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商品情報
内容
2013年に刊行し好評を博した『輸血学テキスト』を,最新の指針やガイドラインを踏まえて全面的に改訂.輸血学のエッセンスが詰まった新しい教科書である.学校の授業だけでは実践力までつけるのは難しいこの領域について,ベースとなる考えかたから現場に直結する知識まで包括的かつ分かりやすく解説.学生の試験対策としてだけではなく,既に輸血療法を実践している医師や看護師,臨床検査技師にも役立つオールマイティな1冊だ.
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序文
まえがき
本書を執筆するきっかけですが,私が2013年に中外医学社から「輸血学テキスト」を出版させていただいたのですが,内容が現状に追いつかなくなったことを心苦しく思っておりました.具体的には,「輸血療法の実施に関する指針(令和2年3月一部改正)」および「血液製剤の使用指針(平成31年3月)」の大幅な改正により,輸血用血液製剤の適正使用において,科学的根拠に基づいたトリガー値を示す必要が出てきました.また,輸血療法の状況も少しずつ変化してきており,「輸血学テキスト」の改訂版を出版することはできないかと中外医学社企画部の方に打診をしたところ,快諾を得ることができました.前回は共著という形で出版させていただきましたが,本書は私一人で書き上げました.したがって,すべての分野をカバーできたとは思っておりません.輸血医療は細胞治療を包含する医療であると,過去に出版させていただいた単行本のまえがきにも書いておりましたが,本書では細胞治療,特に造血幹細胞移植に関しては割愛しております.造血幹細胞移植は,多様化かつ複雑化していることから,成書および造血細胞移植学会から出版されているガイドラインなどを参照していただければと思います.
本書は,第I部 輸血学総論,第II部 輸血学各論,第III部 輸血学実習,第IV部 ミニキーワード集の4部構成です.第I部 輸血学総論は,イントロダクション,輸血療法の実際,輸血療法における各職種の役割,Patient Blood Management(PBM),輸血に関する指針・ガイドライン・法規,輸血関連検査の6編,第II部 輸血学各論は,輸血用血液製剤の種類と適正使用,血漿分画製剤の種類と適正使用,遺伝子組み換え型造血因子,自己血輸血,診療分野別の輸血療法,輸血副反応・合併症の6編,テキスト本体は12編から構成されており,オーソドックスな内容となっております.ミニキーワード集ですが,輸血医学に関するキーワードが主体で,簡潔に記載しております.必要な場合には,拙著「輸血学・血液学小事典」(中外医学社;2017年)も参照していただければと思います.本書において,記載に重複する部分はありますが,項目毎に読まれることを念頭においているためです.
本書は,医学生や看護学生だけではなく,臨床現場において輸血療法を実践する医師,看護師,臨床検査技師の方々にも役立つことを念頭に書きました.単行本というのは,書き上げた時点から古びてしまうものですが,現時点において最新の情報を網羅したつもりです.特に,2019年から新型コロナウイルス(coronavirus disease 2019[COVID-19]or severe acute respiratory syndrome coronavirus 2[SARS-CoV-2])のパンデミック禍となり,ワクチン接種や治療薬の開発も進んではおりますが,出口が見えない状況は続いております.100年以上前に猛威を振るったスペイン風邪が,季節性インフルエンザへ姿を変えるまでに,多くの時間を費やし,多くの尊い命が失われました.今回の新型コロナウイルス感染症においても,世界中で多くの尊い命が失われました.私の順天堂大学時代の学友も命を落としました.この場を借りて,冥福を祈らせていただきたいと思います.
