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- がん患者の意思決定支援 成功の秘訣
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序文
はじめに
「がん患者の意思決定支援 成功の秘訣」というタイトルで,1冊の本を書く機会をいただきました.「成功の秘訣」とは,なかなか煽ったタイトルだと自分でも思っています.タイトルをみて手に取り,読んでいただいた方をがっかりさせないように,今,自分の持つものをできるだけ表現したつもりです.
自分の持つものをここに示したものが,みなさまの心に響くかどうかは,正直,心配ですが,せっかくいただいた機会ですので,とにかく全力で挑んで,評価は読者のみなさまにお任せして,すがすがしくありたいと思っています.
まずは,この本を読んでいただく前に書いている私の立場を知っていただく方がいいと思うので,すこしだけおつきあいください.
私は,兵庫県尼崎市にあるがん診療をしている600床超の比較的大きな総合病院で産婦人科の臨床医をしております.そのかたわらで,病院の緩和ケアセンターのセンター長も兼任しております.
産婦人科では分娩のとりあつかい,婦人科がんの診断や治療,そして若い先生の指導を行っています.週に2回は婦人科外来を,週に2〜3日は手術も担当しています.緩和ケアセンター長としては,緩和ケアチームのリーダーとして,チーム介入が必要な患者さんやその患者さんを担当する医師や看護師さんたちの相談に乗っています.チーム介入の業務のほとんどは,チームのメンバーである腫瘍内科医,精神科医,緩和ケア専門看護師,薬剤師,理学療法士,ソーシャルワーカー,公認心理師など多職種で行われており,私自身のしていることはマネジメント業務であり,それぞれの職種のメンバーが力を発揮しやすいように場を作り,うまくいっている時は見守り,うまくいかない時にはアドバイスやコーチングをするという役割です.
産婦人科の診療と緩和ケアチームのマネジメントをするなかで,患者さんや医療従事者の意思決定支援をする機会が多くなってきました.当初は自己流で何とかしてきたのですが,時に難渋する出来事に遭遇することも増えてきました.立場的にも,若いスタッフが困っている出来事を私が何とかしなければならないことが出てきました.
そのような関心・契機のなかで私がよりどころとしたのは,哲学と行動経済学でした.
目の前の患者さんにどの医療行為をおすすめして,受けていただくかということを決めるには,「統計学」で示された「医学的根拠」だけでは不十分だと思い,「正義」や「善」について書かれた哲学書を読み始めました.そのなかで,「構造構成主義」という哲学を基本とした「本質行動学」という学問と実践を説かれている西條剛央先生(エッセンシャル・マネジメント・スクール代表)の教えにたどり着きました.そして幸運なことに,西條先生から直接,教えをいただけたことで,ずいぶんと救われました.
哲学を支えにして,自分たちがどう考え,意思決定をしていくかというセルフマネジメント,チームマネジメントはできるようになったものの,それを目の前の患者さんやご家族に伝えようとした時に,「どうもうまく伝わらない」ということがありました.「自律尊重の原則」からすると患者さんやご家族が決められたことを大切にしなければならないのはわかっているのですが,目の前の患者さんが明らかに問題があるような選択をされる様子をみると,専門家としては強いジレンマに陥ります.誰にとっても「最善」というのは難しいかもしれないけど,やはり患者さんがあからさまに不幸にはなってほしくないという気持ちを抱えていました.そんな時に出会ったのが,大阪大学の大竹文雄先生と平井啓先生たちが始められた「医療行動経済学研究会議」でした.行動経済学,心理学や文化人類学など,いわゆる文系の研究者の方々と,医療従事者の有志が集まり討論をし,「医療現場の行動経済学」という1冊の本を出版していく過程で,患者さんやご家族だけでなく,専門家であるとされている私たち医療従事者でさえも陥りがちなバイアスの存在を知り,意思決定においてバイアスの悪影響をどうやって和らげるかについて学ぶことができています.
