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実験医学増刊 Vol.41 No.10 健康と疾患を制御する精密栄養学~「何を、いつ、どう食べるか?」に、食品機能の解析と個人差を生む分子メカニズムの解明から迫る

  • ページ数 : 199頁
  • 書籍発行日 : 2023年6月
  • 電子版発売日 : 2023年5月30日
6,160
(税込)
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商品情報

内容

ひとりの体質に合った,最適な食事・栄養とは?
体に良いとされる食品成分を摂取しても,効果を実感できる人とそうでない人がいるのはなぜか? 本書では,個人差を生むメカニズムを解明し, ひとりに最適な食の提案をめざす精密栄養学の最新動向を特集します.

※本製品はPCでの閲覧も可能です。
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序文

「Tell me what you eat, and I will tell you what you are(何を食べているかを言ってみたまえ,君がどんな人かを言ってみせよう)」というのは,『美味礼讃』で有名なブリア・サヴァランの言葉です.また,日本でも「医食同源」という言葉がよく知られています.つまり,洋の東西を問わず,先人たちは,私たちの健康や病気,体質,身体機能に食が深くかかわっていることを言葉として残してくれたわけです.

その後,私たちは,科学の発展とともに,食の機能を3 つに分類して研究してきました.第一は生きるために必要な栄養,第二は食の嗜好,つまり美味しさ,そして第三が生体調節の機能です.先進国を中心に栄養不足の問題が解決されてきた現在,多くの人が,さらに美味しく,より健康であることを希望し,高度な機能を食に求めるようになってきました.このように食の機能性に関する研究が日々進歩しているなか,私たちの食生活はどのように変わってきたでしょうか? 国内では,気になる健康状態に応じて科学的根拠に基づく食品を,特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品として摂ることができるようになってきました.一方で,「健康によい」といわれる食品を摂っても,健康効果を実感できる人とそうでない人がいるのも事実です.

このような食の効果の個人差を考慮し,一人ひとりに最適な栄養指導を行うことが「精密栄養」として期待されています.すでに米国の国立衛生研究所(NIH)では,2020 年から10 年間の戦略として Precision Nutrition を掲げ,個別化・層別化した栄養指導による健康維持への機運が高まっています.ヒトの健康や疾患,老化,身体機能における食品成分の役割,そして個人の遺伝的背景,生活習慣,腸内細菌,ライフステージなどによって最適な栄養や食品成分がどう変わってくるかは,多くの研究者が興味をもっているテーマの1 つです.本書では,個人ごとに適した食を提案するための学問を「精密栄養学」と定義し,新しい食の研究を予感していただける内容にしました.現在進行中の最先端の研究として,ヒトデータの収集・解析から,基礎研究によるメカニズムの解明,それらを支える最先端の基盤技術,そして人々の生活に還元するための社会実装の取り組みなどを紹介します.今の若者は大衆向けにつくられたテレビよりも,個人ごとの興味に合致した動画共有サイトを好んで見るといわれています.同様のパラダイムシフトが,精密栄養学により日々の食生活でも起こると期待されます.本書が,未来の食卓を思い描く一助になれば幸いです.


2023年5月

國澤 純

目次

第1章 コホート研究から⾒えてきた精密栄養学の実情

1.NIBIOHN腸内環境研究を中心とした精密栄養学への展開【南里妃名子,吉村英一】

2.食・生活習慣と遺伝的背景と健康との関係 ―食品の健康効果に影響する内的,外的因子【佐藤浩二,西平 順】

3.多項目健康ビッグデータを基盤としたwell-being地域社会の実現【村下公一】

4.京丹後コホートと長寿,エイジングクロック【内藤裕二,安田剛士,髙木智久,的場聖明】

5.時間栄養学の基礎と臨床【田原 優】

第2章 精密栄養学を⽀える基盤技術

1.マイクロバイオーム統合データベース構築支援ツールMANTAの開発と応用【陳 怡安,朴 鐘旭,水口賢司】

2.ニュートリゲノミクス【加藤久典】

3.精密栄養学に適用可能な親水性メタボローム分析技術の開発【高橋政友,馬場健史】

4.食の評価系(in vitroオルガノイド培養システム)【佐藤隆一郎】

5.ヒトiPS細胞を用いた食の評価系 ―ヒトiPS細胞から分化誘導した腸管上皮細胞【水口裕之】

6.食の評価(in vitro腸内細菌培養システム)【近藤昭彦,佐々木大介】

7.食・栄養の理解に向けた代謝インフォマティクス【荒木通啓】

第3章 精密栄養学の基盤となる⾷・栄養の分⼦作⽤メカニズム

1.ヒト研究と基礎研究の融合による腸内環境の機能解明【細見晃司】

2.糖代謝における個人差要因【高橋将記】

3.脊椎動物における味覚受容体の進化と味覚情報伝達機構【戸田安香,石丸喜朗】

4.全血メタボロミクスから見えてきた赤血球のもつ抗老化機能【照屋貴之,柳田充弘】

5.糖,脂質,アミノ酸の転写調節・⽣体恒常性機構と疾患【矢作直也】

6.必須脂肪酸の代謝と免疫制御,個人差【長竹貴広】

7.玄米機能成分をめぐる脳科学と分子栄養学【益崎裕章,岡本士毅,島袋充生,阿部啓子,小塚智沙代】

8.ポリフェノールセンシングの分子基盤とその応用【立花宏文】

9.フィトケミカルの機能と作用メカニズム【竹谷 豊,増田真志,大南博和】

10.亜鉛による生体機能制御【神戸大朋】

11.微生物による食品機能の顕在化【小川 順】

第4章 社会実装に向かう精密栄養学

1.食による健康長寿社会の実現への取り組み ―一般社団法人セルフケアフード協議会の設立【堅田一哉】

2.味覚の人為的制御 ―工学技術を活用した味覚提示手法とその応用【中村裕美】

3.腸内デザイン® ―腸内細菌叢を活用した新たな健康維持基盤【福田真嗣】

4.大麦の健康効果を予測する機械学習モデル【丸山聡子,松岡 翼】

5.アマニ健康機能性の個人差に関連する因子【澤根健人,大越幸太】

6.AI食事管理アプリ「あすけん」の実践例【道江美貴子】


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書籍情報

  • ISBN:9784758104111
  • ページ数:199頁
  • 書籍発行日:2023年6月
  • 電子版発売日:2023年5月30日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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