最後に,僭越ながら私の個人的な経歴を述べたいと思います.私は,1979年に順天堂大学医学部を卒業した後,同年に栃木県にある自治医科大学血液科の門をたたきました.血液内科医を目指していたからですが,やはり縁だったのでしょうか,自治医科大学附属病院輸血部へ配属となりました.その後,紆余曲折があり,茨城県にある日立総合病院で血液内科医をやっておりましたが,そこでも輸血医療から逃れられずに(?)輸血センターを立ち上げることになり,その責任者を併任しておりました.ある日,順天堂大学の同級生で,既に教授に就任していた友人から「輸血学研究室の教授選考があり公募しているが,大坂君も履歴書と業績集を送ってくれないか」という電話が入りました.臨床医である自分が,しかも輸血学を教える教員を務めることができるのか不安でしたが,家内から「夢だったんでしょう? トライしてみたら」と言われ,教授選の準備を始めました.その後,公聴会でプレゼンを行うことになり,教授会の投票を経て,2000年8月に順天堂大学の教授に就任することになりました.公聴会のプレゼン当日に教授会の投票があったわけですが,その夜,懇意にしていた老舗バーで投票結果を悶々とした気持ちで待っていたこと,今でも思い出します.そして,20年程輸血学の教授職を務め,2019年に定年退職となりました.あっという間で,長いようで短かった教員生活でした.医師になった当初は,血液内科医,特に小児白血病を治療する医師を目指していたのですが,ずっと輸血医療に関わってきたことになります.不思議なものです.
医学生や看護学生の方には普段の教科書として,臨床現場で輸血療法を実践する医療従事者の方には輸血療法を行う上で迷った場合などに,本書を参照していただけましたら,著者としてこの上ない喜びです.本書の発刊にあたり,企画の段階から完成に至るまでご尽力いただいた中外医学社企画部の小川孝志氏および鈴木真美子氏,編集部の桑山亜也氏に深謝いたします.また,挫折しそうになった時に励ましてくれた家族なしに,本書は完成しませんでした.改めて感謝の意を表したいと思います.
2022年初冬,水戸自宅の書斎にて,パンデミック禍の終息を願いつつ
大坂顯通
目次
I 輸血学総論
1 イントロダクション
1 輸血療法を行う上での基礎知識
❶ 造血の仕組み
1)血球分化
2)胎児肝造血
❷ 血液凝固カスケード
❸ 出血傾向を呈する代表的な疾患
1)血友病
2)von Willebrand病(VWD)
3)播種性血管内凝固(DIC)
4)血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
5)血小板減少症
6)血小板機能異常症
2 輸血の歴史
❶ 古来の血液に対する考え方
❷ 世界における輸血の歴史
❸ 日本における輸血の歴史
3 輸血療法の基本的な考え方
❶ 輸血療法の目的
❷ 輸血療法は補充療法である
❸ 輸血療法は同種移植と相同の治療法である
❹ 輸血療法はリスクとのバランスを考慮して行う
❺ 説明と同意(インフォームドコンセント)が必要
2 輸血療法の実際
1 輸血療法の概要
❶ 輸血療法のカスケード
❷ 輸血の決定
❸ 輸血用血液製剤の選択
❹ 輸血量の決定
❺ 輸血同意書の取得
❻ 患者検体の採血
❼ 輸血関連検査
❽ 輸血の申し込み
❾ 輸血の準備・輸血の実施
❿ 輸血副反応のチェック
1)医師
2)看護師
3)臨床検査技師
2 輸血用血液製剤の製造過程と医療機関への供給体制
❶ 輸血用血液製剤の製造過程
❷ 医療機関への供給体制
3 血漿分画製剤の製造過程
4 輸血用血液製剤の安全対策
❶ 日本における血液事業の流れ
❷ 輸血感染症の防止対策
❸ その他の安全対策
1)輸血後移植片対宿主病(PT—GVHD)
2)保存前白血球除去
3)初流血除去
4)新型コロナウイルス(COVID—19 or SARS—CoV—2)
5)生物由来製品感染等被害救済制度
6)遡及調査
3 輸血療法における各職種の役割
1 医師の役割
❶ 輸血の決定
❷ 輸血用血液製剤の選択
❸ 輸血量の決定
1)赤血球製剤
2)血小板製剤