したがって本書は,「構造構成主義/本質行動学」に基づいた哲学と「医療行動経済学」について私が学び,実践していることを中心に書いております.
私もまだ浅学の身で,これからも成長をしていかねばならない医療従事者の一人ですので,読んでいただいたうえで忌憚のないご感想や,ご意見をいただければ幸せに思います.
2022年5月
堀 謙輔
目次
第1章 人間は本当に「自由な」意思決定ができる
存在なのか? 〜「あたりまえ」を疑う〜
自由意志はあるのか?
リバタリアニズムとパターナリズム
人生の山場や分岐点を一番理解できるのは本人とは限らない
第2章 知っておきたい「バイアス」と「ナッジ」 〜行動経済学入門〜
システム1とシステム2
プロスペクト理論
現在バイアス
サンクコスト(埋没費用)の誤謬
利用可能性ヒューリスティックス
確証バイアス
正常化バイアス
ハロー効果
後知恵バイアス
平均回帰
トレードオフのタブー視
ナッジ
ナッジを用いることの倫理性
第3章 長生きは最善か? 〜価値観の多様性〜
生存期間の長い人ほど幸せなのか?
がん治療に関するエビデンスの多くは「統計学」を用いて作られている
「そば」派はそばだけを食べ続けるのか? 〜「もやもや」のすすめ〜
第4章 チーム医療,成功の秘訣
人がそうするには理由がある
肯定サンドイッチのすすめ
一度にたくさんのことを言わない(ワンミニッツ・ルール)
アンガーマネジメント
反応しないスキル
タウマゼイン(驚き)話法
解決できない至らなさはみんなでシェアする
第5章 心だけでは伝わらない 〜コミュニケーション・スキルを身に付けよう〜
明日からできる会話術,「音読み」ではなく「訓読み」を
「タフな交渉」でもある意思決定支援
ハーバード流交渉術
コミュニケーション・スキルが必要であるというエビデンス
コミュニケーション・スキルをどうやって身に付けるか?
短時間で身につくserious illness care program(SICP)
共感型コミュニケーションと問題解決型コミュニケーション
第6章 患者にとって「選ぶ」とは何か?
〜意思決定を支える「いのり」と「ゆるし」〜
未来は無限にあるのか?
過去は取り返しがつかないのか?
人間は成長するから,首尾一貫しない
人生に分岐点などないかもしれない
「選ぶ」とは? 選択する「喜び」と「重荷」
がん治療への抵抗心がなくなっていく
経験する自己,記憶する自己,そして予測する自己
インフォームド・チョイスがより重荷を増す
「ゆるし」と「いのり」
第7章 コトバについて考える 〜構造構成主義入門〜
コトバについて考えるのが「哲学」
構造構成主義をこの本の柱に据えた理由
本質行動学について
構造構成主義における構造と志向相関性
価値観コミュニケーション
第8章 患者にとって「善」とは何か? 〜「プロセス」にとどまらない意思決定支援〜
医療倫理の4原則
「正義」とは?
正義と道徳が強すぎる
「善」とは?
「善」は自分一人で決められるのだろうか?
目指すのは「最大多数の最大幸福」なのか?
人間が抱える「責務」
第9章 意思決定能力
意思決定能力の判定
合理的配慮
第10章 意思決定支援,成功の秘訣
「成功」とは何か?
戦略的ニヒリズム
方法の原理
手段・方法の自己目的化
みんなちがって,みんないい
コトバ,コミュニケーションに特許はない
指を自分に
意思決定支援,成功の秘訣
Column
原理原則は禁止則になりがち
チーム医療の評価“PRO”
聞いてさしあげる
責任・裁き・祈り・恕し
意思決定のタイミングがない ?!
参考文献
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書籍情報
- ISBN:9784498022928
- ページ数:112頁
- 書籍発行日:2022年6月
- 電子版発売日:2022年6月17日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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