アスリートを支えるセラピスト・トレーナーたち

今回の特集は，「アスリートを支えるセラピスト・トレーナーたち」というテーマにしました．アスリートを取り巻く各職種の役割を紹介し，そのコンセプトや実技についての理解を深めることを目的としました．

日本では平成23 年に「スポーツ宣言日本～二十一世紀におけるスポーツの使命～」という宣言が発表されています．その中で，スポーツの価値を社会全体に広げていくことで，日本を変えていくといった理念と相まって，Players Centered Concept が取り上げられるようになってきました．プレーヤーを中心として，それを取り巻くアントラージュ（指導者，保護者，ドクター，トレーナー，セラピストなど）自身も，それぞれのwell-being を目指しながらプレーヤーをサポートしていくという考え方であり，スポーツという「場」にかかわるすべての人が，プレーヤーを中心にしてともに高まっていくというものです．このPlayersCentered Concept を実現する環境として，重要な構成者となるのが指導者，保護者であり，スポーツドクター，セラピスト，トレーナーなのです．

まず「ヨガ・ピラティス・呼吸指導者」として，「マットピラティス」「マシンピラティス」「Core Power Yoga」「呼吸がパフォーマンスに与える影響」の4 項目を取り上げました．ヨガやピラティスは，各関節の運動連鎖によるエネルギー伝達をコンセプトとしたボディーワークであり，関節や筋の可動性のみを追求したものではなく，呼吸に重点を置いたエクササイズとしてアスリートに取り入れられるようになってきています．

次に，「はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師」として7 項目を取り上げました．いずれも医療チームの一員として遠征時の帯同やプレコンディショニングなど，アスリートにとって近い位置でのサポートに携わっています．鍼灸の総論として「鍼灸医学の科学的エビデンス」，「鍼灸の種類と基本コンセプト」，各論として「スポーツ鍼灸」，「各種療法による腱血液循環の変化」，「チーム帯同時の鍼灸・マッサージの実際」を取り上げ，「柔道整復師に求められるもの」，「スポーツ現場での柔道整復師としての活動」についても解説いただきました．

さらに，「アスレティックトレーナー（AT）」として6 項目を取り上げました．「日本におけるAT」，「AT に必要なもの」，「AT としてのチーム管理」，「メディカルフィットネスにおけるAT の役割」，「学校現場におけるAT の役割」，「トレーニング・コンディショニングを指導するトレーナー」について，それぞれ日本を代表するアスレティックトレーナーの方に解説していただきました．

この特集号が，アスリートを支える優れた医療連携チームの構築に役立つ1 冊になることを願っています．ぜひ，ご一読いただければ幸いです．

特集編集：熊井　司（早稲田大学教授）