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- 整形外科SURGICAL TECHNIQUE BOOKS 9 骨盤骨折
商品情報
内容
治療・手術の難易度の高い骨折として知られる「骨盤骨折(寛骨臼骨折・骨盤輪骨折)」について、最新の治療をまとめた実践テキスト。写真、シェーマでわかりやすく解説するとともに、web動画で実際の手術手技を確認できる。骨折の分類はもちろん、寛骨臼骨折では各種アプローチ、骨盤輪骨折では経皮的スクリュー固定、前方固定、後方固定のバリエーションが詳述されており、これまでのようにいくつかの文献を参照する手間がなくなり、本書1冊で確認できる外傷整形外科医の必携書!
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序文
監修にあたって
骨盤輪骨折と寛骨臼骨折は,整形外科医にとって最もチャレンジングな外傷の一つです.
私は1979年に医師になりました.当時,骨盤輪骨折や寛骨臼骨折を何例も経験しましたが,救命できない場合や,救命できても後壁骨折を除いてほとんどが保存的に治療するのが一般的で,疼痛や機能障害を残すことが多くありました.その後,1982年から84年まで米国Pittsburg大学Mears教授の下で骨盤輪・寛骨臼骨折を学ぶ機会に恵まれました.当時,Letournel先生の“Fractures of the Acetabulum”とTile先生の“Fractures of the Pelvis andAcetabulum”を読み非常に衝撃を受けたことを昨日のように思い出します.そのころは米国でも骨盤輪・寛骨臼骨折に対して積極的に手術をする施設は非常に少なかったと思います.帰国後,自分で手術をするようになりましたが,相談する相手もほとんどおらず非常に長いlearning curveを経て現在に至っています.そのようななかで故弓削大四郎先生,故新藤正輝先生と私の3名で骨盤輪・寛骨臼骨折症例の検討会を始めました.その後徐々に参加人数が増えて骨盤輪・寛骨臼骨折研究会へと発展し,昨年までに21回を重ねて参加者も軽く100名を超えるようになっています.当初は目を覆いたくなるような残念な症例もよく提示されましたが,とことん議論をして参加者間で知識・情報を共有することにより,日本での骨盤輪・寛骨臼骨折の治療は飛躍的に向上したと思います.
本書はこの研究会のエキスパートを中心に執筆されています.診断から保存療法と手術適応,特に手術手技の詳細な記載と動画,後療法,合併症とその対処,予後,評価法と成績まで幅広く網羅した日本初の成書といえます.骨盤輪・寛骨臼骨折の治療にこれから取り組もうとする方,あるいはすでに経験のある方にも非常に役に立つ情報が満載されております.
骨盤輪・寛骨臼骨折の手術は決して容易なものではありません.整復が不良であれば保存療法に劣る結果となり,血管損傷は患者生命を危険にさらし,神経損傷や感染は永続的機能障害を残します.読者にはじっくりと本書を読んでいただき,この難しい骨折に取り組んでいただきたいと思います.しかし実際の手術は書籍からの知識のみでは不十分で,さまざまの研修コースに参加し,慣れた術者の助手を行い,また自分が執刀する際には十分な準備を行い,不安がある際にはエキスパートのアドバイスや助力を得ることも必要です.それによって多くの患者さんが救命され,機能障害を残さず回復されることを願っています.最後に非常にご多忙のなか,執筆のみならず動画まで作成いただいた執筆者の皆様に心から感謝申し上げます.
本書の出版を弓削大四郎先生,新藤正輝先生が天国で目を細めて喜んでおられることと思います.
福島県立医科大学医学部外傷学講座教授
新百合ヶ丘総合病院外傷再建センター骨盤・関節再建部長
澤口 毅
企画にあたって
「整形外科Surgical Technique」では,定期刊行の雑誌とは別に,現在ホットなテーマを深く掘り下げて書籍としてまとめた別冊「整形外科SURGICAL TECHNIQUE BOOKS」を年1回発刊している.昨年の編集会議で,この別冊のテーマとして「寛骨臼・骨盤輪骨折」を提案した.これまで定期刊行誌で,特集企画として「骨盤輪骨折」を,連載企画として「寛骨臼骨折」を取り上げていたので,これをベースに1 冊の書籍としてまとめてみては?と思った次第である.
ご存じのように「寛骨臼・骨盤輪骨折」は整形外科医が扱う骨折治療において最難関の分野であり,簡単に治療できるものではない.案の定,他の編集委員の先生方や担当編集者からは「ちょっとテーマが難しすぎるのでは?」という意見をいただいた.
