全ゲノム・エクソーム遺伝統計解析

  • ページ数 : 268頁
  • 書籍発行日 : 2023年9月
  • 電子版発売日 : 2023年9月8日
7,920
(税込)
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商品情報

内容

全ゲノムデータから,見逃されていた疾患リスクを炙り出す!
今は全ゲノム解析の時代!ますます注目高まる遺伝統計学をこの機会に身につけよう.PythonとRの実例を追っていけば,VCFファイルの扱い方,PRS/PGSの計算,疾患リスク予測の概念など理解できます!

序文

はじめに

現在,現生人類の世界人口は70 億人を超えると推定されており,その地理的分布も世界のほぼすべての大陸で広範囲に及ぶ.しかしながら,遠い過去の人口はそれほど大きくなかった,あるいは大変に小さかったと考えられており,現在のような指数的な人口増加が見られるのは,比較的最近,特に産業革命以降であったことがわかっている.ヒトゲノムに残された多様性からは,過去の人類の集団サイズ(繁殖有効集団サイズ)は長期にわたって非常に小さく,1 万人程度であったと推定されている.このような長期にわたる定常的な小集団の過去と,比較的最近になってからの爆発的な人口増加(しかも地理的偏りを持った)から,現在のヒト集団のゲノムには,背反する2 つの遺伝的特性が付加されたと推察される.つまり,長期にわたる定常小集団としての歴史で遺伝的浮動が強く作用して構成された特徴と,最近の指数的人口増加による大量の突然変異の導入である.このように相反する特徴が,ヒトの健康問題にどのような効果を持つか,いまだ,はっきりしたことはわかっていない.この2 つの特徴は,それぞれありふれた疾患に関するCDCV(common disease commonvariant)仮説とCDRV(common disease rare variant)仮説の理論的背景をなすものだが,その定量的割合は不明である.

過去には,主にコスト面からの折衷として,さまざまなヒト疾患や形質で,ヒト集団中に高頻度で存在するSNP を用いたGWAS 研究が非常な成功を収めてきた.他方,WGS(whole genomesequencing)/ WES(whole exome sequencing)の読み取りコストが低下し,現在の技術での下限に迫りつつある.また,読み取り精度も向上し,いくつかの国際的バイオバンクでは数万人レベルでの大規模なWGS / WES データの蓄積が急速に行われつつある.このような現状で,ここ最近の方法論の発展と今後の展望を整理し,実用的なWGS / WES データの利用ガイドを提供するために本書が企画された.第1 章では,次世代シークエンシング(NGS)技術の基礎と,計算負荷の高いWGS / WES データのスーパーコンピューター(スパコン)上での解析演習を取り上げた.第2 章では,特に最近の進捗が著しい計算機上でのバリアントアノテーションについて解説した.第3 章では,NGS の実用例として,希少難病の原因遺伝子探索と多因子疾患での柔軟なレアバリアント遺伝統計解析をテーマとしている.第4 章では,既存データの活用や多因子疾患のリスク計算,関連バリアントの臨床的意義解釈でのAlphaFold の利用などを扱った.そして,第5 章では,来たるべき,さらなるNGS 解析の普及に必要な新技術について取り上げている.また,各章のテーマに即した派生的で先端的な話題をコラムとして紹介した.これらの重要な方向性についてはいずれ別途まとめて行きたい.

大規模なNGS 解析は,データ生産から遺伝統計解析まで,現状では限られた施設でしか実地経験をつむことができない.そのようななかで,本書が,初学者にとって,実際に自ら手を動かしてNGSデータ解析に必要なノウハウを習得する一助となることを願っている.

なお,本書の基礎となる遺伝学の基本部分については,拙著「ゲノム医学のための遺伝統計学」(共立出版,2015 年)を参照されたい.また,SNP データの扱いについては本書では取り上げていないが,「ゼロから実践する遺伝統計学セミナー」(岡田随象,羊土社,2020 年)を参照されたい.