3)新鮮凍結血漿
4)アルブミン製剤
❹ 輸血同意書の取得
❺ 輸血の申し込み
❻ 輸血の実施
❼ 輸血副反応のチェック
1)遅延性溶血反応
2)輸血感染症
2 看護師の役割
❶ 患者検体の採血
❷ 輸血の準備
❸ 輸血の実施と患者観察
❹ 輸血副反応のチェック
1)アナフィラキシー反応
2)輸血関連急性肺障害(TRALI)
3)輸血随伴循環過負荷(TACO)
4)急性溶血反応
3 臨床検査技師の役割
❶ 輸血関連検査
❷ 輸血用血液製剤の管理
❸ 医師による輸血の申し込み
❹ 輸血用血液製剤の出庫
❺ 患者検体を保存する
4 輸血部門の役割
5 輸血療法委員会の役割
❶ 輸血療法委員会
1)輸血療法委員会の構成
2)輸血療法委員会の開催
3)輸血療法委員会における検討事項
4)議事録の作成
❷ 合同輸血療法委員会
1)合同輸血療法委員会の構成
2)合同輸血療法委員会における検討内容
4 Patient Blood Management(PBM)
1 貧血への対処(improving red cell mass)
2 出血への対処(minimising blood loss)
3 限定的な輸血(restrictive transfusion)
5 輸血に関する指針・ガイドライン・法規
1 輸血に関する指針・ガイドライン
❶ 輸血療法の実施に関する指針
1)自己血輸血
2)院内血輸血(自己血採血を除く)
❷ 血液製剤の使用指針
1)赤血球液の適正使用
2)血小板濃厚液の適正使用
3)新鮮凍結血漿の適正使用
4)アルブミン製剤の適正使用
2 血液法
❶ 血液新法施行以前の輸血に関連する法規など
❷ 血液新法
1)改正薬事法
2)安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(血液法)
3 診療報酬と輸血管理料
❶ 輸血料
1)赤血球製剤の輸血料
2)血小板製剤の輸血料
3)血漿製剤の輸血料
4)自己血輸血
❷ 輸血に伴う検査料
❸ 製剤別の薬価(薬剤料)
❹ 輸血管理料(IおよびII)
❺ 放射線治療(血液照射)
6 輸血関連検査
1 血液型検査
❶ ABO血液型
1)ABO血液型の発見
2)ABO血液型の基礎
3)ボンベイ血液型
4)ABO血液型の亜型
5)ABO血液型の変異
6)オモテ試験とウラ試験の不一致
❷ Rh血液型
1)Rh血液型の発見
2)Rh血液型の基礎
❸ その他の血液型
1)Lewis血液型
2)Duffy血液型
3)Kidd血液型
4)Diego血液型
5)Kell血液型
6)JR血液型
2 不規則抗体スクリーニングと同定検査
❶ 不規則抗体の基礎
❷ 不規則抗体の検査法
3 交差適合試験
❶ 交差適合試験の基礎
II 輸血学各論
1 輸血用血液製剤の種類と適正使用
1 赤血球製剤
❶ 赤血球製剤の種類
1)赤血球液—LR「日赤」
2)洗浄赤血球液—LR「日赤」
3)解凍赤血球液—LR「日赤」
4)合成血液—LR「日赤」
❷ 適正使用
1)赤血球輸血の目的
2)慢性貧血に対する適応
3)病態別慢性貧血に対する適応
4)急性出血に対する適応
5)周術期の輸血
6)赤血球製剤の投与量
2 血小板製剤
❶ 血小板製剤の種類
1)濃厚血小板—LR「日赤」
2)濃厚血小板HLA—LR「日赤」
3)照射洗浄血小板—LR「日赤」
4)照射洗浄血小板HLA—LR「日赤」
❷ 適正使用
1)血小板輸血の目的
2)血小板数と出血症状
3)病態別の適応
4)血小板製剤の投与量
5)血小板輸血不応状態(HLA適合血小板輸血の適応)
3 血漿製剤
❶ 血漿製剤の種類
❷ 適正使用
1)血液凝固因子の補充
2)血液凝固・線溶阻害因子の補充
3)血漿因子の補充(PTおよびAPTTが正常な場合)
❸ 使用上の注意点
4 全血製剤
5 その他の血液製剤
❶ クリオプレシピテート
1)特徴
2)調製
3)適応
❷ 顆粒球製剤
1)顆粒球輸血
2)顆粒球輸血の目的と適応
3)顆粒球製剤の調製
4)顆粒球製剤の投与
5)顆粒球輸血の注意点
2 血漿分画製剤の種類と適正使用
1 アルブミン製剤
2 免疫グロブリン製剤
