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実験医学増刊 Vol.41 No.7 ポストGWAS時代の遺伝統計学~オミクス解析と機械学習でヒト疾患を俯瞰する

  • ページ数 : 232頁
  • 書籍発行日 : 2023年4月
  • 電子版発売日 : 2023年4月13日
6,160
(税込)
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商品情報

内容

ゲノム変異と疾患をいかに結びつける? 第一人者の研究例で学ぶ

公共データベースの情報を疾患研究に活かしたい方,ラボに眠っているオミクスデータがある方は必見! ゲノムの変異と疾患をどのように結びつけるか? 第一人者の研究事例からデータの使い方を学ぶ

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序文


遺伝統計学(statistical genetics)は,遺伝情報と形質情報の因果関係を統計学の観点から検討する学問です.「なぜ,病気になるヒトとならないヒトがいるのだろう?」,「どうして,ヒト集団には多様性が存在するのだろう?」,私達の誰もがもつ普遍的な問いに答える学問として,遺伝統計学は発展してきました.古くはメンデルの遺伝の法則まで遡る歴史ある学問であり,ゲノム配列解読技術の発展に伴い,情報解析技術を駆使してヒト疾患の遺伝的背景や生命現象を網羅的に解明する学問へと変貌を遂げています.

現代の遺伝統計学における代表的な解析手法がゲノムワイド関連解析(genome wide associationstudy,GWAS)です.遺伝子変異と形質情報との関連をゲノムワイドに並列に検討するシンプルな解析手法ですが,ヒトゲノム情報の大規模化に伴い,疾患感受性遺伝子領域を同定する強力な手段として広く普及しています.すでに主要なヒト形質についてゲノムワイド関連解析がほぼ一通り実施され,疾患感受性遺伝子領域の網羅的なカタログが構築されています.1つの疾患感受性遺伝子を同定することに研究者が人生を賭けていた時代から,1つの論文に無数の感受性遺伝子が掲載される時代へと,斯くも早く移ろうとは,誰が想像していたでしょうか.

「いかにして大規模なゲノムワイド関連解析を実施するか」,これが昨今の疾患ゲノム研究における重要なトピックでした.一方でサンプルサイズの大規模化により説明可能な遺伝的背景の上限が報告されるなど,ゲノムワイド関連解析から得られる疾患感受性遺伝子の情報量は,右肩上がりのフェーズから抜け出しつつあるようです.今後はどうやってゲノムワイド関連解析の成果を解釈し,疾患病態の解明やゲノム創薬,個別化医療の社会実装へと活用していくべきか,生命医科学研究の原点に立ち戻ったアプローチが必要とされる時代が到来しつつあります.

本書は,遺伝統計学を巡る最先端の研究活動の俯瞰を目的としています.第一線で活躍されている研究者の先生方を執筆陣に迎え,多彩な角度からゲノムワイド関連解析の次なる可能性について存分に語っていただきました.学問分野としての遺伝統計学の隆盛を感じさせるコンテンツとなったこと,企画者として嬉しく感じています.

本書のタイトルは,21世紀のはじめに刊行された遺伝統計学の良書である「ポストゲノム時代の遺伝統計学」(鎌谷直之/編)を参考にしています.本書が発行された2023年で,ヒトゲノムの解読が最初に宣言されてからちょうど20年を迎えましたが,この20年間で遺伝統計学は大きな変貌を遂げました.次の20年間でも想像を超える進化が期待され,次世代の新しい「ポスト○○時代の遺伝統計学」が語り継がれていくのだと思います.本書がそのときに皆様の記憶に残っているような本になれば幸いです.


2023年4月

岡田随象

目次

序[岡田随象]

概論 ポストGWAS時代の遺伝統計学[岡田随象]

第1章 遺伝統計学の基礎理論

1.大規模ゲノム配列決定時代の遺伝統計学[田宮 元]

2.遺伝統計学の歴史と展望[鎌谷直之]

3.メンデルランダム化と臨床疫学[井上浩輔,後藤 温]

4.polygenic risk scoreの臨床応用とその展望[藤井亮輔]

5.パレオゲノミクスで紐解く日本人集団の系譜[中込滋樹]

第2章 大規模疾患ゲノム解析の現状

1.呼吸器感染症の大規模疾患ゲノム解析[南宮 湖]

2.がん領域のゲノムワイド関連研究[松尾恵太郎]

3.がんゲノムデータの共有基盤[白石友一,岡田 愛,河野隆志]

4.クローン性造血とヒト疾患のかかわり―遺伝子変異とコピー数異常の統合解析による知見[佐伯龍之介,小川誠司]

5.精神疾患の発症におけるゲノムコピー数バリアントの関与[古川佐和子,久島 周,尾崎紀夫]

6.長鎖シークエンス技術を用いたヒトゲノム解析[藤本明洋,池本 滉]

7.集団ゲノム情報にもとづく同類交配の検討[山本賢一]

第3章 オミクス解析と疾患病態研究の最前線

1.免疫担当細胞に特異的な遺伝子発現機構と免疫疾患[藤尾圭志]

2.eQTL情報と機械学習の融合研究[王 青波]

3.公共データを活用したpromoter usage QTL解析[久保田直人]

4.大規模1細胞データを用いた遺伝統計解析[岡田大瑚]

5.大規模メタボローム解析が明らかにする代謝プロファイルの多様性[小柴生造]

6.大規模プロテオーム解析が切り拓く可能性[シンシア ローリー,甲斐 渉]

7.シングルセル解析によるヒト疾患病態解明[吉富啓之]

8.メタゲノムショットガンシークエンスによる微生物叢解析[友藤嘉彦]

第4章 HLA遺伝子型をめぐる生命現象

1.解読困難ゲノム領域HLA・KIR遺伝子の特徴[細道一善]

2.HLA多型によるT細胞受容体配列の個人差と自己免疫疾患発症リスク[板宮孝紘,石垣和慶]

3.ウイルス特異的T細胞の交差反応性とHLA遺伝子型―COVID-19の重症度との関連[藤井眞一郎,清水佳奈子]

4.自己抗原/HLAクラスⅡ分子複合体と自己免疫疾患[金 暉,荒瀬 尚]

第5章 人工知能技術のゲノミクス応用研究

1.人工知能技術のライフサイエンス分野への応用[清田 純]

2.遺伝子摂動応答オミクスデータを用いた治療標的予測―疾患横断解析によるターゲットリポジショニング[難波里子,岩田通夫,山西芳裕]

3.オミクスデータ解析に対する人工知能・機械学習技術の発展[山口 類,張 耀中,井元清哉]

4.人工知能技術を駆使したがんゲノム研究への展開と今後の課題[金子修三,浜本隆二]

5.遺伝情報解析に対する深層学習の応用―HLA imputation法を例に[内藤龍彦]

第6章 ゲノム情報の社会実装に向けた取り組み

1.公的データベースを通じたデータ共有の促進をめざして[川嶋実苗]

2.遺伝統計学の活用によるゲノム創薬の現状と今後[小沼貴裕]

3.ゲノム医療の実現に向けたデータの利活用と保護に関する国内外の動向[山本奈津子]

4.本邦における消費者向けDTC遺伝子検査サービスの社会実装の可能性[宮田雅美,池田匡志]

コラム 遺伝統計学・夏の学校@大阪大学[岡田随象]

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書籍情報

  • ISBN:9784758104104
  • ページ数:232頁
  • 書籍発行日:2023年4月
  • 電子版発売日:2023年4月13日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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