• ページ数 : 340頁
  • 書籍発行日 : 2023年5月
  • 電子版発売日 : 2023年5月19日
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商品情報

内容

※2024年3月28日 発売予定:『Annual Review 神経 2024』


臨床に! 研究に! 脳神経科学分野の最新の話題を幅広くカバーする一冊!

脳神経科学分野のエキスパートたちが内外の文献を踏まえてその年の最注目トピックを厳選し,解説する好評シリーズの2023年版がいよいよ登場.臨床・研究に役立つ貴重な情報源として,タウオパチーの分子病態,神経疾患領域における認知行動療法の適応,笑いの神経基盤と視床下部過誤腫、臨床への応用も含めたブレイン・マシン・インターフェースの現在と展望など,ユニークな話題を幅広く取り上げた.

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序文

コロナ禍が始まって3年が過ぎようとしているが,この間に国際的に医学誌における投稿〜掲載論文の数は大きく増加した.新型コロナウイルスが人類に与えた影響を反映していると言えるが,研究者の使命感と努力には頭が下がる想いである.それに伴い医学誌のインパクトファクターも驚くべき変化が見られた.2020年→2021年においてNew England Journal of Medicineは91.2→176.1,Lancetでは79.2→202.7,神経学に特化した雑誌としてはLancet Neurologyで44.2→59.9と大幅な増加がみられた.新型コロナウイルス感染症が主因ではあるものの,コロナ禍以前に潮流となっていた脳神経分野(脳神経内科,脳神経外科,精神科など)における新知見と発展にも目を見張るべきものがある.

コロナ禍以前の2010年頃から神経科学・臨床神経学の日進月歩の発展と並行して,神経疾患に対する革新的治療開発が続いている.脳神経学の基礎から臨床までの年々の進展をcatch—upすることは,臨床医の多忙な日常診療を考えるとなかなかに難しいのが現状であるが,本書は主に直近の神経学の新知見を集約し,最も有効に最新の動向を提供することができる単行書として企画されており,現在の高い評価につながっている.

本書はBasic Neuroscience,本年の動向,疾患各論の3つの章から構成されているが,初ページから通して読んでも,目次において興味を覚えるタイトルから読みだしても臨床的意義の高い最新の知見を効率よく理解することができる.本号における「脳内リンパ系の画像評価」,「タウオパチーの分子病態」(Basic Neuroscience),「PETによるミトコンドリア機能の画像化」,(本年の動向),「脳卒中治療ガイドライン2021」,「WHO 2021分類」,「副腎白質ジストロフィーにおける造血幹細胞移植」(疾患各論)などは,まさにこの数年における最新知見について行くための絶好のテーマと言える.各テーマの執筆者もその研究を直接推進している新進気鋭の研究者が選ばれており,未発表データや今後の展望について,他書では得られない多くの情報が満載されている.

編集者一同,本書のコンセプトをなるべく忠実に達成するべく本号のテーマと執筆者を選定した.多忙な先生方にとって今後も日常診療に直結する最新知見,新たな研究テーマの発想,専門外の分野の発展を知るための最適な情報源として利用して頂ければ幸いである.引き続き本書の理念を実践すべくきめ細かい編集企画を継続していきたい.


2023年5月

編集者一同

目次

I. Basic Neuroscience

1.神経生理

1 化学遺伝学技術DREADDsによる霊長類脳の機能解析〈南本敬史〉

 ・DREADDsの霊長類脳への適用の道のり

 ・DREADDsのアゴニストリガンドについての問題とその克服

 ・霊長類でのDREADDs利用―疾患病態の理解や治療法としての可能性

 ・特異的な回路操作―霊長類高次機能の理解に向けた取り組み

 ・脳機能イメージングとの融合

 ・今後の展望

2 光遺伝学による霊長類脳の回路解析〈井上謙一〉

 ・局所光刺激

 ・細胞種選択的な光刺激

 ・神経路選択的な光刺激

 ・光刺激と多細胞・多領域活動測定の同時適用

 ・将来展望

2.神経病理

1 抗ミトコンドリア抗体陽性筋炎〈前田明子〉

 ・抗ミトコンドリア抗体とは

 ・抗ミトコンドリア抗体陽性筋炎とは,抗体の意義づけ

 ・診断,検査,鑑別疾患

 ・治療および治療経過

 ・筋病理所見の特徴

 ・心筋の病理所見の特徴

 ・病態機序

3.生化学(分子生物学)

