introduction

側弯症は疼痛などに起因する機能的な側弯と，脊柱の回旋変形を伴い本当の意味での変形である構築性側弯があります。構築性側弯は，その原因により，特発性側弯症，神経筋性側弯症，症候性側弯症，先天性側弯症などに分類されますが，それぞれの病態により，特徴や経過，治療方法や介入時期が異なります。重篤な変形をきたすことは，疼痛や患者の運動機能のみでなく心肺機能にも悪影響を及ぼすため，早期に診断し適切な治療を行う必要がある疾患です。

側弯症のなかでは10歳以降に発症する思春期特発性側弯症が最も多く，発生頻度は1～2％で女子に多くみられます。側弯症は，小児期には無症状のことが多く，学校検診などで外観上の異常から疑いありと判断され，X線撮影により診断されることが多いでしょう。学校検診は1978年より法制化されており，2016年には運動器検診が開始され，そのなかで脊柱の評価に側弯症検診も含まれる形となっていますが，実施状況は地域により大きな差があるのが問題です。昨今，モアレ装置のような画像機器を使用した検診を全国で実施できるような取り組みが行われています。また，思春期特発性側弯症は多因子遺伝であると考えられており，全ゲノム相関解析が行われて，多くの疾患感受性遺伝子が同定されていますが，今後まだ解明すべきことも多い状況です。さらに，側弯症患者の外観上の特徴のみではなく，理学所見的な異常，心理的な問題も理解することで，より適切な診療を行うことができると思います。

側弯症の治療は，装具と手術療法が主体となります。適切なタイミングで装具を行うことで側弯の進行を防止し，手術を回避できることも多く，患者や家族のコンプライアンスを高める努力が必要です。また，手術療法についてもさまざまな方法がありますが，それぞれの利点と欠点を理解した適応の判断が重要となります。

思春期特発性側弯と比較して，より若年で発症した早期発症側弯症や骨の奇形が原因となる先天性側弯症，神経線維腫やMarfan症候群などの基礎疾患のある症候性側弯症，神経原性側弯症などは，側弯自体の重症化のリスクが高く，患者の全身状態にも注意が必要であり，難治性の疾患です。これらの治療方針は思春期特発性側弯症とは異なる部分も多く，個々の患者の状態も考慮しつつ難しい判断を求められることも多いでしょう。

本特集では，側弯症の治療に関係する事柄に関して，エキスパートの先生方に網羅的にわかりやすくご執筆いただいています。本特集が，読者の先生方にとって知識の整理となり，今後の先生方の施設における側弯症の診断・治療に役立てていただけることを願っております。

岡山大学学術研究院医歯薬学域
整形外科学
尾﨑敏文