introduction

整形外科学領域において，言うまでもなく，変形性関節症と言えば最もよく遭遇する疾患の一つであり，メジャーな疾患です。そして，どこの大学や研究室でも，何かしらの変形性関節症に関する研究はなされており，各々が専門であるということは間違いないと思います。

そして，最近の各専門学会ではそれらの研究は進歩し続けており，他の部位も含めて，まとまって最新情報を得る機会は少ないと思います。そのようなことを鑑みて，このたび「変形性関節症の最新の治療戦略」について，網羅的にまとめてみたいと意図して，本特集を企画しました。

総論では，目まぐるしく変化する変形性関節症の現在明らかにされつつある膨大な疫学調査の研究，AI や画像診断，そしてバイオマーカーなどの検査の最新のトピックス，国内外のガイドラインからの推奨される治療法まで広く述べていただきました。

各論では，保存療法，人工関節置換術以外の手術療法，人工関節置換術に分けて，ご執筆いただきました。なかにはご無理を申し上げて，脊椎の部位もお願いさせていただきました。

術後成績の向上への取り組み，新技術の導入，難易度の高い手術の工夫など，あるいは課題の洗い出しもなされており，読者の皆様の日常診療に，少しでも参考になるヒントがあるのではないかと思っております。

無論，最新の治療戦略については，施設ごとの特長があり，場合によっては，やや偏っている点もあることは否めませんが，そもそも変形性関節症の領域は莫大な内容の範囲でもあるため，その点についてはご理解，ご容赦いただきたいと存じます。また，本特集では，紙面の都合上，手指や足趾などの小関節までには至ることができませんでした。しかしながら，最新の治療戦略が広く充実した内容に仕上がっているのではないかと確信しています。

そして，本特集の目玉として，各論の前半に保存療法を取り上げ，そのなかでも運動療法のウエイトを大きくしました。専門学会でのセッションでは，運動療法と手術療法はしばしばコラボ企画として見られるようになってきましたが，医学雑誌においては特集企画としてあまり見かけていないように思います。そのため，多面的アプローチとして今回のカラーとさせていただきました。各部位では細分化して各々先端的に進歩していますが，人間の身体として考えてみれば有機的に繋がっているはずですので，各部位での最新の治療戦略をご覧いただき，各々を比較し，現況の確認，将来への進む方向性など深読みしていただければ幸いです。そして，本特集が読者の皆様の日常診療あるいは研究テーマのヒントになれば，編集者としての本望であります。最後に本特集にご執筆いただきました諸先生方には，この場をお借りしまして，深く感謝を申し上げます。

北里大学大学院医療系研究科
高平尚伸