1 ポリグルタミン病に対する治療戦略〈高橋祐二〉

 ・アンチセンス核酸治療

 ・バイオマーカー

 ・構造分析から治療薬開発へ

2 タウオパチーの分子病態〈古賀俊輔〉

 ・タウオパチーの分類

 ・ADとPSPにおけるネットワーク解析

 ・PSPとCBDのアストロサイトにおけるエピゲノム変化

4.画像

1 タウPETによる認知症イメージング〈加藤隆司 二橋尚志 櫻井圭太 木村泰之 中村昭範 伊藤健吾〉

 ・タウPET薬剤の開発

 ・アルツハイマー連続体のタウPET画像

 ・アミロイドとタウ集積との関係

 ・液性バイオマーカーとアミロイドPETならびにタウPETとの関係

 ・アミロイド抗体薬の治療効果と適応の最適要件

2 脳内リンパ系の画像評価〈田岡俊昭〉

 ・Glymphaticシステムの画像評価

 ・結語

3 脳動脈瘤のvessel wall imagingの進歩と有用性〈面高俊介 遠藤英徳 冨永悌二〉

 ・瘤壁造影効果の機序

 ・破裂瘤における瘤壁造影効果

 ・未破裂瘤における瘤壁造影効果

 ・今後の展望

II. 本年の動向

1 成人遺伝性白質脳症の病態・治療研究の動向〈北原 匠 安藤昭一朗 上村昌寛 小野寺 理〉

 ・CADASIL

 ・CARASIL/HTRA1関連脳小血管病

 ・PXE/ABCC6変異に関連する脳小血管病

 ・HDLS

2 認知行動療法と神経疾患領域におけるその適応〜短時間でも実施可能な「効率型認知行動療法」の開発と普及に向けて〜〈梅本育恵 久我弘典〉

 ・神経疾患領域におけるCBT

 ・限られた時間で実施できる効率型認知行動療法

 ・おわりに

3 MECP2重複症候群の最近の研究〈伊藤雅之〉

 ・MECP2の量的過剰の分子機構

 ・MECP2重複症候群の治療開発

 ・MECP2重複症候群の臨床

4 HAMの患者レジストリを介した診療連携構築によるガイドラインの活用促進と医療水準の均てん化〈鷹尾直誠 佐藤知雄 山野嘉久〉

 ・HAMの概要

 ・HAM患者レジストリ「HAMねっと」

 ・HAM診療ガイドラインにおける「HAMねっと」の活用

 ・疾患活動性評価における「HAMねっと」の活用

 ・HAM疾患活動性に応じた治療

 ・新HAMねっとへの展開

 ・結語

5 PETによるミトコンドリア機能の画像化〈尾内康臣〉

 ・ミトコンドリア機能低下の描出の意義

 ・解糖系:ブドウ糖代謝画像―認知症を例に

 ・酸化的リン酸化系:MC-I結合画像―認知症を例に

 ・精神神経疾患のミトコンドリア活性画像

 ・ミトコンドリア関連のイメージング

6 治療標的としてのα-シヌクレイン〈坂下泰浩 小野賢二郎〉

 ・αS発現抑制

 ・αS凝集抑制

 ・αS分解促進

 ・神経炎症の抑制

 ・αS伝播抑制

 ・まとめ

7 デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するエクソン・スキップの臨床〈邦武克彦 青木吉嗣〉