2023年7月

東北大学大学院医学系研究科/理化学研究所革新知能統合研究センター
田宮 元

目次

第1章 NGS解析 〜バリアント検出

1 研究目的に応じたデータ取得 ――WGSかWESか? 必要なデータ量は?【牧野悟士】

 基礎知識と背景

 おわりに

2 データ解析環境に関する基礎知識 ――ラップトップかスパコンか?【船山貴光】

 基礎知識と背景

 練習環境の整備

 おわりに

 Column ① NGS技術による「WES+diversity SNP」パネルのデータ取得

3 全ゲノムシークエンシングのバリアントコール ――トリオ家系のゲノム解析【仁宮洸太,高山 順】

 基礎知識と背景

 全ゲノム解析における各手順の解説

 解析の準備

 解析の実行

 おわりに

4 構造多型の検出 ――smooveを用いたSVコール【高山 順】

 基礎知識と背景

 解析の準備

 テストデータの解析実行とソフトウェア実行方法の理解

 おわりに

5 コピー数バリアントの検出 ――GATK-gCNVを用いたCNVコール【高山 順】

 基礎知識と背景

 解析の準備

 テストデータの解析実行とソフトウェア実行方法の理解

 おわりに

 Column ② 集団の祖先性を見直す

第2章 一次処理 〜 アノテーション

1 bcftoolsを用いたVCFの整形【早坂将聖,高山 順】

 基礎知識と背景

 解析の準備

 解析の実行

 おわりに

 Column ③ コアレセント理論と遺伝的祖先性

2 SnpEffとSnpSiftによるVCFのアノテーションと操作【仁宮洸太,高山 順】

 基礎知識と背景

 解析の準備

 解析の実行

 おわりに

3 vcfannoによるVCFのアノテーションと操作【高山 順】

 基礎知識と背景

 解析の準備

 テストデータの解析実行とソフトウェア実行方法の理解

 おわりに

第3章 AI等を活用した原因/リスク遺伝子同定

1 slivarによる希少難病家系のVCF分析【高山 順】

 基礎知識と背景

 解析の準備

 テストデータの解析実行とソフトウェア実行方法の理解

 おわりに

 Column ④ NGSの重要な応用:NICU/PICUでの迅速ゲノム検査

2 Exomiserによる希少難病家系のVCF分析【高山 順】

 基礎知識と背景

 解析の準備

 テストデータの解析実行とソフトウェア実行方法の理解

 おわりに

3 症例対照研究におけるレアバリアント関連解析【森井 航,秦 千比呂,椎橋卓哉】

 基礎知識と背景

 解析の準備

 解析データの加工

 解析の実⾏

 応用例

 おわりに

 Column ⑤ 混交を定量する統計量

4 STAARpipelineによる多因子遺伝疾患のレアバリアント関連解析【小嶋崇史,岡田随象】

 基礎知識と背景

 解析の準備

 解析の実行

 結果の解釈方法

 おわりに

第4章 原因/リスク遺伝子同定後の解析

1 希少疾患の原因遺伝子同定に向けた大規模データの利用【浅海 真,椎橋卓哉】

 基礎知識と背景

 おわりに

2 PRS/PGS計算【田端佑介,三宅顕光,成田 暁】

 基礎知識と背景

 PRS/PGS計算の手法

 解析の準備

 解析の実行

 おわりに

3 絶対リスク計算【三宅顕光,櫻井利恵子】

 基礎知識と背景

 おわりに

 Column ⑥ 多様性ゲノムコホート:米国All of Us

4 メンデル無作為化による因果推論【成田 暁】

 基礎知識と背景

 MRの演習

 おわりに

5 タンパク質立体構造を用いたバリアントの臨床的意義の検討【城田松之】

 基礎知識と背景

 解析の準備

 解析手法

 A)PDBにタンパク質構造がある場合の解析手順(バリアント1)

 B)PDBにタンパク質構造がない場合の解析(バリアント2)

 おわりに

 Column ⑦ 多様性ゲノムデータ:HGDP/SGDP

第5章 全ゲノム解析時代を支える基盤技術

1 半導体技術による次世代シークエンシングの高速化【原島圭介】

 基礎知識と背景

 おわりに

 Column ⑧ 電子カルテデータの利用

2 量子時代におけるゲノム解析データのセキュアな活用【佐藤英昭,長神風二】

 基礎知識と背景

 今後の展開

 おわりに

3 スーパーコンピューター富岳での大規模計算 ――スーパーコンピューター富岳へプログラムを移植するにあたって【松岡 光,鈴木永久】

 基礎知識と背景

 おわりに

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書籍情報

  • ISBN:9784758122665
  • ページ数:268頁
  • 書籍発行日:2023年9月
  • 電子版発売日:2023年9月8日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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