スポーツ医学における画像診断－小児の被曝低減を目指す取り組み－

このたび，特集号「スポーツ医学における画像診断－小児の被曝低減を目指す取り組み－」を編集させていただきました．私は脊椎スポーツ医学，特に発育期の分離症を専門とし，約30年間，CTベースで診断と治療方針を決定してきました．また，経過観察中，骨癒合の判断もCT撮影でしておりました．しかしながら常に子供の被曝低減化については考えておりました．そしてついに，時代が訪れたのです．CT-like MRIいわゆるMRIでのbone imageが登場したのです．発育期分離症の画像診断にパラダイムシフトが訪れ，CTフリーの診断法の時代が見えてきたのです．そこで，脊椎領域にかかわらず，すべてのスポーツ医学領域で，小児の被曝低減の試みについて特集を考えた次第です．

総論としては，まずCTが及ぼす小児への影響について，次にCTを撮影する場合の被曝低減への取り組みを解説することで，従来法であるCT撮影の理解を深めていただきました．CTが不可欠な疾患もございます．そのような場合でも，被曝低減の方策を知っておくことは非常に重要だからです．CT-like MRIに関しては，いまだスポーツドクターやトレーナー・セラピストの皆様には浸透していないと思われますので，基礎から応用まで詳細な内容を執筆賜りました．総論の締めとしては，現場でどのような応用がなされているかを紹介していただきました．これからCT-like MRI導入をお考えの先生方への一助となることと存じます．

各論としてはCT-like MRIにおける，各部位の画像診断について取り上げました．肩関節疾患への応用，肘離断性骨軟骨炎への応用，特に肘関節では，発育期投球障害に対する撮像の工夫についても言及していただいております．下肢では股関節，足部・足関節疾患，Jones骨折における最前線の画像を提供・紹介していただいております．腰椎では，分離症と骨端輪骨折を取り上げました．特に分離症では診断のみならず，骨癒合判定への可能性についても言及していただいております．

本特集号を編集させていただき，すべての原稿に目を通すと，大変感慨深いものがありました．CTフリーの時代の幕開けを飾る，歴史的一冊になったと思われます．また，研修医の皆様やこれからCT-like MRIの応用を考えている先生方には，最高の道標となる特集号であると自負しております．しかしながら，まだまだ始まったばかりでございます．これからが重要です．読者の皆様とエビデンスを構築し，子供たちのより良い未来に寄与していきたいと願っております．本誌がその第一歩を踏み出すきっかけとなれば編集者として，大変幸甚に存じます．

特集編集：西良浩一（徳島大学教授）