しかしながら,今や各種セミナーやキャダバートレーニング(※コロナ禍の現在は休止を余儀なくされているが…)を通して,本骨折に関する知識や治療法の数々は,若手から中堅どころの整形外科医にも広く普及してきたといえる.ただし,これを書籍として日本語で,かつ豊富な図や写真・動画で,学べるものは今の日本にはない.だからこそ,この企画に意義があると感じていた.
編集をお願いする先生は即断した.今,日本で最もこの「骨盤骨折」分野で活躍している普久原朝海先生・上田泰久先生に,「寛骨臼骨折」・「骨盤輪骨折」をそれぞれご担当いただき,最適の執筆者の選定ならびにご自身にもご執筆いただいた.最終的には,本骨折治療における日本の先駆者として,常日頃われわれをリードしていただいてきた澤口毅先生に監修をお願いすることにした.
発行直前の最終原稿ができあがり,小生の手元に送られてきた.本書籍の企画者ではあるが,これまでの作業は,普久原先生・上田先生の活躍を中心に,担当編集者・有地太さんに完全にお任せだった.そんな訳で,編集者に名を連ねていながら,じっくりと原稿を見るのは初めてであった.
率直な感想は,「これは凄い!」であった.正直,本骨折の難治性・特殊性を鑑みると,この書籍が日本国内でどれほど売れるものなのかは“?”であるが,真にこの難治骨折を治療している(治療できるようになろうとしている)外傷医にとって,今後“バイブル”となるであろう.特に,本誌の最大の売りである「手術手技(Surgical Technique)」については,まるで目の前で指導を受けているような実感すら感じさせる力作ぞろいである.
先日,縁あって著名な骨折治療に関する海外書籍を翻訳・出版する機会を得た.これと比べても,本書の内容はまったくもって遜色のないものといえる.今ここに,近い将来,版権を海外に販売して,英訳本にするべき価値のある名著が完成した.
とくとご覧あれ!
順天堂大学医学部附属静岡病院整形外科先任准教授
最上敦彦
編集にあたって
多くの「縁」に導かれ,光栄にも寛骨臼骨折パートの編集を担当させていただきました.このような機会を与えていただいた最上敦彦先生,監修していただいた澤口毅先生,執筆をお引き受けいただきました先生方,私のわがままに応えてくださったメディカ出版の有地太さん,そして私の師匠である大泉旭先生・伊藤雅之先生に拝謝いたします.
小川健一先生が2018年に整形外科Surgical Technique 誌で企画された連載「教科書に載っていないところを徹底追及 寛骨臼骨折のアプローチを深く理解する」をベースに,読影・術前準備・手術の実際・周術期・外来フォローまでをカバーするべく,スペシャリストの先生方に「無理難題」を要求しました.おかげさまで素晴らしい原稿をいただきまして,編者として校正原稿を拝読し,私自身新たな知識がいくつも増え,学んだテクニックをすでに手術で実践しております.寛骨臼骨折手術を経験している先生方にとって,間違いなく知識・技術の引き出しが増える1冊であると自信をもって推薦します.
また,寛骨臼骨折の初学者にとっても理解しやすいように,できるだけ図や写真・動画を入れていただきました.最初に手に取る1冊としても自信をもって推薦します.初学者にお勧めする本書の使い方は,「読む」→「エキスパートと一緒に手術をする」→「読み返す」です.寛骨臼骨折手術は「一般整形外科医が展開することが稀な部位」「神経血管が多く解剖が複雑」「侵襲が大きくリスクも高い手術」「骨盤が立体的」「骨折線を合わせることで間接的に関節面の整復を行うため特殊な整復技術が必要」などから,教科書を読んだだけでいきなり手術ができるようには決してなりません.教科書やセミナー・キャダバーコース→手術助手→ 指導医のいる状況での執刀→症例に応じて一人で執刀→ 独り立ちとなるわけです.私自身助手10 例と指導下の執刀20例を経て「症例に応じて」一人で執刀,60 例の執刀を経て「独り立ち」,その後も骨盤輪寛骨臼研究会などでエキスパートの先生方にアドバイスをいただきながら成長してきました.発生頻度が稀な寛骨臼骨折ですから,上達には症例の集約化と術後の長期フォローアップができる環境を準備することも重要です.
山頂からの素晴らしい景色とそこに至る道のりを,登山したことのない人に文章だけですべてを伝えることは難しいでしょうが,一緒に山頂に立てば多くが伝わることでしょう.私が執筆したStoppa approachの章に書いてあることは,一緒に手術をすればそのほとんどが理解していただけると思います.もちろん理解したからすぐ手術が完遂できるわけではありませんが,独学よりはるかに早く知識・技術が身につくはずです.さらに整復内固定のキモは実臨床でしか学べません.本書を読むとともに,エキスパートの先生に手術の指導をしてもらうことが,Master への最短距離なのです.効率よく,そして安全に学びましょう.May the“ Forceps” be with you!