❶ 抗D免疫グロブリン製剤
❷ 抗破傷風人免疫グロブリン製剤
3 血液凝固因子製剤
❶ 血液凝固第VIII因子製剤
❷ 血液凝固第IX因子製剤
❸ 血液凝固第因子製剤
4 その他の血漿分画製剤
❶ フィブリノゲン濃縮製剤
❷ ハプトグロビン製剤
❸ アンチトロンビン製剤
3 遺伝子組み換え型造血因子
1 エリスロポエチン(EPO)
❶ 腎性貧血に対する使用
❷ 貯血式自己血輸血における使用
❸ 骨髄異形成症候群(MDS)における使用
2 顆粒球コロニー刺激因子(G—CSF)
3 巨核球・血小板刺激因子
❶ トロンボポエチン(TPO)
❷ トロンボポエチン受容体作動薬
4 マクロファージコロニー刺激因子(M—CSF)
5 顆粒球—マクロファージコロニー刺激因子(GM—CSF)
4 自己血輸血
1 自己血輸血の目的
2 自己血輸血の種類
❶ 回収式自己血輸血(PACS)
❷ 貯血式自己血輸血(PAD)
❸ 希釈式自己血輸血(ANH)
3 自己血輸血に伴う副反応・合併症
❶ 血管迷走神経反応(VVR)
❷ 正中神経損傷
❸ 過誤輸血
5 診療分野別の輸血療法
1 内科的輸血療法
❶ 血液内科
1)造血器腫瘍に対する輸血療法
2)造血障害に対する輸血療法
3)貧血に対する輸血療法
4)血小板減少症に対する輸血療法
5)凝固異常症に対する輸血療法
❷ 消化器内科
1)消化管出血に伴う急性貧血
2)肝障害に対する凝固障害
3)肝硬変における輸血療法
4)急性肝不全における血漿交換療法
❸ 腎臓内科
1)腎性貧血
2)腎性貧血に対する輸血療法
3)腎性貧血に対する薬物療法
4)難治性の浮腫,肺水腫を伴うネフローゼ症候群
2 外科的輸血療法(手術に対する輸血療法)
❶ 手術用準備血の考え方
1)タイプ&スクリーン(T&S)
2)最大手術血液準備量(MSBOS)
3)手術血液準備量計算法(SBOE)
❷ 周術期の輸血療法
1)術前
2)術中
3)術後
❸ 危機的大量出血に対する輸血療法
3 産科
4 小児科
❶ 血液製剤別トリガー値
1)赤血球輸血
2)血小板輸血
❷ 院内分割
❸ 交換輸血
❹ 胎児輸血
5 救急科
6 輸血副反応・合併症
1 溶血性副反応
❶ 急性溶血反応
❷ 遅延性溶血反応(DHTR)
2 非溶血性副反応
❶ 免疫学的副反応
1)発熱反応
2)アレルギー反応,アナフィラキシー反応
3)輸血後移植片対宿主病(PT—GVHD)
4)輸血関連急性肺障害(TRALI)
5)輸血後紫斑病(PTP)
❷ 非免疫学的副反応
1)輸血感染症
2)その他の非免疫学的副反応
III 輸血学実習
1 血液型検査
1 ABO血液型とRhD血液型の検査法
2 検査法の実際
❶ ABO血液型検査 オモテ試験用試薬とRhD血液型検査用試薬(抗体試薬)
❷ ABO血液型検査 ウラ試験用試薬
❸ 抗体試薬と被験血漿の分注
❹ 血球試薬と被験血球(検体)の分注
❺ ABO血液型とRhD血液型の判定
❻ ABO血液型検査の判定:A型RhD+
❼ ABO血液型検査の判定:B型RhD+
❽ ABO血液型検査の判定:O型RhD+
❾ ABO血液型検査の判定:AB型RhD+
❿ ABO血液型検査の判定:B亜型(B3)RhD+
2 交差適合試験
1 交差適合試験の検査法
2 検査法の実際
❶ 検査の準備
❷ 3%受血血球と3%供血血球の調製
❸ 食塩水法
❹ 重合アルブミン法
❺ クームス法
❻ 交差適合試験(試験管法)の判定
1)適合
2)不適合
3)不適合
3 凝集反応の見方
❶ 凝集の見方
❷ 凝集反応の分類
IV ミニキーワード集
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書籍情報
- ISBN:9784498019348
- ページ数:168頁
- 書籍発行日:2023年6月
- 電子版発売日:2023年6月12日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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