 ・薬事承認されたPMOの臨床

 ・エクソン44スキップ薬の開発

 ・PPMOの臨床

 ・今後のエクソン・スキップ薬開発の展望

8 鏡視下手術(内・外視鏡手術)の現状と展望〈渡邉 督 岩味健一郎 宮地 茂〉

 ・脳神経外科における内視鏡手術の発展

 ・外視鏡の登場,その特徴

 ・内視鏡・外視鏡を用いた鏡視下手術の実際

 ・今後の展望

9 脳卒中相談窓口と脳卒中療養相談士制度〈藤本 茂〉

 ・設置場所と構成メンバー

 ・具体的な役割

 ・脳卒中療養相談士に求められる項目

 ・育成・設置に向けてのプロセス

 ・多職種が協力した体制

III. 各種疾患

1.感染症・炎症疾患

1 髄膜炎・脳炎診療における髄液病原微生物multiplex-PCRパネルの臨床応用〈原 誠 中嶋秀人〉

 ・MEパネルの概要と特徴

 ・MEパネルの臨床応用に関する最近の知見

 ・まとめとMEパネルの適正使用に向けた展望

2 ヘルペスウイルスの中枢神経病原性〈河村吉紀〉

 ・HSEと自己免疫性脳炎

 ・帯状疱疹の増加とそれに伴う中枢神経合併症増加の懸念

 ・ciHHV-6

2.脳血管障害

1 RESCUE-Japan LIMIT〈金城典人 内田和孝 吉村紳一〉

 ・急性期脳梗塞に対する現在の治療と課題

 ・広範囲脳梗塞が予想される症例に対する再灌流療法の問題点

 ・広範囲脳梗塞症例に対する血管内治療の有効性の証明

 ・今後の展望

2 脳卒中治療ガイドライン2021〈伊藤義彰〉

 ・脳卒中の一次予防,二次予防

 ・脳梗塞,TIA

 ・脳出血

3 ブレイン・マシン・インターフェースによる脳卒中片麻痺の機能回復〈牛場潤一〉

 ・手指(ハンドグリップ)の機能回復に関するエビデンス

 ・BMIによる可塑性誘導機構

 ・手指以外のボディパーツへの応用

 ・ほかの疾患への適応拡大

 ・製品化

 ・今後の展望

4 脳動脈瘤の流体力学的研究〈庄島正明〉

 ・フローダイバーターやステント留置による瘤内血流動態の変化

 ・脳動脈瘤の発生・増大・破裂

 ・造影MRIでの瘤壁の造影所見

 ・血行力学的パラメーター:流れの不安定性

 ・血流解析の境界条件

 ・今後の展望

5 虚血性脳血管障害の梗塞拡大速度〈井上 学〉

 ・拡散強調画像を使用した梗塞拡大速度予測とDEFUSE 3

 ・発症24時間までの主幹動脈閉塞に対する機械的血栓回収療法と灌流ミスマッチならびに梗塞拡大速度の検討

3.脳腫瘍

1 WHO2021分類〈里見介史 柴原純二〉

 ・成人型びまん性膠腫

 ・髄膜腫

 ・胎児性腫瘍

 ・DNAメチル化分類

2 悪性神経膠腫に対するウイルス療法〈田中 実 藤堂具紀〉

 ・ウイルス療法の概要

 ・悪性神経膠腫を対象としたウイルス療法

 ・ウイルス療法によるがんワクチン効果

 ・今後の展望

4.外傷

1 高齢者頭部外傷 最近の動向〈前田 剛〉

 ・頭部外傷における抗血栓薬の影響

 ・Talk and deteriorate

 ・慢性硬膜下血腫

 ・認知症と外傷性脳損傷

 ・高齢者頭部外傷における外科的治療と予防

 ・今後の展望

2 小児頭部外傷最新の動向〈荒木 尚〉

 ・小児重症頭部外傷治療ガイドライン第3版

 ・小児重症頭部外傷の治療アルゴリズム

 ・虐待による頭部外傷に関する諸問題

 ・まとめ

5.変性疾患

1 クライオ電子顕微鏡によるタウタンパクの構造解析診断での有用性〈樽谷愛理 長谷川成人〉

 ・タウオパチーの構造学的分類

 ・タウオパチーの生化学的分類

 ・タウ線維構造と病態形成との関連

 ・今後の展望

2 パーキンソン病におけるαシヌクレイン凝集体の伝播と神経活動をターゲットとする治療法〈上田 潤 高橋良輔〉

 ・パーキンソン病におけるαシヌクレイン凝集体の伝播

 ・パーキンソン病モデルを用いた研究成果

 ・神経活動をターゲットとしたパーキンソン病の治療法

 ・今後の展望

6.中毒・代謝疾患

1 遺伝性ATTR型脳アミロイド血管症と肝移植〈三隅洋平〉

 ・遺伝性ATTRアミロイドーシスの病態と治療法の進歩

 ・脳アミロイド血管症(CAA)を主徴とする遺伝子変異型と肝移植の効果

 ・肝移植後長期経過後に顕在化するCAA

 ・今後の展望

2 副腎白質ジストロフィーにおける造血幹細胞移植〈松川敬志〉

 ・成人大脳型副腎白質ジストロフィーに対する造血幹細胞移植

 ・小児大脳型副腎白質ジストロフィーにおける造血幹細胞移植の前処置

 ・小児大脳型副腎白質ジストロフィーに対する遺伝子治療