新潟大学医歯学総合病院高次救命災害治療センター
普久原朝海
編集にあたって
2021年の夏に編者の最上敦彦先生,メディカ出版の有地太さんから骨盤輪,寛骨臼骨折の書籍を刊行したいので,内容構成の企画,執筆者を検討してほしいという,ありがたいお言葉をいただきました.雑誌や本の編集・企画というものを経験したことがなかったこともあって,十分な仕事ができるのかという不安はありましたが,なんとか出版まで辿り着き,胸を撫で下ろしています.澤口先生,最上先生には細部まで監修いただき,有地さんには辛抱強く原稿チェックなどを待っていただき,深謝いたします.また,同志ともいえる普久原先生からの激励で,やりきることができたのではないかと思います,ありがとう.
私が骨盤寛骨臼骨折の手術治療に真剣に携わるようになって,およそ15年が経ちます.兵庫県災害医療センター勤務時代に,矢形幸久先生と現川崎医科大学総合医療センターの野田知之先生から骨盤寛骨臼骨折手術を教わり,その後はさまざまなセミナーやキャダバーコースに参加しながら試行錯誤していました.当時はまとまった手術手技書なども少なかったと記憶しています.
今回、私は「第2章 骨盤輪骨折」を担当させていただきましたが,本書籍の意図に沿い,若手から中堅の先生方が,骨盤輪骨折の治療にかかわっていく際に,特に治療の段階でどのようなことを知るべきかを想像して各テーマを決め,そのなかで著者の先生方に取り上げていただきたいトピックを挙げていきました.「整形外科Surgical Technique」誌の別冊である“SURGICAL TECHNIQUE BOOKS”シリーズの題名通り,手術に関する内容が大半ではありますが,近年骨盤輪損傷でトピックになっているEUA(evaluation under anesthesia)についても取り上げました.本書で取り上げた手術手技で,すべての骨盤輪損傷治療を網羅できるわけではありませんが,いわゆる高エネルギー損傷から,最近増加している脆弱性骨盤骨折まで幅広く対応できるものと考えています.
筆者の先生方には,忙しい臨床業務の最中に執筆いただき,本当にありがとうございました.この場をお借りしてお礼申し上げます.
最後にこの本が,骨盤輪・寛骨臼骨折治療にあたるすべての先生のお役に立てることを祈念いたします.
埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター
上田泰久
目次
・監修にあたって
・企画にあたって
・編集にあたって
・動画CONTENTS
・執筆者一覧
・WEB動画の視聴方法
【第1章】寛骨臼骨折
01 寛骨臼骨折の診断と分類
02 手術準備
03 手術の実際 1 Kocher-Langenbeck approach
04 手術の実際 2 Trochanteric flip osteotomy
05 手術の実際 3 Ilioinguinal approach
06 手術の実際 4 Iliofemoral approach
07 手術の実際 5 modified Stoppa approach
08 手術の実際 6 Pararectus approach
09 手術の実際 7 高齢者寛骨臼骨折に対する治療戦略
10 周術期管理と合併症対策
11 外来フォローと評価
【第2章】骨盤輪骨折
01 骨盤輪骨折の診断と手術適応
02 骨盤輪骨折に対する創外固定法
03 骨盤輪骨折の経皮的スクリュー固定 1 逆行性/順行性恥骨枝スクリュー
04 骨盤輪骨折の経皮的スクリュー固定 2 LC-2 screw
05 骨盤輪骨折の経皮的スクリュー固定 3 iliosacral screwとtrans iliac-trans sacral screw
06 骨盤輪骨折の前方固定 1 恥骨結合離開に対するプレート固定
07 骨盤輪骨折の前方固定 2 前方皮下創内固定
08 骨盤輪骨折の後方固定 1 Crescent fractureに対する後方アプローチと後方固定法
09 骨盤輪骨折の後方固定 2 仙腸関節の前方固定
10 骨盤輪骨折の後方固定 3 仙骨後方固定
11 骨盤輪骨折の後方固定 4 仙骨後方アプローチと仙骨内固定,jumper’s fractureに対する閉鎖性整復
12 骨盤輪骨折の後方固定 5 後方骨盤輪のspino-pelvic fixation
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書籍情報
- ISBN:9784840478878
- ページ数:240頁
- 書籍発行日:2022年7月
- 電子版発売日:2022年7月1日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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