症例から学ぶ神経病理

  • ページ数 : 172頁
  • 書籍発行日 : 2023年5月
  • 電子版発売日 : 2023年4月20日
7,260
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商品情報

内容

難解で敬遠されがちな「神経病理」の世界を紐解く,エキスパートによる紙上講義.

神経病理は難解で捉えづらい…そのように思う人は少なくない.本書ではそんな思いを払拭させるべく,症例所見をベースに,あたかもエキスパートの講義を受けているようにまとめた.受け身ではなく,読者自身も考えながら読み進められる流れになっており,一読すれば,脳脊髄の病理組織的な変化が無理なく分かるようになるだろう.神経内科専門医試験対策にも活用できる.どうしても苦手意識が消えない人にお勧めしたい1冊だ.

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序文

はじめに


神経病理の知識は脳神経内科や認知症を専門とする臨床医にとって必須であり,また脳科学研究を行う際の基本でもあります.私が現職で脳神経内科を標榜する教室を主宰した時,信州大学医学部には神経病理を専門とするスタッフがいなくて,脳神経研究を推進するための環境が不十分であると強く感じました.幸いにもキッセイ薬品工業株式会社の御好意により2010年に寄付講座神経難病学を設立することができて,そこの病理学部門へ新潟大学脳研究所御出身の小栁清光博士を召致することができました.小栁博士は信州大学へ来られて,早速,信州ブレンリソースネットを設立して,信州大学医学部とその関連施設に保存してある剖検脳のリストアップを開始されました.また同時にこれらの脳標本を利用した信州Neuro CPCがオープン形式で実施されました.この検討会は神経病理の真髄を毎回追求する内容であり,各症例ごとに脳脊髄の肉眼所見から提示され,次いで免疫染色を駆使した組織像が幅広く展開されて,最終的にゲストコメンテーターの解説を含めて,疾患の成因論まで論議される内容でした.この信州Neuro CPCは合計15回開催されて,その要旨が信州医学雑誌に掲載されておりますが,脳脊髄所見の詳細な写真を含めて見事な内容です.私はこうした学問的に貴重な記載を一地方誌に留めておくのは何とももったいないと感じて,追加事項を踏まえて単行本にすることを小栁博士へ提案しました.幸いにも中外医学社が私達の提案を受け入れて下さり,今回「症例から学ぶ神経病理」の刊行に至りました.従来,神経病理は病理学の分野でも難解な領域とみなされており,若手医師または研究者向けに症例から掘り起こし,かつ最新の情報を盛り込んだ適切なテキストがありませんでした.本書はそうした神経病理のイメージを払拭すべく,身近な臨床所見・脳画像から入って,その背景にある脳脊髄の病理組織的変化を無理なく理解できるよう工夫してあります.また,免疫組織学的所見を多数掲載してあり,神経疾患の成因解明に対する分子レベルからのアプローチの現状も解説しております.

本テキストは脳神経疾患の全域をカバーすべく,症例提示で不十分な部分はサイドメモの形で最新の知識を補填しております.このような内容を信州の地から発信できることは,先輩諸氏が長年に亘って地域の医療施設で丹念な病理解剖を積み重ねてきてくださった賜物です.また同時に「病気の成因解明の基本は患者の全身解剖にある」との病理学の礎を,信州大学医学部に植え付けられた故那須毅教授の功績を私は思い浮かべます.那須教授の名前がついた“Nasu-Hakola disease”が英文誌に報告されてちょうど50年の節目に,信州の神経病理の集大成として本書を刊行できることが,那須教授の教え子の一人として感無量です.これを記念して表紙のカバーにNasu病の全脳スライス画像を挿入しました.本書がわが国の脳神経内科学の発展に寄与することを心から願っております.

最後になりましたが,本書の企画から刊行に至る全ての過程で種々の御尽力を賜った中外医学社の鈴木真美子,高橋洋一の両氏には,心から御礼を申し上げます


2023年2月 吉日

信州大学名誉教授 池田修一

目次

Case 01 抗凝固薬服用中に多発性脳出血を生じた87歳女性

サイドメモ トランスサイレチン型脳軟膜アミロイドーシスとCAA

A.トランスサイレチン型アミロイドーシスとは

B.トランスサイレチン型アミロイドーシスと中枢神経症状

C.肝移植後長期生存したFAP 患者における脳病変

Case 02 急速進行性の脳内多発病変を呈した70歳男性

Case 03 家族性脳梗塞症例の50歳代女性

Case 04 歩行障害で発症し,四肢の筋萎縮と球麻痺が加わり2年の経過で死亡した86歳男性

Case 05 急速に進行する全身の筋萎縮と感覚障害,神経因性膀胱を示し家族性を有する59歳男性

Case 06 小脳症状で発症し,終末期に嚥下障害やミオクローヌスをきたした58歳女性

Case 07 46歳で構音障害を発症し,70歳で死亡した家族性発症の女性

サイドメモ 脊髄小脳変性症

A.SCA31(spinocerebellar ataxia type 31)

B.MJD(Machado-Joseph disease,マシャド・ジョセフ病: SCA3)

C.歯 状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubural-pallidoluysian atrophy: DRPLA)

Case 08 悪性リンパ腫の経過中に大脳白質脳症を呈した70歳男性

サイドメモ プリオン病

A.孤発性CJD

B.感染性プリオン病

C.遺伝性プリオン病

Case 09 2歳時に右下肢麻痺をきたし,その後成長とともに同麻痺は軽快したが,55歳頃から緩徐進行性の四肢麻痺が再出現し80歳で死亡した男性

Case 10 急速に出現した両眼の視力低下と四肢麻痺を主訴とする84歳男性

Case 11 右手のふるえで発症し,長期経過で歩行障害と姿勢異常をきたした72歳女性

Case 12 パーキンソン症状と認知症状を呈した72歳女性

Case 13 56歳時に記銘力低下で発症し,失語が目立ち64歳で死亡した男性

Case 14 76歳に呂律の回りが不良となり,徘徊,発語減少を呈して81歳で死亡した女性

Case 15 頭痛発作を繰り返し,特異な脳画像を呈した32歳男性

サイドメモ 肥厚性硬膜炎

A.疾患概念の変遷

B.臨床症状

C.MRI で硬膜肥厚を認める疾患とその鑑別診断

D.自験例の提示

E.IgG4 関連疾患と既存の疾患概念との相互関連

Case 16 頭痛で発症し,2カ月後に意識障害で救急搬送された25歳男性

Case 17 軽度の運動性失語を呈し,移動性の脳内石灰化病巣を有する71歳男性

Case 18 27歳で糖尿病を発症し,37歳頃から記銘力低下と歩行障害が加わり55歳で死亡した家族性発症の男性

Case 19 肝腫瘍摘出後意識障害と高アンモニア血症を呈して死亡した56歳男性

Case 20 進行性の歩行障害を呈し,同胞男児にも類似症状がみられた43歳男性

Case 21 46歳時に認知症で発症し,1年2カ月の経過で死亡した男性

Case 22 四肢の骨折を繰り返し,進行性の脳機能低下を伴った38歳男性

本書で取り上げた疾患

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書籍情報

  • ISBN:9784498328945
  • ページ数:172頁
  • 書籍発行日:2023年5月
  • 電子版発売日:2023年4月20日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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