 ・副腎白質ジストロフィーとニューロフィラメント軽鎖について

 ・今後の展望

7.脱髄・免疫性疾患

1 二次進行型多発性硬化症の病態と新規治療〈藤井ちひろ 近藤誉之〉

 ・二次進行型多発性硬化症の定義

 ・二次進行型多発性硬化症の病態

 ・二次進行型多発性硬化症の新規治療

2 IgLON5抗体関連疾患と運動異常症〈木村暁夫 大野陽哉 下畑享良〉

 ・IgLON5抗体関連疾患の臨床像と検査所見の特徴

 ・IgLON5抗体関連疾患における運動異常症の特徴

 ・PSP類似患者の特徴

 ・IgLON5抗体関連疾患を疑うポイントについて

 ・まとめ

8.未梢神経障害

1 野生型ATTRアミロイドーシスによる手根管症候群〈関島良樹〉

 ・手根管症候群

 ・野生型ATTRアミロイドーシス

 ・野生型ATTRアミロイドーシスと手根管症候群

 ・野生型ATTRアミロイドーシスの治療

 ・今後の展望

2 ICUニューロパチー・ミオパチーの病態〈今井富裕〉

 ・発症要因

 ・危険因子

 ・早期診断

 ・神経筋障害の評価

 ・予後予測

9.神経筋疾患

1 封入体筋炎の病態と診断〈森 まどか〉

 ・封入体筋炎の定義と概要

 ・疫学

 ・病因・病態

 ・症状・経過

 ・検査所見

 ・筋病理

 ・治療

2 筋強直性ジストロフィーの病態解明と治療開発〈中森雅之〉

 ・DM1の臨床症状

 ・DM1の異常RNA病態

 ・DM1の異常RNA標的治療

10.自律神経疾患

1 多様な環境ストレスから生命を守る脳の交感神経制御メカニズム〈中村和弘〉

 ・交感神経系を制御する基本的な神経回路メカニズム

 ・環境温度(寒冷・暑熱)ストレス

 ・感染ストレス

 ・心理ストレス

 ・飢餓ストレス

 ・今後の展望

2 感情研究における顔面皮膚血流の有用性と臨床応用〈石川直樹 梅田 聡〉

 ・顔血流はなぜ有効か〜先行研究をふまえて〜

 ・顔血流と精神疾患との関連

 ・まとめと展望

11.機能性疾患

1 ゴルフでのイップスの背景〈望月秀樹 服部憲明〉

 ・イップスの疫学研究

 ・イップスの筋・動作解析

 ・イップスの病態生理

 ・イップスの診断

 ・イップスの治療

 ・まとめ

2 ATP1A3関連疾患の多様性〈柏井洋文〉

 ・ATP1A3について

 ・古典的3病型

 ・小脳失調症状を呈する他の病型

 ・発作性運動症状

 ・発達性てんかん性脳症

 ・多少脳回

 ・Dystonia, dysmorphism, encephalopathy, MRI abnormalities, and no hemiplegia(D-DEMØ)

 ・小児期発症統合失調症/自閉スペクトラム症

 ・心疾患

 ・重複および中間病型

 ・ATP1A3関連疾患の特徴

 ・むすび

3 笑いの神経基盤と視床下部過誤腫〈白水洋史〉

 ・視床下部過誤腫と笑い発作

 ・笑い発作を呈するそのほかのてんかん症候群

 ・電気刺激による笑いの誘発

 ・ほかの疾患における病的笑い

 ・笑いに関わる神経機構

12.機能的脳神経外科

1 Forel H areaの微小解剖と神経学〈堀澤士朗〉

 ・Forel H areaの微小解剖

 ・パーキンソン病

 ・ジストニア

 ・てんかん

 ・精神疾患(強迫性神経障害,うつ)

2 ブレイン・マシン・インターフェースの現状と課題〈平田雅之〉

 ・BMIの分類

 ・侵襲型BMI

 ・非侵襲型BMI

13.COVID-19

1 COVID-19による脳炎・脳症〈下畑享良〉

 ・急性期の脳炎・脳症の臨床像

 ・急性期の脳炎・脳症の病態

 ・罹患後神経症状の臨床像

 ・罹患後神経症状と脳炎・脳症の関連

2 コロナ禍における神経救急診療と教育〈横堀將司〉

 ・コロナ禍が救急医療にもたらしたものはなにか

 ・コロナ禍における脳卒中

 ・コロナ禍における医学教育

 ・VRコンテンツを用いた自宅学習

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書籍情報

  • ISBN:9784498428003
  • ページ数:340頁
  • 書籍発行日:2023年5月
  • 電子版発売日:2023年5月19日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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