の項目(p2)で述べられているのでご参照いただきたい.
精神科専門医の基盤のうえに,さらに,てんかん,あるいは睡眠・覚醒障害の専門医を目指す精神科医,てんかん,睡眠・覚醒障害の専門医を目指すわけではないが,一般精神科診療の中でこれらの疾患に遭遇した時に備えるため基本的知識を整備したい精神科医,そのいずれにとっても本巻が有用なものとなることを祈念する.
2022年1月
京都大学大学院医学研究科精神医学教室
村井俊哉
目次
てんかん
てんかん学と精神医学の歴史 (兼本浩祐)
疫学 (辻 富基美)
臨床診断 (川崎 淳)
病態
神経生理学の視点から (十河正弥,松本理器)
病態と病態生理の観点から (岡田元宏)
Topics 突然死 sudden unexpected death in epilepsy (宮川 希,谷口 豪)
治療 (加藤昌明)
生活支援-包括的視点から (岩佐博人,原 広一郎)
てんかん・てんかん症候群 各論
焦点てんかん (西田拓司)
全般てんかん (池田 仁)
全般焦点合併てんかん (小国弘量)
急性症候性発作 (尾久守侑)
非誘発性てんかん発作 (原 恵子)
てんかん重積 (貴島晴彦)
Topics 自己免疫性脳炎 (松本理器)
てんかんに伴う精神医学的側面
全般 (吉野相英)
心因性非てんかん性発作 (倉持 泉,岩山孝幸)
精神病〈精神症〉症状 (足立直人)
知的発達症・自閉スペクトラム症 (本岡大道,安元眞吾)
Topics 高齢者のてんかん (曽根大地,渡辺雅子)
睡眠・覚醒障害
人間の睡眠と不眠症の歴史 (内山 真)
睡眠・覚醒障害の診断分類 (本多 真)
睡眠・覚醒障害の疫学と併存疾患 (降籏隆二)
睡眠・覚醒障害の症候学と鑑別疾患 (山寺 亘)
睡眠・覚醒障害の検査法 (岡 靖哲)
自記式評価尺度 (斎藤かおり,鈴木正泰)
睡眠制御の病態
生理的睡眠制御 (鈴木正泰)
生化学的薬理学的睡眠制御 (稲田 健)
治療
薬物療法 (三島和夫)
非薬物療法,認知行動療法,睡眠衛生 (渡辺範雄)
時間生物学的治療 (吉池卓也)
Topics 体温コントロールによる不眠症治療 (大槻 怜,鈴木正泰)
睡眠・覚醒障害 各論
不眠障害群 (河村 葵,栗山健一)
中枢性過眠症群 (小野太輔,神林 崇)
睡眠関連呼吸障害群 (松田有史,角谷 寛)
概日リズム睡眠・覚醒障害群 (北島剛司)
睡眠関連運動障害群 (都留あゆみ,松井健太郎)
睡眠時随伴症群 (瀧井 稔,小曽根基裕)
Topics 睡眠関連てんかん (髙木俊輔)
精神疾患における睡眠・覚醒障害 (普天間国博,高江洲義和)
認知症における睡眠と夜間行動の問題 (藤城弘樹)
生活習慣病・整形外科疾患に伴う睡眠・覚醒障害 (平野 亘,刑部彰一)
Topics アルコール使用と睡眠 (金野倫子)
Topics 睡眠を改善するサプリメント (中島 亨)
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書籍情報
- ISBN:9784521748269
- ページ数:448頁
- 書籍発行日:2022年2月
- 電子版発売日:2022年3月2日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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