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- 手術患者の術前使用薬コントロール
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序文
序文
近年、様々な併発症をもち、なんらかの処方薬で治療を継続しながら手術に臨まれる患者さんが多い。合併症をもった患者さんの術前リスク評価に際しては、病歴、検査結果に加えて術前どのような薬物治療が行われているか、も有益な情報を提供してくれる場合が多い。最近は薬剤師へのタスクシフトあるいは周術期管理チームに関する理解が進んできたことから、術前外来受診前に薬剤師が術前内服薬のリストアップなどを済ませている施設も増加しているものと推察する。さらにいくつかの薬剤では周術期の休薬が推奨されており、薬剤師のチェックの段階で、休薬の推奨、主治医への休薬期間の確認などが完了している事例も多く目にする。
とはいえ、すべての症例が薬剤師によるチェックを含めた術前管理に十分な時間を割けるわけではない。さらに内服薬に関してどの程度休薬期間を設けるか、経口摂取が不可能な期間の代替手段は、どの時点で内服を再開するか、などにも配慮が必要となってきた。実際に最近のオーストラリアからの報告でも慢性痛、糖尿病、てんかん、高血圧、メサドン療法、パーキンソン病で治療中の患者さんが全身麻酔を受ける際に術前内服薬の調節が不良であった場合、PACU での回復が遅れることが示されており(Notaras AP, et al. A cross-sectional study of preoperativemedication adherence and early postoperative recovery. J Clin Anesth 2016;35:129–35)、術前内服薬調節の重要性が示されている。
これらの背景を踏まえて、麻酔科医の目線で日常頻繁に遭遇する病態に対して処方されている薬剤を俯瞰できる書籍を目指して本書を企画した。各章の構成として、薬剤名、作用機序だけではなく、薬物服用が麻酔管理に及ぼす影響、術前の処方調整に関する方針、術前の処方調整が不十分であった場合の対応、術後の処方再開に関する方針、に関して執筆者のお考えを御披露いただくようお願いした。ご担当いただく章によってエビデンスの程度に差があり、周術期に関するエビデンスの少ない薬剤の担当をお願いした著者には執筆に苦労されたかと推察するが、いずれの章でも編者の期待を上回る原稿をご執筆いただいた。改めて御礼申し上げる。
なお、電子カルテに薬剤検索機能が含まれている施設が多いことを考慮し、薬剤名に関しては代表的なブランド名を主に使用し、すべてのジェネリック薬品をカバーすることは目的とはしなかった。電子カルテの薬剤検索機能と本書を組み合わせることで、ほとんどの薬剤がカバーできるものと考えている。本書が、術前評価にあたって処方内容の理解、周術期の投薬方針決定に役立てば望外の喜びである。最後に編集をご担当いただいた克誠堂出版編集部関さんにお礼申し上げる。
2022 年4 月吉日
東邦大学医療センター大橋病院麻酔科
小竹 良文
目次
I. 中枢神経系
1 ベンゾジアゼピン 鬼頭 和裕,飯田 宏樹
2 オレキシン・メラトニン関連薬 櫛方 哲也,竹川 大貴
3 抗てんかん薬 佐藤 暢一
4 非選択的COX-1,COX-2 阻害薬 佐伯 茂
5 COX-2 選択的阻害薬 益田 律子
6 強オピオイド 小杉 志都子
7 弱オピオイド 中野 裕子,小幡 英章
8 その他の鎮痛薬 大岩 彩乃
9 抗パーキンソン病薬 中山 英人,又吉 宏昭
10 定型抗精神病薬 工藤 明
11 その他の抗精神病薬 中井 哲慈
12 抗うつ薬 門井 雄司
13 抗認知症薬 河野 崇
14 片頭痛治療薬 山﨑 景子,川股 知之
15 重症筋無力症治療薬 道宗 明,鈴木 孝浩
II. 循環系
16 経口強心薬 辛島 裕士
17 純粋なβ遮断薬 鈴木 武志
18 α受容体,Ca チャネルに作用する血圧降下薬 菊池 謙一郎,平田 直之
19 アンジオテンシン変換酵素阻害薬およびアンジオテンシン受容体拮抗2 御園生 与志,山田 高成
20 レニン,アルドステロンおよびバソプレシン拮抗薬 南原 菜穂子,秋吉 浩三郎
21 抗不整脈薬Class Ⅰ,Ⅱ 八木原 正浩,中島 芳樹
22 抗不整脈薬Class Ⅲ,Ⅳ 山田 徳洪
23 従来型利尿薬 小山 薫
24 冠血管拡張薬 三尾 寧
25 スタチン 尾前 毅
26 肺高血圧治療薬 曽我 朋宏,川人 伸次
III. 呼吸器系
27 交感神経・副交感神経を介する気管支拡張薬 石川 晴士
28 吸入ステロイド 川瀬 宏和
29 ロイコトリエン受容体拮抗薬 橋本 雄一
IV. 消化器系
30 ヒスタミンH2 受容体拮抗薬およびプロトンポンプ阻害薬 角倉 弘行
31 制吐薬 関 博志
32 炎症性腸疾患治療薬 甲田 賢一郎,北村 享之
V. ホルモンその他
33 甲状腺疾患治療薬 中塚 逸央
34 内服副腎皮質ホルモン 若泉 謙太
35 卵胞ホルモン・黄体ホルモン 角倉 弘行
36 造血刺激因子 上田 朝美
37 帝王切開患者の術前使用薬 細川 幸希
38 抗悪性腫瘍薬(抗がん薬) 平島 潤子,横田 美幸,蓑輪 雄一
VI. 抗凝固薬・抗血小板薬
39 ヘパリンおよび関連薬(未分画ヘパリン,低分子ヘパリン,ダナパロイド,フォンダパリヌクス) 白澤 千夏,黒岩 政之
40 ワルファリン 中嶋 康文
41 直接経口抗凝固薬 香取 信之
42 アスピリン 堀田 訓久
43 ADP 受容体阻害薬 平﨑 裕二
44 その他の抗血小板薬 小髙 光晴
VII. 糖尿病治療薬
45 インスリン 北村 享之,甲田 賢一郎
46 インスリン分泌促進薬 江木 盛時
47 その他の機序を介する糖尿病治療薬 阪本 浩平,山田 高成
VIII. 骨関節疾患治療薬
48 関節リウマチ治療薬 逢坂 佳宗
49 骨粗鬆症治療薬 古川 力三
IX.その他
50 抗ウイルス薬 武藤 理香
51 サプリメント・漢方 北口 勝康
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書籍情報
- ISBN:9784771961005
- ページ数:259頁
- 書籍発行日:2022年6月
- 電子版発売日:2022年11月2日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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